記録ID: 4249526
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積雪期ピークハント/縦走
甲信越
【飛越】西笠山(1697m) 東笠山(1687m) 長棟山(1692m)
2022年05月03日(火) ~
2022年05月04日(水)
体力度
6
1~2泊以上が適当
- GPS
- 20:20
- 距離
- 39.1km
- 登り
- 1,998m
- 下り
- 1,987m
コースタイム
1日目
- 山行
- 7:28
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 7:28
距離 13.2km
登り 1,165m
下り 108m
8:10
448分
スタート地点
15:38
宿泊地
2日目
- 山行
- 11:41
- 休憩
- 1:11
- 合計
- 12:52
距離 25.9km
登り 846m
下り 1,897m
✻✻✻ 密かなあこがれ ✻✻✻
登り残していた西笠山&東笠山。気合い入れて臨んだのに、さっそく追い込まれる。路肩が崩れていて通行止め。佐古まで入れるはずだったのに。車内でスネていたが、何とか立ち直る。富山側に回り込む時間はない。歩けばいいんだ。
佐古の集落跡を過ぎ、大多和の廃村へ。先発した原チャリの黄ヘルおじさんは、大多和の住人だった。今は神岡在住。
このエリアには15年ほど前、重点的に通った。当時でさえ、佐古も大多和も既に廃村だった。けれども、大型連休になれば、離村していた元住人が次々に集まり、賑やかさを取り戻していた。春祭りのためだった。
それがどうだ。この寂しさ。冬に耐えてようやく春を迎えた寒村に、人の営みは絶えていた。
当時は、佐古と大多和には頑丈な林道ゲートが設置されていた。しかも、その南京錠はドイツ製のABUSグラニット37-55という代物で、焼き入れ合金綱製、数字の組み合わせも25万通り。「あらゆる破壊に対して最高の防御」という触れ込みだった。
破壊加重が7トンというハイ・スペック。「インフラ施設のテロ対策として/山中の通信基地などの重要遠隔管理施設の管理として」などという売り口上が並ぶアイテムだった。
その頃の価格で税込¥13,020。なんて高いカギだろう。この私設林道への侵入者をことごとく排除しようという強い意思を感じたものだ。
それがどうだ。鉄壁の守りを築いたゲートは、今やサビついたまま無施錠で半開き。山も里も、完全に放棄されていた。
✻✻✻ 跡津川集落〜大多和峠〜設営地 ✻✻✻
カモシカに迎えられながら、ザックを担ぐ。若葉の素敵な季節。野鳥の天国だ。雪解けの進む大多和峠に立つと、薬師岳や北ノ俣岳がいよいよ目の前に迫る。
時間的に押しているが、もう少しテントを持ち上げよう。雪田が表れた。芽吹きの気配もないブナの疎林を抜けて歩く。
その時だった!黒いかたまりがサッと動いた。しまった、油断した!クマだ!!しかも、重量級だった!!
一瞬にして凍りつくが、相手は私に気づくやいなや、泡を食って逃げ出した。命拾いした。いつもこうとは限らない。クマに会うのはこれで6回目だ。私に向かってフ〜っと威嚇してきたヤツもいた。友人に向かって爆速でまっしぐらに突進していくヤツもいた。
改めて雪面を見る。そこかしこにクマの足跡。ここはクマの密度が濃い。
✻✻✻ 14年前のクマ祭り ✻✻✻
14年前、私たちは飛越横岳(1623m)を目指していた。現場は大多和の北1080mの舌状地形だった。
その棚のような地形から比高10m上がった時だ。直下で、興奮した大型動物が、激しく喉と鼻を鳴らして接近してきた。落ち葉と灌木を蹴散らし、荒々しく疾走してくる。うわ〜、ツキノワグマだっ!
息を潜めてクマをやり過ごす。ほっとする間もない。すかさず、視界の端に黒いかたまりが揺れた。2頭目だ!ついさっき猛スピードで走り抜けたクマを、一心不乱に追いかけているのだ。
理性を失った2頭のクマは、たて続けに狂ったように駆け抜けていった。なわばり争い?それとも、オスがメスを追いかけているのか?ここは、クマたちの無法地帯だ。
・・・そんな恐怖を思い返しながら、アスナロの樹が三本並び立つ細尾根へ。どこにテントを張ろう。雪の林床も捨てがたいが、尾根上の土の上に設営することにする。
夕暮れの薬師岳を樹間に見ながら、ささやかな宴が始まった。
✻✻✻ 設営地〜長棟山〜西笠山〜東笠山 ✻✻✻
出発してすぐ、瀬戸谷山(せとだんやま)の分岐。長棟山へはヤブをうまく避けて登り詰める。祝!二回目の山頂。ヤブの切り拓きに三角点を見つける。笑顔がはじける。
山々の祝福を一手に受ける。剣・立山・薬師・北ノ俣・寺地・黒五・笠ヶ岳・乗鞍・御嶽。飛越の国境線をつくる横岳・高幡山・池ノ山・六谷山。遠くバラ色に輝く白山。
祐延(すけのべ)貯水池をめぐる雪稜をめぐる夢ロマン。めざす西笠山と東笠山が手招きする。ニホンカモシカやテンたちの足跡を追いかけて最低コルへ。
何しろヤブまみれ。ある意味核心部だ。我慢を重ねて雪稜に乗る。1615標高点手前から西笠山に舵を切る。山頂雪原に立てば感激もひとしお。富山湾の向こうは能登半島の影。剣岳の北方稜線も一気に近づいた。
さらに東笠山に足を伸ばす。シンボルツリーが近づいて、胸が高鳴る。360度のパノラマ絵図の、ど真ん中に立った。知名度こそ落とすが、ここは飛越国境のヘソの一つ。オオシラビソの三兄弟だった。樹下に憩う甘美なひととき。
✻✻✻ 東笠山〜駐車地 ✻✻✻
恋い焦がれた山々との別れはつらい。来た道をなぞりながら、テントサイトに戻る。長棟山からの帰路は、地形が複雑で、体力の枯渇もあいまって、いつものように紙地図だけでは歩けなかった。舐めてかかると冷や汗をかく。
瀬戸谷山との分岐にモンベルの青テントがあった。同好の士だ。足跡も新しく、今朝方登ってこられたか。今頃は瀬戸谷山か横岳あたりかな。
マイテントを回収して大多和峠に下山。途中、目立たない所で、青テントの方が落としたグランドシートを回収。アスナロの大木近くの岩に、風に飛ばないように掛けておく。
峠からの下りは足取りも軽い。どこを切り取っても、春の色彩で溢れている。私もその一部だと思うにつけ、はち切れそうなほどの幸福感が胸にあふれてくるのを感じた。
登り残していた西笠山&東笠山。気合い入れて臨んだのに、さっそく追い込まれる。路肩が崩れていて通行止め。佐古まで入れるはずだったのに。車内でスネていたが、何とか立ち直る。富山側に回り込む時間はない。歩けばいいんだ。
佐古の集落跡を過ぎ、大多和の廃村へ。先発した原チャリの黄ヘルおじさんは、大多和の住人だった。今は神岡在住。
このエリアには15年ほど前、重点的に通った。当時でさえ、佐古も大多和も既に廃村だった。けれども、大型連休になれば、離村していた元住人が次々に集まり、賑やかさを取り戻していた。春祭りのためだった。
それがどうだ。この寂しさ。冬に耐えてようやく春を迎えた寒村に、人の営みは絶えていた。
当時は、佐古と大多和には頑丈な林道ゲートが設置されていた。しかも、その南京錠はドイツ製のABUSグラニット37-55という代物で、焼き入れ合金綱製、数字の組み合わせも25万通り。「あらゆる破壊に対して最高の防御」という触れ込みだった。
破壊加重が7トンというハイ・スペック。「インフラ施設のテロ対策として/山中の通信基地などの重要遠隔管理施設の管理として」などという売り口上が並ぶアイテムだった。
その頃の価格で税込¥13,020。なんて高いカギだろう。この私設林道への侵入者をことごとく排除しようという強い意思を感じたものだ。
それがどうだ。鉄壁の守りを築いたゲートは、今やサビついたまま無施錠で半開き。山も里も、完全に放棄されていた。
✻✻✻ 跡津川集落〜大多和峠〜設営地 ✻✻✻
カモシカに迎えられながら、ザックを担ぐ。若葉の素敵な季節。野鳥の天国だ。雪解けの進む大多和峠に立つと、薬師岳や北ノ俣岳がいよいよ目の前に迫る。
時間的に押しているが、もう少しテントを持ち上げよう。雪田が表れた。芽吹きの気配もないブナの疎林を抜けて歩く。
その時だった!黒いかたまりがサッと動いた。しまった、油断した!クマだ!!しかも、重量級だった!!
一瞬にして凍りつくが、相手は私に気づくやいなや、泡を食って逃げ出した。命拾いした。いつもこうとは限らない。クマに会うのはこれで6回目だ。私に向かってフ〜っと威嚇してきたヤツもいた。友人に向かって爆速でまっしぐらに突進していくヤツもいた。
改めて雪面を見る。そこかしこにクマの足跡。ここはクマの密度が濃い。
✻✻✻ 14年前のクマ祭り ✻✻✻
14年前、私たちは飛越横岳(1623m)を目指していた。現場は大多和の北1080mの舌状地形だった。
その棚のような地形から比高10m上がった時だ。直下で、興奮した大型動物が、激しく喉と鼻を鳴らして接近してきた。落ち葉と灌木を蹴散らし、荒々しく疾走してくる。うわ〜、ツキノワグマだっ!
息を潜めてクマをやり過ごす。ほっとする間もない。すかさず、視界の端に黒いかたまりが揺れた。2頭目だ!ついさっき猛スピードで走り抜けたクマを、一心不乱に追いかけているのだ。
理性を失った2頭のクマは、たて続けに狂ったように駆け抜けていった。なわばり争い?それとも、オスがメスを追いかけているのか?ここは、クマたちの無法地帯だ。
・・・そんな恐怖を思い返しながら、アスナロの樹が三本並び立つ細尾根へ。どこにテントを張ろう。雪の林床も捨てがたいが、尾根上の土の上に設営することにする。
夕暮れの薬師岳を樹間に見ながら、ささやかな宴が始まった。
✻✻✻ 設営地〜長棟山〜西笠山〜東笠山 ✻✻✻
出発してすぐ、瀬戸谷山(せとだんやま)の分岐。長棟山へはヤブをうまく避けて登り詰める。祝!二回目の山頂。ヤブの切り拓きに三角点を見つける。笑顔がはじける。
山々の祝福を一手に受ける。剣・立山・薬師・北ノ俣・寺地・黒五・笠ヶ岳・乗鞍・御嶽。飛越の国境線をつくる横岳・高幡山・池ノ山・六谷山。遠くバラ色に輝く白山。
祐延(すけのべ)貯水池をめぐる雪稜をめぐる夢ロマン。めざす西笠山と東笠山が手招きする。ニホンカモシカやテンたちの足跡を追いかけて最低コルへ。
何しろヤブまみれ。ある意味核心部だ。我慢を重ねて雪稜に乗る。1615標高点手前から西笠山に舵を切る。山頂雪原に立てば感激もひとしお。富山湾の向こうは能登半島の影。剣岳の北方稜線も一気に近づいた。
さらに東笠山に足を伸ばす。シンボルツリーが近づいて、胸が高鳴る。360度のパノラマ絵図の、ど真ん中に立った。知名度こそ落とすが、ここは飛越国境のヘソの一つ。オオシラビソの三兄弟だった。樹下に憩う甘美なひととき。
✻✻✻ 東笠山〜駐車地 ✻✻✻
恋い焦がれた山々との別れはつらい。来た道をなぞりながら、テントサイトに戻る。長棟山からの帰路は、地形が複雑で、体力の枯渇もあいまって、いつものように紙地図だけでは歩けなかった。舐めてかかると冷や汗をかく。
瀬戸谷山との分岐にモンベルの青テントがあった。同好の士だ。足跡も新しく、今朝方登ってこられたか。今頃は瀬戸谷山か横岳あたりかな。
マイテントを回収して大多和峠に下山。途中、目立たない所で、青テントの方が落としたグランドシートを回収。アスナロの大木近くの岩に、風に飛ばないように掛けておく。
峠からの下りは足取りも軽い。どこを切り取っても、春の色彩で溢れている。私もその一部だと思うにつけ、はち切れそうなほどの幸福感が胸にあふれてくるのを感じた。
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登山道中にオレンジテントを見た時、仲間が居て嬉しく思いました。
長棟山まで細かくピンテも付けて下さってたので随分楽できました。
こちらも同じ思いでした。
帰り道に、ブルーテントを見かけた時にはとても嬉しくて
思わず「こんにちわ〜」と無人のテントに声をかけてしまいました
その頃akiさんは、瀬戸谷山に向かってみえたのですね
お疲れさまでした
西笠山はもちろん、東笠山山頂のオオシラビソのシンボルツリーの下で憩うひとときは格別でした
また、どこかで!
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