記録ID: 3469871
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山滑走
槍・穂高・乗鞍
【過去レコ】2007年2月25日 厳冬期黒部五郎岳日帰り
2007年02月25日(日) [日帰り]
- GPS
- --:--
- 距離
- 35.3km
- 登り
- 2,708m
- 下り
- 2,705m
コースタイム
日帰り
- 山行
- 16:34
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 16:34
コロカ禍の始まった2020年2月以降、県内の低山をウロウロするだけで充実した登山ができない。そこで過去の登山の中から思い出に残った山行をボチボチと投稿している。
今回は2007年の厳冬期黒部五郎岳日帰り山行の記録を投稿する。今でこそ厳冬期の北アルプス日帰りは珍しくないが、2007年当時は軽量ファットスキーやTLTビンディングもなく今よりもずっと日帰り登山が困難であった。多分黒部五郎厳冬期日帰りの初記録だと思う。以下過去の記録から転記。2021年8月28日
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黒部五郎岳は北アルプスの最深部に位置する山である。標高は2839m、美しいカールを持つことで知られ、日本百名山の一つにも数えられている。黒部五郎岳を目指すルートは大きく分けて二つある。一つは新穂高温泉より三俣蓮華岳を経由するルート、もう一つは神岡町下之本より飛越新道を利用するルートである。いずれのルートも歩行距離が長く、また、アップダウンも多いために無雪期であっても日帰りは難しい。今回、飛越新道よりスキーを使用した厳冬期の日帰りに挑戦した。
1:04 和佐府(除雪終了地点)
山吹峠は冬期閉鎖されているため、神岡町より伊西トンネルを経由して下之本の和佐府集落まで車で行く。例年、除雪は和佐府集落終点までだが、今年は暖冬のためか、有峰林道の除雪が始まっていた。気をよくして林道を進むが、500mほどしか除雪は進んでいない。除雪終了地点に駐車して、行動を開始する。林道の積雪量はわずか30cmほどしかない。また、法面の雪もほとんど落ちていて、既に4月下旬の雰囲気である。先週は4月並の陽気であったが、週末は一転して冬の寒さに逆戻り、雪面は固く、シールを貼ったスキーがよく進む。辺りは真っ暗であるが、慣れれば雪明りだけでも全く支障なく歩けるので、ヘッドランプは使用しなくてもよい。見上げれば満点の星空が頭上を覆っている。時折、流れ星が天空を横切る。
2:37 飛越トンネル
標高差440m、距離6kmの林道歩きを経て、飛越トンネルに到着する。無雪期は、ここが飛越新道の始点になり、寺地山を経由して北ノ俣岳まで登山道が通っている。概ね、登山道に沿って登ることにした。昨日は降雪があったようで、アイスバーンの上に新雪が20cmほど乗っている。出だしの急坂ではシールのグリップが効かずに苦労するが、なんとか登り切って尾根に出る。過去に何度も深夜に歩いた経験があるので、地形は大体、頭に入っている。ヘッドランプの出番はないようだ。
5:12 神岡新道分岐
6:34 寺地山
途中、何度か大きく方向を変えるポイントがあるので、ルートを見失わないように注意する。標高1996mの寺地山に到着する頃、夜が明けた。数時間の仮眠しかとっていないので、歩きながら居眠りしそうになるほど眠たかったが、朝日を浴びると爽やかな気分になった。今日は雲一つない青空、絶好の登山日和になりそうだ。しかし、気温は低く、指先や顔はかなり冷たい。飛越トンネルからずっと、足首程度のラッセルが続いている。取り立てて困難というほどのラッセルではないが、距離が長いと流石に体力の消耗が激しい。この状況では黒部五郎岳の往復は無理だろうと考え、計画を北ノ俣岳往復に変更した。
7:11 北ノ俣避難小屋
9:00 北ノ俣岳
寺地山から北ノ俣避難小屋の区間は細い尾根となっていて、雪の処理が面倒である。帰りのことを考えて、しっかりしたトレースを付けて進むように心掛けた。避難小屋を過ぎると吹きさらしの大斜面が北ノ俣山頂まで続く。朝の斜光がシュカプラに深い陰を作り、見事な造形美を見せてくれる。山頂直下は地面が露出しているため、やや左から回り込むようにして、稜線に出た。北ノ俣岳の山頂までは残り僅か、クラストした斜面を登って、山頂に到着すると稜線の先に黒部五郎岳が見えた。北ノ俣岳往復のつもりであったが、黒部五郎岳の雄姿を見ると、登りたいという気持ちと活力が湧きあがってきた。時間もまだ早いし、装備も万全である。12時を目標に行けるところまで進むことにした。
10:34 中俣乗越
うねうねと続く稜線を黒部五郎岳に向けて移動する。小さなピークは黒部川側をトラバースすると体力的に楽なのだが、クラストした斜面をトラバースするのは厄介である。稜線を忠実に進むことにしたが、風をまともに受けるので、とても寒い。中俣乗越の少し先から黒部五郎岳を眺めると、斜面は氷化した雪でキラキラと輝いている。スキーでは危険と判断して、アイゼンとピッケルに切り換えて登ることにした。
11:50 黒部五郎岳
雪面は硬いが、アイゼンの刃は良く刺さる。そろそろ足に疲れが出始めてきた。こんなときは注意力が散漫になって、不用意にアイゼンを引っ掛けることがある。一歩一歩、着実に歩みを進める。傾斜が緩くなると山頂が見えてきた。出発してから約11時間後、黒部五郎岳山頂に到着した。西の空に少し雲が掛かっているが、展望は素晴らしい。目の前には北アルプスの山々が聳え、振り返れば、遠く富山平野の向こうに日本海まで望めた。雄大なパノラマを心ゆくまで楽しみたいところがだ、ゆっくりしている時間はない。写真を数枚撮って引き返す。
12:22 中俣乗越
突然、雲が湧き始めたかと思うと、あっという間にガスに包まれて、ホワイトアウトとなってしまう。行きのトレースを忠実に辿って引き返すが、不明瞭なトレースを見失わないようにずいぶん苦労した。特に北ノ俣岳から寺地山へ続く尾根を見落とすと大変なことになる。念のためにGPSの電源を入れておく。
14:19 北ノ俣岳
ガスは濃くなる一方で、視界は20mほどしかなく、距離感が全く掴めない。なんとか北ノ俣岳に到着して、下りの尾根を探り当てる。標高差にして100mほど下るとガスが薄くなり、ルートがしっかり確認できるようになった。しかし、斜面はガチガチにクラストしている上に、洗濯板のようにガタガタに荒れている。これでは、まるで天然のロデオマシーンに乗っているようだ。跳ね上がる体を押さえ付けながら30分以上かけて斜面を下ったが、太腿にたっぷり乳酸が蓄積してしまった。
14:59 北ノ俣避難小屋
15:44 寺地山
北ノ俣避難小屋でシールを貼り直して、寺地山へ登り返す。この先は小さなアップダウンを繰り返しながら、ゆっくりと高度を下げるので、下山するのも一苦労である。
16:19 神岡新道分岐
無理がきかないのでゆっくりと移動する。小さなアップダウンがボディーブローのようにジワジワと体力を消耗させる。いざとなれば、ビバーグ装備があるので心配ないが、日没までには飛越トンネルに到着したい。
17:38 飛越トンネル
ここまで来たら後は林道を下るのみ。気温が急激に低下してきたので、スキーで風を切ると、体が凍える。
18:01 和佐府
なんとか明るいうちに、出発地点にたどり着くことができた。遂に厳冬期の黒部五郎岳日帰りに成功した。このコースは気力、体力、天候、積雪の条件が揃わないと成功に結びつかない。今回、全ての条件がピッタリ揃うという幸運に恵まれた。
山行メモ
往復39km、累計高低差2700m。体力に自身のある登山者向き。
山吹峠は冬期閉鎖されているので、伊西トンネル経由となる。
このコースはアップダウンが多く、スキーは楽しめない。歩き重視の装備が望ましい。
今回は2007年の厳冬期黒部五郎岳日帰り山行の記録を投稿する。今でこそ厳冬期の北アルプス日帰りは珍しくないが、2007年当時は軽量ファットスキーやTLTビンディングもなく今よりもずっと日帰り登山が困難であった。多分黒部五郎厳冬期日帰りの初記録だと思う。以下過去の記録から転記。2021年8月28日
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黒部五郎岳は北アルプスの最深部に位置する山である。標高は2839m、美しいカールを持つことで知られ、日本百名山の一つにも数えられている。黒部五郎岳を目指すルートは大きく分けて二つある。一つは新穂高温泉より三俣蓮華岳を経由するルート、もう一つは神岡町下之本より飛越新道を利用するルートである。いずれのルートも歩行距離が長く、また、アップダウンも多いために無雪期であっても日帰りは難しい。今回、飛越新道よりスキーを使用した厳冬期の日帰りに挑戦した。
1:04 和佐府(除雪終了地点)
山吹峠は冬期閉鎖されているため、神岡町より伊西トンネルを経由して下之本の和佐府集落まで車で行く。例年、除雪は和佐府集落終点までだが、今年は暖冬のためか、有峰林道の除雪が始まっていた。気をよくして林道を進むが、500mほどしか除雪は進んでいない。除雪終了地点に駐車して、行動を開始する。林道の積雪量はわずか30cmほどしかない。また、法面の雪もほとんど落ちていて、既に4月下旬の雰囲気である。先週は4月並の陽気であったが、週末は一転して冬の寒さに逆戻り、雪面は固く、シールを貼ったスキーがよく進む。辺りは真っ暗であるが、慣れれば雪明りだけでも全く支障なく歩けるので、ヘッドランプは使用しなくてもよい。見上げれば満点の星空が頭上を覆っている。時折、流れ星が天空を横切る。
2:37 飛越トンネル
標高差440m、距離6kmの林道歩きを経て、飛越トンネルに到着する。無雪期は、ここが飛越新道の始点になり、寺地山を経由して北ノ俣岳まで登山道が通っている。概ね、登山道に沿って登ることにした。昨日は降雪があったようで、アイスバーンの上に新雪が20cmほど乗っている。出だしの急坂ではシールのグリップが効かずに苦労するが、なんとか登り切って尾根に出る。過去に何度も深夜に歩いた経験があるので、地形は大体、頭に入っている。ヘッドランプの出番はないようだ。
5:12 神岡新道分岐
6:34 寺地山
途中、何度か大きく方向を変えるポイントがあるので、ルートを見失わないように注意する。標高1996mの寺地山に到着する頃、夜が明けた。数時間の仮眠しかとっていないので、歩きながら居眠りしそうになるほど眠たかったが、朝日を浴びると爽やかな気分になった。今日は雲一つない青空、絶好の登山日和になりそうだ。しかし、気温は低く、指先や顔はかなり冷たい。飛越トンネルからずっと、足首程度のラッセルが続いている。取り立てて困難というほどのラッセルではないが、距離が長いと流石に体力の消耗が激しい。この状況では黒部五郎岳の往復は無理だろうと考え、計画を北ノ俣岳往復に変更した。
7:11 北ノ俣避難小屋
9:00 北ノ俣岳
寺地山から北ノ俣避難小屋の区間は細い尾根となっていて、雪の処理が面倒である。帰りのことを考えて、しっかりしたトレースを付けて進むように心掛けた。避難小屋を過ぎると吹きさらしの大斜面が北ノ俣山頂まで続く。朝の斜光がシュカプラに深い陰を作り、見事な造形美を見せてくれる。山頂直下は地面が露出しているため、やや左から回り込むようにして、稜線に出た。北ノ俣岳の山頂までは残り僅か、クラストした斜面を登って、山頂に到着すると稜線の先に黒部五郎岳が見えた。北ノ俣岳往復のつもりであったが、黒部五郎岳の雄姿を見ると、登りたいという気持ちと活力が湧きあがってきた。時間もまだ早いし、装備も万全である。12時を目標に行けるところまで進むことにした。
10:34 中俣乗越
うねうねと続く稜線を黒部五郎岳に向けて移動する。小さなピークは黒部川側をトラバースすると体力的に楽なのだが、クラストした斜面をトラバースするのは厄介である。稜線を忠実に進むことにしたが、風をまともに受けるので、とても寒い。中俣乗越の少し先から黒部五郎岳を眺めると、斜面は氷化した雪でキラキラと輝いている。スキーでは危険と判断して、アイゼンとピッケルに切り換えて登ることにした。
11:50 黒部五郎岳
雪面は硬いが、アイゼンの刃は良く刺さる。そろそろ足に疲れが出始めてきた。こんなときは注意力が散漫になって、不用意にアイゼンを引っ掛けることがある。一歩一歩、着実に歩みを進める。傾斜が緩くなると山頂が見えてきた。出発してから約11時間後、黒部五郎岳山頂に到着した。西の空に少し雲が掛かっているが、展望は素晴らしい。目の前には北アルプスの山々が聳え、振り返れば、遠く富山平野の向こうに日本海まで望めた。雄大なパノラマを心ゆくまで楽しみたいところがだ、ゆっくりしている時間はない。写真を数枚撮って引き返す。
12:22 中俣乗越
突然、雲が湧き始めたかと思うと、あっという間にガスに包まれて、ホワイトアウトとなってしまう。行きのトレースを忠実に辿って引き返すが、不明瞭なトレースを見失わないようにずいぶん苦労した。特に北ノ俣岳から寺地山へ続く尾根を見落とすと大変なことになる。念のためにGPSの電源を入れておく。
14:19 北ノ俣岳
ガスは濃くなる一方で、視界は20mほどしかなく、距離感が全く掴めない。なんとか北ノ俣岳に到着して、下りの尾根を探り当てる。標高差にして100mほど下るとガスが薄くなり、ルートがしっかり確認できるようになった。しかし、斜面はガチガチにクラストしている上に、洗濯板のようにガタガタに荒れている。これでは、まるで天然のロデオマシーンに乗っているようだ。跳ね上がる体を押さえ付けながら30分以上かけて斜面を下ったが、太腿にたっぷり乳酸が蓄積してしまった。
14:59 北ノ俣避難小屋
15:44 寺地山
北ノ俣避難小屋でシールを貼り直して、寺地山へ登り返す。この先は小さなアップダウンを繰り返しながら、ゆっくりと高度を下げるので、下山するのも一苦労である。
16:19 神岡新道分岐
無理がきかないのでゆっくりと移動する。小さなアップダウンがボディーブローのようにジワジワと体力を消耗させる。いざとなれば、ビバーグ装備があるので心配ないが、日没までには飛越トンネルに到着したい。
17:38 飛越トンネル
ここまで来たら後は林道を下るのみ。気温が急激に低下してきたので、スキーで風を切ると、体が凍える。
18:01 和佐府
なんとか明るいうちに、出発地点にたどり着くことができた。遂に厳冬期の黒部五郎岳日帰りに成功した。このコースは気力、体力、天候、積雪の条件が揃わないと成功に結びつかない。今回、全ての条件がピッタリ揃うという幸運に恵まれた。
山行メモ
往復39km、累計高低差2700m。体力に自身のある登山者向き。
山吹峠は冬期閉鎖されているので、伊西トンネル経由となる。
このコースはアップダウンが多く、スキーは楽しめない。歩き重視の装備が望ましい。
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2007年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
往復39km、累計高低差2700m。特に厳冬期は体力に自身のある登山者向き。 |
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