大木場ノ辻
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- GPS
- --:--
- 距離
- 8.2km
- 登り
- 1,322m
- 下り
- 1,315m
コースタイム
- 山行
- 10:57
- 休憩
- 0:40
- 合計
- 11:37
駐車場(無料)は中尾橋を渡った右側で、槍見館H脇の登山口(登山ポスト有り)まで5〜6分です。
天候 | ☀ (朝は雲の多い晴れ、午後は快晴) |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2016年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
★登山口⇔錫杖沢出合への入口=一般登山道ですが、クリヤ谷の渡渉は増水時は危険です。 ★錫杖沢出合⇔錫杖岳南尾根のコル=標高差約550mの急峻な沢ルート。下降時に転べば転落の危険性有り。ヘルメットを持っている人は下山時は被った方がいいでしょう。 ★コル⇔大木場ノ辻=裸地・草地等皆無の笹藪ですが、危険個所はありません。コルから頂上直下の樹林帯を抜けるまでは背丈ほどですが、首から上は出ますので視野は広く得られます。樹林帯を抜けてからは膝程度の深さです。笹に隠れた倒木に膝下をぶつけることがあり、この対策も一考です。 途中の2100m小ピークは幹も枝も固いネズコが多く、藪漕ぎではハイマツより始末が悪く、ハイマツのように踏みつけたり、持ち上げたりすることもできず、進むのに時間が掛かります。 行かれるには、小ピークは右側を巻き(ネズコが大きくて通過しやすい)、後はずっと尾根通しがベターかと思います。 稜線上にハイマツはないですが, ネズコの藪漕ぎでは上着が破れやすいです。また, 長時間の笹薮漕ぎで全身ゴミだらけになります。私は普通なら処分するような藪山用ボロボロ登山着で行きました。ルートとしての尾根は比較的見通しが利き, 念のために持参したGPSはザックに入れたままで使用しませんでした。 |
その他周辺情報 | 松本ICから安房トンネル経由で行く場合、コンビニは新島々のセブンイレブンが最終です。高山方面も30卆茲泙任△蠅泙擦鵝 日中なら栃尾温泉街R471沿いにAコープがあります。 |
写真
地形図最高点2168mは濃い緑の⌒の所。
登山地図での錫杖岳(360度の展望マーク)はそのずっと右で縦長の白い部分=『ピッケルの岩場』。
両地点は直線距離で約150m余り離れている。
ピッケルの岩場の奥、Y字形付近に穴毛大滝。
感想
昨年10月4日に錫杖岳へ行きましたが、展望絶景のはずの頂上では濃いガスのために穂高や笠は全く見えませんでした。見えていたのは大木場ノ辻だけで、いつか機会があればあのピークに立ってみようと思いました。
錫杖と大木場、標高差は80mほどですが、他の山から見た場合、両者(両山)の違いは歴然としています。登る人が多くてルートも明瞭な錫杖に対し、大木場はけもの道らしきものさえありませんでした。色あせたテープや鉈目などごく一部で見られましたが、それらを追って進むことは不可能で、基本的にはどこでも自由に好きなように歩くことになります。
長時間の藪漕ぎの末に辿り着いた頂上がガスで展望なしだったらイヤだなぁ…と思い、晴れ予報の信頼度が高い休日(私の場合、休日は不規則)を狙っていました。季節の変わり目と違い、当日の予報は一週間前から変わりませんでした。
昨年、錫杖へ行った時の経験から、登り6時間、下り5時間半の所要時間(休憩込み)を想定し、順調にいけば午後4時半には下山出来るよう、当日朝はライトで照らして5時丁度にスタートしました。
クリヤ谷渡渉地点の”山の神”さまは登山者の安全を祈って下さる神さまですので、安全祈願は必須です。笠への登山と違い、危険な錫杖沢を辿る者なら猶更です。
クライマールート分岐から沢ルートへ。濡れた岩に試しに足を置いたら簡単に滑りました。水流が細く、濡れている岩はほとんど避けて歩けますが、沢歩きでなく、クライマールートを上がり、前衛フェース基部の上端から浅い笹薮漕ぎで左下の沢へ入ることもできます。
クライマーさんからは怪訝な目で見られますが、実は昨年行った時、登山者は沢ルートだということをよく把握しておらず、間違って林の中の急斜面を上がりました。今年は沢ルートで上がり、南尾根のコルまでの時間を比べたらクライマールートの方が25分ほど短い…
クライマーさんには迷惑でしょうから、場違いのルートは上がらない方がいいでしょう。
当日 持って出た水は500ミリ2本だけでした。標高1775m付近までに1本飲み、最終水場だと思ったそこで1本分飲み、2本を満タン?にして大木場へ。流れはもっと上でも出ており、実際の最終水場は1850m付近。コルより150mほど下でした。
時季により変動しますので、水流がいよいよ細くなったら早めに給水した方が安心かと思います。
錫杖岳分岐へ着き、いよいよここから未知の激藪へ!
大木場方面へは最低鞍部まで2〜3の目印がありましたが、踏み跡は全くありません。この付近の笹は密度が濃くて丈が高く、登りに差し掛かると雪の重みで手前に傾いています。下りなら体で押し分けられますが、登りでは両手でかき分け、急斜面ではそれに両手で掴まって体を引き上げます。
時折高度計を見ていて2100m(※)ピークが近いことが分かり、後ろを振り向いた時、絶壁の岩襖を持つ錫杖の鋭鋒が眺められ、勇気付けられる思いでした。大木場頂上まで、くじけそうになる気持ちを鼓舞してくれるそのような見事な景観が2〜3ヶ所でありました。
※2100mコンターにはレーザー値で2101.5mが表示される地点がありますが、正確な標高は分かりません。
2100mPには目印はありませんでしたが、一ヶ所ネズコの枝に切り跡があり、ここを通る人がいるのだなぁと思いました。ネズコは木が固く、押しても引いても目の前は広がらず、顔を背けて木の間を縫って進むしかありませんでした。
小ピークからの下りで、大木場本峰へ続く稜線の東側が小さな笹で広く開け、それは右から大きく回り込むルート取りであることが見えました。
そこは展望が良さそうにも見え、稜線の樹林と笹原の境界を目指して忠実に尾根を辿りました。
標高2150m付近で、地形図にもある岩場が正面に見え、歩き易そうな右側へ。鬱蒼と苔むしたごつごつした岩場の小さなアップダウンがしばらく続きましたが、小枝にしっかり掴まっている限り不安はありませんでした。
漸く樹林帯を脱して笹原に入った時、それまでの艱難辛苦を帳消しにして余りある素晴らしい山岳風景が目に飛び込みました。北は笠ヶ岳南西尾根から南は霞沢まで、槍〜穂高を中心として素晴らしい山岳風景でした。
右側は灌木交じりの樹林帯、左側は広く開けた笹原で、やや右にカーブしながら進む細長い尾根という感じで約30分、ついに最高点に到達しました。もうこれ以上登らなくていいのだと思うと、達成感などで万感の思いでした。
三角点標石はどこにあるのか、下りに差し掛かる途中まで行ってみましたが、見当たりませんでした。
始めに見えていた笠や抜戸は見えなくなり、槍は何とか樹間からでしたが、北穂以南はとてもよく見え、絶え間なく噴煙を上げる御嶽も見えました。高い山で見えなかったのは別山〜白山だけで、それに至る大日ヶ岳は見えていたかも知れませんが、木の間越しであり、断定はできませんでした。
大変な思いをして辿り着いた頂上が天候の関係で展望が得られなかった場合を想像すると、感慨も一入(ひとしお)、天候に恵まれたことも幸運でした。素晴らしい山の思い出は生涯忘れられない心の中の無形の財産だと思います。また一つ心の財産が積み重ねられたことに、『これだから山はやめられない!!』という強い思いでした。
激藪ではある種の闘争心が必要ですが、戦う相手は藪ではなく、自分自身です。藪に限らず、大自然での道楽では克己心が行動予定の成否を左右するような気がします。
登りが6時間なら、普通の人なら下りは4時間か4時間半でしょう。
私は左足が不調で、半月板損壊のために下りではサポーターを装着し、下肢静脈血栓症で血流を良くする薬は欠かさず服用しています。なので、下りでは左足が一定角度以上曲がらず、踏ん張りも利かず、下りではとても時間が掛かります。
実は、錫杖沢の激下りは前日 床に伏してからもとても不安でなかなか寝付けませんでした。不安が強いので中止することと、細心の注意を払ってでも行くことを天秤にかけた時、選ばざるを得なかったのは後者でした。
登り6時間に対し、下り5時間半を想定したのもそのような事情からでした。
最も危険なのは最終水場から上で、コル直下の笹原帯に入るまでの区間です。掴まる木がなく、いつ抜けるか分からない草につかまりながらの登降でした。「ここで歩き損ねたらどうなるか」が常に頭から離れませんでした。その反面、緊張の連続では山歩きの楽しみも半減しますので、時々立ち止まって写真を撮ったり、快晴下の美しい紅葉や天を衝く峻険な岩峰を瞼に焼き付けたりしていました。
若い健脚者なら8時間台でも行って来られる山ですが、休憩込み11時間37分はまさに設定通りの所要時間でした。決して気楽には行けない難路を経て終始藪漕ぎに徹する大木場ノ辻でしたが、無事に行って来られたのは”山の神”(石像の台座に’安全登山’と刻字あり)の加護の賜物(たまもの)だと思っています。
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