都民の森ブナの路から三頭山山頂を経てサイグチ沢へ
- GPS
- 05:52
- 距離
- 12.4km
- 登り
- 964m
- 下り
- 1,415m
コースタイム
天候 | 晴時々曇 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・危険箇所は無し ・但しサイグチ沢は足場が悪く、所々ルートが不明瞭 |
その他周辺情報 | 下山口の山のふるさと村ビジターセンターにて軽食可。 |
写真
感想
70を超える両親が奥多摩の山で富士山を眺めたいと言う。奥多摩で富士が最も美しく見えるのは間違いなく鷹ノ巣山付近の石尾根だが、普段から山登りをしているならともかく、老人がいきなり1000mを登るのはまず無理だ。そこでそこそこの標高で富士山が良く見える山として三頭山と大岳山を候補に挙げ、それぞれ下見に行く事にした。
三頭山は標高1531mだが、南側の東京都民の森の入り口までバスが通っており、標高約1000mの地点から登り始められる。頂上までの道は充分に整備されており、雪さえ無ければ楽に登頂できる。ただ余り整備されたところだけだと面白みに欠けるので、下りはサイグチ沢経由で奥多摩湖に降り、氷川の旅館で一泊するコースを考えた。ただ登りの標高差は500m程度だが下りは900m近くになり、全体の行程が長くなるのが懸念だった。西側の鶴峠に下りるのも一案だが、生憎平日にはバスの接続が無い。
三頭山は何度か登ったが、サイグチ沢は経験が無い。まずは自分の足で試してみよう。
武蔵五日市駅からの急行バスは二台に分かれても立ち客が出る程だった。都民の森付近は桜が終わって新緑の季節を迎えたばかりの様子だ。麓の商売熱心な茶店で蕨を買い、準備もそこそこに登り始めた。
入り口から程ない所にある森林館までは朱色の舗装道路だ。今回のルートで面白かったのは、舗装道路−ウッドチップの敷き詰められた道−充分に整備された広い山道−普通の山道−尾根沿いの急で細い山道−余り踏まれていないグズグズの沢沿いの道と、順繰りに道のグレードが下がった事だった。三頭山山頂までなら街歩き用の靴でも行けるし、滑り難いものなら鞘口峠まではスニーカーでも可能、その先は登山靴が必要だと思う。
森林館から先は三頭山の中腹をぐるりと回ってほぼ勾配が無い。20代と思われるグループが何組も通り過ぎる。本番のペースを考え、写真を取りながら出来るだけのんびり歩いた。
大滝を超えた辺りから普通の土の山道になる。今回は随分楽な山行だ、早めに下りたら何を食おうか等と考えていたら道を間違えた。気づかずに沢で水を汲んで先に進むと尾根が見えた。沢沿いから尾根に乗り上げるルートなのは知っていたが、えらい早いなと思って地図を見るが、まだ気づかない。尾根に乗って指導票を見て漸く「ブナの路」ではなく「石山の路」を進んでいる事に気付いた。ああもうあほう。このまま進もうかとも思ったが、昭文社の地図のコースタイムを見て、本番には使えそうにないし、分岐まで戻って登り直すのも大してしんどくはなさそうなので、戻った。舐めてかかるとこういう事になる。
本来の「ブナの路」は最後の方まで沢を絡めて直行していた。沢沿いとは言え、南向きで広い沢なので全く明るい。ただ登るにつれ新芽は薄くなり、冬枯れの景色が濃くなった。それでも風と空気は春の陽気で、そのちぐはぐさが面白い。
背中にじっとり汗をかいた頃にムシカリ峠に着いた。ブナの路と言いつつ全く芽は出ていない。目立つのは栂ばかりだ。親はブナの新緑が楽しみだと言っていたが、下見に来るのがどうも早すぎた。
当たり前だが低山でも稜線は風がきつい。背中の汗を冷たく感じつつ、程なく西峰の山頂に着いた。まだ昼前だが10名以上は居た。まずは肝心の富士山を眺める。すぐ側に山座同定用の写真看板があり、おかげで空に浮かんだ雲の切れ端の一部が実は白く染まった富士山だと分かった。
北側からは馴染み深い鷹ノ巣山等の石尾根の山々が見える。酷い弱視の自分でも充分に視認出来る程、石尾根稜線の草原が広がっている。それにしても鷹ノ巣山は何処から見ても格好良い。
昼前で腹も減っていないので、ひと回りして今度こそ地図を読んで東に降りた。結構な傾斜で、よく踏まれている事もあって雨に濡れたらかなり滑りそうだ。
中央峰、東峰と多少登り返しはあるものの、しんどくはない。また両方共見晴らしは宜しくない。東峰の先に展望台があり、東北東に開けている。展望を楽しみつつ昼をとるなら、先ほどの西峰かここが双璧だろう。
そこから先は傾斜が更にきつくなり、登りには無かった九十九折も現れた。すれ違う人も極端に減った。
西峰から1時間程で鞘口峠に到着した。数少ない他の方の記録によるとここから道は荒れ、不明瞭になるらしい。足を踏み入れた途端にグズグズなのが分かった。左右の支尾根から雪崩による倒木が流れ込んでおり、道が判然としない。それでも赤テープはあり、踏み跡もあるので道迷いの危険は無さそうだ。真新しい木橋がかけられており、きちんと整備されているようだ。登山靴があれば普通に降りられる道だ。
あれだけうるさかったバイクの排気音も熊鈴も聞こえなくなった。上部は倒木で荒涼としてはいるが、徐々に本来の穏やかな沢の風景になってきた。人もおらず、麓までの長い道で出会ったのは夫婦らしい一組だけだった。沢の右に出たり左に出たりしていると広葉樹の新緑が濃くなってきた。新緑や苔に春の光があたって輝いている。沢の流れる音と風の音、鳥のさえずりしか聞こえない。沢のほとりに座り込んで昼飯にした。水はこっちの方が美味い。先程汲んだ物は捨てて入れ替えた。
充分休んで出発する。元からペースを落として歩いているが、それにしても長い。石も多く、運足に気を遣う。右岸に巻いてからまた沢に差し掛かるところで、茶色い羽の大きな鳥が驚いて飛び立った。羽音はバサバサではなく、ドロンドロンと随分低く聞こえた。ひょっとしたら猛禽類だったかもしれない。
バイクや車の音が再び聞こえ出し、車道に辿り着いた。ただ地図で平面的に見る限りでは、まだ半分だ。沢は更に広がり、ルートが分かり難い。立派な木橋を左岸から右岸に渡ったところでまた道を間違えた。そのまま沢沿いに右岸を進むと道が無い。沢の幅が狭くなってどう見ても一般登山道ではない。橋まで引き返すと、橋を渡ってすぐの所に折り返して崖を登る道があった。そこを登るとお堂があり、その先すぐが山のふるさと村キャンプ場だった。
サイグチ沢は麓でバイクがうるさい(平日はましかもしれない)事を除けば静かで広葉樹を楽しめ、危険な箇所も無く、傾斜も穏やかだ。昔から人の手が入っていた事を示すものが随所に有り、奥多摩の沢を初めて楽しんでもらうには丁度良い。今回はまだ冬枯れの景色だったが、来月の今頃には新緑も春の花も盛りになっているだろう。
ただ全般に距離が長く、道は崩れやすく浮石も多いので、足に来る。山のふるさと村では上等な茶器で美味しいお茶が飲めるそうなので、それを楽しみに励んでもらい、そこで休んでタクシーで氷川に帰るのなら問題無いだろう。この日は麦山の浮き橋経由でバス停まで向かったが、浮き橋の目の前でバスが通り過ぎたので、ついでに近くの「のんきや」でラーメンを食べて帰った。それにしてもバイク乗りと登山者は相容れないと実感した。
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