無謀な遭難前のハイカーに遭遇 沢口山
- GPS
- 06:05
- 距離
- 9.9km
- 登り
- 552m
- 下り
- 1,406m
コースタイム
天候 | 雨 井川の31日の気温(気象庁) 最高気温15.8℃ 最低気温11.4℃ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2010年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス
http://tekarisanso.jp/index.html |
コース状況/ 危険箇所等 |
登山前日は台風14号が房総半島沖を通過して、天候は良くありませんでした。夕方にリーダーより、予定通り登山を行うとの連絡が入りました。当日の朝の自宅を出る時に山に囲まれた空を見ると、少しの雲があり星は出ていました。天気予報は降水確率が20〜30パーセントでしたので、雨には降られることも覚悟しての山行でした。 小型マイクロバスに3グループの山の会員、18名を乗せて集合場所から出発しました。東名高速道路牧之原ICを下りて、国道473号〜国道362号を大井川沿いに千頭方面に進み、上長尾地区の中徳橋を過ぎたところにある、出光興産ガソリンスタンド前を林道南赤石線に入りました。大札山をまいて進む間の林道は舗装されていましたが杉川林道分岐点から蕎麦粒山をまいて犬山段までの間は、林道が未舗装でバスは車体をきしませながらやっと上って犬山段に着きました。東名高速道路を西へ進むに連れて雨雲が多くなり、牧之原に近づくにつれて降り始めた雨足は強くなり、南赤石林道からはガスで周囲の山容は何も見えませんでした。 標高1404mの山犬段に到着して、駐車場の奥にある避難小屋で雨具を着るなど登山の準備をし、予定していた時刻より1時間程遅れて登山を開始しました。山犬段の広い駐車場周辺は、カエデなどの広葉樹が赤や黄色に色づき紅葉は真っ盛りでした。コンクリートで舗装された林道を行くと、静岡大学農学部の森林教育研究施設の建物がありました。この地域は静岡大学の演習林になっているようです。さらに行くと、八丁段を経て板取山方面への道標があり、そこから登山道に入りました。 ブナなどの広葉樹林の中に、丸太で作られた登山道を緩やかに登って行くと、木々の根元には緑色をした笹が生い茂り、紅葉した葉の色合いを引き出しているように見えました。今日はガスっていて、八丁段展望地からは近くの山も見えませんでした。樹林の中にある標高1562mの八丁段ノ頭を通り過ぎると大規模に崩壊したホーキ薙の上部に出ました。 崩壊している際を、一部笹の中を迂回して下がり、標高1387mへ向かうと、途中には両手を上げたようなブナの大木が目に入りました。標高1513.2mの板取山山頂横には、古い御料局三角点があり、晴れていれば板取山山頂からは、聖岳・茶臼岳や上河内の南アルプスや前黒法師岳・大根沢山・大無間山や朝日岳の南アルプス前衛の山々が見えるようです。 細尾根を登って3基の木製ベンチのある標高1521mの天水で昼食を採りました。切り開かれていて、晴れていれば展望が良さそうでした。小雨が降っていてこれからの道のりも長いため、短時間で昼食を済ませて出発しました。ウツナシ峠に下り、一旦はほぼ平坦になった登山道を通り過ぎ、一登りすると標高1324mの横沢ノ頭になりました。樹齢約300年程の大木の天然杉があり、周囲は樹林帯で展望はありませんでした。 最後の登り坂を高度100m程登り、標高1424.8mの沢口山に着きました。山頂には二等三角点があり北方向の展望が開け、山頂から見える山の案内板がありました。大きな反射板が近くにあり、少し違和感を感じました。東側には東屋のような建物があり、こちらから見える山の案内板がありました。展望が開けているのはこの二方向だけでした。 降っていた雨が止み始めたのでカッパを脱ごうかと下山の準備をしていると、若者達5人が山頂に登って来ました。今日初めて出会った登山者です。登山の服装をしていないので、ハイキング程度の思いで登って来たようでした。(このあと若者達は、道迷いで遭難して大変なことになりました)沢口山山頂から20m程来た道を下がった所にある道標で下山道を確認して寸又峡温泉方面に下がりました。 尾根伝いの急勾配の登山道を下がって行くと、道は平坦になりブナやミズナラの広葉樹林の中に鹿のヌタ場がありました。ヌタ場は前日に台風がもたらした雨のためか、水が溜まり小さな池のようでした。すぐ横には今までに見たことがない、ミズナラの大木がありました。標高1276mに下がると暗い人工林の中に富士見平になり、寸又峡へ下がる分岐点になり日向山コースに入りました。 岩がゴツゴツした急勾配の下り坂になり、深い西側の谷から沢の音が聞こえてきました。木馬(キンマ)ノ段を経て、切り開かれた展望地に出ると、ガスのために近くは見えず下方のようすがわかりませんでした。下山道脇には秋の味覚のキノコが生えていて、採る度に立ち止まって要るのでリーダーより「先を急いで」と注意がありました。テレビの共同アンテナが登山道脇にあり、麓は近いと感じました。やがて人工林の急勾配の斜面をトラバースするように、ジグザグに下がりました。麓は近いのにジグザグの道は長く、なかなか高度が下がりませんでた。途中で女性ひとりが脚の痛みを訴えたので、痛み止めの応急措置をするために数人を残し他の者は下がりました。スプレー式の鎮痛剤で済んだようで、直に追いついて全員無事に寸又峡温泉沢口山登山口に下山しました。時計を見ると、下山予定時刻より1時間程早く下山できました。 <静岡新聞の記事> 焼津の会社員ら遭難、沢沿い斜面で発見 川根本町 11/01 15:07 日午前8時ごろ、焼津市下小田の会社員(24)らのグループが川根本町の沢口山(1425メートル)で遭難したと同僚が島田署に届け出た。同署員9人と島田市消防本部の消防署員10人が現場に向かい、県警ヘリが捜索に当たっている。 沢沿いの斜面で救助を求めている遭難者とみられる3人を、取材に向かった本社ヘリに乗務する整備士と本紙記者が見付けて県警に連絡した。3人のうち1人が白い色の布を振っていた。静岡市消防局のヘリが救助作業の準備を進めている。 島田署によると、遭難したとみられるのは5人。31日に日帰りで沢口山に登山する予定だったが、1日午前6時20分ごろ、会社員から同僚に「遭難しました。川の近くにいます」とのメール同11時45分ごろには、会社員から母親に「5人ともけがはない」とメールが届いたという。 会社に伝えていた日程では、グループは31日の午前9時半に寸又峡のバス停に到着し、沢口山に登った後、午後4時5分に同バス停に戻ってくることになっていた。沢口山はハイキングコースとして人気があるという。 |
写真
感想
今回の奥大井の山を縦走する計画案は、今年の春先に山仲間から連絡がありました。数年前の秋に単独で山犬ノ段から蕎麦粒山を経て高塚山に登頂した時に見た、奥大井の山々の紅葉は見事でした。また今年の春にはアカヤシオの花を見ながら、大札山から蕎麦山へ登り山犬段に下がりました。山犬ノ段から板取山への稜線は、素晴らしい紅葉と南アルプスの眺望が期待できそうで登ってみたいと思っていました。今回の計画案では山犬段から板取山を経て沢口山に登り、寸又峡に下がると聞きました。
奥深い大井の山への登山は交通が不便で、単独で縦走するのは制約があります。チャンス到来だと思い、必ず参加したいと思っていました。参加するにあたり、リーダーから6時間程度は歩ける体力がある人との条件が示されました。私達の会のグループは個人山行の時にいつも同行してくれる、自称健脚派の山仲間と参加しました。山行日以前に渡された計画書に記された出発地から山犬ノ段までのバスでの移動が3時間では、やや無理があるのではと思っていました。やはり山犬ノ段への到着が予定した時間より大幅に遅れました。16時の下山予定時刻を見ると、ある程度の余裕をみてコースタイムを設定しているとは思いましたが、秋で日没時間が早いので暗くならないうちに安全に下山出来ることを願いました。
山犬ノ段からの登山開始が1時間程遅れ、その時間を稼ごうとしたのかブーイングが出るほど先頭を行くリーダーの脚が速く全員を強引にひっぱりました。雨のために遠くの景色は見えず、展望を楽しむ時間的な余裕もなく、そのためか1時間程早く寸又峡温泉に下山できました。
沢口山から寸又峡温泉までは、標高差約1000mの急勾配のきつい下り坂で、木の根や濡れた石で滑り、尻餅をつく人もいて脚にかなりの負担がかかっているようでした。私も何度となく木の根や石に脚を取られ、転倒寸前になりました。健脚を自負している私でさえ苦戦そのものでした。長時間の下り坂ではこまめに短い休みを取るべきだと痛感しました。
下山後に光(てかり)山荘の風呂(500円)に入浴した時に、男性ひとりの足の甲からじわりと血がでていました。ヤマヒルにやられたようで、出血が止まりませんでした。行動中は雨具の上からスパッをつけていたのに、どこから入ったのか血を吸われてしまいました。
遭難した若者達。
沢口山山頂で、出会った若者男女5人は寸又峡温泉から、元気な声で賑やかに話しながら登って来ました。下山準備をしていた私達中高年のパーティは若者を見て、華やいだ気分になりました。若者達の服装はスニーカーにジーパンと、いたって軽装でした。小雨が降っているのにかかわらずカッパを着ていませんので「カッパは?」とメンバーの一人が聞くと「持っています」と答えがありました。標高差約1000mの急勾配をハイキング気分で登って来たようです。帰りは寸又峡温泉から登って来た道を戻るだけなので、心配は感じませんでした。私達の仲間の一人が、山頂での集合写真を撮ってあげると喜んでいました。傍から見ていると、笑顔でポーズを取っていて楽しさが伝わってきました。
私達は寸又峡温泉に下がり、若者の男女5人組みは若いので直ちに追いついて来ると思っていました。しかし、寸又峡温泉に下山し暫く経過しても下って来ませんので途中の分岐点から違うルートを下がったのだろうと思い、気にもかけませんでした。
翌日の昼頃いっしょに登山した仲間から、沢口山で遭難事故があったとメールが届きました。まさか沢口山の山頂で会った若者達ではないかと脳裏をよぎりました。夜になってからはリーダーから、山頂で会った若者が遭難したと電話がありました。テレビニュースで急峻な岩場にいる遭難者を上空から映している画面を見ると、見覚えがある服装をした女性が映っていました。間違い無く沢口山山頂で会った若者の一人でした。若者達は登って来た道を戻れば何事もなかったのにと思いました。
山頂を少し下がった所にしっかりした道標があり、登って来た時に左側に大きな反射板が見えたはずです。この道標さえ見落とさなければ例え地図を持っていなくても、寸又峡温泉へ安全に下がれたと思います。難コースではありませんので、なぜ遭難したのか考えられません。二晩山中で過ごし、救助隊に保護されて全員生還する事ができたようです。後でニュースで知ったことですが初めてのハイキングだったようです。あの時に適切なアドバイスをしていたらこんな大騒動にはならずに済んだと後悔せずにはいられませんでした。
後日、新聞で遭難事故の記事を見ながら地図と照らし合わせてみました。沢口山から北方向下がれば寸又峡温泉に着きます。何故か若者達は反対の南側、横沢方面に下がってしまったようです。登って来た道と違うと気づき戻ったようですが、また同じ間違えた道を下がってしまったようです。標高1250mから1030m付近は登山道が蛇行していますので、この辺のどこかで登山道を外して沢へ下りてしまったように思われます。パニック状態になった時には人間は平常心を失って生きるためにサバイバル状態になってしまうようです。今回の遭難事故を他人事と思わずに、仲間の山の会に問題を提起し検証するつもりです。そして登山を安全に一層楽めるように他山の石として役立てたいです。
コメント
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雨で大変そうでしたね。おまけに遭難者と直前に出会うとは 不吉でした。
とにかく遭難者は無事でよかったですね。
よけいなおせっかいといわれるでようが、
やはり見るからに危ない登山者には一声かけるべきですよね。
やはり初心者の道迷いは急激な増加の一途をたどっていますね 。
装備だけ持って技術や経験が不足してる人への危惧もされますが、それ以上に街着のアウトドアブランド志向から、街着のままや外装だけアウトドアウェアのように見せかけている普段着で、ハイキング感覚で入山する人が多くなってますね。
私も登山道で出会う人同士の声掛けを大切にしてます。天候の変化や登山道の情報のシェアだけでなく、装備の確認などもお互いにして、自分たちだけで無く「みんなで無事な山行」をもっと大事にしたいと思わされました。
有難うございます。
ハイキングも登山であるという認識がないまま山道に入る人もいますね。その時点でけっこう危ないです。僕は初心者でかつソロでのハイキングの練習をしているのですが、この記録を見て身の引き締まる思いをしました。
僕の住まいは山が近くて家から徒歩で登山口に向かえる為、雨の降りそうな日~雨の翌日は登らないようにしている(でも防寒防水着は装備に入れています)ので、雨天の環境に詳しく無いのですが、雨やガスの時はGPSも使えないのでしょうか?
下山が遅れた場合に備えてライトは装備しているのですが、日帰りでも皆さんツェルトのようなビバーク装備を持って行ってるのですか?
コメント欄で質問などして申し訳ありません。
ツェルトは日帰りであれ、泊りであれヘッドランプとセットで持参してください
使い方を練習しておいてください。
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