冬山強風の編笠山、頂上目前で撤退、生還
- GPS
- 06:00
- 距離
- 8.0km
- 登り
- 1,160m
- 下り
- 1,157m
コースタイム
天候 | 曇り、のち、晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
岩場より上は、風速15−20mクラスの強風でした。気温は-5度ぐらい。 |
写真
感想
昨日は、雨が降りました。多分、山の上は雪だったでしょう。ということで、今年初の雪山を楽しみに行きたいと思います。ただ、本日も八ヶ岳の上は、天候が悪いようです。南から天気が良くなることが多いので、南に位置する編笠山に行きたいと思います。良ければ、青年小屋、のろし場、西岳とまわりたいな、と甘い見通しを立ててました。
富士見高原を9時半スタート。当然ですが、だれもいません。2100mから雪が出現。だれもいないと思ったら、降りてくる人がいます。頂上手前で、強風のため引き返してきたとおっしゃってました。話をしていると、ろれつが回っていないことを発見。林の中でもかなり風が強く寒いです。軽度の低体温症か?これはまずいと思いお昼にします。暖かいラーメンを食べ、厚着をします。2300mぐらいからは、雪もかなり積もっています。
2400m、岩場の下にでます。ここからダブルストックをしまいピッケルデビュー。でも、かなり上りづらいです。ここで戻ろうかとも思いましたが、折角来たので、50m先ぐらいに見える標識まで行って見ます。標識に着くと、頑張ってと書いてます。ついつい頑張って、-5℃の強風の中30分程度登ってしまいました。頂上まで、あとわずか。でも風が強く吹き飛ばされそう。風速20m程度ありそうです。ふと、しゃべってみると、ろれつが怪しい。また、体もかなりヘタッてます。
これはヤバイと即座に撤退を判断。下り始めると足もおぼつきません。それでも、一足一足大声で自分を鼓舞します。”よし、そこに足をかけろ”とか、”そこの岩、気をつけろ”とか。なんとか、13分で岩場の下の風がないところまで戻ってこれました。ここまで降りると一安心。バナナを食べ、景色を楽しむ余裕がでます。
どんどん下ってゆき、急斜面を下り終えると、かなり安心。冬装備をはずし、一休みします。そこからは、晩秋の山歩き、特に危険はなし。駐車場に戻り、車で帰宅途中、八ヶ岳がよく見えました。皆、雪化粧をまとっています。本日は全山、冬山モードだったようです。
本日は撤退判断が遅れ、山を始めた2年半でもっとも危険な山行きでした。ともかく無理をしない、余裕をもってさっさと撤退する、ことの重要性が身にしみました。家族のためにも、今後それを徹底したいと思います。
P.S.
翌日月曜日、ひどい筋肉痛のため階段が下りれない足を引きずりながら、昨日、あやうく死にかけた原因を考えています。−5℃、20mの強風の岩場を登る前から、すでに低体温症になっていたのが主原因ではと今は考えています。また、このレベルの筋肉痛は、2年半前の登山デビューの赤岳、この春に13時間八ヶ岳を歩いて以来、3度目です。3日間は直らないでしょう。でも、たった13分間の下りで、これだけの筋肉痛を起こすぐらい足を酷使したおかげて、生きて戻ってこれたのだと、筋肉痛を起こし歩けない足に感謝しています。
以下、自戒の念を込め、詳細を記載したいと思います。
昨日の編笠山は、山の中腹の林間でも−2.5℃の風が強かったです。ただ、風が強いエリアと無風エリアが入り混じり、無風エリアでは汗をかくが、強風エリアでは寒いという状態でした。こまめに服を着たり脱いだりしたが、とても追いつかない。2200m付近で、下山者とすれ違いました。その時、ろれつが回らない状態だったので、すでにそこで低体温症になっていたと推測されます。
さすがにまずいと思い、熱いカップラーメンを食べ、汁もできるだけのみ、服も汗かかない程度に厚着をしたが、一度落ちた体温は、その程度では完全には回復しなかったのでしょう。吹きさらしの岩場下につき、岩場を上り始めて、小さな異常に気がつきました。”足が冷たい?”、去年、-15℃以下の冬山を数回登りましたが、足が冷たいことは一度もなかった(すいません、夏靴です)。今から思うと、体が芯から冷え血液が冷えたため、足が冷たいと感じたのでしょう。ここで、すでに自分は低体温症になっている、という自覚がまったくなく、いつもと同じつもりで強風と雪の岩場を上り始めたのが、敗因です。
体は正直で、岩場下についたとき、いつもほど体に気合が入ってないので、ここで撤退しようか迷いました。また、中途半端に雪のついた岩場は、とても登り辛いです。風も強く、装備も厳寒期の-20℃のフル装備までは持ってきてません(ゴーグルなし、オーバーミトンなし、フリースは薄め、オーバーズボンも薄め)。それでも、目出し帽は持ってきたし、風が強くても−5℃ぐらいなら、この装備でも行けるはず、と上り始めてしまいました。頂上まで行くつもりはなかったのですが、50m先ぐらいに見えた看板までという目標で。
50m先の看板には案外簡単に着きました。次の50m先の看板が見えます。看板には、頑張って、と書いてあります。それではさらに行くかといってみると、次の看板にもつきます。さらに次の看板も見えます。また、先ほどすれ違った人の足跡もまだ続いています。まだいけるはず(これが2番目の敗因です)、と思い上り始めると、途中で足跡が消滅。引き返したのでしょう。さらに登ってゆくと風で体ごと吹き飛ばされそうです。ふと見ると次の看板が横にあります。また、岩場の傾斜も緩み、もうすぐ頂上です。
でも、そこでなんかヤバイ感じがしました。声を出すと、ろれつが回っていない感じです。とてもやばい、低体温症発症か?と焦りました。頂上目前ですが、写真を数枚とって引き返します。低体温症の場合、エネルギーを取らなきゃとも思いましたが、バナナを食べる暇があったら一刻も早く風から逃げなきゃ、また、足を動かしつづけ、エネルギーを出し発熱をさせないと。
すぐ下山始めましたが、足が思ったように動きません。登りは、ゆっくりゆっくりとお尻の筋肉をつかいながら登ってきましたが、下ろうとしても、足がもつれ、思うように歩けません(完全に飲みすぎの症状と一致してました。口はろれつが回らない、足が千鳥足になる。意識ははっきりしているつもりですが。)。これはまずい、これが低体温症か。GWに白馬岳で遭難された方々も、こんな状況に陥って、最後は歩けなくなったのか。あと30分もここに居たら私も歩けなくなるだろう。その後は、風避けもない吹きさらしの岩場では一晩どころか夕方までの3−4時間もあれば凍死するだろう、と感じました。なお、寒くはありませんでした。震えもありません。低体温症だと気がつきませんでした。このままここにいたら、そのうち熱く感じて服でもぬぐのかな、とも思いました。
足が動かないなら、尻や背中で滑ってころげ降りるか、とも考えましたが、そんなやり方では残り数100mの岩場はとても降りれない。途中で穴にはまったり、ケガをして身動きできなくなるのがおちだ。そんな安易な手を使ってはいけない。思うように動かなくても、家族の元に戻るには、かろうじて動く両足を無理にでも動かして降りるしかないと決意しました。
両足を動かすには、ともかく気合しかありません。一足、一足ごとに、全力で叫びました。”降りるぞ!”、”歩け!”、”頑張れ!”、”戻るんだ!”。もつれる足を大声で鼓舞しながら、歩きます。ろれつがまわらない口ですが、ろれつがまわるように、口や顔から少しでも発熱するようにという思いも込めて、大声で叫びます。ハイマツの上を歩き、ゴロゴロした岩場に差し掛かかります。おぼつかない足が、変な穴や割れ目にはまったりすると、それも致命的です。そうならないよう、一足、一足、”そこの岩に気をつけろ!”、”次はその岩に足をかけろ!”と、大声で足に指示しながら歩きます。
気がつくと、風を避けれる岩場の下に着いてました。あとで写真の時刻を見ると、岩場の下を出てから頂上下まで約30分、そこから岩場の下に戻るまで13分ぐらいだったようです。風を避けれることで、ほっと一息ついて、さっそく熱エネルギーの元としてバナナを食べました。お腹は空いてないですが。
反省点を2点にまとめると、
・ すでに2200mでのろれつが回ってない状態で、低体温症になっていた。ラーメン食べ、厚着したことで大丈夫と考えたのが、甘い。冷え切った体は、簡単には戻らない。(その時は、ろれつが回るようになり、OKと思ってしまった)
・ 岩場の下で戻ろうと思っていたのに、ついつい登ってしまった。さらに悪いことに、看板を見て、もう1つ、もう1つ、と欲を出し、手遅れになる寸前まで登ってしまった。あと、風が少々強くても編笠山ぐらいのぼれるだろ、とか山をなめていた慢心も若干あります。ここが一番の反省点です。
上記のように自分の状態を正確に把握できず、ついつい欲を出して登ってしまい、結果的に、余裕を持った行動どころか、あやうく死にかけた。危ない橋は渡らない、家族に胸を張って安全だと言える山登りしかしない、がモットーだったのに。
自戒を込めて正直に書きました。
これを読んだヤマレコの皆さんも、ご注意いただければ幸いです。
コメント
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totoroさん、お疲れ様でした〜
レコを拝見してると、なんかヤバそうだったみたいじゃないですか
明日は我が身ですが、無理せず楽しみましょう
それにしても、紺碧の空に白銀の八ヶ岳の写真が美し過ぎます。。。
おはようございます♪
もう少しもう少し・・・ ってズルズル行ってしまうんですよね。
山での強風はバランスを崩すし体感気温を一気に下げますから一番怖いです。
ヤバそうな時に大声出して自分を奮起させるっては私も覚えておきます!
その現象、先日14日の薬師ヶ岳山頂付近で経験しました。
普通にしゃべっているつもりでも、まるで酔っているようになっている。!
その時は単に寒すぎて滑舌が悪くなっただけだと思っていましたが、これはやはり低体温症などの現象なのでしょうか。
「一足一足大声で自分を鼓舞します。”よし、そこに足をかけろ”とか、”そこの岩、気をつけろ”とか。」
なるほど参考になりました。私も実践したい。
また、「頂上は目前、50mもないですが、引き返します。頂上まで行くと、生命の危険を感じる。」という的確な判断も見習いたいです。
トトロさん、レコを拝見すると、結構やばかったことが
伝わってきます。なるほど、声をだす!
バナナもエネルギー補給になりますよね。
強風の編笠山お疲れ様でした。風速20m強あったんじゃないですか?体感温度は-20℃くらいありそうですね。
無事の下山何よりです。
色々な事象、参考にさせていただきます。
しかし、この時期の八ヶ岳は人がいないんですね
今日一日反省した内容を、本文の感想に追記しました。詳細な状況も含めました。よろしければ、ご参照ください。
私もいつも、無理せず山を楽しんでいたつもりだったのですが、知らないうちに無理をしてしまいました。
紺碧の空に白銀の八ヶ岳、編笠山の頂上で、屍とならなくてよかったです。
でも、また懲りずに冬山行きます!
もう少しもう少し・・・ ってズルズル行ってしまいました。典型的な、はまるパターンでした。
山での強風はバランスを崩すし体感気温を一気に下げますから一番怖いのはわかっているつもりでしたが、結局わかってませんでした。
身にしみました。死ななくてよかったです。
”先日14日の薬師ヶ岳山頂付近で経験しました。
普通にしゃべっているつもりでも、まるで酔っているようになっている。!”
pasocomさんも経験者ですね。Webで検索すると軽度の低体温症の症状として上がってました。
もし、頂上まで行っていたら、本当に戻ってこれなかったかもしれないです。あと5−10分ない程度でしたが。帰りに全滅した、南極のスコット隊のように。
ともかく岩場の下、風の当たらないところに戻り、山バナナを食べたときには、”あー、エネルギー補給もできたし、これで家に戻れる”と思いました。
気温−5℃、湿度40%、風速20mとして、
ミスナールの体感温度を計算すると、
−23℃となります。風はとても効きます。
わかってはいたが、登ってしまった...
八ヶ岳は気温の低さはすごくて
−20度は厳冬期はあたりまえみたいですよね。
自分も去年編笠の山頂で耳が軽い凍傷になりました。
とくにルートを拝見すると岩場から登る形でしたよね。
今年は雪が早く降っている印象なので冬装備も必要で
ご無事でなによりでした。
そして後日談でかかれてることは皆さんにとってとても役に立つと思います。おつかれさまでした。
編笠山は、夏は比較的初心者でも登れる山なのですが、冬になると人もすくなくトレースも消えがちで、風と雪が直撃する厳しい山に変わる印象があります。特に本岩場ルートは。11月といえども、冬山に挑むからには、きちっとフル装備をしてゆく必要性が身にしみました。
後日談、お役にたてればうれしいです。強風の山頂近く単独で、下るための腿の筋肉がうまく動かなくなった時は、半分覚悟を決めました。
21日に登ってきました、下は快晴でしたが、頂上直近からガス雲風になり写真だけ何とかとりすぐ降りて森林地帯に入ってから昼食にしました。早めにご飯を撮ることもだいじですね、バナナもいいですね、今思うと私は服装も装備も食料も非常に甘く、ぞっとしました。コレではまだまだ冬山には行ってはダメと自分に言い聞かせています。 夏の編みとは飛んでもちがうのですね、白州の別荘から編みや西や赤をまいにちみていたのですが、 本当に記事ありがとうございました。白州のkitasannから
1年前のレコにコメントありがとうございます。kitasanさんの編笠山レコはすでに読ませていただいてます。美しい夕焼けの写真が豊富ですね。
夏は子供連れでも登れる編笠山ですが、冬は人もいず、冬山中級と言われている硫黄岳や天狗岳より危険な感じがします。冬登るなら、お気をつけて。夏と違い、冬山はヤバイと思ったときは手遅れとなります。特に単独は。
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