夏沢峠旧道より硫黄岳
- GPS
- 56:00
- 距離
- 18.5km
- 登り
- 1,545m
- 下り
- 1,545m
コースタイム
30日 7:15泊地‐8:10夏沢鉱泉‐9:40オーレン小屋‐10:35夏沢峠10:50‐11:55硫黄岳12:15‐12:55夏沢峠‐14:00夏沢鉱泉‐14:50泊地
31日 7:15泊地‐8:30スキーデポ‐9:03分岐9:35‐10:56古田溜池
天候 | 29日30日:晴れ、31日高曇りのち晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2013年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
登山口(古田溜池)へのアプローチは、ゴルフ場の看板のあるところで左折する。 |
写真
感想
「それだのに、それだのに、なぜ僕は、ただ一人で呼吸が蒲団に凍るような寒さを忍び、凍った蒲鉾ばかりを食って、歌も唱う気がしないほどの淋しい生活を、自ら求めるのだろう。」この名文で知られる、加藤文太郎の八ケ岳行を偲び、旧道から夏沢峠への道を辿り、できれば横岳まで行ければ、と計画したものだが、結果は・・・
(29日)
早朝に自宅を出発、順調に走り登山口に到着。登山道の積雪は10センチほどで、1週前のものと思われる1人の足跡が残っている。山に入れば積雪は増えると予想し、念のため持参したスキーを使うことにする。(一昔前のプラブーツでコバがあるので、だましだまし締め具がはめられるのです。)
道は幅1.5メートルくらいで、「車道」というには半端だし、登山道というには広い。落葉松の林の中を軽ラッセルで、雪の感触を楽しみながら進んでいく。鳴岩川の対岸には桜平への車道があるはずだが、それとは分からない。用事があって峠を越えたであろう昔の人にとっては、何とも長いアプローチだ。道が沢状を渡るところで、道は正面の小尾根を巻くように先に続いているが、右の沢状に誘導するピンクのテープがたくさん打ってある。エアリアマップの記載は小尾根に上がるようになっているが、それらしい道も見当たらないので、沢状を進むことにする。
足元は岩混じりのデコボコした雪面になり、荒れたヒノキの枝が張り出して歩きにくくなる。キックターンに苦労しながら沢筋や側斜面をしばらく頑張って登ったが、どうにもしんどくなり、スキーを両手に持ってつぼ足で進む。後にして思えば早くスキーを捨てた方が良かったのだが、先にある長いトラバースでスキーを使いたいという考えを脱しきれなかった。ヒノキ林を抜けると、陰気くさい針葉樹の森になる。スキーが使える状態ではないのでついに諦め、スキーをデポし、一応持ってきていたGPSを取り出してポイントを登録する。ここからは樹の幹に描かれた赤ペンキマークを頼りに、さらに左上へと登っていくが、何とも頼りなく歩きにくい道だ。無雪期の様子を見ていないのだが、雪の下を靴で探っても、傾いた石や樹の根っこや空洞ばかりで、まともな道形があるように思えない。歴史ある夏沢峠道も廃道になってしまったのか??
今日中に夏沢鉱泉までも着くのかと不安になりながら、古いペンキマークを探して、労多い登行が続く。やがて、ルートは水平になってきた、と思うと、突然ペンキマークは急角度で下り始めた。不審に思いながらもどうしようもなく付いて行くと、ひょっこりと「車道」に降り立った。全く狐につままれたようだが、先ほど別れた「車道」が夏沢鉱泉まで続いているのだろう。目的としていた旧道から外れてしまったことは残念だが、これで鉱泉に辿りつけそうだとホッとする気持ちの方が強い。ワカンを履き、後は黙々と歩くだけだ。時間の頃合いを見て、道の上にテントを張る。注文どおり、シュラフカバーの内側に霜が降りる寒さを忍び、乾燥食料ばかり食って、軽量化のためラジオの音もない、楽しい?夜を過ごす。
(30日)
予定よりはるかに遅れたことで、まだ歩いていない夏沢峠までの部分を行ければいいや、という気になり朝もゆっくり出発する。が、負け惜しみでなく、トレースを辿って予定の山頂を踏むより、こうしてラッセルしながら時間切れ敗退になった方がよほど充実感はある。30分ほどで桜平からの道に合流する。後は良く踏まれた一般ルートの世界だ。時間がずれたためか人気もなく静かな森の中を歩いていると、しみじみと楽しい。夏沢峠でアイゼンに履き替え、硫黄岳を目指す。快晴だがさすがにここだけは風が強く、時折り地吹雪で視界が白くなる。ようやく登りついた頂上からは赤岳、横岳が氷の城塞のような厳しい姿を見せている。時間もなく、この風では横岳は怖くて行く気にならない。夏沢峠に戻り、佐久側に別れを告げて往路を下る。硫黄岳のみで終わったが十分満足で、幸せな気分で歩ける。最後は再びワカンをつけて幕営地に戻る。
(31日)
大晦日の朝は高曇りだが風はない。前々日の踏み跡を辿り「車道」を戻り、また陰気な樹林の中へ踏み込む。今度はワカンをつけたまま行ってみたらずっと楽だった。逆コースではペンキマークはほとんど目に入らないが、足跡が明瞭に残っているので迷うこともなく、スキーデポ地に到着。ストックをザックに結んで引きながら、スキーは手に持って下る。案じていたほどの苦労もなく、「車道」との分岐に出た。これで山行は終わったも同然だ。陽も差してきて、落葉松林の一本道を気持ちよく滑走する。初日と三日目を単独行で締めくくった。
(総括)
帰路に部分的にGPSで記録を取り、ガイドブックで調べなおして検証したところ、旧道が「車道」化していることは分かったが、2万5千図やそれを基にしていると思われるエアリアマップの記載ルートは「車道」とはかなりずれている。ペンキマークのルートも地図の記載とずれており、何のための道か分からない。それを知らなかったので、今回は行動選択を誤ったり、不安な思いをすることとなった。計画段階の調査不足だったことは否めない。
積雪期に行こうとするところは無雪期に下見をしておくこと、というセオリーは確かに正しいと再認識した。まあ、知っていたらこのコースを計画することはなかっただろうが。予定外の苦労のおかげで結果的には充実感のある山行ができたので良しとしよう。ポピュラーな八ケ岳でも、ちょっと一般ルートを外せば、スキー、ワカン、アイゼンの3種を駆使する面白い体験ができる。
行く人もいないと思うが、ペンキルートは降雪直後は幹に雪が付いてマークが見えなくなりルートが分からなくなるだろう。
ちなみに下山してから改めて加藤文太郎の記録を読み直してみたら、氏もアプローチから硫黄岳の森林限界まではスキーを使用している。
(追記)2014年12月28日〜に、「車道」通しで夏沢鉱泉まで再訪した。別途報告あり。
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