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Yamareco

記録ID: 2517410
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
甲信越

悪沢岳、赤石岳、(伝付峠越え)

1995年08月11日(金) ~ 1995年08月15日(火)
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littletrekker その他3人
GPS
208:00
距離
38.2km
登り
4,827m
下り
5,042m

コースタイム

 南アルプスの中でひときは奥深く、その頂きが遠い山。赤石岳はそんな山である。南アルプス北部の盟主が北岳だとすれば、南のそれは赤石岳と言っていいだろう。赤石への一般的なアプローチは、静岡側から大井川に沿って東海フォレストのバスで椹島まで入り、ここから尾根を詰めていくルートであるが、東京起点の夏の道路事情もあって、身延側から転付峠を越えていくルートを採ることにした。この転付峠は、北アルプスに例えれば上高地へ入る際の徳本峠にあたる峠で、南アルプス南部の領域に入山する、古典的なルートでもある。
 田代入口から林道を広河原まで入り、ここからいよいよ登山道となる。登山道入口には「至転付峠」の標識があり、近くに車を停めて、ここから内河内川に沿って歩き始めた。この川沿いの道は東京電力の巡視路にもなっており、よく整備された歩き易い道で、水音に涼を感じながら歩き進むことが出来た。所々「蜀の桟道」を思わせる箇所もあるが、危険な所は無い。川と別れ、縦走の重い荷物に喘ぎながら「つづら折」の坂を登りきると、「転付峠」に到着である。峠の手前には良い水場もあった。 
 峠から二軒小屋に向かって出発しようとすると、下の方からチリンチリンと聞き覚えのある鈴の音が登ってきた。「どこかでお会いしましたっけ...」「先週、千丈岳にいらっしゃいました?」そう、ここで出会ったのは、前の週に千丈岳に登った時、大平山荘前で会話を交わした、日本縦断に挑戦している登山者だった。聞けばそれから、南アルプスを聖岳まで南下し、取って返して下部から富士山を越えて、駿河湾を目指すのだそうである。自分達が下界で生活していた一週間の間、ずっと山を歩きつづけていた事を考えると、「すごい」と言う驚嘆の念が湧き上がると同時に、これから先の道中の無事を、祈らずにはいられなかった。
 峠から二軒小屋までは、内河内川から稼いだ600mの標高を、そっくりはき出してしまう一気の下りとなる。登山口から約6時間、1日目の幕営地「二軒小屋」へ到着した。二軒小屋周辺は、スイスアルプスの絵葉書に出てくるような景観が広がっている。盛夏であるにもかかわらず、人も少なく静かなキャンプ場であった。明日からの本格的な縦走に備えて、早く床に就くことにした。

 二軒小屋から千枚岳に向かっては、標高差1500mを登る急登の尾根道が続く。尾根の取り付きが近年付け変わり、現在はトンネルを越えて上流に掛けられた橋を渡り、尾根に取り付く様になっているが、私達が登った時には、放水路の直ぐ先の橋を渡り尾根に取り付いた。大抵の尾根道は、取り付いて1時間も登ると傾斜が緩くなるものだが、この千枚岳への東尾根は、登れども登れども傾斜が緩くならない。「高度を稼いでいる」のが実感できる登山道に、いい加減あきてきた頃、木々の間から転付峠から笊ヶ岳に至る稜線が望めるようになった。時折覗く展望を楽しみに、何とか千枚岳の肩まで到達、花畑の中を下って2日目の幕営地「千枚小屋」へと向かうことにした。
 入山3日目、今日はいよいよ千枚岳から悪沢岳を越えて赤石岳迄の、標高3000mの稜線を辿る縦走である。森林限界を超えたこの稜線からは、南アルプスの大展望が望める...筈であったが、今日はあいにくの曇空。大きな雲の塊が次々とやって来て、期待した展望を得る事は出来なかった。代わりに、雷鳥の親子が出迎えてくれた。最近は人間が苛める事が無いのか、近寄っても逃げていかない。むしろ人気のある登山道周辺の方が、天敵から身を守るのに良いのであろうか。
 大聖寺平を越えて超えて小赤石に取り付く辺りで、漸く雲間から赤石岳が姿を現した。山塊が大きく重厚な感じのする山容である。曇り空のおかげで展望は得られなかったが、強い日差しも無かったおかげで、歩くのには快適な温度で、水も思った程は消費していない。昼食を取った荒川小屋で、水を満タンに補給した事もあって、今日は赤石山頂直下の避難小屋で泊る事にした。それに「3000mの稜線からの大展望を見ずに、山を下り難かった。」のである。
 翌朝、早目に支度を整えた私達は、赤石山頂で日の出を待った。ひんやりとした空気が肌に冷たい。風も無い静寂な中、静かに日が昇ってくる。紫がかった天空にパッと光が射す瞬間、思わず「御来光」に手を合わせる。山肌が次第に色彩を帯びてくる。振り返ると、雲海に向かって「影赤石」が伸びていた。
 山頂で荘厳な「山の日の出」に立ち会った私達は、赤石南斜面の美しいカール地形を楽しみながら、赤石小屋を経由して大倉尾根を椹島へと下山した。
天候 晴れ
アクセス
利用交通機関:
自家用車
広河原から伝付峠を越えて二軒小屋へ。此処から悪沢岳・赤石岳を登り椹島へ下山。
広河原の登山道入口。
広河原の登山道入口。
内河内川沿いの登山道。
内河内川沿いの登山道。
伝付峠で一休み。
伝付峠で一休み。
伝付峠付近から見た千枚岳。
伝付峠付近から見た千枚岳。
二軒小屋とキャンプ場。
二軒小屋とキャンプ場。
千枚岳を望む。
縦走路で出会った雷鳥。
縦走路で出会った雷鳥。
悪沢岳の山頂にて。
2020年09月03日 13:28撮影 by  EP-802A, SEIKO EPSON CORP.
9/3 13:28
悪沢岳の山頂にて。
岩壁を下る。
雲間から赤石岳。
雲間から赤石岳。
赤石岳の日の出。
赤石岳の日の出。
日が差し始めた山頂で。
日が差し始めた山頂で。
雲海に映る影赤石。
雲海に映る影赤石。
椹島の登山基地。
椹島の登山基地。
2山を終えた後、二軒小屋幕営地にて
2020年09月03日 13:27撮影 by  EP-802A, SEIKO EPSON CORP.
9/3 13:27
2山を終えた後、二軒小屋幕営地にて
撮影機器:

装備

個人装備
長袖シャツ ズボン 靴下 グローブ 防寒着 雨具 着替え ザック ザックカバー 昼ご飯 行動食 非常食 調理用食材 調味料 飲料 ガスカートリッジ コンロ コッヘル 食器 ライター 地図(地形図) コンパス 計画書 ヘッドランプ 予備電池 筆記用具 ファーストエイドキット 常備薬 日焼け止め ロールペーパー 保険証 時計 タオル ナイフ カメラ ポール テント テントマット シェラフ
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