唐松〜五竜〜遠見尾根(過去レコです)。
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- GPS
- 32:00
- 距離
- 16.9km
- 登り
- 1,709m
- 下り
- 2,012m
天候 | 1日目 雨。 2日目 曇り。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2008年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
タクシー 自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
それなりに危険個所あり。 |
写真
感想
2008年9月、唐松岳から五竜岳に登る事にした。八方尾根から登り、唐松岳から牛首を経由して五竜岳へ縦走、そして大遠見尾根を下るコースだ。「日本三百名山登山ガイド」では、一日目は唐松岳頂上山荘、二日目は五竜山荘と、いずれも山中2泊の行程が書かれているが、唐松岳頂上山荘一泊で登ることにした。9月13日、朝5時に出発。中央道から長野道を走り、高速道路を豊科ICでおり、木崎湖、青木湖を横目に白馬村に至る。白馬五竜スキー場に車を置き、山登りの仕度をする。台風が沖縄辺りをうろついているせいか、天気予報は外れて今日は雨。カッパ、雨帽子、スパッツを着けてタクシーに乗り込み、八方尾根スキー場のゴンドラ山麓駅まで。タクシーの運ちゃん、「昨日までは良い天気が続いていたのに」とか、「白馬大雪渓で事故があったので、その分が唐松岳に押し寄せ、今晩は山荘は一杯だろう」とか、嬉しくない話しばかりする。ゴンドラとリフト2本を乗り継いで八方池山荘へ、ここはもう標高1500m。10時24分、石畳の遊歩道に入ると、道はすぐに左右に分かれる。前を行く三人連れが左側の道に行くので、わたしもそれについて左側へ。きっちりと敷き詰められた石畳は、八方山をゆるやかに巻いて登る道だが雨に濡れ滑りやすそう。これをゆっくりゆっくり登る。45分程で第2ケルンに到着。石畳の道をさらに7〜8分登り、八方ケルンへ。ここで石畳は終わり、10分ほど登ると右手に八方池が見える広場に出る。腰を下ろし、コンビニで買ったオムスビとお稲荷さんを取り出して昼食とする。団体さんを引き連れたガイドが山の説明をしている。白馬、杓子、白馬鑓と白馬三山は雲の中、その左手に不帰の嶮が連なっている。とんがり頭の1峰の右手が、彼の不帰のキレット。フムフム、成る程と、オムスビを頬張りながら聞く。池の周りを観光客が連なって巡っている。行く手に見える丸い山、きっと丸山に違いない。あの山の向こうに唐松岳があるのだろうが、雲の中、何も見えない。第3ケルンを過ぎるともう観光客の姿は無いが、登山者は続々とやって来る。しばらく尾根道を登り、次いで斜面をジグザグに登る。その名も、「下の樺」、「上の樺」、太いダケカンバが幹を曲げ、様々な様相を呈している。まだ紅葉には早いが、そろそろ黄色に色づき始めた葉っぱもある。第3ケルンから1時間40分、ケルンの立つ丸山に到着。不帰の嶮から続く雪渓と荒々しい岸壁が間近かに迫る。ハイマツの八方尾根をさらに登ると丸太が組まれた「桟橋」があり、何てことは無いただの木橋なのだが、岸壁に鎖が取り付けられている。鎖につかまる必要は全く無いが、こんな所からも落ちた人があり、鎖は注意を促す為にあるようだ。やがてガレ場となり、これを登って稜線に上がると団体さんが休んでいる。ほんの少し先、ガスの中に赤い屋根が浮かんでいるように見える。ガスが流れ、間違いなく小屋であることが判る。小屋を目の前にして休憩していたとは知らなかった団体さんは、一斉に立ち上がり、喜んで小屋に向かう。14時16分、八方池山荘から4時間弱、ほぼコースタイム通りの登りであった。唐松岳頂上山荘で受付けをし、割り当てられた別棟のひと区画、6人が並んで寝ることになるが、敷布団は二人に一枚、着布団は一人一枚。まあ余裕で寝ることが出来そうだ。壁際に寝床を確保し、荷物を置いて手ぶらで唐松岳に登ることにする。頂上まで20分。山頂からの眺めは只一色、どちらを見ても乳白色の世界。山荘に戻り、布団のうえにつまみを広げ、一本550円也の缶ビール、持参のウイスキーでいい気持ち。ひと寝入りして5時40分から食堂で夕食。夕食後はすることが無いので布団にもぐり込むが、こんな早くから、おまけに話し声が続き眠れるわけが無い。消灯後はあちこちから色んな音色のイビキが聞こえ、おばちゃんの唸り声も。いつものように眠ったのか眠っていないのか、明日は雨が降れば八方尾根を下ればいいし、雨でなければ五竜を横目に遠見尾根を下ればいい。元気があれば五竜にも登っていいが、きっとそれは無理だろう、とか考えながら長い夜が過ぎていった。
翌朝4時頃からガサゴソと周りが騒がしくなり、寝ていられなくなって4時半に起きる。5時半から朝食、6時に山荘を発つ。周り一面乳白色の世界。牛首の岩場は赤っぽい岩の痩せ尾根。今年はすでに2件の転落があったと聞いているので、ストックをたたんでザックに片付ける。両手がフリーとなって三点支持、掴んだ岩は剥がれないかとひとつひとつ確かめながら這い上がる。これが、「初心者の登山コース」か? ガスの中、矢印、○印に従って進む。牛首の下り、鎖に身をあずけ、足の置き場を見極め、スリルと幸せを感じながら下る。ガレ場となり、もう鎖場も終わったかと思う間もなく、またまた鎖の連続。う〜、ん、楽し〜〜い。「この先岩場の下りで転落多発」の看板がある岩場を登る。この岩場を下るともう鎖場は終わり、ハイマツの中をジグザグに下る。鞍部から大黒岳への短い登り、頂上を巻いて急坂を下る。時々雲を冠った劔が姿をチラホラと見せ始め、急にガスが流れ陽が差し込み、突然、行く手に五竜が朝陽を浴びて、「岩のコブだらけの筋骨隆々、ゴツゴツした荒々しい」山容を現す。始めて姿を見せた五竜は、思い描いていた山とは大違い、目を見張るばかりの迫力ある男性的な山であった。陽は陰ったり照ったりを繰り返し、五竜はその度に雲の中に入ったり、姿を現したり。汗も出始めたのでカッパを脱いで気分を新たに登り続ける。黒部側の谷に光輪が現れ、わたしの長い影がそれに向かって伸び、わたしの頭が虹の輪の中に入る。ガスは薄いがブロッケン現象に遭遇し、大喜び。稜線を進み、ハイマツの中をジグザグに白岳へ登ると、遠見尾根との分岐に至る。ここからはもう五竜山荘の赤い屋根が見おろせる。唐松岳頂上山荘から2時間半ほどの行程であった。まだまだ元気一杯、五竜の山頂を目指すことにする。山荘前の広場に腰を下ろし、ザックからサブザックを取り出してカッパと水を詰め込む。広い稜線に、トラバース気味に道が続いているのが見える。でも目指す五竜はガスの中。ガレ場の道は徐々に傾斜を増し、行く手を露岩が阻む。ダブルストックを束ねて片手に持ち、鎖を握って岩肌に挑む。岩に書かれた○印や矢印を見失わないように、三点支持で登る。鎖場を一つ越え、再び巻くようにガレ場を登る。切り立った崖の細い道を慎重に渡る。と、また鎖場が現れる。大岩をいくつも這い上がり、左手に八峰キレットへの道を分けると、間もなく五竜頂上に到着。山荘から55分、岩を掴んで鎖を握って、露岩を這い上がり、この猛々しい山の頂に立ったことに満足。周り一面乳白色、な〜んも見えないが、まずは目的を達成した喜びにひたる。何も見えないところに長居は無用、慎重に岩壁を下る。ガレの急斜面、ゴロゴロと云う音がし、上の方から、「ラクー!」。わたしの横を、直径20cmほどの石が跳ね落ちて行った。クワバラクワバラ。唐松岳を眺めながらの下りではあるが、とうとうその頂上が姿を見せることは無かった。五竜山荘に入ってコーヒーを飲みながらひと休み。店番に、「テレキャビンの最終は何時か?」と聞くと、「4時15分」と答える。ん? わたしの予定では4時半にアルプス平駅に着くことになっている。こりゃちょっとヤバイと思ったが、予定より1時間早く山荘に戻っているので、ゆっくり下っても4時半までには着けるだろう。山荘を出て白岳に登り、頂上で靴紐を締めなおす。いよいよ遠見尾根の始まりである。ハシゴや鎖のかかった岩場、でも鎖に頼るほどのものでもない。岩混じりの登山道を下ったり登ったり。右手、カクネ里にたっぷりと雪を残した鹿島槍が姿を見せるが、頂上はず〜っと雲の中。西遠見を過ぎると、広場で人が休んでいる。振り返れば五竜がそそり立ち、西遠見ノ池の水面にその勇姿をくっきりと写し出している。急な下りは無くなり、狭い尾根を通ったり、尾根を巻いたり登ったり。とにかく長い尾根である。大遠見を過ぎ、中遠見でベンチに座ってひと休み。唐松山荘が作ってくれた弁当を取り出して昼食とする。ダケカンバの向こうに鹿島槍が見えるが、やはり頂上の槍は姿を見せない。再び尾根を下る。下るというより水平道を進むだけ、行き交う人も元気一杯、ということはまだしばらくこの水平道は続きそう。ウンザリするほど尾根歩きを味わい、小遠見、そして「二ノ背髪」、「一ノ背髪」を過ぎ、「地蔵の頭」に至ると観光客の姿も見え始め、木の階段を走り下る。高山植物園のコンクリートの道を、これまた走り下ってテレキャビンのアルプスだいら駅へ辿り着いたのは14時49分であった。唐松岳頂上山荘を出てから、8時間45分の道のりであった。レストハウスで飲んだ生ビールの旨かったこと。
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