天狗池-南岳-中岳-大喰岳 〜原点への旅〜
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- GPS
- 21:58
- 距離
- 50.7km
- 登り
- 3,141m
- 下り
- 3,515m
コースタイム
- 山行
- 4:04
- 休憩
- 1:01
- 合計
- 5:05
- 山行
- 6:10
- 休憩
- 0:48
- 合計
- 6:58
- 山行
- 8:01
- 休憩
- 1:45
- 合計
- 9:46
天候 | 8/12 快晴 8/13 快晴〜霧 8/14 霧雨〜晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
8/12 上高地バスターミナル着5:20 8/14 新穂高ロープウェイ発14:55(濃尾バス、910円)平湯温泉着15:35(後泊) 8/15 平湯温泉発15:25(あるぺん号東京駅行き、9000円)新宿駅着20:35 |
コース状況/ 危険箇所等 |
天狗池〜天狗原分岐(稜線上) グレーディングの情報が無く、今の体力で登りきれるか心配だったけど何とか。ザイテングラートよりも長く険しいと思う。ちなみに1975年刊の「アルパインガイド」で☆2つ(表銀座も☆2つ、大キレット縦走が☆3つ)。 南岳〜中岳 鎖の無い巻きが1箇所。足場しっかりしているけど、雨で濡れているときは要注意。 |
その他周辺情報 | 槍沢ロッジ バスクチーズケーキが美味しかった。コーヒーとセットで1000円。 南岳小屋 仕切りやカーテン、換気など、配慮が感じられた。中華主体の夕食は美味しかった。(大満足) 穂高平小屋 かき氷が美味しかった。(生き返った) ひらゆの森 日帰り利用はあるが宿泊は初めて。(シングルルーム、12800円)宿泊者専用の内風呂は、露天風呂と共に夜通し入れる。夕食は飛騨牛の鉄板焼き、岩魚の塩焼きなど、美味しかった。 |
予約できる山小屋 |
槍平小屋
|
写真
感想
槍ヶ岳から南岳に連なる稜線は、以前から歩いてみたいと思っていた。槍ヶ岳に登頂するか、西鎌尾根を経由するか、南岳新道と天狗原どちらを下山コースとするか、幾つかの組み合わせを考え、決められずにいた。
コロナ禍以降、山小屋は他の宿泊施設同様に予約制(それ自体大歓迎されることなのだが)となったから、その予約の成否により日程やコースが左右される。どうしても複数の計画を立てておく必要があった。そしてそれは、ここ数年、突然現れ脅かされてきた「台風への備え」でもあった。
台風6号の進路を気にしているうちに、7号の北上が確実となり、直前に計画変更、出発を早めることにした。13日夜行を11日に前倒し、往復のバス、山小屋の予約を取り直す。結局、このことが最終的にコースを決定づけることとなった。あとは自転車なみの速度が自動車なみに変わらぬよう祈るばかりである。
8月12日 上高地から槍沢へ
早朝の上高地バスターミナル、想像以上に多くの人が出発準備を行っていた。バスは続々と到着している。天候はこの上なく良好。今日は4時間の歩程、のんびり行動すれば良い。東京駅の地下で買ったパンをかじった。
河童橋の手前から穂高連峰を望む。瞬く間に魅了されてゆく。早くも夢の中にいた。小梨平を経て明神へ。すべてが順調。意識的にゆっくりと歩くことをやめ、マイペースで進むことにした。徳澤園到着後、時間調整を行うかどうか迷ったが、とりあえず横尾まで行くことにした。梓川の美しく変わらぬ姿に見とれながら4日間の無事を願った。
横尾には8時半に着いた。十字路、多くの登山者がそれぞれの目的地に向かい出発している。まだ電波受信可能、天気や登山道情報について確認を行った。台風のコース、速度に変化は無い。50分後、槍ヶ岳に向かって動きだした。
強い日差しを木々が遮ってくれている。沢水の冷たさを確認する。体調はすこぶる良く、小屋がもう少し上部にあってほしいなどと思いながらゆっくりと歩いた。
槍沢ロッジには11時に到着、宿泊の手続きを済ませてからケーキセットを注文した。街中で食べても十分に美味しいと思える逸品だった。寝不足でもなく、疲労も感じていない。横になる気にもなれず、訪れるコースの掲載されている雑誌を読んだり、木々をぼんやりと眺めたりしながら時を過ごした。
8月13日 天狗原から南岳へ
ご来光の望めない立地であったが、4時半には小屋を出た。今日も天気は良好、道は明瞭だが、肝心の体調が全く優れない。ババ平で夜明けを迎えたのち、二つの沢を横切って進むも、息は上がったままだった。
天狗原への分岐点には、出発2時間後に着いた。未だに稜線までの急な痩せ尾根を心配している。下ってきた方におそるおそる訊いてみた。「あそこを登る気にはなれないなあ。ザイテングラートよりも厳しいと思いますよ」はっきり言う人だ。まあ無理そうだったら引き返してロッジに連泊すればよい。そう思うことにして先を急いだ。
急いだ理由はいくつかある。極上の天候は昼過ぎに崩れるだろうこと、急登にできるだけ時間をかけたいこと、そして天狗池でなるべく多くの時間を過ごしたかったからだ。
分岐からほどなくして振り返ると、槍の穂先が見えた。嬉しい。この方向からの姿は均整が取れていて美しい。堂々とした姿に、初めて見たときの衝撃を思い出す。明日、48年ぶりに登るのだ。叶うだろうか。
7時45分、天狗池に到着、すぐに逆さ槍と対面した。風は無く、期待どおりに映っている。感謝し、長い間立ち尽くした。
やがて出発の時間は訪れる。ちょうど下りてきた女性二人に同じ問いを投げかけた。「危険はありません。大岩の間に落ちないよう気を付けていました」途端に気が楽になった。今日の歩程標高差は1200メートル、何とかなるだろう。
天狗原、別名氷河公園は、氷河が生み出したモレーンであり、いったいどこから来たかと思える大岩が点在している。もう少し若かったら岩の上をぴょんぴょん跳ねながら登れるのに。ストックを駆使して慎重に歩を進める。コルまで体力を温存しなければならなかった。
表銀座の山々も北穂も前穂も青空によく映えていた。時折、立ち止まり眺望を楽しんでいたが、背に強い日差しを受け、徐々に勾配の大きくなる斜面にそれも叶わなくなっていった。痩せ尾根に取りつく頃には、疲労は極まり、無心で手足を動かすこととなった。
早くしないと稜線からの眺望が望めなくなってしまう。ようやく現れたはしごに安堵しながら最後の登りを詰めた。そして稜線に達したとき、久しぶりに大きな達成感を得た。しばらく呆然としていた。
槍ヶ岳に挨拶をしてから稜線を南下する。南岳に着く頃にはすっかりガスに包まれていた。お目当ての穂高連峰は望めそうもない。小屋に向かう。
11時35分、南岳小屋ではまだ布団干しの時間だった。大キレットの展望台、獅子鼻に向かうことにした。かろうじてその威容を視界に収めることができたが、北穂高岳は霧の中にいた。
半世紀近く前のその日、槍ヶ岳山頂から初めて穂高を見たときに、私は山の虜になった。いつかここから前穂高岳まで通しで歩いてみたい、そう思っていた。結局、縦走は果たせなかったが、槍穂高連峰は私にとって原点であり、何物にも代えがたい存在なのである。
17時からの夕食後、はるか彼方の記憶を手繰り寄せ、心地よい眠りについた。
8月14日 縦走、下山
4時前に目覚め、予報どおり霧に包まれていることを知った。南岳山頂からのご来光は望めそうもないが、場合によっては今日の歩程は長丁場になる。昨日同様、4時半に出発した。3000メートルの稜線を槍ヶ岳目指して北上する。視界は閉ざされ風も強くなった。自然に足取りが速くなる。
天狗原下降点を通過して間もなく、大岩を巻くトラバース道にかかる。霧雨に濡れた足場に細心の注意を払い、何とか乗り切った。
雨脚が強くなり、雨具を取り出そうと立ち止まったその先に雷鳥の親子がいた。親鳥はペンキマークの上で動かず、その下をひな鳥3羽がひょこひょこ歩いていた。その可愛さは、天候の悪さを帳消しにしてくれた。
中岳への登りは、予想よりもはるかに手ごわかったが、7時過ぎには山頂に到達した。10分あまりの休憩の間に、槍ヶ岳への登頂を断念し、早い時間に槍平小屋に向かうことを決めた。台風による天候悪化が明らかな今、迷いは全く無かった。
山頂直下の2連はしごを下り、大喰岳に進む。今山行の最高点となった場所でここまでの無事を感謝し、下山を開始した。飛騨乗越で西進に転じ、つづら折りに下ってゆく。出発から3時間が経過していたが、疲労は感じていなかった。
やがて雨は上がり、眼前に虹が現れた。抜戸岳を背景にくっきりと浮かび上がっている。雷鳥、虹との出会いは悪天候によるもの、稜線からの眺望は得られなかったが、それに見合う幸運に恵まれた。
そこから槍平までの1時間半は短く感じられた。予定どおり槍平小屋に泊まり、翌日ゆっくりと新穂高を目指すのか、このまま一気に下山し、平湯温泉に宿泊、翌日予定どおりのバスで帰るのか、悩んでいたせいかもしれない。
結局、槍平小屋での40分の休憩後、今日中に下山し、沢の増水による停滞を回避することにした。問題は、すでに5時間あまり歩いていること。さらに3時間半を歩く自信が無かった。気力で歩き続けるしかない。意を決し小屋を出発した。
計画では、滝谷出合から雄滝近くまで入り、岩壁をより近くで望むことにしていた。今はそれどころではない。友との対話はいずれまた企図すればよい。橋を渡った。
白出沢分岐からは林道が始まる。疲労困憊の体には、林道歩きの方が助かる。惰性で無心で歩を進めた。穂高平小屋は、残り1時間の位置に建つ。氷の文字に釣られ、かき氷をいただいた。正解だった。ゴールまでの最後の力を得た。
新穂高温泉駅に着いたとき、標高差2000メートル、歩程24キロメートルに相応しい疲れは感じられなかった。1時間後の楽しみに思いが及んでいたからかもしれない。3泊目は期せずして後泊となったが、山旅の醍醐味が凝縮された4日間になるだろう。原点への旅は、始まりの旅になった。
天気が崩れなければ、お付き合い登山で大喰岳〜南岳をまた近々歩く機会がありそうなのですが、残念ながら天狗原は企画すらありません。kimichin2さんのレコをお気に入りにさせていただいて、いつか実現するその時まで温めておこうと思っております。いつもステキなレコをありがとうございます😊
こんにちは。
あのエリアでハルボーさんの行ってない場所があるのですね。
雪解けに気をつけてぜひ訪れてみてください。
コース取りに最後まで悩んだ山行でしたが、様々な出会いがあって結果的に良かったと思ってます。
ハルボーさん、これからも気をつけて。楽しいレコを待ってます。
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