「二段ルンゼ」聞いてないよ〜表妙義にノックアウト寸前‼️


- GPS
- 07:41
- 距離
- 10.0km
- 登り
- 1,253m
- 下り
- 1,246m
コースタイム
- 山行
- 5:30
- 休憩
- 1:57
- 合計
- 7:27
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
結婚記念日だった。
梅雨が恐ろしく早く開け、この土日の天気もまずまずだ。三股に自転車をデポし、しゃくなげ荘近くの登山者用無料駐車場に車を止め、そこからバスで中房温泉を目指す。燕岳、大天井岳、常念岳、蝶ヶ岳と縦走し、三俣駐車場に下山する。そこからデポした自転車で、車に戻る。妄想は膨らんだ。
結婚記念日だった。
テン泊は難しそうだ。
取り敢えず、地元の有名な和食屋さんを押さえた。妻は一日一食らしく、午後7時の提案は却下され、午後6時の指令が下った。ハードルが上がる。一登り終えて、自宅に遅くとも5時には帰って来ないといけない。燕岳とは言わないものの、ちょっとアクセントが効いた山行はないのか?一思案して思いついたのが、岩トレだった。渋滞次第では時間がギリギリになってしまうが、前々から行きたかった表妙義の縦走だ。そろそろ「鷹戻し」を味わわねばならない。うっとりパノラマ銀座テン泊縦走の妄想が、ゴリゴリ苦行の現実に変わる。
最近アマゾンは、どんどん配達が早くなっている気がする。大体、朝の通勤電車の中でポチれば、仕事を終えて帰宅すると届いている。全く知らなかったが、妙義山は丹沢と同じく「山ビル」が出るらしい。「ヒル下がりのジョニー」は効かないという情報を得ていたので、ディート100%の人体に影響のありそうな「ヤマビルファイター」を通勤電車でポチる。また、妙義山が載っている山と高原地図の在庫がリアル書店ではなかったので、これもカートに入れた。最近、リアル書店がドンドン少なくなるのはこういう行為の繰り返しのせいか。
いつもの如くYAMAPでレコ漁りはある程度こなしていたが、意外に、富岡市が出している楽し気な「妙義山登山マップ」が分かりやすい。表妙義縦走の基本は、「大の字、奥の院、大のぞき、そして鷹戻し」と勝手に決めつけていた。予習不足とは恐ろしい。鷹戻しがどれくらいビビるのかを味わうのがメインだと思っていた。完全に間違いだった。
今日は絶対に午後5時には自宅に戻らないといけないので、午前5時にはスタートしたかった。自宅から道の駅みょうぎまでは、2時間だ。帰りは渋滞で2倍の4時間かかるという想定で、山行を終え午後1時には駐車場に戻る必要がある。スタートから8時間の計算になる。表妙義縦走の難易度によるが、ちょうどコースタイムで行けば達成可能だった。
妙義山は駐車場が近くに複数あってわかりにくい。基本は道の駅「みょうぎ」に向かうが、その駐車場は「登山者用」ではないらしい。帰りに徒歩でキョロキョロしてみると、おそらく、道の駅の駐車場は市営駐車場第一で、登山者用が市営駐車場第二のようだ。またそれとは別に、妙義神社の有料(1日100円)駐車場もある。今回、ナビは道の駅「みょうぎ」で設定し、そこにいったん駐車した。しかし、やはり「登山者は登山者専用駐車場へ」と看板が立っていたので、そこに行こうとするも、方向音痴で地図が読み取れない。だったら、「もう妙義神社の有料駐車場行くか」とそちらに向かった。この妙義神社の有料駐車場はGoogleで目的地として選択可能だったからだ。そこには先行車が2台止まっていた。あまり一台分の仕切りがはっきりしないので、贅沢目に間隔をあけて駐車した。100円は駐車場の入り口にあるポストに入れるシステムだ。100円だからみんな入れそうだが、小銭がないと困ってしまう。僕はたまたま100円が財布に入っていた。
今回も、バランスライト20をチョイスした。今日は猛烈な暑さで、時間もタイトなので目的を岩トレ一本に絞った。なので、ザックはできるだけ軽くて小さいものにしたかった。ハイドレーションの準備をてきぱきとし、午前5時に駐車場をスタートした。まずは、すぐ目の前の妙義神社に入っていく。登山口までは、不安になりながらも、出てくる階段を行き止まりになるまで登り尽くす。すると、立派な社殿が出てきて、そこを右に曲がる。すると、「大の字・白雲山頂コース」の登山口が出てくる。
登山道は、いきなりものすごい急登で始まる。全体的に狭い山なのであまりアプローチを取れないせいだろうか。基本的に登山道はものすごく道が分かりやすい。これでもかというほど、矢印と次のチェックポイントの名前が出てくる。序盤は「大の字」と書かれた矢印がしつこいくらいに岩に書かれてあった。もっとルーファイするようなイメージを漠然と持っていたので拍子抜けした。
大の字の取付きがある稜線に乗るのに、本日最初の鎖付きリアル岩壁が現れた。少し登ったところの平らなスペースで、ストックをしまう。バランスライト20はピッケルホルダーがついているのだが、ストックを留めるには安定度があまりない。また、これは自分の過失だが、終盤、枝にストックが引っ掛かった時に、精神的に限界寸前で、強引に前進した。するとしばらくして、ストックが背中でぶらんぶらんしているのに気付いた。ザックをおろして見てみると、ザックに縫い付けられていたピッケルストラップが引きちぎれていた。「さっき、強引に行ったときに、やってもうたんか…」。これも、アルパインパックのグレードでは起きない気がする。何とか鎖30%使用くらいで登りきり、稜線に立った。鬱蒼としていて眺望はない。目の前に、大の字(左)の辻(右)のデカイ看板があった。縦走路は右だが、大の字は少し左に外れ、さらに岩壁を登った上にある。表妙義縦走路の全てに共通しているが、かなりしっかりとした鎖がついていた。その鎖を全信頼すれば、子供のアスレチックのように、どこも問題なく登れる。しかし、通常の岩場では岩のホールドがあれば、それを掴んでしっかり三点支持した方が、鎖を掴むよりもむしろ安定感が高いので僕は好きだ。しかし、表妙義はあまり岩に自然なホールドがないように感じた。人工的に付けられた岩の窪みは多数あるが、手で掴めるようなとっかかりが少ない。なので、僕は木の根っこを多用した。この大の字への岩登りについても同じで、いつもの癖で鎖を全信頼しなかったせいで、一瞬ヒヤリとし、しばらく足が震えていた。表妙義は怖さはかなりあったが、北アルプスなどの自然な岩場のトレーニングにはならない気がした。どちらかと言うとスポーツクライミングに近いのかもしれない。大の字からは、もちろん眺望がいい。大の字自体も近くで見るとなかなかの迫力だった。
下りはまだヒヤリが収まらない中、鎖100%で慎重に降り、辻への縦走路に戻った。次のターゲットの「奥の院」の道標が何度も出てくる。迷いようもないのだが、この「奥の院」が何なのかを分かっていなかったので(全く予習できていない…)、一瞬スルーしそうになった。縦走路が右に続く中、前方に階段が付けられた洞窟のような場所があった。その穴の中が奥の院のようだった。湿気が多そうで不気味だったが、せっかくなので梯子を登り中を見に行く。すると、仏像のようなものが複数体安置されていた。さらに不気味度が増したが、これからの安全を祈願し、罰当たりかなぁと思いながら、写真に撮らせてもらった。
縦走路に戻ると、いきなりの岩壁直登がある。ホールドがあまりなく、やはりしっかり鎖を使わざるを得ない。途中、右ひざを岩にぶつけ悶絶する。こういうところは北アルプス岩稜登りと同じだ。「つぎやったら、皿割れるな…」。最後は、ふらつき厳禁の鎖トラバースで登山道に復帰した。「ちょっと、これムズイな〜」。その後も、ビビリ岩や背ビレ岩などの少し足元がスースーする岩をお助け鎖を使いながら乗り越える。どちらもかなり高度感があり、特にビビり岩は少し登らないとその先が見えないので、少し不安感も出る。背ビレ岩の先も、「え〜、どこを行けと?」と目の前にそれなりの崖があり、鎖が付いている。「あ〜、これを行けと(苦笑)」。とにかく、終始、「鎖付けといたから、行けるよね?」という道が連続する。
ほどなく「大のぞき」に到着した。ここからは360度の眺望が望めるが、ハイライトはそこではない。ここから先どう行くかは、ぼ〜っとしていると分からない。地図を見ると、右に曲がるようだ。上から下を見ると、気の遠くなるような長さのものすごい崖に鎖がかかっていた。「なるほど…、これ行くのね」。実際鎖の始まり部分に立つと、「う〜ん…、これは鎖いりますな…」。今回はこういう心境の吐露が多くなる。嫌になるような長さの崖を慎重に降りていく。この少し前に、モンベルのやぎ革のトレッキンググローブをはめていたが、この手のグローブはあった方がいいだろう。下りきると、
「握力使うわ〜」というのが一番の感想だった。あまりリアル岩場では感じたことのない感想だった。
この大のぞきを越えた辺りから、道標のつけ方が変わったのか、一気にわかりにくくなる。それでも道標は随所に出てくるが、「どっちかなぁ〜」と悩む頻度が確実に増えた。その都度地図を見ては、先がまだまだ長いことに気付かされた。やはり危ない鎖場の連続のせいで思ったより進んでいないようだ。この時は、中之岳神社から先は地図上では長く見えるが、超短時間で歩けるというのを意識していなかった。「まだまだあるなぁ…。これ間に合うんか⁉️」と不安になってくる。しばらく歩くと、本日最初のピーク天狗岳に登頂した。眺望はない。少し盛り上がった鬱蒼と木が生い茂る岩の上が山頂だ。その岩に上がる手前に錆びた山頂標識があった(このレコを書くために復習していると、どうやら「天狗岳」と書かれているにも関わらずここは天狗岩で、その先が天狗岳だった。天狗岳山頂はすこぶる眺望が良かった。やはり、山と高原地図の説明冊子の読み込みが甘いと反省した)。この縦走路の特徴は、登山道の所々に少し外れて登れる岩々があり、そこに登ると高度感のある絶景が楽しめる。なかなかのチン寒むと西側の田園風景、北側には立派な浅間山を味わうことができる。さすがに、こんな猛暑にこんな苦行を行う物好きはいないようで、誰にも会わなかった。なので、そういう眺望ポイントに立っては、「ヤッホー!!」と50前のおっさんが童心に帰り大声で叫んだ。ちゃんとやまびこが返ってきた。
ここからはしばらく平和な登山道になる。次のピークは相馬岳でこれが表妙義の最高峰だ。しかし、今度は木の根っこで左の皿を強打する。猛烈に悶絶した。「もう、一つのミスも許されんぞ…」。また、KATさんのおっしゃる通り、虫が異常に多い。かなりの運動量なので、常に大量の空気を肺に取り込み続けていた。すると、たまに口元の虫を吸い込んでしまい、むせ込み吐き出した。相馬岳に着く前に、「相馬岳は表妙義最高峰だけに、立派な山頂標識あるでしょ!」と思っていたが、登頂するとまた錆びた地味な山頂標識のみだった。眺望はよく、これから向かう金洞山と茨尾根が綺麗に見えた。ここまでに、道標はかなり頻繁に出て来たが、よくわからずに混乱することがあった。相馬岳の手前ではずっと「相馬岳」と出ていたが、その前は白雲山と書かれていたり、金洞山と言いながら結局金洞山が出てこなかったことだ。これも復習をして理由が判明した。そもそも妙義山という山はないのと同じで、白雲山も金洞山も山域の名前だからだった。ざっくり言うと、天狗岳と相馬岳を合わせて白雲山、東岳と中之岳を合わせて金洞山だ。また、白雲山、金洞山と金鶏山(これは山単体のようだ)を合わせて「妙義山」と呼ぶ。ややこしい…。
相馬岳からは国民宿舎分岐に向けて下る。分岐からはまた激しい鎖の下りがあり、慎重に降りた。今回鎖ポイントが随所に現れるので、ストックの扱いがむずかしい。鎖がない急な登り下りは、ストックがあった方が安全だし疲れない。が、鎖が出てくると邪魔になってしまう。僕のストックはモンベルの最安ストックのアルパインポールなので、ツイストロックで伸び縮させるのが大変で面倒だった。また、今回はミニマムザックのバランスライト20なので、一時的にストックを保持するポールループがない。毎回面倒だがピッケルループとストラップで留めないといけなかった。「ぼつぼつええポールほしいな…」。
9時08分堀切(ホッキリ)に到着。ここからは中間道(ちゅうかんどう)へエスケープできそうだった。その後、女坂分岐までの間で軽く道迷いをする。しっかり「鷹戻し」と矢印があったのだが、その方向が微妙で、鎖のついた岩壁をスルーして、踏み跡があるように見えた下る道を行ってしまう。当然行き詰まり、元に戻り鎖で岩を上がった。この辺りから、もしかしたら鎖アレルギーが始まっていたのかもしれない。
9時30分頃、鷹戻しの前の展望ポイントの手前に、でかい注意看板が出て来た。曰く、「この先、鷹戻し付近は滑落死亡事故が多発しています。ザイル等の装備のない方は登山を自粛して下さい」。なるほど。しかし、あれだけ鎖あってさらにザイル出すんかな…。とりあえず、自粛せずに先を進む。ここから鷹戻しまでもそれなりにワイルドだった。適宜、道間違いを織り交ぜなら、鬱蒼とした細いトラバース道を行く。尾根に乗り上げ、そこの展望ポイントから前方に鷹戻しと思われる岩峰が見えた。そこからも虫を飲み込み吐き出しを適宜こなしながら、鬱蒼とした登山道を行く。鷹戻しのすぐ手前で、少しわかりにくいが左に折れて、それなりに激しい木の根っこ階段を登る。鎖付きの軽い絶壁(軽い絶壁ってあるか⁉️)を登り、アルミハシゴがかけられた長い崖を登った。
9時56分頃、厳つい岩壁の取付きに辿り着いた。例によって鎖はばっちりだ。振り返ると、壁の厳つさには似つかわしくないコミカルな鎖のイラスト付きの道標が足元にあった。「鷹戻し」だ。「遂にラスボス来たな!」と思ったがラストではなかったと後で思い知ることになる。鎖をしっかり持ちながら、できるだけ、よさげな足場に足を掛けながら登って行く。所々平な部分があるので、休憩や水分補給をしながら登って行く。やはり、こういうシチュエーションではハイドレーションはいい。最後はトラバース気味に登山道に復帰した。「鎖を離すな!」という注意看板が最後に出てくる。
「さぁー!やり切った!」と思いながら眺望のいいゆるい尾根道を久しぶりに歩く。「よっしゃーい‼️」と雄叫びを上げた。すぐに眺望のいい小ピークに到達した。恐らくここが「鷹戻しの頭」か。しかし、ここで「え⁉️これ、どう行くねん?」。下をのぞくとまあまあの断崖絶壁で、かつ鎖がない。「これ、下りろってか⁉️」。あまりに断崖絶壁をやりすぎて感覚が麻痺して、そこを行ってしまいそうになる。「いや、さすがにこれは無理でしょ」。YAMAPを取り出し、よく見ると少し手前で右に折れるような気がする。来た道を少し戻る。すると草木で隠されてわかりにくいが下に下りる登山道を発見した。下りたところに、ひっくり返った「金洞山」の道標も木にかかっていた。
さすがにかなり疲れてきていた。ひできちさんから「夏が終わってからのほうがいいのでは?」と山ビルと猛暑の観点からアドバイスしていただいていたが、実は岩トレ意外にもスタミナ作りの目的もあったので強行した。しかし、当たり前だが、思ったより酷暑は体力を奪うものだ。さらにこういう鎖の「がん使い」は初めての経験だったので、握力や上半身の筋肉を多用していたのもよくなかったのかもしれない。そんな中、10時13分頃、本当のラスボスが登場した。ピンクテープを越えてすぐの、ちょっとした小ピークをそのままに行くと道が消えた。リアル断崖絶壁だった。前方にはこれから行くであろう次なるピークが見える。「え〜、これどうすんねん…」。いったんピンクテープまで戻る。そのピンクテープの脇に、トラロープがあり、その奥の崖に鎖が付いていたのには気付いていた。しかし、トラロープがあるのでそこは立ち入り禁止だと思っていた。仕方がないので、一度トラロープをくぐる。下をのぞき込む。あまりに急すぎて下はあまり見えない。「これはないんちゃう…?そもそもトラロープしてるし…」。もう一度トラロープをくぐりピンクテープまで戻る。さらに、もう一回最初に間違って行った道を念のために進む。やはり行き詰る。「これはどう頑張っても無理やな…」。ピンクテープよりさらに下に下り、エスケープルートがあるかどうかを確認しにいったが、それらしい道は見当たらなかった。またトラロープの前に戻って来た。どうする…?時間のこともあり、もうこれ以上長考を続けるわけにもいかなかった。「これ、行くしかないやつやな。鎖ついてるし、最悪間違ってたら登り返そう…」。やはり、下りの崖は怖い。慎重に鎖をがん掴みし、足場を探しながら下りていく。このコースのレコ漁りをしていた時に、逆回り(時計回り)で行っている人がいた。彼曰く、「主要なキケンなルートが全部下りになるので、難易度が上がります」。確かにその通りだった。慎重に降り続けると、いったんテラスのような場所が出てくる。しかし、下を見ると、また同じくらいのやばさの崖が続いていた。「マジで…。まだあんの⁉️」。いったん水を飲んで少し休む。何とか2段目の崖を下りきると、そこに、鷹戻しと同じくコミカルな鎖のイラストが入った「二段ルンゼ」の道標があった。「二段ルンゼ?聞いてないよ〜😣まあ、ちゃんとしたルートでよかった…」。しかし、この降りで僕の精神力はかなり枯渇してしまった。
メンタルがやられると、体力も尽きる。ここから東岳までが地獄だった。しばらく行くと、分岐になり、珍しく鎖のついていない方を行く。ここから東岳までは100メートルも登らないのだが、かなり辛い。眺望も時々よくなるがあまり楽しめない。水もいつになく消費していた。ハイドレーションの欠点の、後どれだけ残っているのかが分からない、が気になったが、まさか2Lを消費することはないだろうと思って、どんどん飲んでいた。前にそびえる木が生えた岩峰を黙々と目指す。あれが東岳なんだろうか?そんな時、右足を狭い登山道で踏み外してしまった。「ずぼっ!」。血の気が引いた。幸い右には倒れこまなかったが、いつも、「なんでこんなところで滑落すんねん?」と思っていた場所で、自分が足を踏み外した。ショックだった。「やはり、おれ相当疲れとるな」。精神力を振り絞り、ゆっくりでもいいから確実に歩こうと心掛けた。もう、時間を気にするのはやめよう。無事に下山することだけに集中するんや!
10時40分頃、遂に東岳に登頂した。眺望がサイコーだった。鎖の付いたピークに立ち、小声の「よっしゃー」を何とか絞り出した。本当は絶叫するところだが、その元気すらなかった。しかし、前方にはキレットのような猛烈な下りを挟んで巨大な岩峰がそびえている。地図をよく見ていない僕は、それが次のピークの中之岳だと思い込んでいた。なので、東岳に登頂してもここから地獄が待っているという気がして素直に喜べない。ここからの道が少し不明瞭だが、ピークに鎖がついていたので、そこから行くんだろうと、鎖を持って下る。すると下に登山道が続いていた。そこからもまだ目に付く前方の岩峰を見つめながら、意を決して下りをスタートさせた。
まずはどんどん下る。鎖付きで、今の僕にはかなり長くエグイ下りだ。先程の半滑落以降、慎重さを最優先していた。こまめに休憩をいれ、ゆっくり行く。鎖場を過ぎてからも、嫌な下りは続く。その後、鎖付きの小岩峰を乗り越える。その岩峰の上には、面白い形のでかい岩が絶妙なバランスを保ちのっかっていた。有名なポイントだったかもだが、楽しむ余裕はない。ここからも同じような岩峰を乗り越え先を行く。景色のいい登山道だった。なので、気のせいかもだが、東岳を越えて幾分体力が回復しているように感じてきた。やはりメンタルは大切だ。前に、偽ピークがどんどん現れ始めた。あれが最後かと思いながら何度も乗り越える。そして10時56分頃、白い小さい祠のある山頂に到達した。この時は気付いていなかったが、ここが「中之岳」だった。しかし、僕はまだ前にしつこくそびえる谷を挟んだ岩峰が中之岳だと思い込んでいて、ここは単なる通過点だと思っていた。ここで吠えなかったのが痛恨の極みだった。
中之岳からは、また鎖で激しく下りる。かなりいやらしい下りだった。慎重に下り切り、狭い尾根を歩いていく。まだ目の間に岩峰はあり、「まだ先は長いなぁ」と思いながら歩いていた。途中で、でかい石を落石させてしまった。「ラーク?ラーク?」と声を振り絞った。ちなみにスタートからここまで誰ともすれ違っていない。またストックがブランブランしているのに気付いた。ザックをおろし見てみると、さっきストックが枝に引っかかったのを無理やり前進したときに、ザックに縫い付けられたピッケルストラップを引きちぎってしまっていた。「うわぁ!これどうしよう。しゃーないストック使うか…」とストックをループから外し、伸ばして使い始める。そのすぐ後だった。「下山道」という道標が出て来た。「下山??」。まだ前にでかい中之岳見えてたやん。急いでYAMAPを取り出した。「中之岳登頂しとる‼️あ〜、さっきの小さい祠がそうやったんか!」。一気に精神力が満タンになった。ここまでくれば、ほぼゴールしたのも同然なのは、途中から気づいていた。時刻は11時10分頃だった。ここからは得意なやっつけ仕事だった。順調に飛ばし、途中普通の車道を早歩きし、12時40分頃道の駅みょうぎに帰って来た。まずは、ペットボトルのお茶を買って一気に飲み干した。下山の途中、中之岳神社を越えてしばらくした辺りで、2Lの水を飲み切っていた。
妙義神社の駐車場はここから5分ほど歩いた場所だ。やはり、帰りのことを考えると、車を止める場所は道の駅のほうがいいかもしれない。妙義神社の有料駐車場の手前には、ご当地の店が両脇に並んでいて、ちょっとした観光街のようになっている。そこにジェラートを売っている店があった。販売所に誰もいなかったので、大声で、「ジェラートやってますか⁉️」と叫ぶと、後ろから「やってます!」と声がした。道端で話していたおばちゃんが店の人だったようだ。そのおばちゃんは友達のおばちゃんとの会話を切り上げ、狭い店舗に入っていき、ジェラートを持ってきてくれた。店先の畳の台に座ってゆっくり食す。おばちゃんは話好きなようで、僕が食べている間ずっと横にいて雑談した。縦走したという話をし、「速いですね?」と言われたので、「朝5時にスタートしたんです」と説明した。その後も雑談の終えどころを気にしながら話していると、「それにしても速いんじゃないですか?」と言われたので、ためらいながら「実は、今日結婚記念日なんです。で、早く帰らないといけないので、少し急ぎました😅」。キラー文句で、雑談を急転直下で終了させ、家路を急いだ。
危ないと聞いていたので、ヤマビル対策したおかげか、当日は被害なしでした🎵
妙義山の山です。只、バリエーションですがピンテは有るので進行方向、周りを良く落ち着いて見れば大丈夫です。岩男君なら良い山ですがそうでなければ止めた方が良いです。
隣の筆頭岩は40歎垂も有りますので良いですよ(笑)
只、エスケープ出来るのでわざわざ登って懸垂しなくても横を通るだけでも存在感が有ります。
ありがとうございます!面白そうですね😃行ってみたいと思います🎵
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する