八ヶ岳 阿弥陀南稜 美濃戸口から泊まり山行
- GPS
- 13:24
- 距離
- 20.9km
- 登り
- 1,619m
- 下り
- 1,602m
コースタイム
- 山行
- 5:45
- 休憩
- 0:06
- 合計
- 5:51
天候 | 1月3日 晴れ 1月4日 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
一般ルートではなくアルパイン入門のバリエーションルートです。トレースは有ったり無かったりなので膝から腰位のラッセルの覚悟が要ります。樹林帯では木々の間を潜る際に上からの雪にも注意。森林限界以上では強風が吹くのが通常営業です。核心部ではあちこちで滑落の可能性が有り、雪庇の踏み抜きにも注意です。P3ルンゼ状の通過は慣れていない場合は確保した方が安心だと思います。青ナギ付近に幕営適地あり。 |
写真
感想
阿弥陀南稜は今まで無積雪期に2回登っていますが、積雪期は昨シーズンの3月に日帰りで挑戦したものの、時間切れのため敗退していました。今回、計画を練り直し1泊での再挑戦です。
行者小屋テン泊からの赤岳や阿弥陀北稜は経験が有りますが、今回は今までの様にテン場に不要な荷物を置いての山頂アタックとは異なり、山頂まで全ての荷物を担ぎ上げなければなりません。その為、切り詰めた装備にする必要が有るのですが、どれくらい減らしても耐えられるかイマイチ判らないこともあり、最終的に20kgの装備になりました。
3日、下山予定地点の美濃戸口に駐車してスタートです。
今回の計画では重荷でどれだけ消耗するか不安だった為、下山はラッセルの可能性がゼロで一番確実な行者小屋-南沢-美濃戸口を選択しました。
本来の阿弥陀南稜の登山口である舟山十字路を目指しひたすら車道を歩きます。はっきり言って飽きますが我慢です。舟山十字路では林道の車止めゲート前に数台の駐車車両が有り、一層の徒労感を味わえます。駐車車両が有るという事は南稜にも登山者が入っている可能性が有るのでトレースに期待が持てます。
車止めゲートから先、林道を歩きます。先行者の踏み後がしっかり付いていて歩きやすいですが、右折して南稜へ向かう分岐に来ても踏み跡はそのまま直進しており、どうやら広河原沢のルンゼに向かっている様子です。南稜へは古いトレース跡の窪みが有るものの今日の踏み跡は無い様子です。
広河原沢を渡り立場岳へ向かう稜線に上がります。まだこの辺りではアイゼンは無くても歩けますが、稜線に出てから暫く登ると急な氷結箇所が出てきた為、適当な所でアイゼンを装着しました。
窪んでいる所がトレースなのでなるべく外さないように歩きます。踏み外した場合は膝位まで埋まり、吹き溜まりではトレース跡は埋まってしまっていてラッセルとなります。樹林帯で地味な稜線を登って行きます。重荷が堪えて来る頃、立場岳へ到着します。
立場岳からはルートは降りとなり、暫く行くと青ナギに到着します。南稜の好展望地で権現岳もカッコ良いです。南稜が見える平坦地を整地してシェルターを張ります。設営中に単独の男性が通り掛かり、トレースを使わせてもらったお礼の言葉を掛けてくれました。
シェルターの中に入って判ったのですが、低温で粘りの無い雪の為、あれ程踏みしめた雪も膝を付いたら雪が逃げるような感じで安定しません。シェルター内でマットの上から圧雪してどうにかしました。
雪を溶かし水を作りつつお湯割で一杯。夕日に染まる阿弥陀南稜を眺める至福の時間。シェルター内はみるみる霜が付いて冷蔵庫みたいになりました。さすがにメーカーから冬季使用が禁止されているだけの事は有ります。が、気にせず夕食を済ませて就寝しました。
夜は風も無く、ふと目を覚ますと星空を背景に月明かりに照らされた南稜。静寂に包まれた稜線は印象的で明日の山行に期待が膨らみます。
4日、夜明け前に起床し朝食。行動中のお湯を沸かしサーモスに詰めます。シェルター内の片付けを済ませ、冷えた登山靴を履き外に出ます。手早くシェルターを畳みますが、シェルターのポールは内側で常時結露にさらされており、凍り付いて抜けなくなっているかもと思いましたが、すんなり抜けて畳めたのでホッとしました。
前回敗退時の経験から南稜核心部が近づくと強風になり、そこで装備を着けたりしていると凍えてしまうので、ここからハーネスやメットなどの装備を身に着けてスタートします。
青ナギを過ぎて暫く進むと、昨日の単独の若者に会いました。彼も1泊で阿弥陀南稜との事でここからはラッセルを交代しながら進みました。無名峰へ至る登りは雪も深くなり急な吹き溜まりでは腰より上のラッセルになります。やはり重荷が堪えますが、ゆっくり確実に高度を稼ぎます。
無名峰からはこれから登る南稜の核心部が望めます。この辺りで森林限界を超えるため強風となり、今日は曇りで日差しも無く凍て付いた景色です。
P1、P2は左側を通過します。ピーク付近の雪の状態はカリカリしていますが、ピーク間の稜線には雪庇が出来ているのであまり東側には寄らない様に進みます。トレースは風に吹かれて殆ど消えていて雪が溜まる所では平均膝位、深い所では腰位のラッセルとなり体力を消耗します。
いよいよ核心のP3ですが左へトラバースした先、ルンゼ状から登ります。下部は樋状にそのまま沢へと落ち込んでおり、ここでのミスは命取りとなります。
P3ルンゼ状の状態は岩と凍った草付きで上部ではベルグラとアイスが加わります。掴める所、アックスが決まる所を見極めれば、確保無しでも安定感の有るクライミングが可能です。全体的には教蘢度、部分的に卦蕕らいでしょうか?氷に対する食い付きの関係で、縦走用ピッケルよりも刃の薄いアルパイン向けアックスかアイスアックスが快適に楽しめると思います。先行者が有る場合は落氷の可能性が有るので、タイミングを見ながらフォールラインを外す様に行動する必要が有ります。
P3を越えると風もいよいよ強くなり、ザックに外付けしたマットも有り体が振られる位の感じがします。次のP4も左をトラバースする感じで上に抜けます。ルートは行けそうな所をつないで行けば上に出ますが、やや悪い部分も有るので注意が必要です。P4の先の大岩は右側基部を巻き阿弥陀岳山頂へ至ります。
阿弥陀岳の山頂は人気ルートの北稜からのパーティで賑わっています。ラッセルを交代しつつ登ってきた東京の若者とガッチリ握手。最高の充実感です。
写真を撮ったりした後、中岳のコルへ降り中岳のコルからは沢沿いに行者小屋へ降りました。よく言われている事ですが中岳のコルから行者小屋への沢沿いは過去に雪崩による重大事故が起きています。その為、積雪の状態に寄ってルート変更が必要となります。
行者小屋で大休止です。見上げると横岳、赤岳、阿弥陀岳にはガスが掛かって見えなくなりました。あと30分も登頂が遅れたら山頂の景色も見れなくなる所で、絶妙なタイミングで山頂に立てて良かったです。
休憩後は実濃戸口へ向けて下山しました。多くの登山者に踏み固められた登山道は歩きやすく快適に降れましたが、最後の林道歩きでは完全にスタミナ切れでかなりペースが遅くなってしまいました。
今回の山行はアルパインクライミングの入門ルートとは言え、厳冬期の1泊バリエーションは初めてで、核心の登攀もさる事ながら、雪上生活術や装備の取捨選択、パッキング等、これまで学んだ全てを総動員するアタックで、自分の限界を押し上げる手応えを感じました。
今回装備面で気になる所としては、マットを2枚使用からリッジレスト1枚のみにした事とテントを自立式ツェルト(モンベルULドームシェルター)に変更した事でした。結果的にはマットは1枚でも雪の冷たさを十分防いでくれ、シェルターの方はものすごい霜で快適性が全く無いものの、どうにかなりました。ちなみにシュラフはモンベルダウン#0にゴアシュラフカバー使用です。
またストック、ショベルは持たなかったのですが、ラッセルやテン場の整地等、この辺もアックス1本でどうにかなるもんだなぁと感じました。
悩んだ末に持っていったテントシューズとテントシューズカバーですが、これは個人的には有って良かったと思います。靴を脱いだ後のシェルターからの出入りが便利になることは勿論ですが、翌朝の片付けでは登山靴を履くまで足を暖めて置けて良かったです。
今回の経験を元に、今後の積雪期バリエーションルートでは1泊行程の可能性も考えて見ようと思います。あ、それと核心部が重荷で辛い思い出が多めだったので、日帰りでの阿弥陀南稜もやってみたいと思います。
コメント
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はじめまして。
同日(4日)日帰り・単独・ロープなしで南稜を抜けました。
トレースお借りしました。
ガスガスの阿弥陀山頂に抜けたのが午後13時でした。
P3ルンゼの登攀は氷化したところを避けて凍った草付きと岩の
斜面を強引に登りました。緊張しまくりで足がパンパンに
なってしまいました。
やっぱりロープで確保したほうがいいですね。
はじめまして!日帰りで登られたのですね。P3ルンゼは冬に登ってこそ緊張感が素晴らしく、本来の味わいが楽しめる感じですね。
降りは御小屋尾根ですか?積雪の状態はどんな感じでしたでしょうか? 自分も今度は日帰りで挑戦したいと思います。
おつかれさまでした。
冬の阿弥陀南稜、総合力が試される好ルートだと思います。
人の多い八ヶ岳においてとても貴重な所で、私もお気に入りなルートです。
素晴らしい展望があって良かったですね
アーベントロートに染まる阿弥陀の写真、とても美しかったのでコメントさせてもらいました
はじめまして!コメントありがとうございます。
出発前に記録を参考にさせていただきました。
キツイ登りがムチなら、山頂からの眺めはアメなので景色は大事ですね。
今回の山行は久しぶりの全力登山で、とても良い経験になりました。
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