夜叉ヶ池と夜叉丸
- GPS
- 04:29
- 距離
- 6.7km
- 登り
- 821m
- 下り
- 850m
コースタイム
天候 | 快晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2023年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
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コース状況/ 危険箇所等 |
よく踏まれた登山道。 |
その他周辺情報 | 今庄に名物おろし蕎麦の店数店。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
靴
ザック
昼ご飯
飲料
レジャーシート
地図(地形図)
コンパス
笛
ヘッドランプ
GPS
ファーストエイドキット
保険証
携帯
時計
サングラス
カメラ
シュリンゲ
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感想
今年もニッコウキスゲを見たいと思っていたが、赤兎山一辺倒というのでは芸がない。そこで調べているうちに夜叉ヶ池の名が浮上した。岐阜と福井の県境の稜線上にある池で、両白山地の西端近くに位置している。山上池というだけで興味をひかれるが、そこにニッコウキスゲが咲く情景を想像して、これは行かないではいられなくなった。この池にまつわる龍神伝説をもとに泉鏡花が作品を残しているとなれば、なおのことである。もっとも、大昔の中学入試のための暗記が、今日の自分が持つ教養のすべて自負するasakinuは、その作品が『金色夜叉』であることに疑いを持たなかった。しかし、なぜか不安が走って調べてみると、その根拠のない確信は完全に打ち砕かれる。貫一・お宮の『金色夜叉』は何と尾崎紅葉の作品だったのだ。えっ、そうだよな、貫一・お宮と龍神伝説とじゃ、どう考えても接点がない。で、本当は泉鏡花の作品『夜叉ヶ池』がアタリ。なんのことはない、そのものずばりのタイトルだ。しかも、泉鏡花が尾崎紅葉の弟子だった、なんてことは、中学入試の暗記から60年近くを経た今日、初めて知った。それに、教科書に近代日本の偉大な作家として登場する尾崎紅葉や泉鏡花が、実は随分と俗っぽい作品を書いていることにちょっと驚いたりするのだ。
さて、過去の山行記録を見ると、岐阜県側からのルートが福井県側からのルートよりもバリエーションに富んでいて面白そうである。だが、登山口までの林道は、岐阜県側からの場合、なかなか怖いという。asakinuとしては、デリカでそこに突っ込んで悶えるのが嫌だった。今回はおとなしく無難な福井県側から入ることにする。
北陸道木之本ICから下道を辿るつもりで高速を降り国道に乗るが、「福井県側通行止め」の看板を見て慌てて高速に乗りなおす。結局、今庄ICからのアプローチとなる。もっともこのおかげで、途中の杉津(すいず)PAからの素晴らしい日本海の眺めを満喫することができた。
今庄ICからはナビに「広野ダム」と入れてガイドさせる。ダムからは道なりにまっすぐ終点まで入る。最奥の駐車場は10台くらい停められるが、満杯だった。親切な方が今出るから、と空けてくださり、ありがたくそのあとに車を入れる。しかし、すぐ手前に3か所ほど広々スペースが舗装されているので、車を置くことに困難はないであろう。駐車地には樹齢400年の巨大なカツラが神木として聳えており、その木に守られる様にトイレが建つ(笑)。
豊かな水量の沢に沿って広葉樹の下を進む。林下をコアジサイが埋め尽くしている。あたりに立ち込める高貴な香りに酔いしれる。コアジサイはどこにでも普通に生えているが、このようなかぐわしい香りを放つことに、今日まで気づかずにいた。途中、3本の支沢を渡るが、そのたびに水の味を確かめてゆく。対岸に二段に落ちる豪快な滝を見て進めば、やがて道は沢の左岸の高いところを巻くようになる。なかなかの高度感。さらに進むと沢音は遠ざかって、尾根を登るようになる。500メートルごとに道標が立つが、その500mがなかなか遠い。最後の500mを過ぎると200m、100mというように標識は小刻みになっていく。そして傾斜が緩み、夜叉ヶ池は目前となる。人々の話声が近づいて視界が開けると、そこに透明な水をたたえた夜叉ヶ池が姿を現わす。
ニッコウキスゲは一体どこだろう。常連の方から話をうかがい、県境尾根の向こう側すぐのところにニッコウキスゲが生えていることを知る。さっそく現地に赴く。尾根に乗ると美濃側は一気に切れ落ちて、雄大な景色が眼前に広がった。そして待望のニッコウキスゲも。だが、ここに一本、それからあそこに一本、という感じで僅かな数である。美濃側へ露岩の斜面を下った地点から谷を隔てた左岸の岸壁を眺めると、そこには群落があるが、いかんせん遠すぎる。そして何人もの方が、以前はもっとたくさんあったのに・・・と残念がっていた。シカの食害によると思われるが、確かに断崖にしか残っていないのだった。あきらめて夜叉丸に登る。夜叉ヶ池を見下ろし、背後に三周ヶ岳に連なる尾根が真っ青な空に映える。夜叉丸山頂は身の丈の篠竹藪の先にある。ササ丈が低くなり足元に白い大きめの石が三つほどあるところが山頂である。むさくるしい山頂で、すぐに引き返した。
往路を淡々と下ってゆくと、再びコアジサイの清らかな香りに包まれる。実に幸せな気分だ。降り立った駐車場にはほんの数台の車を残すのみ。それにしても素晴らしい天気に恵まれ、最高な眺めを楽しむことができた。ニッコウキスゲはともかく・・・。そして心はすでに夕食の一献に向いている。今夜は今庄の宿かねおりに一泊する。豊かな食膳に打ちたての蕎麦。山形の田舎蕎麦に一脈通ずるおろし蕎麦は逸品である。
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