仙丈ヶ岳 女王様のアメとムチ 極上の展望と極悪の高山病
- GPS
- 07:32
- 距離
- 10.3km
- 登り
- 1,161m
- 下り
- 1,152m
コースタイム
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス タクシー 自家用車
始発の乗り合いタクシーで広河原、バスで北沢峠へ 帰りは芦安までバス、タクシー逆ルート(いずれも臨時便出ました) |
コース状況/ 危険箇所等 |
藪沢小屋〜大滝頭間のトラバース道は道幅狭く滑りやすい箇所あり。 危険箇所というほどではないが注意。 |
予約できる山小屋 |
|
写真
感想
今回はソロ山行です。ターゲットは、何度か計画しつつなかなか機会に恵まれなかった、仙丈ヶ岳への日帰りとしました。
南アルプスの女王と称される仙丈ヶ岳ですが、今回はその女王様から、見事なアメとムチを頂戴する山行となりました。
まずアメは、最高の眺望です。今回は快晴予報で期待できる状況でしたが、その期待を裏切らない、いや、それをはるかに上回る見事な眺め。富士山・北岳・間ノ岳のワンツースリーをはじめとして、圧倒的な存在感の甲斐駒、オベリスクが見事な鳳凰、北ア、南ア、中アの連山等々、日本の名だたる山々たちに360度を囲まれた、最高の絶景が待っていました。遠望もきいており、山と高原地図に「運が良ければ、加賀の白山まで眺められる」とあったのが、まさか本当に見えるとは。加えて、この時期ならではの見事な紅葉。黄色や赤に色付く葉と、ハイマツの緑のコントラストが実に美しいです。紅葉は六・七合目付近が見頃のようでした。名山に紅葉、何とも贅沢この上ない組み合わせです。最高の絶景に、森林限界から山頂まで、周囲の登山客の感嘆の声が止むことはありませんでした。
一方でムチは、高山病です。小仙丈ヶ岳手前の森林限界を超えたあたりで、ちょっと呼吸が苦しくなってきたなと思ったら、立て続けに頭痛、めまい、動悸、しまいには腹痛までもが襲ってきました。身体がまるで自分のものではないような感じで、5歩歩くごとに休息をとらねば前に進めません。コースタイムも、大滝頭から先で大失速しています。富士山でも高山病にはならなかったので油断していました。
動かない体を鼓舞して何とか山頂までたどり着きましたが、症状は一向に改善せず、山頂での山ごはんをあきらめ、高度を下げるため下山します。しかし、ここに落とし穴が待っていました。何ということのない段差で転倒、右足を捻ってしまいました。肉体的な疲れは富士山や赤岳よりも全く軽いものでしたので、やはり高山病の影響で身体が思うように動かなくなっていたのではないかと推測します。(注意力も低下していたはず。)森林限界以下まで下がり、ようやく高山病の症状は治まりましたが、今度は捻った右足の状態が悪化し、踏ん張りが利きません。何でもないところでバランスを崩し、転倒すること3度。うち1度は藪沢小屋手前の狭いトラバース道で、一歩間違えば滑落するところでした。遭難ってこうして起こるのかという恐さを、身をもって実感しました。
何とか大滝頭まで下った後は、右足をかばいながら慎重の上にも慎重に進みますが、じわじわと精神的に消耗していきます。もし右足の状態がさらに悪化し、自力で歩けなくなったら…遭難、救助要請という文字が脳裏をよぎります。そこまではいかずとも、終バスを逃すかもしれません。北沢峠までの下りが、長く長く感じました。結果として、休憩を除くとコースタイム内では下れているのですが、とてもそうは思えなかった辛い下りでした。
今回の高山病の原因を自分なりに考察すると、以下の点になります。
・金曜に飲み会、土曜は山行のため早出と、2日続けて睡眠不足だった。
・芦安から北沢峠まで、タクシーとバスで一気に高度を上げた。
・日帰りで時間的余裕がないため、北沢峠で高度順化の時間を取らずいきなり登り始めた。さらに大滝頭までの前半部の登りをハイペースで入りすぎ、バテにつながった。
…こうしてみると、まさになるべくしてなったという感じですね。やはり高山は本来、時間的余裕をもって楽しむべきものなのでしょう。時間に余裕のない山行は、あせりから事故につながりますし、また高山病を招く遠因にもなります。私としても、せめて睡眠とペース配分には大いに改善の余地があったと反省しています。自分ではそういうつもりはなくても、どこか山をなめているところがあったのかもしれません。事故につながらなかったことを幸いとし、自分への強い戒めとしたいと思います。
慈悲深い女王様は、素人ハイカーの私に、山の素晴らしさとともに、山の恐さもしっかりと教えてくれたのでした。
※なお交通については、AM4時過ぎに芦安の第2駐車場に停めましたが、まだ5台程度余裕ありました。その後は始発の乗り合いタクシーで広河原、バスで北沢峠へ。北沢峠へのバスは、満員になれば定刻前にも随時出発するようです。帰りは北沢峠15時30分発の終バスになるかなと考えていましたが、バス、タクシーとも人数が揃い次第臨時便が出ましたので、多客期には柔軟な運用がなされているようです。
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