大峯奥駆道 無泊修行成就
- GPS
- 28:51
- 距離
- 99.0km
- 登り
- 8,003m
- 下り
- 8,137m
コースタイム
- 山行
- 15:23
- 休憩
- 1:16
- 合計
- 16:39
- 山行
- 10:28
- 休憩
- 1:31
- 合計
- 11:59
天候 | 曇り時々晴れ後雨、ラストは晴れた |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
帰り:本宮-紀伊田辺はバス、紀伊田辺から電車 |
写真
感想
いつかやってみたかった大峯奥駆道修行の旅でしたが、念願叶い達成しました。
途中何度も挫けそうになり、諦めかけましたが、何とかたどり着きたいと念じていたら、不思議なパワーに後押しされたように本宮までたどり着きました。
寝てないハイテンションの勢いからなのか、本宮到着後も小辺路で高野山まで行こうかと思えたくらい元気だったのですが、食料が底をつき、コンビニのパンだけでは到底たどり着けないと判断して今回は熊野本宮大社を後に帰路につきました。
出発前は不安だらけでしたが、日本最古のロングトレイルは本当に不思議なパワーが宿っているとしか思えません。迎え入れられ、達成できたことで何か生まれ変わった気がします。
もう2度とやりたくない、どころか、今すぐでももう一回チャレンジしたい。そんな気持ちです。
苦しく、楽しく、美しく、そして何よりも厳しい。大峯の魅力に取り憑かれてしまいました。
■前日
1週間前の日曜日に10km×3本、20km1本の追い込みトレーニングを実施し、心肺機能を上げておくと同時に、弱音を吐けない体を作る。そこから1週間は禁酒、減カフェインで内臓に負荷をかけないように気を付けた。
水曜と金曜に飲み会があったが、大量の炭酸水で乗り切った。土曜日の始発で向かう予定だったので、水曜日には準備を整えておいた。
水分を除くベースウェイトは4kg、水2Lとしたら6kgを背負うことになる。軽さを重視して、エスビットとフリーズドライリゾッタを持っていかなかったことが、高野山まで戻れなかった原因だと思う。大峯のような険しいコースは登りのスピードを捨てても動き続けさえすればコースタイムは変わらないので、万一に備えることはとても重要だ。(もちろん軽さも大事)
■7:20 近鉄吉野駅
家から吉野駅までYahoo乗換案内とgoogleMAPの検索結果が違って焦ったが、電車乗り継ぎを間違うことなく、何とかスタート地点に立てた。売店も空いてないし、特に何もすることも無いので写真だけ撮ってスタートした。が、どっちに行けばいいか分からない。金峯神社の看板を頼りに進むが、舗装路と遊歩道が入り交じり、何度もコースを確認した。
修行門から先は大峯奥駆の看板を頼りに進むので特に迷うことは無かった。ザックが重くて思うように走れず、無理に走ったせいで結構発汗していた。ルートも確認不足で、天井ヶ岳の巻き道を進んでしまっていた。巻き道では沢の水も流れており、小笹の宿まで水場が無いと思っていたので少しうれしくて顔を洗ったり、バイザーを濡らしたり少しリフレッシュできた。次回はしっかりと天井ヶ岳のピークを踏みたいと思う。
■10:04 五番関(2:44経過)
GPSウォッチの長時間モード設定が役に立たず、ここまで5kmしか記録していない。一旦計測を終了させてもう一度高精度モードで立ち上げた。女人禁制の門をくぐり、大峰ゾーンに突入する。4連休なのでハイカーさんもちらほら、ここまで数名を追い抜いた。ザックの重さが気になるが、先も急ぎたいので強引に走って、無駄な体力を消耗していたように思う。
■11:08 山上ヶ岳(1:04/3:48経過)
五番関から約1時間、あまり時間感覚が無かったが、今振り返れば、意外と早くついている印象だ。洞辻茶屋からは見慣れた風景だったので、ここら辺は淡々と進む。大峰山寺にはハイカーさんもちらほら見かけられた。
■11:26 小笹ノ宿(0:18/4:06経過)
予習では、行者の水場は枯れているという考えだったので、ここで手持ち容器に水分を詰め込み、2.5Lにした。更にザックが重くなり、気持ちだけが焦るがナカナカ前に進まない。特に登りがキツく、膝に余計な負担をかけていたように思う。登りはリズムよく早歩きをすることで体力も温存できるし、コースタイムもそれほど変わらないと感じた。(平坦個所や下りはジョグペースを保つ)
■13:15 行者の水場(1:49/5:55経過)
枯れていなかった。というより、前回の予習では全然違うところを探していたようだ。結構な水量だったのは、最近雨が降っていたからだろうか。そう言えば、雨で足元が滑ってずいぶん転倒したが、後半は慣れてきてそれほど転ばなくなった。やはり前半は焦っていたように思う。手持ち500mlペットボトルを満水にして出発した。
■15:09 弥山(1:54/7:49経過)
売店は16時に閉店するとの事前情報だったので、ここでカップ麺を食べるためにかなり頑張った。今回の縦走路中で唯一の食事がこのカップ麺となった。コーラは持ってきていたのでどうしようか迷ったが、飲まずにはいられなかったので購入した。カップ麺のお湯は別料金で100円必要なのでご注意。水を補給しなかったことを悔やんでいたが、全体を通してみると補給しなくても問題ない。(この先、釈迦ヶ岳までに鳥の水、持経ノ宿に水場あり)
■17:56 釈迦ヶ岳(2:47/10:36経過)
弥山から3時間を覚悟していたので、意外と早く到着した印象。笹畑で足元が見えないので、明るいうちに通過できて良かった。
■20:01 地蔵岳(2:05/12:41経過)
手持ちの水が1.5Lくらいに減っている。予習では持経ノ宿に水場があったはずだが、スマホのメモでは「釈迦ヶ岳下のかくし水」となっている。一気に不安が襲う。ここから玉置神社まで水場が無ければ絶対に足りない。どうする。戻るか。
葛藤の中、スマホの電波を立ち上げてみた。なんと、電波が通じる。持経ノ宿に水場があることを確信し、「よっしゃ」と気合が入り足も軽くなる。真っ暗闇を調子よく走っていると人の声が聞こえる。幻聴?と疑ったが、前方にはテントの明かりが。もう宿に着いた?かと思ったが、山頂付近でテント泊している方が3名いらっしゃった。
返事がないので熊かと思いました。今日はどこに泊まるんですか。
無泊で本宮まで目指してます。
ひえ〜、気を付けてください
ありがとうございます!あれっ、どっちだっけ?
こっちですよ。いってらっしゃい。
他愛もない会話だが、こんな山奥で声をかけていただき、とても元気が湧いてきた。
■21:46 持経ノ宿の水場(1:45/14:26経過)
無限ループかと勘違いするような単調な道や、眠気も覚める鎖場を越えて、ようやく水場に到着した。特に乾光門(心の中では、いぬい・こうもんと呼んでいた)付近でいつも間にかルートを逆走しており、「あれっ、コウモンは2か所あるのか?」とあり得ない勘違いで吉野に戻るところだった。
水場では、気温は低いはずだが、体中に熱がこもっているような感じで、冷たい水を頭からかぶり、とても気持ちが良かった。ここから玉置神社までは補給が無いはずなので、2.5Lを満水にする。再び重いザックを背負うことになるが、ここまでくると重さに慣れてきて、登りを早歩きできるようなリズムが出来ていた。
■00:18 行仙岳(2:32/16:58経過)
何の変哲もない登り区間だったと思うが、とにかくキツかったことしか覚えていない。山頂で横になろう。それまで頑張ろう。そんなことばかり考えていた。山頂は近代建築物が生えているにも関わらず、特に休憩するような場所が無い。丸太に横になり、空を見上げても星空は見えない。しばらくすると雨が落ちてきたので、行仙宿で横になることを決めて山頂を後にした。
■02:25 地蔵岳(2:07/19:05経過)
この時間、宿付近でヘッデンを照らすのは気を遣う。行仙宿のベンチでしばらく休んだが、大休憩とまで行かず先を急ぐことにした。眠気からか、笠捨山の登り口を見落とし、巻き道へ入っていた。ちょうど真ん中あたりで間違いに気づいたが、残り食料の乏しさに、引き返して山頂へ向かう気力も勇気もなかった。そのままガレ場の崩落寸前の巻き道を進み、再び奥駆道へ合流する。合流地点の標識には「熊野本宮大社27.0km」の文字が。遠いが、確実に終わりが近づいていることを確信した。まだまだ辺りは闇の中。新宮山彦ぐるーぷさんのお陰で明瞭なはずの山道も、初めての私にはハードルが高く迷いまくる。特に地蔵岳付近は聳え立つ断崖絶壁をどこから越えるのか見当がつかなかった。何度も確認し、アタックするが行き止まる。昼間なら鎖を追えば何も問題ないのだろうと思った。テープが無いので、壁にぶち当たった時は鎖を探し、絶壁を越え、絶壁を下る。集中しているので意外と眠気は無い。しかし険しい。
■05:55 玉置神社(3:30/22:35経過)
呼ばれていないとたどり着けないと言われる玉置神社。雨が降ってきたものの、何とか無事にたどり着くことができた。しかも、雨の向こうには真っ赤な朝日が見える。まずは社殿に参拝し、無事たどり着けたことへの感謝を伝えた。疲労困憊、玉置神社でリタイヤしようと考えていたカラダが嘘のように軽くなる。しかし、食料が底をつきた。
この先に進むためには、何とか補給しないと、この先どこかで動けなくなる。売店のオープンは8時ごろとのこと。冷たい雨の中2時間待つことはリスクだと感じたが、温かいうどんが何としても食べたかった。ゆっくりと、トイレと荷物整理を済ませ、残りの食料を冷静に確認する。柿ピー、オールブラン、トレイルミックス、果汁グミ、ジェル2本と塩分タブレット。どれも中途半端だが、何とか行けるかもしれない。時計はまだ7時。先を急ぐ旅ではないが、体が冷えることは望ましくない。自販機で飲み物だけ購入して再びスタートした。
■09:01 五大尊岳(3:06/25:41経過)
玉置神社から大きなヤマは2つ。その二つ目を越えたと思ったが、ここからが本当に長かった。しかし、ある程度覚悟のうえで挑んでいたので、あきらめに近い脱力感がいいリズムを刻んでいた。淡々と登る、下るを繰り返す。玉置神社から本宮までは誰にも会わなかった。貸し切りのトレイルを登る、下る。雨で岩と木の根っこが滑るが、徐々に気にならなくなる。速く本宮が見たい。雨の中、ガスで景色は全く見えなかったが、一瞬晴れ間が顔を出し、遠くに本宮が見えた。徐々に雲が晴れ、次第に太陽が照り始めた。お天道様に「ありがとう」と左手を挙げて応えた。
■11:01 七越峰広場(2:00/27:41経過)
誰もいないはずなのに、時折、山伏姿の修験者が見えては消える。幻覚が見え始めたようだ。見えないハズの何かに守られながら、ここまで来たことを感じ、疲労はピークのはずなのに、足は動く。地蔵岳付近ではハンガーノック気味で目まいがしていたが、本宮に近づくにつれて調子が上がっていく。ONTAKEやUTMFの時の感覚が戻ってくることを嬉しく感じながら、相変わらず繰り返す上り下りを進む。最後の1kmくらいの区間は新宮山彦ぐるーぷさんが整備できない私道区間なのだろうか。軽いヤブ漕ぎで蜘蛛の巣地獄だったのだけは勘弁してほしかった。
■12:07 大斎原(1:06/28:47経過)
トレイルが終わり、河原に降り立つ。大斎原は目の前だ。川を渡るためにゼロシューズを用意していたが、川の流れも激しく、水量も多い。泳ぐことも出来たが、ここから帰ることも考えると、ビチャビチャではお参りも出来ない。川を渡るのは諦めて、橋へ向かおうとしたが、どうしても諦められない。どこかに浅瀬が無いのか。目を凝らしてみると、ある区間だけ水底が見えるような気がする。「いける」そう判断して靴を履き替え、万が一ドボンしたときのために荷物を持たず、ハーフタイツだけになり川へ入ってみる。やはり、対岸までつながっている。山の中でも散々迷いながらルートを見つけてここまで来たが、最後もあきらめず道を探し続けて、本当に良かった。大斎原を参拝し、ようやく念願が達成した。
■その後
お腹が空いていたが、内臓はかなり疲労していた。本宮近くの食堂で、山菜そばとめはり寿司のセットを注文した。恐る恐るゆっくりと口に運び、よく噛んで胃に流し込む。美味い。味覚もある。眠気も無く、どう帰るかを調べるのが面倒になり、高野山まで折り返したくなる気持ちが強くなる。
本宮大社に参拝し、進退を神様に聞いてみようとしたが答えは無い。高野山まで行くには食料を調達しなければならないので、コンビニを物色する。今考えれば、もうで餅やカステラを購入すればいけたのかもしれないが、コンビニに並ぶパン類を見て、この先パンだけで進めるのかイメージしたら、恐らく胃が持たないような気分になり。少し吐き気がした。エスビットを持参し、途中でカップ麺でも食べられる選択肢があれば違っていたのかもしれない。散々悩んだが、高野山への道は次回の課題とすることで帰路についた。
ヤマレコやブログからいろんな情報をいただき、貴重な体験が無事に成就できたことへ感謝いたします。ありがとうございました。
vonさん、初めまして。
度肝を抜かれるような山行レコ、毎回楽しみにしています。
今回も凄まじい挑戦でしたね。
まずは、完徒おめでとうございます。
今はどうぞ、お身体を労わってあげて下さい。
何がそこまで限界までの挑戦を支えているのでしょうか。元来の身体能力に加えて、事前準備のストイックさにも脱帽です。
「険しいコースは登りのスピードを捨てても動き続けさえすればコースタイムは変わらない」には目からウロコでした。参考にさせていただきます。
次は何を目指すのでしょうか。
これからも楽しみにしております。
Kumainkobe ฅʕ·ᴥ·ʔฅ
Kumainkobeさん
コメントありがとうございます!
レコを見ていただけていることが次のチャレンジの励みになります😊
皆さんのヤマレコからヒントをいただき、また新たなチャレンジをしたいと思います!
(まずは。尾鷲一撃を達成したい😅)
明確な目標はありませんが、とにかく楽しみたいと思います
コメントありがとうございました
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