将棊頭山 〜頂上目前にして撤退〜
- GPS
- --:--
- 距離
- 16.0km
- 登り
- 1,693m
- 下り
- 1,675m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2016年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
ところどころで赤テープを見失なって、行く手に戸惑う場面もありますが、迷う心配はさほどなさそうです。 この時期の頂上付近はアイゼン、ピッケルは必携。その時の状況をみて無理はされないように。 |
写真
感想
将棊頭山(2,730m)には以前、木曽駒ヶ岳まで縦走したときに通過点の山として登っているが、やっぱり冬のこの時期にも登ってみたい。
時期が時期だけにトレースはあまり期待できないかな?と思っていたが、これまでの経験から、まっさらな新雪を歩くラッセルも悪くないと思っていたので、登山口に向かうことに迷いはなかった。
地図上のコースタイムから、この日の長丁場を覚悟して出発は早朝の3時頃と決めていた。
金曜の夜、高速の夜間割引(まあ、次の日は土曜になるのだが)を考えて伊那インター手前の小黒川Pで時間調整(せこい!)。伊那インターを0時02分に出て、登山口のある桂小場の手前のゲート到着が0時半前後。
他の車は1台も止まっていない。どうやらラッセルの確率が高そうな予感。
しばしの仮眠の後、身支度を整えて3時20分にゲートを出発。
こんな早朝(夜中)に出発するのはこれまで経験がない。
ヘッドランプであちこち照らしながら歩く人は、もしかしたらあまり度胸のある人ではないかもしれない。 私がそんな人間(汗)。なにしろライトに照らされる木や石の形がいろんなものに見えてしまって、その都度どぎまぎすることがある。
そうこうしているうちに東屋のある桂小場登山口に到着。登山ボックスは東屋の真ん中に据えられている。
登山口出発3時56分。
登山道は、しばらくのうちは折り返しから折り返しまでが長い、九十九折りの緩やかな登りが続く。歩きやすい。雪の量はまだ気にするほどでもない。
登山口から40分程歩いたところで「ぶどうの泉」に到着。この湧き水は行きにも帰りにも飲んだが、やたらと旨かった。
朝飲んでもあんなに旨いのだから本物だ。名前の響きもいい。
6時少し前頃になると周囲も徐々に明るくなりはじめてきた。
6時40分、時折雪を踏み抜くようになってきたところでスノーシュー装着。
今年は暖冬のせいもあって、ワカンなりスノーシューを穿かずにここまで登ってくることができたと思うが、おそらくいつもの年だったらそんなわけにはいかなかっただろう。
装着して進むことまもなく、権兵衛峠分岐のある馬返しあたりから雪の量が一気に増えてきた。
そこから10分ほどで今度は白川分岐に到着。ここは5年程前、木曽駒ヶ岳に登ったときに上がってきたコースだ。
登るほどに雪も深くなり、赤テープを見失って立ち止まることもしばしば。厄介なことに、場所によっては枝に付いた雪が垂れ下がって、行く手を塞いでいる。
そして、登山口から4時間。大樽避難小屋に到着した。7時57分。
コースタイムが2時間30分だから、およそ1時間30分余分にかかったことになる。まあ、この足だったらそんなものだろう。
ここまでも結構大変だったが、ここからは更に大変なことになる。
避難小屋から少し行くと胸突八丁と言われる急登が始まる。急登とはいっても以前に来たときには、そんなに急な坂だとは思っていなかったので、今回もそれほど気には止めていなかった。
しかし、それは甘かった。
例年より少なめとはいえ雪の壁を崩しながら登って行くのは、そんなにたやすくはない。ましてや自分のような短足な人間にとっては尚更のこと。急斜面を前に足を踏み出すのをためらって立ち尽くすこともしばしば。そして、1ミリでも易しいコースを探しながら進んでいく。
似たようなことは以前、鈴鹿の雨乞岳でも経験しているので、その意味では馴れてはいるが、でも、大変なものはやっぱり大変だ。
登り始めてから約7時間半。体力的に限界かなと思い始めた頃、後ろから女性二人が登って来た。
地獄に仏とはよく言ったもの。
地元、伊那の方だというお二人が、さっそくラッセルを手伝ってくれた。というより、以後はお二人に任せることの方が多くなってしまったような(汗)。
そして、12時27分、登山口から8時間31分かかってようやく茶臼山分岐の尾根に到着した。
前方に広がる圧巻の景色に彼女達も大歓声。
あいにく、南アルプスや御嶽山は雲に隠れて望むことはできないが、馬ノ背の尾根の向こうには木曽駒ヶ岳をはじめ、中央アルプスの山々が広がっている。
どこも一面真っ白。アイスバーンの表面が反射して光輝いている。
一通り景色を満喫したところで、彼女らは頂上には向かわずにここから下山するとのこと。
時間も時間ということで、自分もどうしようか迷ったが、やっぱり頂上まで行ってみたい気持がちょっと勝る。
お二人には、ここまでの同行に感謝して頂上に向かった。
雪庇も風紋も、寒さ、風が強いほど鋭利な刃物のように鋭く形作られていく。間近から見るその様は研ぎ澄まされたカミソリのようだ。
登るほどに、岩の露出も少なくなって、雪の表面は完全なアイスバーンに。
幸いスノーシューのエッジが効いて滑ることはないが、いったんバランスを崩そうものなら、そのまま谷底行きだ。
そして、頂まで後ほんの僅かというところで、ついには一面アイスバーンだらけになってしまった。
それなりの装備もない中、これ以上進むのは無謀というもの。
第一、今の自分にはこんな厳しい条件下での経験がなさ過ぎる。
景色も十二分に堪能することができたことだし、ためらうことなくここで引き返すことに決めた。
冷たい風が吹きすさぶ中。分岐に戻って遅い昼食を摂りながら、改めて白く輝く山々を見渡してみる。
冬の雪山には、数えきれないほどの危険がそこここに潜んでいる。
下山開始2時21分。順調に来た道を辿って登山口に到着。
6時23分、無事ゲートに戻った。
コメント
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お久しぶりです!
相変わらず素敵な写真ばかりでどれも見入ってしまいます。
関西地方の私からすれば知らない山ばかりで今後の参考にさせていただいてます。
特に今回のレポは雪山の美しさや迫力、または厳しさが見る側にも伝わってきました。やはり青い空と白い雪のコントラストを見たときの高揚感はたまりません。
それに周りの山を含めとても雰囲気が良さそうな山容ですね。
中央アルプス付近はまったくのノーマークというか知らない山域なので今後も素晴らしいレポを楽しみにしています。
ほんと、お久しぶりですRYOSUNさん。
おっしゃるとおり、稜線に出て前方に広がる圧巻の景色を目の当たりにしたときは、その美しさ、迫力に圧倒されました。
こんな絶景はこの時期以外には絶対に味わえないんだろうなと。
そのかわり、このクラスの冬山の厳しさも思い知らされました。
稜線に出るまでの距離も距離だけにラッセルの辛さはある程度覚悟していましたが、頂上付近のアイスバーンがこれほど氷に近いものとは想像もしていませんでした。
その意味では、ピッケルもアイゼンも持っていたのに、時間的なことも含めて、あえて頂上を目指さなかった彼女達の判断は正しかったと思いました。
それはともかくとして、山はやっぱり素晴しいです。厳しければ厳しいときの山ほど尚更・・・。
綺麗な写真にうっとりでした^^
ほんと眺望素晴らしい尾根歩きでしたね!
山頂目前で足元氷化で敗退は残念でしたが、不安を無理して突っ込むとろくなことがないですから勇気ある判断だったと思います。
yamakikoさん、コメントありがとうございます。
このクラスの高さの冬山は初めての経験でしたが、
いや〜、厳冬期の冬山をナメてました。
ラッセルの辛さはある程度覚悟してましたが、尾根に出た途端の厳しい寒さと強い風、カチカチの雪面。冬山の怖さを思いっきり体感させられました。
それにしても、人を寄せ付けない厳しさが人の心を惹き付ける。
山の魔力ですね。
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