北アルプス・後立山連峰
- GPS
- 56:00
- 距離
- 18.7km
- 登り
- 1,820m
- 下り
- 2,389m
天候 | 曇り時々晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
|
コース状況/ 危険箇所等 |
八方尾根から唐松岳までは特に危険な個所なし。 唐松岳から五竜へは、牛首の岩場が要注意。 五竜岳の登りも岩場あり。 遠見尾根の下りにも鎖場あるが、とくに問題なし。 |
写真
感想
「にっぽん百名山!」の鹿島槍ヶ岳・五竜特集を見てから、すっかり後立山に登りたくなってしまったあたし。
とくに、6月に蝶・常念、7月に燕から東鎌尾根を歩いたので、後立山を歩くとほぼ北アルプスの山は大体歩いた計算になります。
八方尾根>唐松岳>五竜岳>鹿島槍ヶ岳>爺が岳>柏原新道で扇沢に下山、という二泊三日コースでKTMで参加者募集したけど、みんな平日休み取るのが難しそう、ということだったので、PJCで再募集。
のってきたのは、まだ山歴四回目のもえただけ。
もえたは新卒二年目の25歳健康女子で、学生時代は基礎スキーで鍛えたそうだけど、足を痛めて途中でリタイヤ。
昨年7月に奥多摩・高水三山に連れて行ったあと、那須・三斗小屋温泉、丹沢・鍋割山、中央アルプス・木曽駒(ロープウェイでお手軽登山&悪天候で45分で引き返す)という、初心者に毛の生えた状態。
さすがに、後立山連峰屈指の上級コースである五竜〜鹿島槍の縦走は無理だろうと、一旦はあきらめてもらいました。
その後、ぼっか、たろさが「いく!」とのことなので、いったん三人でバスの予約を試みましたが、既に時遅し。一日一本しか出ない白馬八方行きのバスは既に予約で満席でした。
しかたなく、五竜>鹿島槍はあきらめ、唐松から五竜を経て遠見尾根で下山する一泊二日コースに変更。
難易度がぐっと下がったので、もえたに再度声かけ、ひもれっととやなけんも参加して都合六人・クルマ二台での山行となりました。
8月23日23時新宿に集合。ところが集合時間になっても、ぼっかは現れず。LINEで状況を聞くと、仕事が終わらず、まだ会社とのこと。
しかたないので、残念ながら今回はキャンセルとし、5人で出発となりました。
中央道を西に走り、交代で運転しながら白馬八方駐車場に到着したのは朝方4時。
2時間ほどの仮眠の後、天気を見てみると、どんよりとした曇り。でも、東側の空は明るく、しばらくすると晴れ間ものぞいてきました。八方尾根のガスもどんどんと上に登り、リフトの駅も見える感じ。
やなけんがいるにしては、まぁ良い方だろう、ということで、朝8時、駐車場を出発。
8:30、ゴンドラリフトに乗りこみ、リフトを乗り継いで9:00前には八方池山荘に到着。うん、晴れ間も見えて、なかなかいい感じの天気。ここから登山開始です。
よく整備された木道を観光客に交じって歩き、第二ケルン、八方池、丸山ケルンまで順調にすすみます。
丸山から先は、すっかりガスの中。
とはいえ、特に険しい個所もなく、14:00すぎ、本日の宿舎である唐松頂上山荘着。チェックインしてすぐに唐松岳を往復。風が強く、展望も全くなし。
唐松岳から戻り、17:30の夕食まで生ビールを飲んだり、ワインを開けたりしつつ、時間をつぶします。そのうち風が強まり、一瞬展望が開いたりして。これって蝶ケ岳の時と同じパターンだね。
夕食はまぁまぁ。追加料金で豪勢なコースがあるそうですが、ちょっとその商魂たくましいところが逆に鼻について普通のコースに。
食後は持ってきたウィスキーと梅酒を少しなめ、20時の消灯より少し前に、早々に寝床につきました。ちなみにここでは、二人で一つの敷き布団でした。
夜中に同じ蚕棚の奥の男性二人がぼそぼそつぶやいています。
「星がきれい」とか、「雨具が必要」とか、相矛盾するせりふをききながら、(朝起きて雨だったら、来た道そのまま戻った方がいいかなぁ…)などと考えつつ、結局4時ぐらいまでうつらうつら。山小屋来るとあんまりよく寝れないんですねぇ。
4時半に起きて、ナノパフ着て外に出てみると、雲はすっかり消え、唐松岳がくっきりと見えます。正面には立山・剱、左手には、堂々とした山容で鎮座する五竜岳!
けんちゃんでかした!・・・しかし、後から思うと、この好天があの事件を引き起こすのです。
御来迎を見て朝食を済ませ、外でコーヒーつくって飲んで、6時出発。
こうしてPJC史上、2年前の槍に次ぐ難儀した一日が始まったのでした。
唐松頂上山荘を出るとすぐに、牛首の鎖場です。
難易度はそう高くはないものの、初めて本格的な鎖場に挑戦するもえたには、手ごわい道。三点確保の基礎を教えつつ、ホールドとステップを指示しながら、そろりそろりと岩場を通過します。
しかし、小柄で手足がなかなか届かないのと、やはり恐怖が先に立つのか、へっぴり腰になってしまうもえたでした。
ひとつの岩場を越えるのに、思ったより時間がかかってしまい、後続のパーティーに先に行ってもらうために場所を空けるにも、なかなか手ごろなスペースがなかったりして、けっこう難儀します。
五竜山荘まで2時間半のコースタイムですが、2時間たってもまだ1/3程度しかたどり着けません。
なんとか鎖場の連続が終わり、最低鞍部が見えたかな、という時、おそらく気が抜けたのでしょう、最初の転落事故が起こりました。
スローモーションのように、もえたの小柄な体がハイマツの上をころり、ころりと転がっていきます。
とっさに手を伸ばし、もえたの足をつかんで転落を止め、「動くな!」と指示して、もえたの谷側に回り、それ以上滑って落ちないようにしながら、みんなでもえたを登山道に引き上げます。
ちょっと放心状態のもえたを少し休ませながら、彼女の荷物を男性3人で分担して運ぶことにします。
やはり、なれない岩場で、思った以上に心身ともに疲れたのでしょう。本人は「大丈夫です!」を繰り返しますが、さらにゆっくりと慎重に進むことにします。
結局、五竜山荘到着は10時。1時間半の押しです。ここで昼食をとりつつ、今後の予定を再確認。
遠見尾根先端のアルプス平から下りる最後のゴンドラの時間は16:30。
五竜岳を往復して、アルプス平までのコースタイムは約6時間。つまり、コースタイム通りなら間に合うものの、これまでのペースを考えると、かなり厳しい見通しです。
五竜を登らず、このまま下山するのが現実的。とはいえ、ここまで来て五竜に行けないのかぁ…?
そこで男性3人でじゃんけん。負けたやなけんは、もえたとともに五竜を登らず、五竜山荘からそのまま下山。
あたしとたろさ、ひもれの三人で、五竜岳を往復し、その後遠見尾根を下山して、先に降りるやなけん・もえたと合流しよう、という計画です。
五竜山荘で昼食を済ませ、10:45、やなけん・もえた組は遠見尾根を通り下山。あたしとたろさとひもれは、五竜岳を目指します。
五竜岳はそれこそ岩場ばかりの山。落石に注意しつつ、けっこうなハイペースでひょこひょこ登り、1時間のコースタイムを、40分で登っちゃいました。
五竜岳頂上からは、北に白馬三山、西に立山・剱、南に針ノ木、そし眼前に後立山連峰の盟主・鹿島槍ヶ岳がその優美な姿を見せています。本当に、美しい。
まってろよ・・・。いつか、そこへ登ってやるからな!
やや遅れて到着したたろさ、ひもれとがっちり握手し、写真を撮ると即下山。
登りより下りが怖い五竜岳。なんとか無事五竜山荘にたどり着くや、すぐさま遠見尾根を下りにかかります。
コースタイムより早く歩く自信はあるものの、一応先を急ぎます
特に下山は、割と早い方なので、とっとことっとこほとんど休みを取らずにおりていくと、1時間ほどで何とやなけん・もえた組に追いついてしまいました。
遠見尾根も最初の下りはいくつかの鎖場があり、そこで再び時間がかかった模様。
この時点ですでに時間は14時前。残りの2時間半強で、アルプス平まで下りないと、ゴンドラの最終時間に間に合いません。
幸い、今いる大遠見山から小遠見山までは、コースタイム1時間半・高低差100mほどのほぼ平たんな道をあるくので、この先はスピードを出すことができる、と判断したあたしは、「ここからしばらくなだらかな道なので、飛ばすね♪」とみんなに伝えて、かなりのスピードで歩き始めました。
これがいけなかった。
その直後、「きゃあ!」という悲鳴が。
振り向くと、本来そこに人がいるべき登山道に、ストックの先端しか見えません。
駆けつけると、80度ぐらいの斜度の崖に、もえたが2メートルほど滑落しているではありませんか。完全にパニックに陥ったもえたは「たすけてください!」「死にたくない!」と叫び、一時はマジでやばいかも?と、恐怖で背筋に冷たいものが走りました。
幸い、太さ10cmぐらいの木に引っ掛かったのと、両手で握っていたストックの先端が、登山道にいる我々に届く距離だったので、何とか手を伸ばしてストックをとらえ、その後男3人で引きづりあげました。
なんでもない道ですが、かなりの疲労で足に力が入らず、判断も鈍っており、おまけに「飛ばすぞ」と言われたプレッシャーで、足元が狂い、足を滑らせて滑落した様子。
引きづりあげられた後ももえたはしばらくショックが続き、涙をしゃくりあげてる様子だったので、ここから先は、明日のことはともかく、今日ここからもえたを無事に下山させることを最優先に、ゆっくりゆっくり歩くことにしました。
中遠見、小遠見を経て、アルプス平からの遊歩道をしばらく行ったところで、電波が入ったのでリフトに電話してみたところ、17:00までならタダで、それ以降は30分2000円の追加料金でリフトを動かしてくれるとのこと!
(そうならそうと、最初からわかってれば…)と思いつつ、下山を続行。
もえたは階段一歩降りるごとに苦痛に顔をゆがめていましたが、結局17:33、無事アルプス平にたどり着くことができました。
その後は、ゴンドラを使い、白馬五竜スキー場へ下山し、タクシーを呼んでクルマをとめた駐車場まで移動。ひもれが予約してある温泉宿で汗を流し、ここで一泊するひもれと別れ、来た道を戻り、無事帰京を果たしました。
今回の山行は、メンバーの技量・実力と、山の難易度を見誤ったあたしの判断ミスでした。
何とか無事山行を終えることはできましたが、それはたまたま運が良かったからにすぎず、遭難事件になっていても全く不思議ではありませんでした。
山は楽しく、美しく、そしてとても怖いところです。
今回の失敗を糧として、反省点として次回に活かしていきたいと思います。
・・・翌日会社であったもえたは「次は朝日岳に登りたいです!」と元気いっぱい。若さですね。
青春とは、懲りない強さを言うのかもしれません。
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