【雪山遭難(疲労)】八方山-延長
- GPS
- 03:38
- 距離
- 6.0km
- 登り
- 605m
- 下り
- 78m
コースタイム
- 山行
- 3:15
- 休憩
- 0:15
- 合計
- 3:30
八方山登山口~八方山長根崎山ルート~八方山山頂~ピーク740m~ピーク756m(ピストン)※登山道未整備区間含む
[山行目的]
・和かんじきラッセルトレーニング
・紙地図+コンパス、ルートファインディングトレーニング
※GPXログは下山困難となった時点で手動停止。
天候 | [天気] 降雪時々青空 [風] 八方山登山ルート: 弱風 山頂付近: 時おり枝雪が落ちるほどの風 [気温] 標高700m付近: -5℃(救助隊から聞いた話で) |
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過去天気図(気象庁) | 2024年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
[登山口~八方山山頂] 前日の雨のためか、固まりやすいザクザクした雪。中間あたりからカンジキを装着。数ヶ所倒木あり。 [八方山山頂付近] 当日の新雪で表面はサラ雪。カンジキを履いて足が埋まる程度の状態。 [八方山奥,ピーク740m近辺] カンジキを履いて所々スネまで埋まる積雪。穴を掘れば1m以上。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
長袖インナー
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
アウター手袋
防寒着
雨具
ゲイター
毛帽子
靴
ザック
輪カンジキ
行動食
飲料
水筒(保温性)
地図(地形図)
コンパス
ヘッドランプ
予備電池
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
カメラ
|
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備考 | 【雪山登山リスクマネジメント。日帰りでも持つべき装備たち】 ビバーク用テントツェルト,スノーシャベル,飲食料(多めに),トレッキングポール,バーナー,クッカー |
感想
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この記事を書き終えて客観的に読んでみたら、当たり前なことばかりで、公開しようか悩みますが、初心者の遭難の一事例として参考になれば幸いです。
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登山歴1年未満。積雪期登山経験2,3回ほど。活動日数16回目。独学と単独行のみ。
八方山登山経験は無雪期3回、積雪期は初。
雪山にて、自力下山不可能となり、遭難しました。まず、駆けつけてくれた救助隊、下山するまで待っていてくれた家族、そして生きて帰れたことに感謝しかありません。
今回は、「この装備で大丈夫だ」「いつも通り登って帰ってこれる」という思い込みから、誤った山行をし、死のリスクを背負いました。安易な考えで起こした遭難で迷惑をかけてしまったことにも、申し訳ない気持ちです。
この教訓を次も活かせるのは、今命があるからこそで、失ってからではもう遅い。当たり前じゃない自分の命を大事にしていきたいです。
[装備]
服装
上: 速乾インナーシャツ, 速乾ロングTシャツ, レインスーツ
下: 速乾タイツ, ストレッチジーンズ, レインスーツ
頭: バラクラバ
手: 軍手, 防寒テムレス
足: 綿靴下, キャラバンC1_02s, ゲイター(ゴアテックスでない)
ギア: 立山かんじき
予備(ザック内): フリース, 中綿防寒ジャケット, ニット帽, 靴下
食料
パン2, 白湯0.5L
その他
紙地図, コンパス, スマホ, ヘッドランプ, 予備バッテリー(乾電池, モバイルバッテリー), タオル, サングラス, エマージェンシーシート, 熊すず, マッチ, ファイヤースターター
[7:30頃~9:50頃]
八方山登山口から八方山山頂まで。無雪期に3回ほど登っていたので、雪があるとはいえ慣れた感覚で登っていく。夏は緑が生い茂り、ヤマビルに煩わされるのに打って変わって、冬はシンと寝静まる森。途中からかんじきを履いてスノーシュートレースを進む。ウキウキで登っていく。八方山山頂に到着後小休憩、食料のパンを食べる。ここまでは体力的に余裕と感じていて、先まで進んでも問題ないと考えていた。天気は降雪、西からの風が冷たく、立ち止まっていると体温が奪われる。視界は良かったり見えなかったり。
[9:50頃~]
八方山から北側へ稜線を辿って2点ピークハント。11:00にはピーク756m地点までたどり着かなくても引き返す予定。本格的にラッセル開始。最初は雪が固まっている部分が多かったので、かんじきでほぼ沈まずに進めた。740m地点への登りから沈み始め、スネあたりまで沈む。この時点で股関節あたりに違和感を感じていたが、前に進むことしか頭になく、先を行く。(帰り道を考えたらここで引き返すべきだった)
740m地点を超え、紙地図とコンパスで方位を確かめながら、次の756m地点に向かう。相変わらず雪は深く、常にラッセル。
[10:30頃~]
740m地点からの下り中、脚に違和感を感じ、つりそうだったので、このまま進むのはマズいと思いその時点で引き返す。違和感を感じてからが早く、歩くたびに脚が悲鳴を上げそうになり、ついに脚がつる。ここで動けなくなっては帰られないという思いが頭をよぎり、焦りながら絶対家に帰るという思いで急ぐ。途中ストレッチしながら歩くものの、回復もない。痛む脚をそのままに無理にでも歩き、右脚が完全に張って棒になってしまう。自力で下山できなくなったと思い知る。
ここまで、電波は繋がらないものだと思っていたので、スマホは一度も開いていない。誰も助けには来ない、ここで死ぬのかと、生まれて初めて死の恐怖を感じる。
[11:00頃~]
自力での下山は困難と認識、スマホを開くとなんと電波が繋がっていたので家族に連絡。(電波が入るなら警察か消防へ連絡すればいいのに、なぜか家族へ送る。ここで死ぬというお別れの意味も込めていたのかもしれない。スマホが生死を分ける最後の命綱だった。)
動けなくなると体が冷えるので、フリースを追加で着る。この時点でもまだ、自力で下山することを諦められず、四つん這いになって、来た道を進む。ある程度進んだところで諦めがつき、近くの風をしのげそうな木に留まる。(そこがたまたまピーク740mのそばだった)
低体温症を避けるために、雪に穴を掘り、なるべく風に当たらない環境を作り始める。エマージェンシーシートを取り出して被る。お尻に和かんじきを敷いて座る。
[11:30頃~]
消防から連絡が入り、情報のやりとり開始。救助隊を派遣してくれると聞いて、少し安心する。尿意があるが大事な保温源なので我慢する。
[12:00頃~]
警察から連絡が入り、情報のやりとり開始。
動いていないと寒いので、引き続き雪穴を掘り進める。
[救助待機の時間]
遭難から救助隊が到着するまで5時間弱。ひたすら待つ時間。消防、警察からときどき入る連絡が安心する。エマージェンシーシートを被って風をしのぐ。動いていないと寒いので、たまに手で雪穴を掘り進める。かんじきに座るとお尻が冷たくない。雪穴は最終的に地面まで掘り、体育座りして横風を直接受けないくらいの深さになった。
[15:20頃?]
救助隊からもうすぐ接触できそうだと連絡が入り、遠くから声も聞こえたので、少し安心する。声も徐々に近づいてくる。
[15:45頃?]
救助隊到着。食べ物とあたたかい飲み物をいただく。(救助隊の方々はとても親切で、ここまで迎えに来てくれたことには感謝しかありません。)
助けに来てくれた、生きて帰れるという安心感、でもここから下山をしなければいけないので、まだ安心しきってはいけない。
[16:00頃~]
数時間とどまっていたので、脚の具合はよくなっており、なるべく自分の脚で下りることに。荷物は救助隊が持ってくれて、ストックも借り、列をなして来た道を帰る、自分の生還を第一に考えてくれ、とても心強かった。日没を過ぎると一気に暗くなり、ヘッドランプも付ける。小休憩をこまめに挟みながら、淡々と来た道を行く。(展望地から見えた夕暮れの景色、真っ暗闇のなか光る街の夜景には、不覚にも見とれてしまった。)
[18:00過ぎ]
登山口到着。
救助隊の助けを受け、なんとか登山口までたどり着くことができました。下山困難と自覚した時は、絶対家に帰るんだと必死にもがいていたものの、もういつも通り家に帰ることはできないんだ、ここで誰にも認知されずに死んでしまうのかと絶望と恐怖にさいなまれました。生まれて初めて死の恐怖を感じたのと、生きていることが当たり前ではない、自分は今まで、世の中に生かしてもらっていたんだというありがたみを感じました。
[反省点]
今回は初心者がやりがちなミスを丸々表現するかのような山行をしたのと、自分の傲慢さからしっぺ返しをくらった経験となりました。
実は登山計画書は未提出で、自分がどこに行くかも誰にも知らせずに行きました。ちょっと里山に登ってくるという感覚で、雪山の危険も充分把握しないまま。電波が入っていなかったら、助けを呼べず、自分がどこにいるかは誰も知らないので、白骨化してずっと山の上にいたかもしれません。万が一は起こりうるとして、安易な考えで山に登るのは危険だと実感しましたし、登山計画の共有がされていないと、もし遭難し救助を呼べない状況になった際、捜索が難航してしまう。自分の命を疎かにしないためにも、計画書の提出は必須だと実感しました。
「持っていく食料が圧倒的に少なかったこと」
食料はパン2つしか持っていきませんでした。無雪期の八方山登山では、水分以外は無補給で上り下りしており(※いや、行動食は摂っていたかも、覚えてない)、今回もそこまで食事はいらないかなという考えでした。しかし雪山、雪の無い登山よりも足が取られ体力も持っていかれる。単純にエネルギー不足で脚が持たなかったのもあると思います。いざ非常事態になったときには、食べ物がないので一切補給できない状態に。順調に進めば足りたかもしれない食料でも、万が一は起こりうるので、雪山か否かを問わず、余分な食料は必ず持って行った方がいいと学びました。
「行けるという思い込み」
山頂に達するまでではなく、家に帰るまでが登山だということを考えさせられます。正直、体力的には余裕で行って帰ってこれると思い込んでおり、充分な食料もないまま、未整備区間のピークまで突っ走ってました。遭難の話は本やメディアで見ており、前日の夜にも遭難の話を本で読んだばかり。誰しも自分が遭難するとは思いもよらなかったという経験談は知っていたものの、結局、自分もまさか遭難するとは全く考えにも及ばなかったです。万が一は起こりうると肝に銘じております。
[良かったこと]
遭難時の行動で唯一良かった点は、低体温症の対策ですね。自力下山が困難となった時に、しばらく動けなくなると判断して、風をしのげそうな木の脇で、手とかんじきで雪穴を掘り始めたところ。最初は下半身が埋まる程度の小さい穴を掘り、エマージェンシーシートを被っていましたが、救助がくるまでの間どんどん掘り進めて、最終的には全身が埋まるくらいの深さに。時おり風も強く吹いていましたが、雪穴とシートのおかげで熱が奪われることはかなり減ったと思います。また、足もだんだん冷えてくるので、たまに立ち上がって、その場で足踏みしてました。血流が足元へ行くのか少し寒さも和らぎました。
低体温症の話は少し知っていたものの、どんな対策をすればいいか具体的には知らず、とにかく寒さだけは避けようという気持ちで穴掘りしてました。改めて緊急時の対策も学んでいきたいです。
[緊急時対策、万が一は起こりうる]
この記事を書いていてできた一言。今回の遭難で学んだことを一言にまとめたら、万が一は起こりうるということですね。山に対して安易に考えずに、先人たちの教えはしっかり聞かないと、自分の命を落とすことになると学びました。
緊急時対策として、ファーストエイドキット、ビバーク用テントツェルト、余分な食料など、必ず生きて帰れる装備を整えていくことは、実際に遭難した身として重要だと感じました。
[薄れていく、自分は生かしてもらっているという思い]
今ここの記事を書いている時点で、救助から丸一日経ちましたが、遭難当時の、自分は生かしてもらっているんだという思いは、すでに薄れてきているように感じます。生きていること自体当たり前ではないし、いつも通り家に帰れることがどれだけありがたいことか、遭難を経験して知ったものの、そのありがたみは徐々に忘れてしまうのかなとも考えてしまいます。
[今後の山行に向けて]
雪山はしばらく、装備や知識も万全に整えられる状態になるまでは控えようと思います。どんな山行形態であれ、生きて家にたどり着くことが第一なんだと思いました。自分への過信についていまいちど考え直し、登山の仕方をしっかり学んでいきたいです。
山行記録とても勉強になりました。インシデントの共有はとても大事なことです。ありがとうございます。
これに懲りずにまた山に行きましょう!
ありがとうございます!励まされて心が温まりました。
これからも山を楽しんでいきます
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