権現岳〜東ギボシー天女山ピストンー東ギボシのお不動様と八嶽権現様に会いに
- GPS
- 10:17
- 距離
- 13.5km
- 登り
- 1,417m
- 下り
- 1,416m
コースタイム
- 山行
- 7:00
- 休憩
- 3:15
- 合計
- 10:15
天候 | 晴れのち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
○40台ほどとめられる。朝5台ほど。帰ってきても数台。天女山山頂駐車場まで舗装があり安心して来れる ○すこし下にトイレあり。汲み取り式で暗いトイレだが手洗い水道はきちんときている |
コース状況/ 危険箇所等 |
●要注意箇所 ▲権現岳山頂手前に鎖場1か所。それほど難しくはないが高さがあるので注意 ▲三ツ頭〜権現岳間はガレ場ザレ場多く歩行注意 ▲権現岳山頂周辺浮石おおい。落石に注意 ▲東ギボシ周辺はザレていてとても脆い。目印のペンキわかりにくいところあり。ここで先月滑落死亡事故あり。道幅はそれなりにあるが断崖。滑落には注意 ▲東ギボシ山頂は登山道からすこし外れないといけない。ピークは登山道から山頂方向に数分外れるだけだが足場は良くない。今回はお不動様に会うために登ったのでコースは外れたが特に目指すのでなければ下のトラバース道を通る方が安全。山頂も狭い。人二人分程度のスペース。滑落に注意 ▲標高2000m看板〜一番キツイ看板間、倒木や崩落により巻道になっている場所が何ヶ所かあり、目印少ない。道迷い注意 ○全体としては危険箇所は編笠山から青年小屋経由と比べてそれほど多くない。観音平から編笠山〜青年小屋経由で登る人が多いが天女山から登るピストンの方が難易度は低く安全性は高い。 ○天女山〜前三ツ頭間は道が歩きやすく、特に天女山〜標高2000m看板間は勾配も少なく道も石が少なくかなり歩きやすい。ペースはかなりあげられる △ただし標高2000m看板〜一番キツイ看板までの間は急登 ▼権現小屋は閉鎖されている。板が打ち付けてあって長期閉鎖中。トイレも使えない ▽権現岳山頂は広くない。山頂の岩よりすこし下に開けた休憩適地あり。 |
写真
感想
お天気に恵まれない今シーズン、珍しく晴れ予報が並びてんくらの登山指数もオールAという絶好の登山日和とあってやってきました八ヶ岳。
お不動様と権現様に会いにいくために今回は権現岳と東ギボシが目的地。
早朝6時現地着。駐車場は広くて舗装も行き届いていて安心して来られます。到着した段階では5台ほど。
いきなり天女山山頂からのスタートです。
トイレはすこし下に汲み取り式トイレがあります。ただかなり薄暗く林の中に埋もれるように建っていて気味はあまり良くないトイレです。でも手洗い水道は通っていて山のトイレとしてはいいほう。紙も完備されています。
7時前に登山開始。雲もほとんどない快晴です。
天女山駐車場から天の河原まではあっという間。でも観光客向けの雰囲気ですが登山靴じゃないと登りたくないような足場。少なくともヒールでは登りたくない。
すこし進んで開けたところにハナちゃんのベンチ。銘板から察するに昨年亡くなったワンちゃんを記念したベンチなのだと思われます。おそらく山にも一緒に来ていてきっと思い出の場所なのだろうなということが銘板から読み取れます。このベンチがあるところは本当に絶景で、振り返ると富士山が良く見え、視線をうつすと甲斐駒ヶ岳や南アルプスの山々が見渡せます。
ここから先はほぼ平坦で足元も比較的よく、ペースはかなりあげられます。
難なく標高2000m看板まで。ただこの看板、よく見ると「ほぼ標高2000m」という不思議な看板。おそらく誰かが書きたしたと思われる「ココまだ2000mではない」。ちなみにホンモノの標高2000mの石碑は結構先にあります。15分くらい離れています。
ここまででまだ9時台。40分ほど貯金。
ここまでは快調そのもの。驚くほどの快晴で勾配もなく、かなりラクラク。
でもこの“ほぼ”2000m看板を過ぎるとかなり急登になってきます。
このあたり結構笹が騒がしい。一応登山道そのものは刈られているので藪漕ぎにはなりませんがかなり笹が旺盛なのでマダニとかつきそうで嫌だなぁって感じ。
ここはかなり急登で汗を絞られます。
このへんすっかり秋の山ですね。紅葉はじまってました。
しんどいなぁ〜と思ったあたりで「ここが一番キツイ看板」
この看板自体はとても小さいですがこの看板のところはすこしスペースがあります。
でもこの看板までが一番キツかった気がします。この看板を過ぎると勾配は急ではあるものの視界も開けてきて、前三ツ頭も見えてくるので気持ち的にはかなり楽。
そうこうしているうちに前三ツ頭に到着しました。
いや〜ここは絶景。富士山から南アルプスまであらゆる山が見えて開放的で気持ちいい。
かなり広い山頂なので休憩にももってこい。座るにちょうどいい岩もたくさんあります。
一息ついたらさぁ三ツ頭。
勾配は緩く、地図で見るより意外にサクサクすすめます。足元は前三ツ頭周辺がややザレているもののそこまで滑りはしないしすぐ樹林帯はいるので難所はないです。
ここのあたりから他の登山者さんが増えてきました。
わりにあっさり三ツ頭着。
三ツ頭山頂は展望はそれなりにあるものの展望だけなら前三ツ頭のほうが絶景感あります。
まあさっき休んだばかりなのでほどほどに先へ進みます。
三ツ頭から先は八ヶ岳がドカーンと眼前に広がる絶景。
低いマツはあるものの視界はひらけていて、赤岳や阿弥陀岳が荒々しい姿を魅せるいいスポット。南八ヶ岳を感じるならココかもしれないですね。
もちろん権現岳も眼前。
権現岳が垂直に迫ってくるといよいよ少し険しくなってきます。
足元はガレていてやや急登。思ったほどキツくはありませんが足元がよくないのでペースはあがりません。
すれ違いが難しい場面も多く、気を使います。
鎖がかかっていない大きな一枚岩が1か所。鎖があるけど特になくても登れる箇所が1か所。がっつり鎖場が1か所。
でもどれも広くて周りが木にかこまれているので恐怖感は特にありません。わりと登りやすい。危険はあまりないですね。
鎖場を超えるといよいよ権現岳が迫ります。
…と、ここでにわかに雲がひろがり怪しい気配。
広く空を見渡すと確かに北杜のほうは快晴なんですけど八ヶ岳に向けて雲が流てくる上にどうやら八ヶ岳に雲がひっかかっているみたいでどんどんどんどん頭上に雲が集まって分厚くなって、なんだか暗くなってきました。
うへーと思いつつ晴れてくれることを願って歩みをすすめます。
さほどキツさや危なさは感じないままついにやってきました山頂。
権現岳、到着です。
このらへん続々登山者ふえます。みんな編笠のほうからまわってきてるみたい。
でも繰り返しますけど絶対天女山からのぼったほうが安全で登りやすい。
まずは権現様におまいり。山頂の岩の下、祠があります。
まさにこここそが八ヶ岳信仰の中心。
かつて人々は権現岳を八ヶ岳信仰の中心と位置づけてこのに神宿るものを感じていたのでしょう。かなり古い時代からここは信仰の山だったようです。
驚くべきことに赤岳は古代にはあまり注目されていなかったんですよね。
北杜方面からみると真っ先にみえる巨岩は権現岳。
茅野方面からみると最も切り立つ異様を誇るのは阿弥陀岳。
昔の人々は標高の高さではなくその異様さに神聖さを感じていたようで、信仰の山としては権現岳や阿弥陀岳なんですよね。赤岳の歴史はかなり新しくて江戸時代の開山だそう。
肉眼でみても赤岳が一番高いのは感じられるんですが、昔の人々の山への感覚は標高の高さに価値を感じる現代人とは違ったようです。
ともあれ権現様におまいり。
この時点では結構青空見えました。
すこし岩をよじ登ると山頂の岩。
神剣が突き立つ岩場がピークです。
この神剣もかなり古く、銘は風化すすみよくよめませんでしたが江戸時代か明治頃か。この神剣がこれまたとても大きい。こんなものを担いできた人の信仰と山岳宗教の聖地を感じます。
山頂の岩そのものはかなり狭い小さな岩。
人一人がやっと立てるかなぁくらい。
神剣があるのはその下の岩場。ここはある程度の広さ。
山頂の岩は写真を撮る人で並んでいたので先にごはんにします。
やや下に休憩適地。
今回のお昼メニューはサバとアンチョビのトマト煮。
缶詰缶詰、また缶詰なので荷物が重かった。いやー、やっぱりトマト缶を使う時はもうちょっと標高差少ない楽なルートのときがいいな。
でもサバ缶もアンチョビをつかったトマト煮は大正解!めっちゃおいしい!
しかーーーーし。
嫌な予感的中。どんどんどんどん雲が集まってきて暗い!寒い!白い!ガッスガス!
うっすら見える下界はとても晴れ渡っているのですが八ヶ岳にだけ!雲がかかっている、というか雲の中です。
うーーーーーーーん。
赤岳はおろか何も見えなくなってしまいました。
ガーーーーン。
いや、困ったなぁ、白いなぁ。とは思いつつも仕方ないですね。
山頂からの絶景はナシです、、、
ちなみに山頂の岩、これかなりの地獄覗き。超断崖。
さてさて、白くなってしまったので先を目指します。
赤岳との分岐を横切ると権現小屋まですぐ。
しかーーーし、権現小屋は長期閉鎖。
トイレくらいは借りようと思っていたのですが板が打ち付けられていて全く閉鎖。コロナ禍だかららしいですが。
小屋もしまっているので人気はほぼなし。
となると特に用もないのでいよいよ東ギボシを目指します。
東ギボシのお不動様に会うのが今日の目的の一つ。
ちなみにヤマレコで「ギボシ」となっているのが東ギボシです。
で、肝心の東ギボシなのですが、これ、登山道をすこし外れないと行けません。
登山道は東ギボシのピークを巻いてすこし下をトラバースして西ギボシに向かっています。
このへんペンキの目印も薄くなっていて注意です。
先月は滑落死亡事故おきてます。
ただそうは言っても今回は東ギボシのお不動様にお参りするのが目的なので仕方ないのですこし登山道外れます。外れるといっても1〜2分の距離。すこしだけ上がるだけです。感覚的には岩ひとつ分よじ登る感じ。でもここ案外階段状に岩がなっているので慎重に歩けば特に難しい場所ではありません。落石と滑落にだけ注意かな。ただまあ断崖は断崖です。
難所ではありませんが数分あがったところに切り株とお不動様あります。
東ギボシのお不動様、無事とうちゃーーく!
かなり古いものと思われるお不動様の石仏が合計3体。
彫刻も風化が進んでいて、はじめ写真でみた時は真ん中がお不動様で両脇の石像は童子像だと思いこんでいたのですが、間近で見ると、それぞれがお不動様と童子の三尊像が3体という構成。
真ん中のお不動様が一番大きいですが、右側のお不動様は後背の炎の部分はかつて赤く着色してあっただろうあとが見られ、左側のお不動様はかなり立体的な造形となっていて童子像は浮き彫りになっているかなり細工の凝ったものであったことがわかりました。
ここのお不動様は、かつて江戸時代に成田山の出開帳が流行った頃に、おそらく成田山の信徒の講が建立したと思われるもので、かなり古いものです。
後ろに奉納された年や奉納した人々のことが刻んであるのはわかるのですが、風化がすすみ文字の判読は困難でした。
おそらく当然この石仏たちは人の手で担いでこられたのでしょう。
もっとも小さい右側の像でも軽く30~50kgはありそう。
左側の像は軽めの火山岩で作られているようでしたが造形も凝っていて多分50kg級。真ん中の大きなお不動様に至っては軽く70~100kg近いのではないかという大きさ。後背があるので重さもあります。これをかつて担いで山道を上がってきた当時の人々の祈りに思いを馳せるとその祈りの強さを感じます。
ともあれ、ここまで無事に登ってこられたこと、そして様々な思いをこめてお不動様にお参りです。
お水とお菓子を供えてお参り。もっともお参りが済んだら下げるというかそのまますぐ持って帰るしお水はその場で飲むんですけどね。
お参りをしてると、分厚く垂れこめていた雲が引き、ほんの短いお参りの間だけでしたが日差しが射し込み、雲間から青空が見られるようになりました。この晴れ間はお不動様のくれた晴れ間だったのかもしれません。
ところてここ、かなりスペースせまいです。
人が一人腰を下ろす分のスペースがやっとあるくらい。
横並びで二人並んだらもう一杯です。ちなみに背後は断崖絶壁。バランスを崩したらきっともう無事では帰れない。
ただ、登山道からすこし外れないといけないこともあって通行量はほぼないです。というか誰も来ませんでした。下のトラバース道は通ってる方いましたが。
お参りを済ませたので撤収!
お下がりのお水は飲んでお菓子は仕舞い、ご挨拶して帰ります。
しかしこれはいいものを拝めた。あの三体のお不動様の像はどれも造形が細かく、それぞれに表情も違い、脇士の童子像も個性的で石仏お好きな方は一見の価値あり。
風化の状態からみてもかなり古く、おおくの人々の記憶から忘れ去れてからも時が長いのでしょう。
阿弥陀岳の阿弥陀様や石碑が比較的新しく整備されているものもおおく、あそこの阿弥陀様もペリー来航の翌年建立と160年以上たっていますが、新しい日付のものも奉納されて信仰の山として存在しているのとは対照的です。
権現岳そのものもご神体であり、神剣がささる山頂とその祠がありますが、この祠は今も信徒の方がそれなりにいるのだろうと思われるのに対して、東ギボシのお不動様は時折訪ねてくる人はいるものの登山道からも外れ、少しずつ時の中で薄れゆく石仏なのかもしれないです。
そう遠くない未来に風化がすすみ、立体的な浮き彫りの童子像は壊れてしまうかもしれない。後背の朱塗りはいずれ消える運命でしょう。真ん中の大きなお不動さまも、少しずつお顔も風雪をうけて表情が薄くなっていています。
かつて永遠を願って建立され、石という永遠性をもつものに託されたお不動さまも、いずれいつか朽ちてしまうというのは、まさにこの世の無常を示し、その風化するお姿によって諸行は無常にして諸法は無我であることをお示しになっているのかもしれません。
お不動様からの帰りは、まさザーッと分厚い雲がまるでモーセが通ったあとの海のようにまた雲の中に沈んでいきました。
お参り、晴れ待ち、ごはん、お参り、とだいぶ上で時間使ってしまい結局3時間も合計休憩してしまいました。
まあそれでも朝の40分の貯金にさらに前三ツ頭で15分貯金したのでサクサクっと下山。
例の鎖場がすこし難しかったくらい。
こと最終セクターはかなり早歩き。
ここで、また遅れをグッと取り戻して、結局なんだかんだ行動予定表通りの7時発、17時着になってしまいましま。8時間台には乗りませんでしたね。
なにはともあれ無事下山。
この夏の、
曇り予報を全て覆した阿弥陀岳の歓喜
台風予報をこまめな予報判断と大胆な予想で台風の影響をうけなかったにゅうと中山、北八ヶ岳の奇跡
3つめの奇跡は残念ながら起こらず今回はガスでしたが、一方で雨の登山一転お地蔵様にお参りしていたら晴れ間のでた地蔵岳の奇跡、曇り予報の雲が低層で、むしろ雲海をみられて赤岳をバックにお参りできた阿弥陀岳の歓喜と並べてみると
この一瞬の晴れ間もお不動さんのはからいだったのかもしれませんね。
登山道を僅かながら外れることもあって万人にはすすめませんがお不動にお参りするかたは東ギボシ山頂目指してみてください。
あと繰り返しますが天女山から登ったほうがはるかに安全で難所ないです。
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