37.仙丈ヶ岳 「今宵の月のように」
- GPS
- --:--
- 距離
- 10.2km
- 登り
- 1,195m
- 下り
- 1,198m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2008年09月の天気図 |
アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
○北沢駒仙小屋のテント場はバス停から歩いて数分のところにあって、幕営初心者にはお勧めのテント場といってもいいでしょう。 しかし、売店には食料が売られていないので、足りなかったら現地補給すればいいやという考えは捨てたほうがいいです。むしろ、こういう機会ですから、新しい料理にチャレンジしてみるのもいいのかも知れません。 |
予約できる山小屋 |
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写真
感想
第37座 今宵の月のように
本来なら昨年の夏にいく予定だったのが、台風の通過でいけなかったので、今年になってようやくいけるようになった。2005年に甲斐駒ヶ岳を登山した時に利用したテント場がある北沢長衛小屋もいつの間にか北沢駒仙小屋と改名されていた。9月13日の昼過ぎに着いたときには既に多くのテントが設営されており、僕は凹凸の少なそうな場所にテントを設営した。テントを設営したところで、取りあえずビールで乾杯! 夕食のラーメンと白飯を食べたが、何か物足りなさを感じた。バス停に近いところなのだから、多少食材で重くなっても新しい料理に挑戦すべきだったかなと後悔している。18時を過ぎるとテントの中も暗くなったので、早々に寝ることにした。
しかし、なかなか眠れなかった。久々のテントで寝るので気持ちが高ぶっているのだろうか? それに加えテントの中が白く柔らかい光に包まれていた。僕はテントから顔を出して空を見ると満月が輝いていた。そういえば十五夜前夜なんだなぁ〜と秋を感じたひとときであった。しかし、満月に見とれている場合ではない。少しでも寝なければ! と思い高ぶる感情を抑えつつ横になった。9月14日2時30分、眠れないと観念して起きた。昨日食べ残した白飯にお茶漬けの素をふりかけ、お湯を注ぎ、春雨スープやホットコーヒーを作って食べた。白飯は一袋二人分の方を買っているのだが、その理由は食べられるようになるにはお湯を注いで30分かかるので、夕食で半分を残し、朝食でお茶漬けにして食べれば、時間短縮につながるのではないかと思ったからである。ゆっくり朝食を食べている間に夜が明けて来たので、5時30分、小雨がぱらつく中、仙丈岳へ向かって出発した。
北沢峠を通って、さらに進むと藪沢新道へ向かう道標が見つかったので、そこから登山道に入った。5分歩いたところで大平(おおだいら)山荘に着いた。この頃になると雨は止んだので、レインウェアを上下共に脱いでスパッツだけは装着して藪沢新道へ入った。静かな樹林帯の中、平坦だった登山道もだんだん急勾配になって来た。そしてこれを越えると藪沢大滝の上に出た。ここからは沢沿いを歩くことになる。黄色い花びらのオタカラコウや、白く小さい花々が集ったミヤマウイキョウや、紫色の花びらのミヤマトリカブトの高山植物の花が咲いており、これらが見られただけでも、藪沢新道を通る登山道を選択して正解だったと思った。
馬の背ヒュッテの下にある仙丈藪沢小屋へいく登山道との分岐点に着いた。その近くに水場があって、ホースから水が勢いよく出ていて、その水を飲んだが、冷たくておいしかった。そこからしばらく登ると、ニホンジカ防護柵が登山道の両脇に設置されていた。2mの高さの鉄の杭にオレンジ色の大きい網目のネットが張られていた。その理由は高山植物をニホンジカの食圧から守るためで、今年の8月に設置されたばかりである。僕はその柵の真中を歩いて上を見上げれば木の枝の先端の数十枚の葉が黄色く染まっていた。もう秋は訪れているのだなと実感した。
馬の背ヒュッテに着いたのが8時5分である。そこからしばらく登っていくと、仙丈岳の主峰がハッキリと見えるようになった。そしてしばらく登って稜線に出た。ここからはハイマツの間を主峰に向かって登っていく。その途中で、女性のトレイルランナーに抜かれた。その女性は若くて小柄で、装備は大き目のウエストバックのみであった。山道を走る「トレイルランニング」がブームで、僕も冬場は近場の低山を走っているが、3000メートル級の山をトレイルランする体力はない。いつかは彼女のように颯爽と登山道を駆けてみたいものだと思っているうちに、別の男性のトレイルランナーに追い抜かれた。
9時に仙丈小屋に着いた。あいにくここの湧き水は枯れていて飲めなくて残念だが、山肌を見ると点々と赤く染まったところがあって秋の訪れをここでも感じた。僕は山肌を登り稜線に出た。先の稜線上には登山者の列がハッキリと見えて山頂が近いことを実感した。稜線のピークをいくつも越えて、9時30分に山頂に着いた。山頂周辺はどこから沸いて出て来たのだといいたくなるほどの多くの登山者で溢れていた。僕は記念撮影と恒例の三角点踏みをした後、少し早いがカロリーメイトの昼食を摂った。展望は晴れているものの雲が多すぎて、甲斐駒ヶ岳が見えそうで見えない状態だった。下を見下ろすと藪沢カールが見えた。先月、北アルプスの黒部五郎岳にある黒部五郎カールが見られなかったので、場所は違うが圏谷(カール)を見られて、「黒部五郎岳の仇を仙丈岳で討った」思いで一杯であった。
山頂を10時に出発して小仙丈尾根を通って小仙丈岳に向かう途中に3羽のライチョウがハイマツから出て岩場をあちこち歩き回っていた。僕も含めてだが、数人の登山者は遠巻きにしてカメラを構えたり、ただライチョウの動きを観察していたりしていた。先月の北アルプス縦走で黒部五郎岳に向かう途中に1羽足早に横切ったことはあったのだが、まともに見るのは2001年夏に剱岳に登る途中で見た以来だ。その上、南アルプスでライチョウを見るのは珍しいことらしく、北岳でライチョウを見ただけでもニュースになるほどだ。僕はこうしてライチョウに出会えて運がいいなと思った。
10時50分に小仙丈岳に着いた。ここから山頂を見ると、小仙丈沢カールが見え、見えなかった北岳や間ノ岳が見えるようになったが、今回はこれで精一杯であった。まぁ、晴れたからいいか。ここから尾根を降りていくと樹林帯に入り、11時35分に大滝頭(五合目)に着いた。少しここで休憩して、一気に駆けるように降りていって、北沢駒仙小屋に着いたのが12時40分であった。歩行時間は7時間10分で、コースタイム8時間を50分短縮した。3年前に甲斐駒ヶ岳に登った時は8時間のコースタイムに対して12時間かかったことを考えると、普段からのトレーニングの成果だと思った。メタボな体質は改善されつつあるが、「割れた腹筋」には程遠いので更なる精進が必要である。特に降りの足取りが軽くなったことを実感した今回の登山であった。
この夜もテントで寝たが、昨日と同じ時間に起きてみれば、見事な満月が輝いていた。そうか、今日は十五夜だったのだな。今宵の月は神秘的で、ここに酒と団子がないのが残念だ。9月15日、目が覚めた時は本当に寒かった。それもそのはず、小屋の掛けられた温度計を見たら7度だった。昨日と同じメニューの朝食を食べて、テントを撤収して、朝一番のバスに乗って甲府に戻った。出発当初は寒くてフリースを着ていたが、甲府に着くと暑くてフリースを脱いだ。昼食に甲府駅から歩いて5分のところにあるKというほうとう鍋専門店で鴨肉ほうとう鍋を食べた。久々にほうとう鍋を食べたが、麺が平らで太くコシがあっておいしかった。ただ温泉に入れなかったのが残念だったけど。
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