奥穂から西穂 〜最初で最後のジャンダルム〜
- GPS
- 32:00
- 距離
- 14.6km
- 登り
- 2,470m
- 下り
- 1,377m
コースタイム
二日目 穂高岳山荘出発05:25→06:09奥穂高岳06:29→ジャンダルム07:29→間ノ岳10:20→11:53西穂高岳12:20→14:46西穂山荘15:00→15:57にしほだかぐちロープウェー駅→出発地の無料駐車場 二日目 計10時間32分 以後ロープウェイで下山
天候 | 両日とも快晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2016年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
言うに及ばずの全てが危険地帯ですね。 それに、目印がはっきりしていなくて、あちこちで進む方向に迷いました。 |
写真
装備
備考 | 地名や山名などは、それらに詳しい方にお任せするとして、率直に思ったことなどを綴らせていただきました。 文中に誤りなどありましたらご容赦を。 |
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感想
ここ最近、週末になると天気は下り坂。
そんな日々が続いてかなりフラストレーションが溜まっていた。
前々から計画していた奥穂高岳から西穂高岳への縦走も、すでに10月に入ってしまったことで今年はもう無理、とほとんど諦めていた。
そんな矢先、14(金)・15(土)・16(日)と絶好の山天気予報が週末に巡ってきた。人間、いくら仕事が優先とはいっても物事には限界がある。
得意先に泣きを入れて、13日夕方、登山口のある新穂高温泉に向かった。
今回の予定は3日間。一日目が登山口から穂高岳山荘まで。二日目は山荘周辺で酒でも飲みながら一日まったりして翌日に向けてのエネルギー充電。そして、三日目に奥穂から西穂へと縦走してロープウェイで下山。という計画。
新穂高温泉の無料駐車場には夜9時頃到着した。
さすがに平日。余裕をもって駐車することができた。
いや、それでも7割方ぐらいは埋まっていたから、余裕とは言えないか。
持参のビールとツマミで小腹を満たして就寝についた。
翌14日朝、ヘッドランプを点けて4時27分に駐車場を出発。そこから15分程のところにある登山指導センターに登山届けを出して右俣林道に入り、まずは奥穂への登り口のある白出沢出合を目指した。
2時間の林道歩きも後半に入った頃、今回の山旅で最も目にする山、笠ヶ岳がさっそく左方向に見えてきた。
白出沢出合には6時24分に到着。
いよいよここから本格的な登山道に入る。
この登山道は去年の9月に奥穂からの下りで歩いているので、だいたいの様子は分かっているが、それでも登りと下りは別。実際に歩いてみないことには分からない。
白出沢の橋(重太郎橋)あたりまでは比較的緩やかな登りが続いて歩きやすい。
そこからはしばらく急登がつづいて8時45分、白出沢と荷継沢の合流点に到着。
ここから穂高岳山荘までは、大きな石屑の上を延々と登って行くことになる。
ほとんど道らしい道がない中を、自分で歩きやすい場所を探しながら登っていく。まあ、それでも迷う心配がないことだけは救われる。
途中で、大きな平らな石の上に「130分」と書かれた文字を発見。
ここから2時間10分ということか。山荘裏手の石垣が、もう、すぐそこに見えているというのに・・・。
実際その通りだった。
12時14分、ようやく穂高岳山荘に到着。
受付を済ませて部屋へ。
部屋の名は「乗鞍岳」。12人部屋に今夜は自分一人と後は同じ岐阜からというご夫婦と富山からというご夫婦の計5人。
これだけゆとりがあれば両腕を伸ばして寝られそうだ。(実際にはあまり寝られなかったが)
岐阜のご夫婦からは、岐阜市近郊で自分がいつも歩く山の名前がポンポン出てきてびっくり。きっと、どこかで一度くらいはすれ違ったことがあるだろうし、これからもお会いすることがあるかもしれない。
風もない午後なのに外は思っていたより寒い。(10月も中旬で、ここは3000メートル地帯。まあ、当たり前といえば当たり前なのだが)
外が寒いからといって明日一日中小屋に篭っていたら、何のために一日フリータイムを作ったのか意味がなくなる。
ということで予定を変更。一日早めて明日西穂に向かうことにした。
ロビーでくつろいでいるときに、東京からバスでやってきたという青年と話がはずんだ。
彼はこの地が気に入っていて、これまでにも何回か足を運んでいるとのこと。
年齢こそ親子程違えど、山経験の豊かさではどうも彼には及ばないようだ。
以前に西穂までのコースは経験済みとのことで、いろいろ参考になることも教えていただいた。
やっぱり、明日出発することに決めたのは正解だった。
となると、明日分の酒は当然必要ない。残しておいても荷物になるだけ。
とうことで彼には酒まで付き合わせてしまった。
翌朝5時25分、山荘を出発。
夜がうっすらと開けはじめた中、ヘッドランプを付けてまずは奥穂頂上に向かう。
頂上少し手前のところで、これから行くジャンダルムに朝陽が射してきた。
これもモルゲンロートと言っていいのか分からないが、黄金色に輝いて美しい。
6時9分、奥穂頂上に到着。
気持はワクワク感でいっぱいだが、本当に大丈夫かな?という不安な気持も若干入り交じっている。先行者がもう数人先をいっているので、その意味では少しは気も楽なのだが・・・。
奥穂頂上を出発して数分で今回の最大の難所、ナイフリッジの馬ノ背に取り付く。
前後に人がいればまだ少しは心強いものの、ここは一人。
噂で聞いていたより遥かに険しい。なのに鎖もハシゴもなにもない。しかも下り。
手掛かり(足掛かり)は岩の割れ目や凹み、角のみ。
これが大キレットの長谷川ピークだったら、まだ鎖と足場が確保されていたような気がするのだが。
慎重に慎重に進んでようやく馬ノ背を通過することができた。
あまりの緊張の連続に、途中でカメラのシャッターを押すどころではなかった。
いやあ、最初からこれではこの先が思いやられる。
次はこのコースのシンボル的存在のジャンダルム。
馬ノ背での緊張にすっかり気力も萎えて、ここは登らずに通過しようと思っていたところへ、上から男性二人が下りてきた。「登らずに通過なんてもったいない」と声を掛けられた。
ここの登り口は左に回り込んだところにある。
ザックを置いて登り始める。見た目より以外とすんなり上に出ることができた。
狹兄鉢瓩一人出迎えてくれた。
素通りしなくて良かったと思った。
その後も、ほとんど垂直に近いような岩壁が次から次へと待ち構えている。
しかも余程の難所でない限り鎖もハシゴもない。頼れるのは行く手を指し示す○や→のペンキマークと自分の体力だけ。
必死に岩壁に取り付いているとき(常に必死なのだが)、突然後からガラガラッと石の崩れる大きな音が聞こえてきた。、後方の急斜面の壁を下りてくる後続者が誤って岩の塊を落としたらしい。なにもなくて良かった。
それにしても、このコースは難コースの割には表示が少ない。
急斜面など、危険箇所の要所要所にはしっかりとペンキマークが付いていて、間違える心配はまずないのだが、一度目印を外すと時にはいくら探しても見つからないときがある。風化して薄くなっているところもあるので、もしかしたら以前にはあったものが消えてしまっているのかもしれない。
そんなときは大体の見当をつけてそれらしい方向に向かって進むしかないのだが、こんな余分な動きもエネルギー消耗の手助けをしてしまうことになる。
とは言いながらも、一番の原因は自身のルートファインディング力の未熟さにあることは言うまでもない。
目前に現れる難所を次々と乗り越えながら(と言っても、もはやここまで来ると難所という感覚はほとんど麻痺してしまっている)天狗岩、間ノ岳と通過して赤岩岳に到着。いよいよ今回の最終目的地、西穂高岳が目の前に大きく姿を現した。
頂上付近は西穂山荘方面からの人達で賑わっている。
あそこまで行けば、命と背中合わせだったこれまでのコースからもようやく開放される。
そして11時53分、西穂高岳山頂に到着。
少し手前から到着まで、ずっと暖かい眼差しを送ってくれていたグループの人たちが、ねぎらいの言葉で迎えてくれた。
多分、自分にとってはこれが最初で最後であろう奥穂高岳から西穂高岳への縦走。
お世辞にも若いとは言えない年齢。加えて、まだまだ浅い登山歴も顧みずに、いささか無謀だった感は否めない今回の山行きだが、それも含めて、すばらしい経験をさせてもらったことに感謝。
お疲れさまでした
穂高岳山荘でお酒ご一緒した者です。
無事降りられたようで安心しました。
あの天気なら自分もジャンダルムピストンすればよかったと今思います。。
またお会いしたら呑みましょう!
その節はありがとうございました。
いろいろお話を伺うことができて楽しかったです。
やっぱり、私はちょっと甘く見ていたようですね。
年齢的なこともあるでしょうが、あのコースは私にはちょっときつかったです。
でも、山を歩く人なら一度は歩いてみたいコース。
これで満足しました。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」
もし、また登りたくなるようなことがあったら、その時はヘリの予約でもしておかないと・・・(笑)
また、何処かでお会いできるといいですね。
翌日に白出沢を上りテント泊で同じルートを縦走しました!
私は今回で四度目でしたが、ジャンダルムは行くたびに違った顔を見せてくれ飽きることがありません!
1up2downさんも最初で最後とは言わずまた行ってください
nekojigenさん、コメントありがとうございます。
あのコースを今回で4回目だなんて、私からしたら凄いです。
そう、あの時ジャンダルムの頂をスルーしなくて良かったと思っています。
でなかったら、今頃きっと後悔していたと思うので。
厳しい山ほど記憶に残るもの。
そのうち、また行きたくなってしまうんじゃないかと、ちょっと心配しています(笑)
念願の穂高縦走おめでとうございます!
レポ楽しく拝見しました。
穂高のテント場でお出会いしてから1年経ちましたね。
久しぶりに去年同じルートを歩いたことを思い出しました。
山行日は天気も本当に素晴らしく、ジャン日和でしたね。
この時期は天気に当たると雲も無く、空気も澄んで空と山とのコントラストが綺麗ですね。日頃の行いですか?いやそれなら。。。(笑)
このコースは一歩間違えば命を落とす危険なところなんですが、稜線の美しさや岩稜の迫力が魅力で人を惹き付けるんだなと、ここに来ないと見れない景色があるから行くんだなと1up2downさんの綺麗な写真を見てあらためて思いました。
次はこの逆コースなんていうのはどうですか?(笑)
そっちのほうがしんどいみたいですよ。。。
レポ見たらまた行きたくなってきました。
次は稜線上でビバークしてお酒(熱燗)飲みたいです。
いや〜、私はこのルートのことをちょっと甘く見ていたようです。
これまでに登った山は、厳しい山、そうでない山も大体予想していた範囲内だったように思うんですが、今回だけは違いました。
まず、出だしの馬の背でギャフンとやられました。撮った写真を後で見ると、少し離れて先行者がいるようですが、通過している間は自分一人だけという感じで「赤信号、みんなで渡れば・・・」じゃないですが、本当にヤバイと思いました。
その後も山あり谷ありの険しい岩稜帯の連続で、まさかこれほどまではと。
後は、年齢も年齢なので、もっと体を絞らないとダメだと思いました。
まだまだ若いつもりでも体は正直。こういう厳しい山ではごまかしが効きません。
そのためにはお酒も控えねば、とは思うんですが、RYOSUNさんと同じくこればかりはね(笑)
夏山ももう終わりですね。
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