羽後朝日岳 二ノ沢畚北西尾根〜部名垂沢右岸尾根 周回
- GPS
- --:--
- 距離
- 18.3km
- 登り
- 1,383m
- 下り
- 1,392m
コースタイム
天候 | 概ね晴れ 夕方小雪 |
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過去天気図(気象庁) | 2017年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・羽後朝日岳(1,376m)には夏道がなく、夏〜秋に部名垂(ヘナタレ)沢を登るか、積雪期に岩手県側から大荒沢岳を経て登ることが多いようだ。今回は秋田県仙北市から、羽後朝日岳の西に立つ二ノ沢畚(1,190m)への長い尾根を登り、包丁峰と呼ばれる細い稜線を経て山頂へ。下山は部名垂沢の右岸側、羽後朝日岳の北方に長く伸びる尾根を辿った。部名垂沢の左岸側尾根を登り、右岸側を下山する、反時計回りの周回ルート。 ・この周回ルートを、tooleさんは3年前に時計回りで踏破されている。またtooleさんのレコを見てみたいな・・ ・仙北市の一般廃棄物処分場までは、冬季も除雪されている。道幅は狭く、落石に注意。処分場手前の道路脇スペースに車を止めた。 ・南方へ伸びる林道を行く。スノーシューではカパカパ、雪の皮が割れる感じ。 ・八木沢には橋が架かっている。次の部名垂沢は渡渉する。まだ本格的な雪解けが始まっておらず、問題なく渡ることができた。 ・二ノ沢畚の北西に長く伸びる尾根(ダイゼン長根)の末端から取りついた。比較的傾斜が緩やかで、スノーシューで登るには適していると考えて選んだ。ところがこの尾根はヒバが多く、枝が引っかかったり、踏み抜きが多かったりと、必ずしも登りやすいとは言えない。尾根の後半になって、ようやくブナが増えてくる。 ・二ノ沢畚は羽後朝日岳を眺める絶好の展望台。そこから羽後朝日岳の北西の肩にかけて、包丁峰と名の付く通りの細い稜線が続く。特に左側の部名垂沢側は切れ落ちている。ただ上下降は少なく、ロープ等が必要な岩場はない。 ・下山にとった北方尾根(部名垂沢右岸尾根)にも細い所がある。支尾根を下っていく際は読図力が必要となる。一旦、地図には出ていない林道に出て、さらに少し先でショートカットのために八木沢へ向かって下りる。八木沢左岸側に残る林道跡に下り、朝通った八木沢の橋へ。この辺りは、3年前に歩いた経験、さらにその前年に下見に入った経験が生きた。 |
写真
装備
個人装備 |
登山靴+スノーシュー。登りの途中からワカン。アイゼンは持参したが使用せず。
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感想
長い尾根を登り終えて、ようやく二ノ沢畚山頂部に上がると、初めて目の前に羽後朝日岳が姿を現した。「おおっ、すごい」と思わず声が漏れる。羽後朝日岳の肩へ向けて細く伸びる稜線、部名垂沢へ鋭く流れ落ちる幾筋もの白い急斜面は、形容しがたいほどの美しさだ。羽後朝日岳はその右奥に一段高く、丸みを帯びた優美な姿を見せている。まさに女王と呼ぶに相応しい。夢中で何枚も写真を撮る。
時刻はもう正午を告げている。尾根取りつき7時の予定はクリアしていたが、二ノ沢畚11時の予定は大幅に過ぎ、本来なら引き返すべき時間だ。でも、もう少し先へ行ってみよう、登ってきたルートを戻るなら、急ぐ必要はないのだ・・
その時、右足を深く踏み抜いた。
これはもう止めとけ、という暗示なのか?
とりあえず、すぐそこの小ピークまで行ってみようと、一歩一歩足を前へ進める。稜線に上がっても雪面の沈み込みは変わらず、このまま進んでも、朝日岳山頂に着くのは午後2時を回るかもしれない。広い肩の辺りや下山で辿る稜線も沈み込みが大きかった場合、日没までに下山できるのか? 午後の腐れ雪で、下りでも体力の消耗は大きいだろう。
あれこれ考えつつも、足は一歩ずつ前へ進む。
これは危険な精神状態なのだろうか?
その時、もう一つの考えが頭に浮かんだ。
「ここを歩くのは、これで最後になるだろう」
二ノ沢畚へは、羽後朝日岳の姿を眺めるために登る、ということがあるかもしれない。岩手県側から羽後朝日岳へ登る機会もあるだろう。だけど二ノ沢畚と羽後朝日岳をつなぐ、包丁峰と呼ばれるこの細い稜線を歩くことは、おそらくもう無いだろう・・
ここを歩き通すには、十分な体力を要するから。
その稜線も半分を過ぎ、羽後朝日岳に登ってから北方尾根を帰るのだという気持ちが固まった。登り傾斜となり、風が次第に強くなる。時折、雪庇の周りを雪煙が舞っている。
肩にザックを置き、空身で山頂へ向かう。朝日沢側から吹き上がる風が強くて、顔を前へ向けていられない。だけどここまで来たら危険個所はないから、山頂まで行くだけだ。5度目の羽後朝日岳山頂に着いた。
下山は北方尾根(部名垂沢右岸尾根)へ。3年前に往復で歩いた経験が大きかった。下部では3年前とは違うルートをとった。P528を過ぎてから一時判別が付かなくなったが、方向だけ合わせて、杉林の尾根を選び進む。時間はかかったが焦りはなく、結果オーライ。
暗くなった林道をヘッドランプを点けて歩く。目いっぱい歩いた充実感に満たされた。
コメント
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kamadamさん
13時間にも及ぶ雪山山行お疲れさまでした。
羽後朝日岳。kamadamさんと和賀岳に登ったときに「あれが羽後朝日岳という山です。」と教えてもらった日から、密かに、私もいつか登ってみたいと思っている山です。🤗
kamadamさんはもう5回ものぼったんですね。
予定時刻を過ぎてからのくだり、ちょっとハラハラしながら読みました。
午後からのグザグザ雪にも負けず、無事下山さすがです。過去4度の経験があってこそと思いました。
で、翌日の筋肉痛は大丈夫?😁
13時間もかかってしまいました nyororoさんのようなスピードはとてもでません 自分で牛の歩みだな・・と思いながら歩いてました。牛に失礼?
筋肉を休ませながらの歩みなので、筋肉痛はないのです
登り下り共、急斜面はほとんどありませんし。
nyororoさんの男鹿岳、登り辛さが伝わってきました
でも驚きあきれたのは 往復17キロの林道歩き・・お疲れ様!
kamadam さん、こんにちは。
長い尾根歩き・・・ご苦労さまでした。
どの写真も息をのむような圧倒的なすばらしい写真です。
どれも簡単に行ってみたいとは言えない・・・
個性と迫力があります。
そうですね・・・
二ノ沢畚山頂部から眺める羽後朝日岳・・・
声を上げてしまう気持ちが分かります。
すばらしいの一言では表現できません。
それに長い時間・・・の歩き・・・
目いっぱい歩いた充実感・・・
kamadam さんの底力というか・・・
パワーを感じました。
本当に素晴らしいレコです。
私は安易な岩手側からアプローチを検討しています。
ご苦労さまでした。
コメントありがとうございます。
年度末を迎え、ますますお忙しいのでは・・と拝察しています。
登りにとったルートからだと、秋田駒は左手に時々見えるのですが、羽後朝日岳は二ノ沢畚に立つまで見えないんですよ。上がるとドーンと目の前に現れるので、尚更感動します。
和賀岳からだと優美な姿ですが、二ノ沢畚からだと険しい顔も見せてくれる。女王は優しいだけではないということでしょうか。
私も積雪期に岩手側から登ったことがありません。
危険個所はあまりないとは思いますが、日帰りだと相当長い行程ですね。
林道の雪消え・稜線の雪面の締まり具合など、条件に恵まれなければ、なかなか大変かと思います。
今回は充実感に満たされましたが、翌日はほとんど動けませんでした
こんにちわ
和賀、朝日山域はkamadam さんの庭とは言え、包丁峰など壮絶なルートの踏破、遣りましたね。流石にプロ級の貴兄らしいです。
「ここを歩くのは、これが最後になるだろう」・・は間違いなく危険な 精神状態ですよ。(笑)
そう言う私も近年は年々の体力低下や単独事故等欲と不安の葛藤の中で歩き続けることが増えているので、他人様に言えた義理ではありませんが・・。ただこの緊張感には堪らないものがありますね。(←何をバカなことを言っとるんじゃ、お前は!笑)
羽後朝日は夢で終わりそうですが、レコで存分に堪能させて頂きました。
やっぱり危険な精神状態でしたか
これ以上進んではいけないと、まともなセンサーが黄信号を点滅させているのに、それを無理やり青信号に変えようと、「これが最後になるだろう」などとという理屈を考え出したのでしょう。不安というセンサーを鎮めるために、自分の行為を正当化する理屈を持ってきたということですね。
二ノ沢畚に立った段階では風が弱かった、下山にとるルートは経験済みで、その点はあまり不安はなかったという状況はあるにしても。
若い頃に10歩けたものを8ぐらいに留めておく・・その時に「これが最後」という声が聞こえてきたら、要注意ですね。
やっぱり師匠と呼ばせてくださいー
あの風の強い、雪ふかふかの日に
kamadamさんはちゃんと羽後朝日岳のピークにいらっしゃったんですね〜
私にはとてもとても辿り着けないとさっさと下山してしまいましたが
靴中さえ濡れていなければ気力で沢尻岳に行ったかもしれません
沢尻岳から羽後朝日に立つkamadamさんの姿を見たかったなぁと
残念でなりません
今まで眺めるだけのピーク、いつになったら行けるのかわかりませんが
気力と体力を充実させてまたアタックします
(私は筋肉痛三日間は続きましたよ )
私が羽後朝日岳の山頂に立った時間はだいぶ遅いので、meikenさんの姿を見つけることはできなかったでしょう。
でもmeikenさんがもしも羽後朝日岳まで頑張っていたら、ちょうど山頂でお会いしてたかも
羽後朝日岳へ日帰りというのは、条件が良くないとなかなか大変ですね。
再挑戦の山があるのは幸せですね。
私も今年、地味な山ですが再挑戦を狙っています
新品、壊しちゃったんですね 歩き方が凄まじいのでしょうか でもkamadamさんにはワカンと長靴が似合いそうな感じ
志戸内畚は一度歩いてみたいので、下りに使われた尾根に興味あります。包丁峰ほどではないが、細尾根があるのですね、困った。
ところでうちの連れも、先日の山でアイゼン片方落としちゃいましたよ。今シーズンこれからという時ですので、取りに行くか買うか迷っています。
こんばんは。
アイゼン落とす・・って、落ちるような急斜面でということですよね
大丈夫でしたか?
取りに行くというのも、沢底や藪の中に落ちて、大変なのではないでしょうか。
私のスノーシューは昨冬、ホームセンターで購入した安物なので、正直よく持ったな・・という感じです。まだ修理に出していませんが(修理可能かどうかもわかりませんが)、また購入するにしても来シーズンですね。
また安物(安くもないですが)にして、林道歩きだけに留めるかもしれません
北方尾根の細い所ですが、切れ落ちているのは片方だけで、反対側を歩くことは可能です。歩きづらいですが、距離は長くありません。
志度内畚ですが、五番森を越えて生保内川を渡渉し、尾根を登るというルートを考えていました。日帰りは無理なので、計画だけに終わりそうですが・・
kamadamさん、ご無沙汰しておりました。
ここのナイフリッジ登行は二度目でしたね。
以前の藪漕ぎと違ってまっさらな状態で、さぞかし雪も深かっただろうと推察いたします。
僕はこの稜線が近場では指折りのお気に入りですが、そう簡単には入れない山域ですね。計画した段階で相当の覚悟を要するコースかなぁ、と思います。
林道歩きの充実感、僕もあの時の思いがよみがえりました。
今年はぼちぼち山歩き再開します。
tooleさん、お久しぶり 元気でしたか?
あんまり姿が見えないので、今日あたり連絡してみようかな・・なんて考えていたんですよ。忙しいとは思いますが、たまにはtooleワールドを見せてくださいね
tooleさんが北東北で屈指の美しい稜線と表現した二ノ沢畚からの羽後朝日岳、今回は本当に魅せられてしまいました。
実は若い頃に、途中幕営して初めて羽後朝日に登った際もこの稜線を辿りましたので、今回で3度目になるのですが、やはり新雪をまとった今回が一番美しく感じましたね。
昔登ったのは4月、雪がよく締まっていて、アイゼンが有効でした。
右手の朝日沢の深い沢筋を挟んで、羽後朝日岳から延々と伸びる支尾根の雄大さに感動し、山形の「朝日連峰のようだ・・」と口走ったのを、今でも覚えています。
(朝日連峰は夏しか行ったことないけど )
二ノ沢畚に上がるまでが一苦労なので、この姿を見ることができた私たちは幸いですね。
さて、ようやくtooleさんのレコが見れそう・・楽しみです
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