夏沢峠旧道から根石岳(スキー使用)
- GPS
- 56:00
- 距離
- 19.1km
- 登り
- 1,360m
- 下り
- 1,360m
コースタイム
天候 | 1日目:晴れのち雪、2日目:雪のち曇り、3日目:曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
登山口の先にも別荘地があるのでしっかり除雪されている。29日の降雪後も除雪されていた。 |
写真
感想
昨年道迷いで中途半端になってしまった夏沢峠旧道に再度挑戦してみることにした。経験を踏まえ、始めからスキーを使う計画である。
(28日)
素晴らしい晴天で、エコーラインを走っていると、白い畑地の向こうに槍穂高や乗鞍を眺めることができた。登山口に車を置き、シール登行で出発。積雪は10cm強で、今季は多いと言われているほどではない。最初は車のタイヤ跡が付いていたが、間もなく脇にそれ、以後ノントレースとなった。一本道を黙々と進み、昨年迷い込んだ沢状沿いのペンキマークルートとの分岐に到着。今にして思えば、森林分界の巡視ルートだったのだろう。道はここから傾斜が増し、しばらくジグザグを切って小尾根を登っていく。見覚えのある、荒れたヒノキ?林の間を、昨年苦闘した沢筋を右手に見ながら順調に進んでいく。薄暗い針葉樹林帯に変わると、積雪は30cmくらいに増え、しなだれた枝やシャクナゲがうるさい。スキーは10cmほどしか沈まないので、苦労というほどのラッセルではない。
傾斜が緩くなると、昨年この辺りに降り立ったなあと思える地点を通過、以後は様子が分かるので気楽なものだ。単調だが、沢筋を横切る2か所からは、車山の向こうに北アルプスの銀屏風を望むことができる。オーレン小屋まで行けそうな時間ではあったが、加藤文太郎ゆかりのコースなので、予定どおり一人で夜を過ごすことにして、道が下りに入る直前の場所にテントを張った。いつの間にか空には雲が広がっていたが、暗くなる頃からシャリシャリと雪が降り出した。気温は高く、靴下1枚でもいられるくらいだった。
(29日)
一晩で5cmほど積もり、なお湿っぽい雪が降り続いている。ヘッドランプを点けて出発。少し滑り下ると桜平からの道に合流。夏沢鉱泉の前ではお兄さんたちが暗いうちから除雪作業に励んでいる。登山道入り口にスキーをデポし、ワカンに履き替える。鉱泉泊まりの人はまだ出ておらず、前日の踏跡のうっすらした窪みに、10cmほどのラッセルでトレースを付けていく。樹林の中は無風で静かな山旅だ。雪の衣装でふくらんだツリー群が、何やら生き物のように見える。オーレン小屋には誰もいなかったようで、期待したトレースはない。どんよりした空の下、軒下で飛雪をかぶりながらカンパンをかじっていると、さすがに意気が下がる。結局夏沢峠まで一人ラッセルとなった。
峠では全く展望はないが、ようやく人間を見てほっとする。ここからはトレースもあり、気楽に歩くことができる。崖の縁を登り、岳樺に樹氷のこびりついた頂上台地を進んでいくと、箕冠山の頂上だ。白と灰色の世界にいると、花の写真などが描かれたカラーの看板に心がなごむ。
これまでの所要時間から予定の天狗岳往復は無理と判断し、根石岳を目指しアイゼンに履き替える。樹林を出ると突然烈風が吹き付ける。風で有名な鞍部は、小石混じりのアイスバーンになっている。根石岳への登りは、ロープで囲われた登山道の範囲はパックされた雪に足をとられるので、脇の飛ばされているところを選んで登る。ほどなく、凍りついた頂上に到着。天狗岳の方向は、登山道に雪が吹きだまっていて難儀しそうだ。ガスで視界も50m弱。晴れてトレースのある八ケ岳との落差を痛感する。
心残りもなく引き返し、箕冠山の樹林に入ると嘘のように風はなく、ほっとする。後はしっかりとしたトレースを散歩気分で下るだけだ。雪は止み、ガスがなくなると、モノトーンだった世界に色が(といっても緑色だけだが)戻ってくる。自分が一番に踏んだ道を歩くのは気持ち良い。夏沢鉱泉でアルコールを仕入れ、キャタピラの踏み跡をひと滑り、幕営地に戻って雪をかぶったテントの周りを整備し直す。天気のせいか、この日行き交ったパーティーは10にも満たなかった。
(30日)
一番風呂を目指して、またヘッドランプで出発。山は雲をかぶっているが頭上には星も見える。シールを付けたまま踵解放で歩く。前々日のトレースはほぼ埋まっているが、かすかな窪みを目印に歩けば少しは沈み込みが少ない。ビロードのようなとでも言うべき柔らかな新雪の感触が心地よい。行きも帰りも旧道では誰にも会わず本当に静かな山行だ。1時間強で沢状との分岐に着く。またこのコースを辿ることはあるだろうか。標高が低くなるとグサグサのクラストになり、滑りが悪くほとんど歩きになってしまうので意外と時間がかかった。広大な唐松平(勝手に命名)を歩いているとうんざりしてくるが、鹿が跳ねながら逃げていくのを見かけた。最後に1460mの三叉路でシールをはずし、気持ち良く滑って車道に出た。車の脇でスキーをはずし、コーヒーを沸かし、山行の余韻を味わう。縄文の湯で疲れをいやし、帰途についた。
(総括)
夏沢峠に登るのに、雪上車のキャタピラ跡を延々と歩くのもしゃくなので、前年の経験をもとに旧道をスキーを使用することで無理なく登るという方法を確立してみようとしたものである。所要時間が読めなかったのでテントも持参したが、もう少し早く出発すればオーレン小屋(冬期小屋)まで入れそうだ。トレースがあれば翌日天狗か硫黄岳を往復してその日のうちに下山も可能だろう。例えればリフトのあるスキー場の脇をシールで登るようなもので、無駄といえば無駄だが、静かな山旅が味わえることは間違いない。
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