黒部源流
- GPS
- 45:53
- 距離
- 67.2km
- 登り
- 5,292m
- 下り
- 6,367m
コースタイム
- 山行
- 10:24
- 休憩
- 0:11
- 合計
- 10:35
- 山行
- 8:13
- 休憩
- 1:30
- 合計
- 9:43
- 山行
- 6:37
- 休憩
- 1:22
- 合計
- 7:59
- 山行
- 1:56
- 休憩
- 4:01
- 合計
- 5:57
- 山行
- 6:35
- 休憩
- 2:14
- 合計
- 8:49
- 山行
- 6:40
- 休憩
- 3:16
- 合計
- 9:56
- 山行
- 4:17
- 休憩
- 1:11
- 合計
- 5:28
過去天気図(気象庁) | 2024年04月の天気図 |
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アクセス |
写真
感想
黒部源流をあちこち歩き回ってのんびりする計画。途中に雨予報もあったので小屋での停滞も折り込んだため、あまり奥へは足を伸ばさないこととしたが、まだ泊まったことのない場所に泊まって今後の黒部源流山スキーのイメージを広げられればと。
【4/27】
前夜、新穂高の駐車場で車中泊した後、トレランシューズを履いてシートラで出発。2年前は板とブーツ込みで30kg近かったはずだが、今回は装備を軽量化したので27kg程度か。左俣林道の雪は少なくわさび平小屋の先もそのまま進み、橋のところで履き替えて靴は橋の下にデポ。
小池新道の斜面を大ノマ乗越までシール登高。気温高く雪は緩んで問題なし。ただし下部はデブリで雪面が凸凹。
大ノマ乗越から双六谷への斜面も雪は十分だが、右岸からの落石あり。双六谷はかなり割れていたが2年前よりは雪があるように見える。登高に支障なく双六小屋まで。
モミ沢を下って湯俣川で釣りをして、翌日に弥助沢を登るつもりでいたが、モミ沢の下部が割れまくりで両岸の雪も切れ切れとなり、湯俣川合流点の数百m手前で引き返すことに。450mほどの登り返し。小屋からもう少し登って樅沢(こちらもモミサワ)を下れば行けた気がする。小屋の脇で幕営。
【4/28】
朝、隣にテントを張っていたつぼ足登山者からハードシェルのパンツは暑いですねと話し掛けられたので、左右のベンチレーションだけでなく社会の窓を開くフロントベンチレーションを併用すると風通しが良くなりますよと提案したが、少々人の目が気になるようであった。
双六岳の山頂には寄らず巻道あたりを進む。ライチョウの足跡や雪穴があちこちにあり、帰路はこの辺に泊まってみようかとの考えが浮かぶ。適当である。
翌々日は雨予報のため黒部五郎の冬季小屋に避難予定、よってこの日もあまり足を伸ばさないこととし、泊まってみたかった五郎のカールへ向かう。展望を検討しつつ適当なところで幕。その後五郎の北東側の尾根に登って1本滑る。今年はこの辺りは一面が縦溝だらけ。今までこの時期にこの場所で経験したことのない条件、とりあえず滑りは楽しめない。
【4/29】
ライチョウの声で目が覚める。かなり近い。まだ月明かりの薄暗い中テントから顔を出すと数mのところにライチョウがいて、こちらの姿に驚いて慌てて走り去っていった。朝焼けに染まるカールを期待していたが、特に雪面が色づくこともなく。やはりこの時期では難しいのかも知れない。ならばもっと早い時期に来てみたものか。
一旦五郎の冬季小屋に戻って泊まり装備をデポして五郎沢左俣を滑って黒部川本流へ。五郎沢は二俣までは穴だらけとはいえ両岸は問題なくつながっていたが、それより下はブリッジなし。左岸を下って黒部川へ。気温が高く雪代が多いためか水量がある。2年前にはテンカラでイワナの反応がかなりよく、今回も暖かいので期待していたが、イワナは流れに出ておらず姿は見えない。毛針を流しても反応はほとんどなく、辛うじて小物を2匹釣っただけに終わった。
五郎沢を登り返して小屋へ。本流で水を汲んだが、小屋の200mほど下で既に沢が割れており水を取れる状態であった。ガスが降りてきて視界がなくなりつつあり、早めに小屋に入っていたところ、オートルートを南下してきたというテレマークを履いた登山者がやってきた。90リットルザックを背負い大きく重そうなピッケルを付けて、鱗板にビンディングはボレーのスイッチバックをつけている。かつてはこんな感じでテレマークで黒部源流を歩き回りたいと思っていたものだが、挫折してしまったのが口惜しく感じられた。
日が暮れた頃から雨が降り始める。
【4/30】
雨は降ったり止んだりが夕方まで続き、ガスで視界はほとんどない状態。気温は高い。この時期にこの山域で雨が降るとは今後のことを考えてもなんとも悩ましい。
とはいえ今回は小屋での停滞も一つの楽しみではあった。文庫本を読みつつウイスキーをつまみとともにちびちびと飲み続ける時間がなんとも言えない。1リットル背負ってきたウイスキーがこの日でなくなった。この先が思いやられて仕方なくなる。
【5/1】
春の雨
みるみる雪は溶け
酒尽き果て
沈殿這い出て
何処へ行くろべ
(この時期この山域らしからぬ高温と雨、停滞明けに一段と黒ぐろとした山並みを前にして。※停滞の暇さに任せて練ってみた)
ガスはだいぶ高くなり視界も回復。五郎側へ少し登って天気予報を確認、山行前にはこの日も雨予報で停滞を覚悟していたが、行動できそうな天気。遅めに行動開始して三俣方面へ戻る。黒部川源流の2400m付近は周辺を遊ぶベースとして適していそうで、ここも泊まってみたかった場所ということでそちらへ向かう。三俣蓮華岳では気温が10度以上のなか小雪が舞っていた。
三俣山荘あたりでは小雨となり軒下で雨宿りの後、黒部川へ向かう。幕場は展望もよくいい具合。本流は2350mあたりで割れていて唖然とするが、水を汲めるのは助かる。いや、助からなくていいから雪は多いほうが良い。鷲羽岳西面の適当な斜面を登って1本。酒が切れたのはやはり辛い。
【5/2】
夜中から晴れてきたようで朝はそこそこ気温が下がって寒さで目が覚める。ここからも五郎のカールがよく見えるが、やはり焼けることはなかった。とりあえず水晶方面へ向かうこととし、シートラで源流を詰める。
ワリモ岳の北側でライチョウを見つけて写真を撮っていると、スキーを背負った登山者が登ってきた。見るとその人は巻機山ラッセル仲間のS氏。黒部にも行くつもりとは言っていたがここでばったり会うとは。水晶小屋まで同行し、水晶岳南峰の南東面を滑るという彼とは別れて自分は小屋から東沢谷へ。昨夏の東沢谷遡行や2週間前のブナ立尾根からの野口五郎岳は、水晶や赤牛の東面や東沢谷を楽しむための準備山行的位置づけだったが、とりあえずは触りだけでも滑ることができたので良しとする。だいぶ感じがわかってきて今後の黒部源流山スキーのイメージも見えてきた。
2300mあたりまで滑って登り返し。滑ったルートを登ろうと思っていたが、登りやすい東沢乗越方面へ引っ張られる。しかしこちらは乗越から小屋までがアップダウンがあって面倒。南峰から滑ったS氏が東沢谷の底に降りた時点でこちらとの標高差は100m以上あったように見えたが、小屋に着く直前に上から「お疲れさん!」と声をかけられて驚いた。さすがのスピードと直登魂。
その後祖父岳へ登り返して幕場まで滑走。夕方だが気温が高く緩んだ雪が固まり始める頃合いで、縦溝が多いながらも滑りやすい雪。
幕場ではS氏から赤ワインを分けてもらう。山で自分が背負い上げたものではない酒を人からもらうなどとは自分の倫理観あるいは生き方に反するものであるのだが、悪魔の囁きにあっけなく負けてしまった。魂を売って手に入れた悪魔の生き血はこのうえなく美味かった。
【5/3】
食料も尽きてきて翌日に下山予定のため、この日のうちに双六の夏道あたりに移動することとして、とりあえず岩苔乗越へ登る。赤牛岳へ向かうというS氏と合流すると、そのままその場に腰を下ろしてもろもろ話し込んでしまう。気づけば2時間ほど経っており、なかなかの早朝会議であった。
乗越から小谷へ滑り込み、自分は祖父岳方面へ、S氏は水晶岳へ登り返す。対岸の雪渓を登高するS氏の姿は豆粒のように見えるがやはりいいペース。羽生を見送る深町の気分を楽しませてもらう。「もうあんなところに」
幕場に戻り荷物を片付けたら源流へ下り竿を振るも全く反応なし。10年近く前の秋にはこのへんで尺イワナを釣ったものだが、やはりこの時期はエサ釣りだろうか。
三俣山荘、さらに三俣蓮華岳へ登り返すがペースが上がらない。息が上がるというのではなく力が出ない。1週間ほど基礎代謝量程度のカロリーしか摂取していなかったためか。山行2日めに目をつけたところにテントを張り、とりあえず双六岳まで登って日暮れの黒部源流の山々の見納めとする。暗くなる頃からライチョウの声が活発に聞こえ始め、飛翔する様子も何度か見られた。
【5/4】
5/2以降は連日好天でこの時期としては空気も澄んでいる。降りるのはもったいない気もするが食料が尽きたし仕方ない(計算を間違っていた)。幕場近くのハイマツ帯の際を歩くとライチョウの白い冬毛を何枚も見つけることができた。この時期は換羽の季節、これを拾って毛針の材料とする。いずれはダウンジャケット化羽毛布団。
雪の緩みを待ってゆっくりスタートし双六岳山頂から双六谷へ。上部は滑りやすかったが、途中から縦溝が深くなり辛い滑りに。二俣からは左岸を下る。当然ながら初日よりも雪は減っている。雪面の凸凹はむしろひどくなっただろうか。大ノマ乗越へはアイゼンで登り返し。
最後の大斜面もやはり出だしはいいものの途中から雪面が荒れて疲れる滑りに。数日前の雨の影響か初日よりもデブリが増えており通過に一苦労。
滑り終えたらデポした靴に履き替えて林道を下るのみ。この時期に1週間近く山にこもっていると、下山時には季節が進んでいて新緑に目を奪われ優しい春風に撫でられてうっとりするものだが、今季は春というよりも夏、暑く肌を焼くような日差しのもと山行の余韻に浸ることもなく新穂高まで我慢の歩きとなった。
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