西穂独標・焼岳
- GPS
- 32:00
- 距離
- 15.3km
- 登り
- 1,039m
- 下り
- 1,695m
コースタイム
- 山行
- 1:10
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 1:10
- 山行
- 7:30
- 休憩
- 1:00
- 合計
- 8:30
天候 | 晴れたり曇ったり |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
写真
感想
諸事情により5月以降山に行っていなかったが、このまま夏山シーズンを終えてしまうのも寂しいと、急遽北アルプスに容易に行けるコースを計画した。
(23日)
たまにしか訪れない北アルプスだが、松本から新穂高温泉までは昨年8月と同じコース。また来たみたいな感覚がある。今回は横着してロープウェイ利用、あいにく周囲の山は雲に覆われているが、針葉樹の甘い香りを含んだ山の冷気が窓から流れ込んでくると、身体中の細胞がよみがえっていくような嬉しさを感じる。やっぱり自分は山が好きなんだ。
喧騒の山頂駅を後に、いきなり針葉樹の森へと踏み込む。人気コースの日曜日の午後とあって、戻りの人達とのすれ違いが大変だ。西穂山荘までひと登りかと思ったら、途中からぐんと傾斜が増し、息が切れる。テント場の数が少ないなどと看板が出ていたので、気は急くが身体が付いていかない。しかし長くは続かず、唐突に発電機の音が聞こえたと思ったら霧の中から小屋が目の前に現れた。
幸いテント場は確保できたので、設営後すぐに独標に向かう。20年数年振りか。ガスが流れる稜線の、ハイマツの匂いが心地よい。時間が遅いので人影は少なく、気持ちはいつもの単独行モードに落ち着いてくる。16時折り返しと定め、先を急ぐと次第にガスが切れてきて、ピラミッドピークのシルエットが浮かび上がる。独標の下にポールを置き、久々の岩をつかんで誰もいない頂上に立った。眼前には西穂高に続く岩稜が、この先は容易には許さないぞと言わんばかりに威圧的に聳え立っている。下りを覗きこむと垂直とも感じるような急下降だ。こんな所行く人はよく積雪期に行けるものだと改めて恐れ入る。
そうする内に奇跡のようにガスが晴れて、ほんの3分ばかり奥穂高から前穂高への吊り尾根が姿を現した。西穂から奥穂はぜひやってみたいものだが、その険しさと遠さには、ちょっと気おされてしまう。ブロッケンも見えて、この景色を独り占めしている幸せに浸る。しかし、再びガスがベールを掛けてしまったので、名残り惜しみつつ下ることにした。夕暮れの気配漂うプロムナードを、満たされた気分で歩く。去来するガスの切れ目から笠ガ岳や上高地が望まれる。テント場は濃厚な霧に包まれていた。いささか周囲がうるさく、快適とは言い難い一夜だった。
(24日)
霧の中を出発。上高地への道を分け、山深さを感じさせる針葉樹の森の中を下っていく。二重山稜を過ぎると傾斜は緩くなり、少し明るくなった道を気持ち良く辿る。小屋泊の人より早いので、静かな山旅が楽しめる。左側が開けた稜線を少し登ると槍見台。標識を見てよくよく探すと、樹の葉のすき間に確かに槍の穂先が尖っていた。穂高は雲の中だが、次に狙っている霞沢岳が梓川の向こうに大きい。次の割谷山は右側(西面)をトラバースするが、笹がかぶり歩きにくい上に、岩や木の根混じりの道は小さな上下が多く結構消耗する。朝露でズボンがびしょ濡れになってしまった。さらにもう一つピークを超えると、ようやく樹間に焼岳の土肌と、中尾峠への落ち込みが伺える。急下降しばしで、行く手に焼岳小屋の緑色の屋根が見えてきた。
晴れていればテントを干したかったが、濡れた笹原に霧が流れる状態で断念。不要の物をシートの上に残して焼岳に向かう。展望台は至るところから湯気が立ち上り、独特の地衣類が繁茂して不思議な風情だ。眼前に迫った焼岳の岩肌は、さすがに火山の荒々しさを感じさせる。ざれっぽい登山道は、頭上に黒々した岩累が迫ってくると、左に巻き登っていく。急に人声が聞こえ、コルのようなところに出ると、それが中の湯ルートとの合流点だ。北峰へはちょっとした岩場をひと登り。左手に音を立てて噴気が上がり、気持ち良いものではない。頂上は結構人がいて驚く。そういえば百名山なのだ。この頃は中の湯ルートがメジャーらしい。
上高地の緑の谷間は見下ろせるが、穂高も笠も雲の中で残念。だが、緑色の火口湖や切り立った火口壁の眺めは新鮮だ。まだ先があるので、長居できず下山に掛かる。急に膝痛を感じて焦る。ザレた道を慎重に下り、草原のリンドウに別れを告げて焼岳小屋に帰り着く。上高地へは笹原の中を下っていくが、右側から峠沢の浸蝕が迫っていて、遠からず道が崩壊してしまいそうだ。眼下には大正池のエメラルド色の水面にさざ波が輝いている。左の岩壁が迫ると、はしごの登場。斜度が強く中々緊張する。樹林に入り、淡々と下り、林道に出た。バスの時間を計算し、上高地温泉に立ち寄る。ゆっくりとは浸かれなかったが、汗を流してシャツを変えられたので本当にありがたい。缶ビールを歩き飲みしながら、梓川の眺めを楽しむ。人は多いが、それでも山は高く、水は澄み、化粧柳は風にそよぐ。年齢を重ね、人生の残り時間が少なくなってくると、自然の美しさが心に沁みる。またゆっくり来たい。発車5分前にターミナルに到着、歩いた稜線を車窓から目で辿るが、すぐにカーブの後ろに見えなくなった。
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