宮之浦岳
- GPS
- 12:00
- 距離
- 19.7km
- 登り
- 1,094m
- 下り
- 1,830m
コースタイム
- 山行
- 9:05
- 休憩
- 2:55
- 合計
- 12:00
天候 | 曇りのち晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2009年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
タクシー
飛行機
|
写真
感想
「百名山」に出会うまで南洋の孤島にこんな山があることはまったく知らず、ましてやそれが九州一高い山で、冬には3mもの積雪があることなど知る由もありませんでした。それでも、「いつかは」と夢を見続けて年月が過ぎ、ようやく息子と登る日がきたのです。
日程の関係でどうしても「縄文杉」も一緒にやっつける必要があったのですが、宿の人や観光案内でも「それは無理」と諭されて一時はピークハントだけにしようと諦めかけました。しかし、いろいろな登山記録を調べると13-14時間で行けないことはないと判断してやることに決めたものの、総距離数21km。天気よりも自分の足がもつかどうかだけが不安な父でした。
AM4時に予約していたタクシーに乗り込み前夜手配していた弁当屋で弁当をザックに詰め込んで登山口の「淀川」に無事到着しました(4:40)。21km先の「荒川登山口」にPM6時に車を回すようにお願いしたものの、愚かなことに南国の屋久島は山形よりも日の出が1時間遅いことを忘れていて、白むまで待つハメに。ところが結果的にこの遅れが青天のピークに導いてくれたのです。
雨は落ちずも夜半に降った雨と亜熱帯雨林のせいで息苦しいほどにジメジメした登山道。「淀川小屋」で一服し、次のポイントである「花之江河」を目指します。いくらなんでもこんな過酷で長いルートを息子に歩かせて本当に良かったのかと自責の念にかられながらも親子はもう前に進むしかありませんでした。2パーティーを追い抜いて順調に高度を上げ割と楽に「花之江河」に到着。この高層湿原で標高が1600mを超え高山らしくなってきました。ジャングルから解放され爽やかな風が当たるようになったのですが、それでもガスはとれず目的のピークはどこにあるのやらと忌々しくもなりました。「投石平」あたりからヤクシカに出会うようになり、登山道も糞だらけ。しかも奴らは実に堂々としたもので、人をまったく怖がらず道を塞いで寛いでいます。会釈をして傍らを静かに通り過ぎるしかありません。巨岩だらけの「栗生岳」からひと登りでついに山頂に立ちました。山頂には栃木から来たという青年が一人だけで、互いにガスが晴れないものかと淡い期待を抱きながら同じ店の弁当を食べていました。長い縦走路中、山頂までは8km登ったに過ぎず、下りとはいえまだ13kmもの道のりを克服しなければならない身としては、長居もできず「そろそろ下りの支度を」と思っていたら奇跡が起きました。見る見る間にガスが剥がれ青空が広がったのです。知らぬ間に山頂には十数人が陣取っていましたが、全員大喜びでした。「ひと月前の皆既日食から屋久島にいるが4回目の登山でやっと晴れてくれた」と感極まるカメラマン氏や「こんなに晴れちゃって運を全部使ったみたい」と騒ぐ若者たちの言葉どおりの貴重な青空に、遠い山形から来た親子も大感激でし。目の前には第二の高峰「永田岳(1886m)」、眼下には「縄文杉」を抱く屋久杉原生林への縦走路が伸び、まったく八重に連なる峰々のすごいこと。幸運とはまさにこのことで、飽きることのない絶景に涙が零れそうでした。
「縄文杉」までは山頂から約5km。その道中もずっと青空に恵まれ、「もののけの森」を楽しみながら下りました。「縄文杉」はガイドに連れられた大勢のハイカーで大賑わい。「ウィルソン株」内の祠にお参りして、今もトロッコが走る「大株歩道入口」で休憩しました。ザックを背負った親子に若いガイドが「どこからですか」と聞くものだから、「上(宮之浦岳)からです」と答えたら、「じゃ昨晩はすごい雨だったでしょ」と返されました。どうやら小屋泊まりと勘違いしたようです。「いえ今朝早く淀川を出てきたんです」と返したら、「この子もですか?」と目を白黒して「これって小学生の記録じゃない」と周りのガイドたちとビックリしていました。
トロッコの軌道を歩く「大株歩道」は約8km。「縄文杉」ツアーの人たちはこの道を往復するわけで、これも結構足にきます。今はなき「小杉谷」の集落からは父の足が悲鳴をあげ、やっとの思いで「荒川登山口」に辿り着きました。頼んでいたタクシーの運ちゃんが出迎えに立っていて「よく来れたね、すごい子だよ」と息子を褒めてくれました。
その息子はというと涼しい顔で「全然平気、まだ縄文杉まで行ける」と元気いっぱいでした。道中は「大丈夫?」と父を励まし続けてくれたし、本当に逞しく成長してくれたものだと泣けてきました。
標高差2000m、総距離数21km。亜熱帯雨林⇒杉林⇒ブナ林⇒熊笹と植生の変化を楽しみ、快晴のピークに立てた幸運に感謝するとともに、息子との大冒険が達成できた喜びに浸りながらタクシーに乗り込みました。屋久島はすごい。さすが世界遺産です。
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