木曽駒ヶ岳 〜自分の限界に挑戦した宝剣岳〜



- GPS
- 04:00
- 距離
- 3.9km
- 登り
- 453m
- 下り
- 461m
コースタイム
11:29 八丁坂分岐
12:02 乗越浄土
12:28 中岳山頂
12:55 木曽駒ヶ岳山頂 着
(昼食休憩)
13:25 木曽駒ヶ岳山頂 発
13:39 中岳巻き道分岐
14:03 宝剣山荘
14:27 宝剣岳山頂 着
14:32 宝剣岳山頂 発
14:50 乗越浄土
15:16 八丁坂分岐
15:32 千畳敷駅 着
天候 | 終日ガスに巻かれて視界不良 気温はさほど低くなく、登山するには快適 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
|
コース状況/ 危険箇所等 |
≪登山道の状況≫ ・道や道標はよく整備されているので安心して歩けます。 ・八丁坂:急傾斜を九十九折で登ります。浮石を踏んで落石を起こさないよう注意。 ・乗越浄土〜中岳〜木曽駒ヶ岳:ガレ・ザレの道。滑って尻餅をつかないよう注意。 ・中岳巻き道:木曽駒ヶ岳方向から、序盤は山腹のトラバース。谷側は急斜面なので滑落注意。最後はちょっとした岩登り。高度感は無いので3点支持で通過すれば問題ない。 ・宝剣山荘〜宝剣岳:山頂直下から鎖場の連続。谷側は急斜面なので足元には十分注意。鎖場では3点支持を確実に行うこと。特に怖かったのは山頂直下のトラバース区間で、谷側に落ちると命に係わりますので、特に慎重に。 ≪登山ポスト≫ ・千畳敷駅に有り。用紙も完備。 ≪トイレ≫ ・千畳敷駅に水洗トイレ有り。 ・途中の山小屋でもトイレを借りられる。 ≪危険動物情報≫ ・ヤマビル:遭遇せず。 ・ヘビ:遭遇せず。 ・クマ:千畳敷〜木曽駒ヶ岳の区間は登山者多数のため遭遇する危険は少ないと思われる。 |
写真
感想
10月2日15時40分、千畳敷駅を後にする私は、また来年の夏ここに戻ってくることを誓った…のではなかった。
10月3日11時20分、再び私は千畳敷駅に降り立った。
そう、昨日後にしたこの同じ場所にである。
麓で一泊して出直してきたのではない。
昨日、いったん岐阜の自宅に帰り、早朝の仕事を終えてまた来たのだ。
つくづく自分は馬鹿なのか、それとも人が良すぎるのか。
事の発端は昨日の午前7時前。私が中央高速を駒ヶ根に向けて走っていた時だ。
恵那峡サービスエリアで休んでいた私に、相棒から一本の電話。
「急で申し訳ないんだけど、明日、家族で木曽駒に行くから、○○君もどう?」
こちとらすでに恵那峡なんだが…。
元はと言えば相棒とこの秋に木曽駒に行こうと話していたのだ。
しかし、多忙な相棒に合わせていたら多分チャンスは無いだろうと抜け駆けしてきたのだった。
いまさら戻るのはもったいないし、抜け駆けして自分だけ木曽駒に行く途中だとも言えない…。
私には二つ返事でOKする以外に選択肢はなかったのだ。
木曽駒以外のの山に行くことも当然考えた。
しかし、明日は相棒の奥様とお母様も同行し、木曽駒に往復する間、千畳敷で待っているとのこと。
最大の目的地だった濃ヶ池にはとても行けそうにない…。
今日は自分のペースで木曽駒を楽しんで、明日は相棒とまったり登ればいいか、と思い、そのまま木曽駒へ向かったのだった。
そして、10月3日、私は帰ってきた…。
今日は何と言ってもスタートが遅かった。
岐阜を出たのが6時半、女性もいるから途中で休憩もとらねばならない。
結局、菅の台バスセンターに着いたのは9時過ぎだった。
駒ヶ根インターから谷の奥を見ると、伊那谷は快晴なのに千畳敷方向には雲がどっかと居座っていて、千畳敷カールは望めなかった。
これでは千畳敷に上がっても何も見えないと思い、一応千畳敷ホテルに確認すると、カールは雲の上で晴れているとのこと。
なんとか晴れの千畳敷で絶景を楽しめることを期待して、シャトルバスに乗車したのだった。
昨日よりも多少混雑していて、しらび平駅では20分ほどの待ち時間。
11時前にやっとロープウェイに乗っていざ千畳敷駅へ。
やがてロープウェイは雲を突き抜けて、快晴の千畳敷へ…と願うも、ロープウェイが雲を抜けることは無く、千畳敷はガスに包まれていたのだった。
昨日は青空をバックに素晴らしい紅葉を見たものだったが、今日はすぐ近くのダケカンバやナナカマドが見れるくらいで千畳敷は霧の中。
相棒も、奥様もがっかりの様子。
昨日は納得がいくような千畳敷カールの写真が撮れなかったので、今日こそと思っていた私もガックリ。
やはり山で絶景を見たければ早い時間が勝負なのだ。
それでもせっかく来たのだからということで、私と相棒は木曽駒ヶ岳に向けて出発。
時折ガスが切れると霧の中に岩峰と錦の紅葉が現れ、これはこれで趣があるものであった。
急登の八丁坂も昨日通った道となれば勝手知ったるところ。
淡々と登って30分ほどで乗越浄土に到達した。
乗越浄土では多少ガスが晴れて、昨日は見えなかった宝剣岳と天狗岩、伊那前岳、昨日訪れた濃ヶ池などが展望できた。
ガイドブックに載っている景色の中に来て、相棒もすこし楽しくなってきたようだ。
中岳山頂に来るころにはガスが濃くなって視界20メートルほどといった状態になる。
展望はゼロ。霧の中をひたすら進んでゆく。
いったん下って、頂上山荘付近で、ガスが薄くなり目指す木曽駒ヶ岳頂上が展望できた。
風が強く、ガスは濃くなったり薄くなったり。
先行する相棒は霧に中に消えてゆく感じで幻想的な美しさがあるにはある。
ガレた道を登りきって木曽駒ヶ岳山頂に到達。
相棒は初めて中央アルプス最高峰に到達し、ついにここまで来た、という感じで満足そうだ。
良かった。
記念撮影をして、風をしのげる場所で昼ごはん。
今日も相棒の奥様が差し入れてくれたお弁当を頂く。
いつも相棒と山に行くときはお弁当を差し入れて下さり感謝である。
具だくさんのおにぎりに、煮卵、ハム、枝豆、カブの漬物と栄養も彩りも豊か。
料理上手の奥様がいる相棒が羨ましくなるのはこんな時だ。
待っていても風に打たれて寒いだけで展望は回復せず、昼食後はそそくさと下山することになった。
相棒と来たので、今日、私はやってみたいことがあった。
中岳巻き道の攻略である。
危ないところを通るとのことだったので単独で来るときは敬遠してきたのだが、レベルアップのためにいつか通過してみたいと思っていた。
今日は相棒がいるので心強い限り。
危険を感じたら引き返そうということで巻き道へ進む。
実際に踏み込んでみると、急斜面をトラバースしてゆく道は、谷側に滑り落ちればただでは済まなそうではあるものの、さほど恐怖は感じなかった。
急斜面とはいえ、落ちれば即死となる断崖絶壁というほどのことは無い。
最後の岩登りも高度感は無く、3点支持で登れば特に難しくない。
私は高所恐怖症であるが、意外とあっさり通過できてしまった。
ここを難なく通過して調子に乗っていたのだろう。
相棒がせっかく来たのだから宝剣岳も行けるところまで行ってみようというので、私もついて行ってしまった。
自分の限界に挑戦するつもりで。もちろん恐怖を感じたら引き返すつもりで。
宝剣岳山頂に近づくにつれ、道は険しくなり、鎖が掛けられた岩場にぶち当たった。
御在所岳中道キレット以来の鎖場。しかし、高度感は無く、鎖場を3点支持で登る練習にはもってこいの場所でもあった。
一歩一歩慎重に登ってゆく。
さらにもう一か所鎖場を通過すると、山頂が迫ってきて、最大の難所を迎えた。
山頂直下、鎖につかまりながら、狭い足場を通過するトラバース区間だ。
谷川は絶壁ではないものの、深く切れ落ちた谷。
すぐ下に岩棚はあるが、落ちたらそこで止まれるのか…。
躊躇する相棒と私だったが、ここを越えたら頂上はすぐそこということで、ここも勇気を奮い起こして進む。
一歩一歩慎重に。
全身の感覚が研ぎ澄まされた感じ。
自分でも驚くほどの集中力だった。
そして難所を突破し、宝剣岳山頂に到達。
自分独りで来たときは登ってみようとも思わなかった鋭鋒に私と相棒は登った。
相変わらず周りはガスガスで展望はゼロだったが、かえって高度感は無くなり、これも幸いしたのだろう。
先客の女性3人組と記念撮影をしあって、しばし情報交換。
聞けば、極楽平から来て、向こうは宝剣山荘から来るより10倍は怖いとのこと。
宝剣岳に登頂して調子に乗っていたが、私たちはまだまだ未熟なのだと思った。
千畳敷に相棒の奥様を待たせているので、長居せずに下山開始。
登りで怖いところは下りではさらに怖い。
背中を谷側に投げ出して鎖につかまるのは、なかなかに恐ろしいものだった。
しかし、ここでも全神経を集中させ、一歩一歩慎重に通過する。
そして、15分後、無事に宝剣山荘まで戻ることができた。
宝剣岳に登頂できて、私も相棒もテンションは最高潮。
これぞクライマーズハイというものなのだろう。
高所恐怖症ゆえとても登れそうにないと思っていた宝剣岳に登頂できて、少し自信がもてたのは大きな収穫だった。
目標の奥穂高登頂にも少し近づいたのかもしれない。
しかし、果たして晴れていて高度感が増した時に無事に往復できるかどうかは何とも言えず、さらに研鑽を積まねばならないだろう。
理想的には鎖場の経験が豊かな人にガイドしてもらい、体や手足の運び方など指導してもらう必要がありそうである。
この後、急登の八丁坂を転ばないように注意しながら下り、出発して4時間ほどで無事に千畳敷駅に戻ってきた。
千畳敷は時折雲が晴れて全体が見渡せる時があったようで、相棒の奥様も来てよかったとのこと。
みなそれぞれ満足して千畳敷を後にしたのだった。
私も、さすがに来シーズンまで来ることは無いだろう。
そして、ほとぼりが冷めるまで木曽駒に抜け駆けしたことを相棒に内緒にしておけねばならないのであった。
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