日光白根山 東稜 雪山要素たっぷりの好ルート
- GPS
- 10:49
- 距離
- 12.9km
- 登り
- 1,473m
- 下り
- 1,468m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
アプローチと下山は一般ルートですが、東稜はバリエーションルートとなります。取り付き部分と大岩の核心部は北側から巻くことが出来ますが、無積雪期に比べて雪崩や踏み抜きによる危険性が高くなっています。また、巻かない場合は供銑卦蘢度の登攀になります。日帰りの場合はアプローチが長く、それなりの体力が必要です。東稜取り付き斜面に雪崩の可能性があります。大岩の登攀は初心者には確保が有った方が良いと思います。 |
写真
感想
日光白根山東稜はマイナーなバリエーションルートで、無積雪期は何回か登っていますが、昨シーズンの積雪期は天候に恵まれずにチャンスが無く、その前のシーズンは取り付きまでのラッセルで時間切れで敗退と、数年越しでのチャレンジとなっていました。
21日は移動性高気圧で絶好のチャンス。アプローチが長い為、時間的にじっくり登るためには1泊での行動としたいところですが、残念ながら22日は天気が下り坂の予報。好天の山頂に立ちたいという思いから、キツいですが日帰りとしました。
湯元温泉駐車場に駐車します。駐車場は広くてトイレもあります。暗い内から行動しようと思っていましたが、仕事の疲れも有って眠かったので、車で仮眠したら夜明けになってしまいました。
準備をしたら日光湯元スキー場へ向かいます。登山口はスキー場の上端に有るので、そこまでスキー場内のゲレンデを歩きます。ゲレンデは圧雪されていて快適に歩けます。歩きながら見上げる空は雲ひとつ無い青空で、素晴らしい山行の予感に心が弾みます。
スキー場の端っこに到着。今日は先行者がいるらしく、雪面にトレースが付いています。試しにツボ足でトレースを辿ってみたらズボッ。素直に少し戻ってスノーシューを装着します。ここから外山のコルへ向かい。樹林の急登となります。
樹林の急登は概ね深めの雪に覆われていますが、部分的に雪が薄くなるところも有ります。雪が薄い部分のグリップはともかく、雪の付いた急斜面ではスノーシューで踏み込んだ雪ごと足元が崩れる事があります。スノーシューを導入して今年で2シーズン目ですが、思っていた程グリップしない物だなぁ等と思いつつ黙々と高度を稼ぎます。
樹林帯の登りに飽きてきた頃、外山コルに到着します。ここまで登って来たご褒美に気持ち良く視界が開けます。ここからのルートは尾根上を前白根山へと向かいます。森林限界付近で木が疎らになる尾根上は雪も深く、先行者のトレースが有りがたく感じます。今日は風も無く日差しを背中に浴びながらの登りは暑いくらいです。
前白根山が近づくと、その向こうには青空をバックに白銀の奥白根山が浮かび上がり、雪の付いた東稜もその全体像を目にすることが出来ます。「さあ、今日は登らせてくれよ」と心の中で呟きます。
前白根山付近は、雪が飛ばされて地面が露出しています。スノーシューで石をガッツリ踏むと痛みそうなので平坦な所を選んで歩きます。ワカンも持っていますが、外山コルへの登りで雪の無い部分や、こういう場所では下に出た爪が変形しやすく、帰宅後バイスで挟んで修理していました。スノーシューはそういう事を気にせず歩ける所が良いですね。
前白根山からは五色沼の避難小屋へ向かって降りとなります。避難小屋の扉は雪に埋もれてしまっていて、上に設けられた窓が冬期出入り口となっています。
避難小屋の前で行動食を齧り小休止。ここからはトレースを外れて東稜の取り付きへ向かいます。トレースの無い雪面のラッセルになりますが、スノーシューのお陰で快適に歩くことが出来ます。以前ワカンで取り付までラッセルした時はかなり苦労させられましたが、今回は良い感じです。
東稜の取り付きは雪崩のデブリが見えます。デブリから離れた位置でワカン+ストックからアイゼン、アックス、メットにハーネスの登攀装備に変更し、ガチャ類を身に付けます。
準備が出来たら、いよいよ東稜の登攀です。取り付きの壁ですが、左右中央で3つのルートがあり、いずれも無積雪期に登った経験が有ります。右がもっとも容易で普通に歩いて登ることが出来、降る場合もここを使います。中央と左が易しいながらも登攀要素を楽しめます。中央は2段になっており、左に比べるとスタート地点が高い為短いですが、藪がウザめで登攀の気持ち良さは左に劣ります。左は高度感もそれなりに有り、気持ちの良いクライミングが楽しめます。
今回は左側、左壁を登ることにします。左壁は見て判る通りに雪崩が怖い斜度で、冬期東稜ではここの通過が一番のリスクになると思います。日当たり良好なので降雪後数日経てば締まってくれますが、逆に降雪直後はクラストした雪面に新雪が乗った状態になり表層雪崩の危険性が高まります。今日は降雪後ではありますが、陽光に暖められた重みで新雪があらかた落ちていたのでラッキーでした。
とは言っても、怖いことには変わりが無いので雪面に顔を出した岩を繋ぐようなラインを取りました。このラインは無積雪期の時よりもやや中央側に寄ったルートとなります。ちなみに無積雪期の左壁は草付を登る感じになります。
壁のコンディションは一定ではなく、陽光で腐った雪をアッズで掘ってホールドを求めたり、凍った部分にアックスを決めたり、岩へのフッキングや顔を出した草付きが意外とアックスが掛からなかったりと、変化に富んだ登攀が楽しめます。眼下には取り付きに自分のトレースと雪崩のデブリ。雪山気分が盛り上がります。
左壁をクリアすると、山頂北側の北峰へと続く東稜を見上げることができます。この尾根の続く感じが気持ちよくて登攀意欲が刺激されます。
ここからトンガリ岩までの東稜の稜線上は、雪が飛ばされて地面が露出している部分が多く、アイゼンの歩行に注意が必要です。この辺りは無積雪期はザレた急登で登りにくい所ですが、冬期は凍ってコンクリートされて安定しています。また、一部で吹き溜まりが雪庇状に盛り上がったところもあり、ここを登る時は胸まである雪を掻き落としてよじ登ります。
トンガリ岩を過ぎるとナイフリッジの通過が有ります。無積雪期は結構キレていた印象だったのですが、今日は積雪のため埋もれており普通に歩けます。リッジ上の雪面にはブッシュがチラチラと顔を出していますが、ブッシュが見えていない所に足を置くと、そこは地面が無い様子で腿まで踏み抜きます。なるべくブッシュが見えている所を辿ります。
ナイフリッジの先には核心の大岩がドーンと鎮座しています。大岩基部から右へ巻くことが出来て、ここが一番容易です。降る場合も右を使います。大岩を登る場合は左の凹角状が登りやすいです。
大岩左の取り付きは雪でスタート地点が若干上がっています。そこから上には雪が付いておらずドライツーリングになります。アイゼンの前爪でスタンスを捉え、アックスのフッキングやクラックへのトルキングを効かせて身体をずり上げて行きます。無積雪期は何回か登っていますが、冬装備のフリーはやはり緊張します。
大岩をクリアしたら気持ちのよい溶岩のリッジを登り北峰へと至ります。北峰から一旦降りて白根山頂です。
山頂は360度の大展望。2月なのでまだ厳冬期の筈ですが、今日の穏やかさはまるで残雪期の様です。5日前に八ヶ岳阿弥陀北稜で12時間行動をして、その疲れが残っていてバテバテだったので大休止とします。風も無くポカポカ陽気の中頂くコーヒー。時間的には遅めの登頂なので誰も居ない静かな山頂…良い。良過ぎてこのままだと降りたくなくなってしまいそうなので下山にかかります。
下山は一般ルートを使います。今日は結構登山者がいた様子でトレースばっちりです。下山の途中で、宿泊予定のパーティ何組かとすれ違いました。また、前白根山と外山の稜線上ではテン泊のパーティも居ました。
ギリギリ明るい内に湯元スキー場に降りてきました。ゲレンデを通過し湯元温泉駐車場へ。観光客で賑わう中、アイゼンに登攀装備をガチャガチャ言わせ、両手にアックスをぶら下げて歩く姿は完全アウェイでした。
日光白根山東稜はアプローチからたっぷり雪山を楽しめ、ルートの状態も雪稜からミックス、ドライツーリングと様々な要素が楽しめる好ルートだと思います。東稜左壁取り付き部の雪崩は致命的な結果になるので、アタック前から数日間天候を観察する必要が有ると思います。登攀に関して技術的には供銑卦蘢度ですが、雪の付き方によっては思ったよりも困難になるかもしれません。今回は日帰り行程の為バテバテで辛かったので、もしチャンスがあれば1泊で余裕を持って楽しみたいです。
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