一ノ倉沢烏帽子岳沢南稜ルート〜国境稜線〜谷川岳(ソロ)
- GPS
- --:--
- 距離
- 11.1km
- 登り
- 1,260m
- 下り
- 1,263m
天候 | 晴れ! |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年09月の天気図 |
アクセス | JR水上駅からバスでロープウェイ駅まで |
写真
感想
紅葉前の混雑前に本チャン一発。
昨年の北岳第4尾根から引き続き。しばらくバリエーションルートに集中していましたが、いよいよ谷川デビューです。
9月14日(日)
水上駅から9時発の土合ロープウェイ駅へバスで現地入り。
正直、一ノ倉出合から取付きまでそこまで苦戦するつもりも無かったので、予習もそこそこに総重量20kgのザックを背負ってのんびり歩いてアプローチ。
雪渓はもう無いので出合から直接沢をつめるのが正解ですが、フィックスロープが張られた北方向の短い沢筋を詰める。結構登った所で一向に西に進まないので引き換えす。
降りてきて沢を詰めて正規ルートへ戻る。
続いて懸垂下降点をスルーして右に巻きそのまま北へ詰め始める。また間違える。
降りてきて沢を詰めて正規ルートへ戻る。
9時半に出合出発してもう14時なんですが……。
やや時間をかけすぎつつも、南稜テラスにやって来て見上げる。
殆どのパーティーは下降してきている時間だ。今日は出直そうかと考える。
もう一度見上げる。登るのに標準タイムは2時間半。
2ピッチでも登ってフィックスして降りてくるか。全6ピッチのこのルートなら50mザイルと60mザイルを持ってきているのでフィックスできるが、テラスでビバークとなったら落石は大丈夫なのだろうか。降りてきているPTが落石しまくってるし。
よし登ろう。
普通に標準タイムどおりに行ければ日が沈む前までに終了点まで辿り着ける。ビバークを考慮しているので、安全地帯までやってくれば何とでもなる。
取り付きに打ってあるピトンでは怖いのでテラスの床に打ってあるハンガーボルトで支点を作成しビレイを取る。ビレイデバイスのソロイストに50mの10.2mmザイルをセットする。ザックはテラスに置いて空身で壁とも言えない斜壁に取りつく。
脆いと言われる谷川と言えども人気ルートなだけあって岩は安定している。テールリッジの登りとその難易度に差を感じない。
普段ボルダーに取り付いている時などでは良ホールドと言われるホールドが極小のジブス並に頼りない。ガバを探せばガバがあるので広いスタンスをなぞるようにしてルートを見出していく。チムニーには少しだけトラバースしてビレイ点をスルーしてチムニーの基部でザイルを固定して落下距離を最小限にとどめて取りつく。正対では登れないチムニー特有のムーブは上り始めのソールフリクションを騙し騙しスタートする。終わり際に遠いムーブがあるという事で5級マイナスとされているルートなだけに終了間際にカムで追加でビレイを取る。空身の自分にはそれ程苦労せずに1ピッチ目の終了点に出ると2ピッチ目のビレイ点にザイルの末端をフィックスしてそのまま懸垂下降に入る。シングルロープによるビレイして登ってきたロープによる懸垂下降は出来ればやりたくない事だが、2本のザイルを扱って時間をかけるよりも回転が速い。
トラバースを含む2ピッチをつなげて登ってきているのでザイルの流れに注意しながら回収の面倒なカムなどは回収しつつ下降する。
思ったよりも簡単に登って降りてきたので、最初に固定したザイル末端のビレイを解除し、ザックを背負いユーマルで登り返す。
2ピッチ目は4級だが段上になっていて簡単そうなのでザイルを束ねてザックに固定しフリーソロで登る。2回登らなければならないソロでの登攀はフリーソロで登れる所は積極的に登っていかなければならない。
段上になった2ピッチ目は少し細かいスタンスを伴うが危ない所もなく3ピッチ目の草付きまで出てそのまま登る。
4ピッチ目はフェース3級なので継続登攀。特に危険に感じる場所はない。
3級フェースを登りきりテラスに出たが、次の5ピッチ目で馬の背へ向かうフェースではなく左に巻いてしまう。
左に巻いて出てきた凹角は脆く。ピトンの数も少ないのでルートを間違えたと気づくがもう戻れないので登り続け、騙し騙し2手3手進めた所でビレイ点に到達し少し迷いながらもザイルを再び出してビレイを取り直す。
凹角をそのまま直登しようとするが、いかんせん悪く。5.9以上のグレードっぽいし脆いので右に逃げると馬の背リッジに飛び出して、高度感があるもののホールドは快適そのものでトポ通りの3級といった所だった。
直ぐに5ピッチ目の終了点でビレイを取り直し、登り返す。
6ピッチ目のカンテからのクラック登攀との事だが、4級とはいうものの簡単そうなのでフリーソロで登る。
最終ピッチは流石に悪そうで、ビレイを取って登り始める。
まだ陽は高く、何とか登りきった事に安心するが、油断は出来ない。
まともな垂壁の登攀を楽しみながら最後の2手目で動きが止まる。
なるほどこれが最後の核心か。
目の前にピトンが連打されていてお助け紐までぶら下がっている。確かに右手にガバはあるものの左手から先にガバは無く、スタンスも安定したものがあるもののかなり上げないと足が上がりそうもない。てか、右手のホールドの近くに先客がいた。緑色のゲジゲジがクライミングを楽しんでいる。これはなるべく触りたくない。落とすのも気が引けるので無視を決め込む。
残置ピトンが信頼できないので一応カムでビレイを取ってから左手のホールドを探ると、リップ状になったホールドを爪先立ちぎりぎりの所で掴む。
あ、これ行けそうだな。と思うのと同時に、
これで大丈夫かな?と不安な心の声が会話を始める。
しかし、意思に反してホールドを掴んだ左手は体を引き上げていた。
え、なんで!?
と自分でも驚きながらも、勝手に体が動いて足をずり上げる。完全にボルダーの動きだこれ。
左手は指先がかからないものの第2間接までは接していてちゃんと効いている、右手も少し上のカチにひっかけながら、右足でスタンスを踏ん張り、左足は壁を蹴って少しずつ体を上げる。
最後はガバという情報は頭に入っていたので、いけそうなリップに右手が掴んでそれがガバだったので一安心。
考えるより先に体が動いていたので、少しだけ驚きつつも最後の核心を何とかクリア。
終了点にビレイを取って懸垂下降。垂壁のユマーリングは楽なのでサクサクだ。
日没までまだ時間に余裕があるので、国境稜線に向けてフラットソールのまま先へ進む。行けるところまで行って途中でビビーだ。
しかし、ここからが本当の核心だった。
踏み後を辿って進むのだが、ちゃんと立てないような泥んこの凹角を直登。
ホールドも無いので笹の茎を掴んで登る。竹系の根は恐ろしく強い。
本当に騙し騙しだ。
何度か道を間違えたような道を進み、一ノ倉尾根に出る直前で日が沈みビバーク。
快適な広いスペースを見つけて快適な夜を過ごす。シュラフカバーで汗ばむ程なのになぜか寝付けずに最初の2時間と明け方の1時間以外は熟睡できなかった。
夜は月が良く出ていて星は殆ど見えないもののかなり明るい。
夜が明けると目の前に真っ赤に燃える稜線が見えた。
少し寝坊気味だったのであわてて撤収し、出発。
ここからは道はしっかりとしていて踏み後を見失わないように藪をかきわけながら先へ進む。朝露でズボンは濡れて腕は笹に切られてかゆい。
一ノ倉尾根の微妙な完璧は3級といった所だろうか。フリーソロで登りきるが一番楽なルートではなかった気がする。
最後の登りは踏み跡はしっかりしているものの、時々べっこり凹んでたりするので慎重に歩みを進める。
稜線に飛び出すと思った以上に開けた道で、思わず声が出た。
ああ、終わった。
しかし、ここで終わりではない。
既に水はなくなっていて喉がカラカラなので肩の小屋まで急ぐ。
今年の3月にやってきた谷川岳だが都内から近くて人が多く集まる場所なだけあって、雪山と歩きやすさもそう変わらずに快適に歩く。
肩の小屋について登攀用具をまとめて小屋で缶ビールをさっさと体に吸収させて出発。
快適すぎる下山路を駆け下りていくなか、登りの登山客は蟻の行列のようだ。
道が広いので道から外れた岩の上を歩いたりしながら降りる。
心はロープウェイで降りる気満々だというのに、田尻尾根の看板が見えると、少し迷いつつも田尻尾根を下り始める。
これは絶対後悔する。という核心があった。
最近は下山が大嫌いになってきている。30分もすると重い荷物が肩に食い込み、よく滑る道が憎くて仕方が無い。
延々と続く覚悟をしながらも、早く付けと心の中で叫びながら下山をしていると、思ったよりもあっけなく舗装路に出る。
ここから30分ほど下ってゴールとなった。
ロープウェイ駅に到着すると直ぐに水上駅行きのバスが止まっていたので滑るように乗り込み帰路についた。
HandMともうします、はじめまして。
カーカカさん、凄いね、いつもレコ見て感心してます。
ソロの人工登攀って難しいでしょ? 私もチャレンジしたくてうずうずしてますが、少しづつ勉強して、岩と仲良しに成ります。
そんな時はアドバイスお願いします。
はじめましてHandMさん。
私も何度か山行記録を読ませて頂いてます。
人工登攀が必要になるほどのルートには中々手が出ていませんが、より困難なルートを目指したくなるのは山を登る人間の習性みたいなもので、私も岩と仲良くなる為に試行錯誤の日々です。
ソロ登攀は装備が多く、2度登らなければならないという体力面での負担も大きく、危険も伴いますが、個人的には他人を気にしない気楽さが気に入ってます。
私などでは大したアドバイスも出来ませんが、何でもご相談ください。
はじめまして。
南稜登攀の記録は時々見かけますがソロは珍しいですね。
私も20代の頃は一ノ倉のルンゼを中心にソロで登ってたので懐かしく記録を読ませてもらいました。
基本南稜は一ノ倉沢の中でも超人気ルートなので支点もしっかりしていてソロ向きだと思います。でも人気ルートゆえに取り付くパーティも多いのでソロだと登り返しがあったりで気まずいんじゃないかなあ〜と・・・でも登りだしが遅かったのですね。それならマイペースで登攀に専念できたと思います。
一ノ倉尾根の5ルンゼの頭の岩場はロープ出さなかったのでしょうか?
あそこ確か+か-のグレードだったと思うんですが・・・
はじめましてnukaboshiさん。コメントありがとうございます。
ソロなので暗い内に出発か遅めに出るかして極力回りに迷惑かけないように調整には気を使ってます。下で待たれるとプレッシャーが怖くて……。多分6月辺りのシーズン中の谷川は無理ですね。
ロープを出したのは1ピッチ目と最終6ピッチ目、それと馬の背手前でルートを間違えて脆い凹角を戻る時に使っただけです。
一ノ倉尾根出てからは何度かロープを出そうかと思いましたが面倒なので出さなかったです。ルート探しながら行っては引き返す事もしましたが……。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する