扇沢周回(蓮華岳〜針ノ木岳〜種池山荘)
- GPS
- 34:59
- 距離
- 25.5km
- 登り
- 2,825m
- 下り
- 2,808m
コースタイム
- 山行
- 8:28
- 休憩
- 0:34
- 合計
- 9:02
- 山行
- 9:13
- 休憩
- 1:31
- 合計
- 10:44
天候 | 雨のち晴れ、晴れのち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
すみません、長文です。
相棒くんとの夏の山旅第1弾は、信濃大町の扇沢を基点に、後立山連峰の一部を周回した。
観測史上最短・最速で梅雨が明け、夏山シーズン到来かと思いきや、その後は天候不順に見舞われ、しばしば計画を立てたものの、ことごとく断念せざるをえなかった。自分自身、本格登山はGW以来2か月ぶり。相棒くんとの登山も、かれこれ10か月ぶりだ。いい意味で相棒くんのプライベートが忙しく、去年の9月の白峰三山縦走以来である。
金曜の夜9時くらいにウチへ迎えに来てくれて、調布から扇沢へ向かった。道路は空いており、休憩を含めても4時間ほどで着いた。下山予定の柏原新道の目の前に駐車し、しばし仮眠をとった。
3時半に目覚めると雨が降っている。雨予報は覚悟の上だったので驚かないが、意外と強い雨だったので嫌な感じがした。雨雲レーダーを確認すると、もう1時間くらいは強い雨が続きそうな様子である。長い行程を歩くので、4時半には出発したいなと思っていたが、1時間遅らせることにした。
改めて4時半に起きて、5時半頃出発。弱まったとは言え、相変わらず降っている。午前中の天候はもともと諦めているから、レインウェア、ザックカバーを装着の上、出発した。とにかく行程が長いし、1時間遅れになってしまったから、最初からがんばって歩く。土曜の朝なのに扇沢の駐車場はガラガラであった。この天候では登山客も観光客も少ないのだろう。
針ノ木岳の登山口には係の人がいて、登山届を記入するよう求められる。どこまで行くのか尋ねられたので、種池ですと答えると、今日は針ノ木に泊まるのかと重ねて訊かれたから、いや、今日中に種池まで行きますと答えた。針ノ木で泊まって、翌日種池に行くのがふつうなんだろう。今回のぼくらは、なんとか1日で種池まで行ってしまい、翌日、爺と鹿島槍まで足を延ばしてしまおうという、ちょっと無茶な、かなり欲張ったことをやろうとしている。しかもテント泊で。
がんばって先を急ぐ。長くて急な針ノ木雪渓にさしかかる。ベンガラの目印があるのかと思ったら、なかった。登山客もほとんどいなくて、トレースもなかった。雪渓の左寄りを、ほぼ直登していく。一気に高度を上げていくと、両太ももに痛みを覚えた。登り始めてまだ3時間。早過ぎる。
針ノ木峠まではなんとかコースタイムの8掛けで来れた。しかし、もともと8掛けで計算している計画なので、最初の1時間遅れが解消されない。蓮華岳への寄り道をやめてしまおうかとも考えた。しかし、蓮華岳のコマクサの群生が見頃なのは間違いないので、行かない選択肢はとらなかった。
8掛け以上のコースタイムを意識しながら、歩みを進めていく。緩やかな傾斜を上がって視界が開けた時、ガスの中に存在感のある鳥の姿を見た。一瞬でライチョウだとわかった。一羽のライチョウがコマクサの咲く中にいるだけで感動する。しばらく見ていたら、4羽のヒナもあたりでヨチヨチ歩きまわっている。感慨深い光景だった。これだけでも、蓮華岳に寄ったかいがあったというものだ。
しばらく、時を忘れてライチョウに見とれていたので、もはや8掛けのタイムは難しかった。蓮華岳山頂直下のコマクサの群生を見て、再び針ノ木峠まで戻ってきた時には、コースタイム通りくらいにまでタイムが落ちている。種池までは行けないかもしれない、そんな考えが頭をよぎった。
とりあえずダメ元で針ノ木岳まで行ってみる。あたりはガスで何も見えない。山頂との距離感も全くわからず、ただ霧中を夢中に歩くだけ。しかしペースは上がらず、山頂に着いた時、12時半を過ぎていた。タイムを縮めるという一縷の望みは叶わなかった。
種池山荘までのコースタイムがまだ7時間もある。やむなく、予約していた種池山荘へキャンセルの連絡を入れる。何時に扇沢から登り始めたんですかと訊かれたから、5時半ですと答えると、時間がかかりましたねと言われてしまった。代替として新越山荘を勧められたが、こちらはテント場がなく、小屋泊の当日料金が14,900円もするので、遠慮した。
山頂でしばし思案する。もうこれ以上は進めない。なんとなく自分の体調、体力も本調子じゃない気がする。一旦扇沢まで下山し、翌日、柏原新道で爺・鹿島槍をピストンで登ろうか。いや、天気が回復する予報である。せっかく稜線上まで登ってきたのだから、ここで夕焼けやら星空、朝日なんかを楽しみたい。そこで、針ノ木小屋まで戻ってテント泊をし、翌日、種池経由で下山する周回コースに変更した。爺にはもしかしたら寄れるかもしれないが、鹿島槍は諦めた。
その後はしばらく、針ノ木小屋へ戻りながら、自責の念にかられ、敗因の分析をしてみる。計画に無理があったのか、自分自身に過信があったのか、本格登山が2か月ぶりだったせいなのか、最近の運動不足がたたっているか、自分がジジイになったから爺ヶ岳に行けないのか、いろいろと思い浮かぶことはある。
小屋でテント泊の手続きをし、缶ビールも購入。実際には、質より量で発泡酒にした。350mlのビールと500mlの発泡酒が同じ値段だったから。とにかく、疲れたし、気分もすぐれないし、飲むしかない。
小屋近くのテント場はいっぱいで、張るスペースがなかった。なので、針ノ木岳寄りの離れのテント場を利用した。これが結構当たりで、空いてて静かだったし、平らに整地してあって、使いやすかった。テントを張る場所を決めたら、まず乾杯。登山としては完敗だったけど。
そうこうしているうちに、ようやくガスが取れ、青空が見えてくる。全く姿が見えていなかった蓮華岳や針ノ木岳が間近に見える。もっと晴れると、スバリ岳、赤沢岳、鳴沢岳と、翌日に繰り越した山も見えてくる。さらには、鹿島槍や白馬など、後立山連峰のほとんどを眺めることができた。反対の南側を見れば、なんと槍ヶ岳まで見えて、ここ針ノ木が北アルプスのちょうど真ん中くらいに位置し、360度名峰に囲まれているのを実感する。やはり、この離れのテント場は当たりであった。そして、周囲の絶景が見えるようになると、先ほどまでの曇った気持ちも晴れてきた。山の天気も自分の気分も変わりやすい。
明るいうちにお酒も食事も済ませ、日没までずっと景色を眺めていた。時間を忘れて、いつまでも見ていられる。夕暮れ時はあたり一面雲海が広がった。稜線のところどころの鞍部から雲が流れる滝雲も見られた。滝雲を見たのは今回が初めてである。充足感を得て、7時過ぎくらいには寝てしまった。
早くに寝たので、1時くらいに目が覚めた。テントから顔を出すと、期待通りの快晴。満天の星、天の川だった。いつも三脚や交換レンズを持ってくるが、なかなか出番がない。しかし、今回はばっちり。満足のいく星空を撮影し、また気持ちよく二度寝した。
翌朝も雲海が広がり、朝日とともに撮影することができた。ついている。食事をし、テントを撤収し、5時半くらいに2日目の行動を開始した。
再び針ノ木岳に登る。前日は真っ白だったが、360度の大パノラマである。後立山連峰はもちろん、黒部ダムをはさんで剱・立山連峰、そして、槍ヶ岳をはじめとする北アルプス南部の山々を見渡すことができる。遠く南アルプスや富士山のシルエットまで確認できる。素晴らしい眺め。人気の山なのもうなずける。ただ、スバリ岳方面へ向かう山頂直下の道は非常に荒れていて、危険。慎重に進んでいく。
次のピークがスバリ岳。剱・立山連峰の最高の展望台かもしれない。両名山を正面に見ることができる。7月はまだ残雪も多く、雪渓がところどころにあって美しい。スバリという変わった山名は、イワヒバリが巣を張るから巣張りという言われがあるらしい。実際、あたりでイワヒバリをよく見かけた。ぼくは、スバリ岳はズバリ、穂高岳のように感じた。先の尖った巨大な岩山で、奥穂や西穂のような風格を備えている。
続くピークが赤沢岳。こちらは文字通り、山肌が赤色をしており、ハイマツの緑色とのコントラストが美しかった。山頂からは黒部ダムを一望できるのもいい。
そして、続くピークが鳴沢岳である。この山もその名の通り、山頂から沢の音を聞くことができた。この稜線上の針ノ木岳、スバリ岳、赤沢岳、鳴沢岳、どれも名峰である。剱や立山、五龍や鹿島槍など、圧倒的な存在感のある山に囲まれてしまっているので影が薄いかもしれないが、負けず劣らずいい山々である。
稜線上のお花畑も見事である。コマクサにチングルマ、シナノキンバイ、イワギキョウ、コバイケイソウ、キヌガサソウ…と、名前がすぐ出てくる花だけでもたくさんあるし、名前のわからない花も含めれば、ものすごい種類である。険しい稜線ではあるが、花は美しく、なごやかに咲いていて、楽園である。
2日目も結局、8掛けのコースタイムでは歩けず、いいとこコースタイム通りだった。種池山荘までようやく至り、爺ヶ岳へ寄る余力はないこともなかったが、だいぶガスって来て、眺望が期待できないので、やめた。爺と鹿島槍、そして五龍は、またいつか来よう。あとはひたすら、柏原新道を下った。
柏原新道は比較的歩きやすい登山道だった。しかし、疲れた体にはかなりこたえて、新道だけにしんどかった。ふだん、トレランの人以外にあまり抜かされることはないが、今回はよく抜かされた。膝が痛い、マメができたのか爪先も痛い、ストックを使っていたせいか手首も痛い。満身創痍で下山してきた。すぐに車に乗り込み、薬師の湯(750円)で2日分の汚れを落とし、水風呂に入って、全身のアイシングをほどこした。帰りに双葉SAで空腹を満たし、帰京した。
とにかく疲れたし、体じゅう痛いし、反省点も多々あったが、いい被写体に恵まれて、ちょっとカメラが上達したかもしれないと思えるのは、収穫だった。
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