羅臼岳〜硫黄山(ヒグマ達と登る知床連山縦走)
- GPS
- 15:51
- 距離
- 22.3km
- 登り
- 2,402m
- 下り
- 2,385m
コースタイム
- 山行
- 8:01
- 休憩
- 0:54
- 合計
- 8:55
天候 | 晴時々曇 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
タクシー 自家用車
新噴火口で電話して下山時刻を伝える。ここから下山まで約1時間。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
⚫︎木下小屋→羅臼岳〜羅臼平までは樹林帯から始まり徐々に岩場になっていく。羅臼岳までの登山道は整備されており危険箇所はない。 ⚫︎羅臼岳→二ツ池〜羅臼岳を越えると登山道は一気に歩き難くなる。背丈を超えるハイマツを掻き分けながらアップダウンを繰り返す。登山道は意外と明瞭で道迷いのおそれは少ない。 ⚫︎二ツ池→硫黄山〜硫黄山直近までは強烈なハイマツの攻撃に苦しめられる。知円別岳から硫黄山までの「中の廊下」と言われる稜線は白い砂のヤセ尾根で非常に滑りやすく危険。山行時は渡るのを躊躇するほどの強風で生きた心地がしなかった。強風時は要注意。 ⚫︎硫黄山→硫黄山登山口〜枯れた川が登山道になっている。数箇所落差のある滝跡を下る必要があるが巻道がある。最後までハイマツには苦しめられる。 全体を通してヒグマには要注意。今回の山行で9頭のヒグマに遭遇した。事前に対応要領を学習して遭遇しても落ち着いて対応することが重要と感じた。 |
その他周辺情報 | 木下小屋は、素泊りのみ(2500円)。食事なし、要寝袋持参。露天風呂あり。 日帰り温泉は、知床秘境の宿「地の涯」(1000円)。 |
写真
感想
北海道遠征1発目は羅臼岳〜硫黄山の知床連山縦走。
4年前の冬、一人で弾丸網走旅行をした時に知床ビジターセンターから眺めた知床連山。
いつか縦走したいと思い続けてやっと実行する機会を作った。
百名山を踏破するなら羅臼岳ピストンでも良いのだけど、やっぱりあの日見た知床の山々を全部歩きたい。それもテン泊で。
そのために念入りにコースの下調べをし、熊に遭遇した時の対処法もイメトレするとともに、テン泊装備を背負ってのハードな山行に耐えられるよう、自分なりに登りつけておいた。
それでもネックだったのが知床の手付かずの自然に生息するヒグマ。知床は世界一のヒグマの生息地で10平方キロメートルに27~8頭いるという。
岩尾別温泉の木下小屋に前泊して熊スプレーをレンタルし、羅臼岳〜二ツ池幕営地でテン泊〜硫黄山〜カムイワッカに下山するルートを取ることにする。
木下小屋で熊スプレーをレンタルしようとし、私たちはてっきり1人一本持つものかと思っていたら、小屋のオヤジが「あなたは熊スプレーを使う人じゃない」と言って、masaさんには渡したのに私にはレンタルさせてくれない。
(!??)と思ったがこれにはワケがあり、知床のヒグマもやたらめったら人を襲う訳ではなく、対処法を間違えなければ熊スプレーを使うようなことにはならない、現にオヤジが小屋番を始めて7〜8年で使った例はないという。
じゃあいざとなったらお任せしましょうということで、私はオヤジのレクチャーを聞くのみ。事前に調べていた内容とほぼ同じですんなりと飲み込めた。
面白かったのが、熊スプレーをホルスターから取り出し、安全バーを外す練習をするmasaさんを見たオヤジが、しきりと「ねぇ自衛隊?本当に自衛隊?」と聞いてきたこと。(いや違うんですけどね笑)
銃を操作する動作と共通するそうだ。
今回の私たちのヒグマ対策装備は熊スプレー1本、熊鈴とホイッスル各自、携帯ラジオである。
水は私は2.5L+弥三吉水で1Lを担ぎ上げた。足りなそうであれば二ツ池で取水することも視野に入れて浄水器も携帯した。
翌朝5:30に木下小屋を出発。まずは羅臼岳を目指す。標高230mの小屋から1661mの山頂まで結構登る。
始めは天気が良かったのに、どんどんガスってきて、羅臼平に到着した時には「羅臼はどこ?」状態でミストが服にまとわりつく。
羅臼平にザックをデポして身軽になって山頂に到着!ガスガス強風だけど北海道百名山一座目をゲット。
ここまでで熊を目撃したという人は何人かいたけど、私たちはまだ出遭っていなかった。
羅臼平でザックを回収し、いよいよ縦走路に取りつこうと準備をしていると、パァッとこれから進む道のガスが取れて青空が広がる。ガスがかかっているのは羅臼岳だけ…笑
と同時に、進行方向上の方を移動する黒い塊も見えた。ここから先はあまり人が歩かない、本当のヒグマの生息地なんだと気を引き締める。
縦走路に入ると早速始まるハイマツの攻撃。背丈大のハイマツを手で押しのけつつ、足元に多数横たわる幹&根を越えながら歩かなければならず、ものすごく歩きづらい。何だかよく分からないハイマツにこびりついている小虫が全部我が身に降りかかる。
本日のテン場までは、三ツ峰、サシルイ岳、オッカバケ岳のピークを超えるアップダウンを繰り返す。
三ツ峰のピークを超えるとこれから歩く素晴らしい縦走路が眼前に広がる。緑一面、すごいの一言。
感動しているのも束の間、三ツ峰を下る進行方向右手の岩の上にでっかいヒグマが…!
その距離およそ50m、日向ぼっこをしていたようだ。
こちらを認識した後くるりと後ろを向いて近づいてくる様子もなかったので、刺激させずに横を通り、三ツ峰を後にする。
下ったところにある三ツ峰のキャンプ地は、今回の幕営の候補地ではあったが、2日目の行程が長くなること、たった今近くで羆を見たこともあって、予定通り先に進む。
まだまだ続くハイマツの嵐。サシルイ岳の上りはほとんど見通しのきかないハイマツの道で、定期的にホイッスルを吹き、ラジオをガンガン鳴らし、時に優しく語りかけながら通過した。この上りはキツかったが、見渡せる景色は絶景。オホーツク海と歩いてきた稜線、そしてこれから歩く稜線が一望できる。
サシルイ岳を下ったミクリ池で一休み。もう結構歩いてきたが、本日の宿泊地まではまだあとオッカバケ岳のピークを超えなければならない。目の前のオッカバケ岳を見やり、よっこらしょと最後のピークに取り付く。
オッカバケ岳のピークに登るとようやく二ツ池が見えて安堵。ここに一夜を明かすテントを張る。平日というのもあって今夜は我々2人のみ。心細いので一晩中ラジオをガンガン鳴らしながら寝た。18:30就寝(めっちゃ早い)。夜中風が強くてテントがバタバタ鳴るのに目覚めると、ラジオでオールナイトニッポンが流れていた。なんだかんだで朝まで熟睡。
2日目は4:00起床、テントをたたんで5時過ぎに出発。
まずは南岳のピークを目指すが、出発早々ハイマツの嵐。ホイッスルを吹き吹きピークを越える。
南岳を越えてしばらく歩くと硫黄山はもうすぐそこ。知円別岳分岐で迫力ある白い斜面を前に、ここまで順調順調と白い痩せ尾根を渡る準備をしていた。
ところが、痩せ尾根に出た途端、強烈に吹き付ける風にビビる私たち。何この風の強さ!立っていられないくらいの風が断続的に吹いてきて弱まるときがない。右も左もザレた急斜面。重心低めで一気に行こう。
飛ばされないようにしながら何とか稜線を渡り切り、ついに硫黄山を目の前に捉える。
硫黄山へはザックをデポして10分ほどで着く(食べ物だけはアタックザックに入れて持ち歩く)。ここで左に日向ぼっこをしている親子グマ2頭(50mくらい)、右に移動中の親子グマ3頭(100m以上)を目撃。母熊の後をぴったりくっついて歩く子グマが愛らしい。
硫黄山に登ると待ってましたの大絶景。羅臼岳からここまでの歩いてきた稜線が一望。深い緑と青い海と空のコントラストは言葉にできないくらいの美しさ。
更に北には知床岳とオホーツク海、国後島も見えて、日本最果ての自然にいることを感じさせられる。
硫黄山を下ってザックを回収し、硫黄沢を下ること1時間弱。ここは狭い沢の窪みを歩くため、両側の茂みからクマが出てきやしないかと、終始緊張感を持って通過した。
案の定、序盤で1頭、道中真ん中に1頭遭遇し、いずれもこちらに関心がなく茂みに入っていくのを確認するまで辛抱強く待った。
「通るだけよ〜通らせてね〜水浴びの邪魔してごめんね〜」と話しかけて心を通じ合わせられた瞬間である。
幸い、私たちはそんなに長時間待つことはなかったが、引き返せない一本道を塞がれたらどうしようもなくなってしまうだろう。
そんなこんなで硫黄山登山口に辿り着いた時には、無事に帰って来られた安堵と念願だった知床連山をテン泊縦走できた喜びで達成感に満ち満ちた。
カムイワッカ湯の滝の駐車場で予約していたタクシーに乗り込み木下小屋へ。
木下小屋のオヤジに熊スプレーを返却して熊の目撃情報を報告。50mなら遭ったうちに入らんと言われたが、9頭目撃したと言ったら、縦走中に9頭は遭ったうちに入るとのこと。事前レクチャーのお陰様で無事対処することができました。
入山者を見守り見極める良いオヤジだった。
北海道遠征、出だしからハードなスタートだったけどお天気ももってくれ、無事念願だった縦走をやり遂げることができて良かった。
大自然のパワーを胸一杯に吸い込んで生きる活力を得た気がする。
一泊2日だとは思えないくらい密度の濃い山行、お疲れ様でした!
翌日は斜里岳へレッツゴー⛰️
北海道遠征1座目は、羅臼岳から硫黄山までの知床連山縦走。
遠征最大の目的であり、メインディッシュですが、様々な不安を抱きながらのスタートでした。
早朝出発のため、木下小屋に前泊。女満別空港でレンタカーを借り、木下小屋の駐車場に車を駐車しました。木下小屋の駐車場は、5台程度しか駐車スペースがなく小屋専用です。車中泊しようとしていた登山者が小屋のオヤジさんに追い出されてました。一般登山者は地の涯駐車場の未舗装の部分に駐車するようです。
前泊した木下小屋は、寝具なし、食事なしの素泊り小屋で要寝袋持参。でも味のある露天風呂があり入浴できます。小屋のオヤジさんは、最初は取っ付きにくそうなオヤジですが、打ち解けると世話好きで、優しいオヤジさんです。
登山道の状況は、コース状況に書いたので参考にしてください。ここでは、山行で特に感じたことを書いていきます。
まず、不安の1つでもある水場の問題。長いコース上で煮沸せず飲める水場はありません。ただ木下小屋のオヤジさん情報で弥三吉水は、現時点では煮沸せず飲めるとのこと。私達は美味しく飲みましたが、もちろん自己責任です。銀冷水と二ツ池の水は枯れていませんでしたが滞留した感じの水で煮沸しても飲む気はしませんでした。私は水場はないことを前提に5リットルを背負っていきましたが、水の判断は本当に難しいです。
登山道は、羅臼平から三ツ峰方面の登山道に入ると急に悪くなりますが、道に迷う箇所はほとんどなかった印象です。とにかく行く手を阻むのがハイマツ。背丈を越えるハイマツが登山道を塞ぎ、ハイマツ漕ぎをしながら進む箇所がほとんどです。足場も悪くいつも以上に体力を消費しました。
今回の山行で最も生命の危険を感じたのが、知円別岳の硫黄山を繋ぐ「中の廊下」。白い砂礫地で両端が切り落ちているヤセ尾根が約30m続きます。ヤセ尾根の幅は50cmほどで通常であれば怖いくらいで済むルートです。しかしこの日はオホーツク海からものすごい強風が吹きつけ、ヤセ尾根を渡る私達に容赦なく襲いかかり、気を許せば飛ばされる勢い。トレッキングポールを地面に刺し、足を踏ん張り風に耐えながら進む。本当に生きた心地がしませんでした。おそらく地形的に風が強い場所なので、渡る際は風の状況に十分注意が必要です。
そしてやはりヒグマは最大の不安要素。ヒグマの棲息密度世界一と言われる知床の大自然の中で、テン泊縦走…やっぱり怖いです。でも1回遭遇するかしないかくらいだろうと高を括っていましたが…縦走中遭遇したヒグマの数、なんと9頭。正直びっくりです。こんな場所でテント泊するなんて自分でもバカだなと思います笑
ただヒグマ対策について事前学習と木下小屋のオヤジさんの指導もあり、過度に慌てることなく落ち着いて対処できたと思います。お守りとして木下小屋で熊スプレーを借りましたが、使う機会はゼロでした。常に笛とラジオで自分の存在を示して、突発的な遭遇を防いだこと、遭遇しても慌てず落ち着いてヒグマを驚かせないことを心掛けたのが良かったと思います。
でもやっぱりヒグマ、怖かった…
書きたいことが山ほどありすぎて困るくらい、濃い内容の山行でした。感想を書けと言われれば、原稿用紙10枚は書く自信があります笑。ヒグマの恐怖、エスケープできない長い行程、水場の心配等々…様々な不安もありましたが、それを凌駕する素晴らしい景色、自然、経験、文句なしに最高の山行でした!最後はスタミナ切れで精も根も尽きましたが、本当に来てよかった!すごい経験ができた!と言えるコースです。
緊張感、景色、様々な経験、私にとって間違いなく過去1番の山行となりました。
この計画に誘ってくれたYaneoさん、本当にありがとう!
コメント
この記録に関連する登山ルート
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先日、私も羅臼岳登頂してきました
羅臼岳から見る硫黄岳方面の景色はとても魅力的だった
そこを歩かれたなんて!!羨ましすぎる
それにしても、クマ9匹はちとビビる
ご無事で何よりです
詳細な山行記録、行った気になりました
レコアップありがとうございます😊
いつか私も…
車中泊の旅で登られてたんですね!
山頂からの景色は見えずとも、三ツ峰越しに硫黄山方面が見えて素晴らしい眺めだったでしょうね。
我々も羅臼からの稜線が見たかった😂
クマは数こそ多けれ、いずれも離れていたので良かったです。音や声を出しながらの歩行でだいぶ予防になったかな…
いつかぜひ行かれてみてください!
このコースは、本当に素晴らしいコースでした!アルプスも私は大好きですし、素晴らしいですが、このコースは少しジャンルが違う感じ、登山というより探検とか冒険だなーなんて考えながら歩いていました。これだけ長いコースですが、とにかく人も人の気配も全くありませでした。
最後の最後に樹林帯で登ってきた登山者とすれ違い、熊かと思って心臓が止まりそうになりましたが笑
いつかぜひ行ってみてください!
羅臼岳の頂上からの景色は見えなかったようですが、硫黄山からは羅臼岳から硫黄山までの山々が
一望でき、素晴らしいものでしたね!
北海道の山々は本当に荒々しく、雄大で素晴らしく、道中の細かな様子もあり、私も行った状況を
感じることができました。
ヒグマにも9頭も遭い、何事もなく下山でき、本当に充実した山旅のレコを読まさせて頂きました。
雄阿寒と斜里岳の山行も、楽しく見させて頂きました!
しんさんの言うとおり、北海道の山々は荒々しく雄大という表現がぴったりで、私にとっては感動の連続でした。もちろん終始ヒグマの恐怖と戦いながらでしたが…😅
レコも褒めていただきありがとうございます!それくらい濃厚で刺激的で痺れる北海道遠征でした。私はまだまだ経験の浅い山好きですが、本当に素晴らしい経験をさせてもらいました。まだ余韻に浸っています笑
北海道の山にぜひまた行きたいと思います!
初めての北海道登山でドキドキしたんですけど、本州とはまた違ったハイマツ、生き物との出会いがあって忘れられない山行となりました。
歩いてきた稜線が一望できた硫黄山の山頂の景色は格別です。
いつか実行したいと思い続けた計画が実現できると嬉しいものですね☺️
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