【雲海作戦】観音平・編笠山・権現岳・赤岳・三ツ頭【甲53.7】
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- GPS
- 10:18
- 距離
- 19.3km
- 登り
- 2,431m
- 下り
- 2,439m
コースタイム
- 山行
- 9:07
- 休憩
- 1:12
- 合計
- 10:19
天候 | 曇り時々晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
道の状況: 基本、岩。 赤岳へはガレ場の急登。幅の狭いトラバースなど。長さ15mはあろうかという梯子は圧巻。 三ツ頭からの下りは、ほとんど歩きやすい道。 登山ポスト:観音平駐車場にあり。用紙も常備。 下山後の温泉等:スパティオ小淵沢・延命の湯(道の駅こぶちざわ内) |
写真
感想
6月の風物詩と言えば蛍である。その蛍、都内近郊で観に行こうとすれば人を観に行くようなものなので、今年は山梨県身延町一色のホタルの里を訪れることとする。
といっても、観蛍のためだけに遠出するのももったいないので、山行を組み合わせることとする。予定地はホタルの里に近い七面山〜八紘嶺だ。
しかし、当初晴れ時々曇りの天気予想が直前では悪化して曇りがちに。梅雨前線が北上しているようだ。どうしようと思いながら山梨へ出発。
今後の参考のために、途中で作場平に立ち寄り、駐車スペースの広さやアプローチする道の状況を確認する。
翌日の食糧を調達する頃までは当初予定通り山梨県南部山行を考えていたものの、ラジオの予報を聞き、ホタルを楽しむ中で、より晴れ間が見込めそうな八ヶ岳方面に転進することとした。真夏の共同山行の候補として、観音平発八ヶ岳南部の案を立てていたのである。共同山行の最有力候補地を巡ることについては若干逡巡もしたのだが、他に適当な訪問候補地も思い浮かばなかったので、北方へ向かう。
走りやすい観音平へのアプローチを4kmほど進むと観音平駐車場に到達。既に何台か車が停まっていたが人気は無く、運転者は山上で宿泊しているものと思われた。私も早速床に就くが、久しぶりの車中泊のためか寝つきが悪く、何度も寝返りを繰り返し、結局寝られたのか寝られなかったのかよくわからない状態で朝を迎える。
目覚ましが鳴って朝の支度をする。日の出でも見られるのではないかと思っていたが、展望のある所は少々離れている。また、辺り一面霧で日の出はもとより期待すべくもなかった。
白んだ樹林帯の中へ我が身を投入する。静かな朝。人気のない道。霧に包まれた笹薮と樹林帯。熊が出やすい条件なので、耳を澄ましながら注意深く歩く。
ああ、睡眠不足。23時前に観音平に着いて5時間は寝る時間があったが、実際のところ、ずっと半眠。どうもコンディションがいまいちである。歩き始めながら、前年6月の金峰・瑞牆山行(※1)での苦戦が頭をよぎる。今日は赤岳は無理かなあ。天気もいまいちだし、権現岳辺りで切り上げて一ヵ月後に再訪するかと考えたりもした。とりあえず、起きぬけでもあるし、焦らずゆるりと歩いて、編笠山に行こう。時間は、十分にある。
幸いにも、傾斜が緩やかだったため、最初の段階で涸れることはなかった。
(※1)
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-200009.html
押手川展望台からの眺めが曇っているとはいえ、何も見えないと思っていたのが南アが見えたので、「これはもしかして転機(原文ママ)が巡ってきたか。我が歩むところ常に陽光あり。」と勇躍歩を進める。体も目覚めてきたのか、青年小屋に着く頃には体調が平常に戻る。
山頂直下の岩の原を八艘飛びよろしく印に沿ってひょいひょいと超えて、雪の残る潅木帯を抜けると開けた編笠山の山頂だ。山頂に到達すると、期待以上の展望。高層にも雲があるため空が全体的に白んでしまっているものの、見えないだろうと思っていた富士山までもが雲から頭を出して姿を見せ、また、東方も雲が多めではあるが、陽光を浴びた雲が白く輝き、晴れ間が顔を覗かせそうな雰囲気である。そして何より、これから歩かんとする権現岳その他の山々が眼前に全容を現している。
曇り時々晴れの「時々」がどれだけのものになるかはわからないものの、これはいけるぞという予感に包まれて、権現岳へ向かう。
最初は単に石がたくさん転がっているな程度の道だったが、やがて本格的な岩場歩きとなる。何が本格的かと訊かれると困るのだが、山体崩壊著しい山に特有の崩れやすい岩の尾根を延々と歩くイメージである。しかし、それから先の赤岳に向かう者は、それが前座に過ぎないことを悟るだろう。
おお、太陽が雲の中で徐々にその姿を明らかにさせ、ついに我が歩む大地に日が射した。真にありがたし。これは回天だ。意気揚々と権現岳に到達する。
権現岳から赤岳の道で難しいのは赤岳直前の急勾配かつ足場の悪いガレた岩場の登りもさることながら、権現岳から250mくらい降りた後に450mほど登り返すという大きなアップダウンだ。その落差は長さ十数mの梯子に表象される。「まだ下る…」と笑いながら梯子は下りたが、ボトムのキレット小屋へは「まだ見えない…」とオロオロしながら下ったのであった。
キレット小屋は閉まっていたが、軽装中長距離山行者と思しき男性がちょうど赤岳へ向けて出発せんとしていた。その人の後を追うこととする。
道は全てが岩か、岩が砕けた石。自分が落ちることはなくても、石を落とすことは十分にあり得る。石を落とさないように静かに足を置いていく。
そして傾斜が急であるので、適度な休憩も重要だ。立ち止まり辺りを見回せば雄大な山々が山行者を見守ってくれている。先を急ぐこともない。行列ができると急がなきゃと思いがちだが、ここで変に焦ったり、慌てて道を譲ろうとすればかえって落石を招くと思われる。皆が時間に余裕を持って歩くことが落石を防ぐ最善の策だ。それと、前の人との間隔を詰め過ぎないことも重要。よほどのことが無ければ、石が転がってもせいぜい数十cm〜1m程度だ。後ろの人が転がった石を止めることも可能だろう。
鎖や岩肌に頼りすぎないことも大事だ。岩はかなり脆く、所々、鎖を止める部分が抜けていた。また、岩肌で手を添えたところがグラグラすることも幾度か。身を完全に預けるのは危険である。
このような道なので、急な傾斜だ何だといっても一歩一歩気をつけて上っていれば、気づいたら赤岳直下に到達している。「あとどれだけあるんだ?」などと考えないこと。
赤岳に着く頃には新たに発生した雲が山頂に到達してしまっていたが、老若若干名の登頂者がいた。赤岳まで先行した人はすぐに硫黄岳方面に向かったので、かなり長距離を歩くのだろう。その姿を見送った後、携行食糧を乾物メインにしてしまったこともあり、水分と塩分補給のため赤岳頂上山荘で食事を取ることとする。
気分はラーメンだったのだが、残念ながら品切れとのことでうどんを注文。山頂で温かいものが食べられるというのは、良い。
帰りは急なガレ場を今度は下ることとなる。上り時にさえゴロゴロ崩れる道なので、下りは一層に慎重になる。山頂は曇っていたが、再度歩き出すと時折晴れ間が覗く。うらめしいなと思ったが、夏の晴れは山行を険ならしめ得る諸刃の剣。陽が当たると暑くてかなわないのだ。今回は、雲が多目だったので陽光が適度に遮られ、まだ耐えられる。
赤岳からの450m下った後の権現岳への250mの上りも快晴では暑すぎてへばったと思うが、つらいながらも耐え抜いた。真夏の高山は、暑くなりすぎる前に終えるに如くはなし。雷雨の心配もあることだし。
赤岳頂上山荘では飲料に余裕があったので調達をしなかったのだが、赤岳〜権現岳間では結構水分の消費をしたので、権現小屋で追加調達をしようと立ち寄る。しかし残念ながらボッカ中で閉まっていた。小屋が分岐のすぐ傍でよかった。
しかし、権現岳までくれば、後は基本下り。水分も減ったとは言え、観音平までは持つだろう。
三ツ頭へ向かおうと下っていくと、先行した男女ペアが戻ってきた。道が無いとかなんとか。いやいや、一度歩いたことのある道でさえ他の人が「この道は○○に行くんだろうか?」と話しているのを聞いたら不安になるのに、初めて来たところでそんなことを言われると非常に困る。あいにく、分厚い雲が周囲に垂れ込め、三ツ頭は目視では確認できない状況。
「三ツ頭はもう通り過ぎましたか?」と訊かれたが、先ほど権現岳山頂を下りたばかりだ。そんなわけがない。その少し前に、真っ白な世界の中で、道があっているかしらと若干不安になっていただけに、さらに不安が募る。
パリジャンのように適当なことを言うわけにもいかない。地図上の道は実際の道とずれていることも多々あるので、それを元に話をするのもためらわれる。となれば、やはりまずは現場確認、これが大事だ。
三ツ頭の方向を向いて「距離的にはあと800mくらいです」と言った後、様子を見に下る。下っていくと鎖が垂れている。とすると彼らはどこでロストしたのだろうか?
私「どこで引き返しました?」
女性「鎖の所です。」
私「鎖があるってことは道があるってことではないですか?」
女性「三ツ頭までは鎖場は無かったと思うんですが…。」
う〜ん。計画時の地図確認や現場での地図確認では権現岳から東へは三ツ頭へ行く道しかない。そして目の前には鎖があり、その先には当然道があるだろう。
自分の中では「この道が三ツ頭へ行く道だ」と確信したのだが、他人に対して断言できるかとなると、それはなかなか勇気の要ることである。
そこで、「とりあえず降りてみましょう。ダメなら戻れば良いですし。」と先行する。ペアも20分のリミットで先へ進んでみることにしたようだ。
降りてみると、道はハッキリしているし、進む方向は間違いなく三ツ頭だ。途中、標識もあり、不安を払拭して三ツ頭に到達した。
先入観や思い込みの恐ろしさは、眼の前の現実を受容させない、または曲解させるほど力が強いところにある。この力強い魔物に対抗することは容易なことではないが、「確かこうだったはず」という思いは思いとして置いておいて、目の前の事実を積み上げていくことだ。一つの事実では強い思い込みに太刀打ちできなくても、客観的事実が二つ三つと揃っていけば、「今までこう思っていたけど違うのかも…」と先入観の方へ疑問が向く。
今回は、私に思い込みが無かったのと、分岐が入り混じるような複雑な地点ではなかったことが幸いしたが、先にも述べたとおり、事実を曲げてしまうのが思い込みである。誰でも思い込みに基く思考・発言の影響を受けてしまう恐れがある。
であるので、客観的事実積み上げのためにも、自分の位置や方角を確認できるものは常時携帯しておきたい。
三ツ頭から先は、それまでの石ころガレガレの道とは打って変わって樹林帯と笹野原の歩きやすい道で終盤の道としてちょうど良かった。しかし、最後は登りになるので気を抜かないことだ。
というわけで、何とか赤岳から無事帰ってこられた。時間からすると真夏の共同山行とした場合、赤岳まで行かなかったかもしれない。それは気温が段違いということもあるが、やはり雷雨の恐れだ。今回は雲が多めといっても雷雲・雨雲の類ではなかった。しかし、真夏ともなるとそうはいかない。前回の八ヶ岳山行(※2)時には13時過ぎに雷雨となった。今回山行に重ね合わせると、三ツ頭手前で雷鳴が轟くわけだ。
(※2)
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-121042.html
極力涼しいうちに登って、雷雨の前に下れるように行程の研究と天気予報の精査をしっかりしないといけないなと、夏本番を間近に控え、気を引き締めるのであった。
〜おしまい〜
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