聖岳東尾根〜上河内岳〜茶臼岳
- GPS
- 106:38
- 距離
- 54.9km
- 登り
- 5,978m
- 下り
- 5,978m
コースタイム
- 山行
- 5:40
- 休憩
- 1:21
- 合計
- 7:01
- 山行
- 6:35
- 休憩
- 0:30
- 合計
- 7:05
- 山行
- 1:20
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 1:20
- 山行
- 7:21
- 休憩
- 1:34
- 合計
- 8:55
天候 | 1/10 晴れ 1/11 曇りのち雪 1/12 曇りのち晴れ 1/13 晴れ 1/14 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
大好きな聖岳東尾根。過去2回訪ねているが、初回は白蓬の頭まで、2回目は4月の残雪期で、上河内岳は越えられず。厳冬期の縦走はいつか挑戦したい懸案だった。
今回、素晴らしいパートナーに恵まれ、力を合わせ知恵を出し合って共に歩き、共に自然の美しさに感動し、共に喜びを分かち合う事ができた。生涯、忘れる事のできない、感動の5日間をありがとう。
【移動日前日】
つい2週間ほど前に農鳥岳の稜線で出会ったmarhさんと山行が確定したのは移動日前日。急遽地形図を印刷して計画書を作成した。marhさんとの山は今回が事実上初めて。しかし、不安は無かった。強烈な風の北岳稜線でビバークする技術、ダブルアックスを巧みに使って西農鳥の雪壁を越える技術、なによりも自身の体重の半分以上の重量ザックを背負いながら、大門沢の急坂を危なげないしっかりした足取りでスルスルと下りていった足腰。技術体力共に私より上回っている事を確信していた。
しかし、緊張していた。なぜなら、準備に手落ちが許されないからだった。折りしもヤマレコユーザーさんの年越し記録を拝見するとき、たった1件の不備が大きく影響してしまった報告があったからだった。私自身、忘れ物は時々起こしてしまっている。遅刻も避けたかった。
【移動日】
仕事を切り上げ、買出しをして合流地の静岡に向った。再会できた事を喜び、深夜24hスーパーに向った。予め用意した食材を確認してもらった上で、不足分等を買い足した。葱は計6本ぐらいになっただろうか。
深夜峠を越え、井川の駐車場で仮眠した。marhさんは少ない時間もテントを出して体を休めていた。
【1日目】
沼平の先客は1台だった。3連休なのに人が居ない。。。安全に下山する事を誓い合い、ずっしりと重いザックを背負って、歩き始めた。道は凍っていた。その事は想定されていた。が、道を完全に埋めるデブリが発生していた。やはり、今年は雪が多いのだろうか。
会所小屋跡は雪が20cmぐらいか。トレースが右の尾根に続いているので辿る。
14時を廻ったのでテン場を探しながら進む。丁度1800m辺りの尾根に乗ったところに平地があるので荷を降ろす。テン場の水平を確保しようと必死になっていると、なぜそんなに水平に拘るのかと不思議がられた。今日は会所小屋先の水場から水を担いだので水を作る必要が無かった。
【2日目】
今日は白蓬の頭か、少し先までだ。事前のヤマテンでは午後から雪の予報。ラジオも雪予報だ。出発前に取得した10日間予報では予定日は全て晴れ予報。しかし、ヤマテンの予想高層天気図では、西から+渦度の帯が流れてくる。予想地上天気図も素直な西高東低ではなくどんよりしている。きっと何となく低気圧が発生したのだろう。
予報どおり雪が降ってきて積もっていった。
JPを過ぎた辺りからいつの間にかトレースも消え、脛ぐらいになる。私が先頭を歩くよりもmarhさんが先頭に立つ方が明らかにペースが速い。私が後だと息が切れそうになる。ちなみにザックの重量は2人ともほぼ同じぐらいだが、体重差は1/2に近い。気持ちは体重比分担ぎたいが同一重量でも劣るって。。。年を取ったという事か、marhさんの体力が超強力という事か。
尾根は右の方が歩きやすい。しかし、以前右を辿って最後の詰めが急坂で苦い思い出があったので左に寄った。ところが左は樹林が蜜でこれも歩きづらかった。やがて右に開けた丘があるとやはり白蓬の頭だった。以前テントを張った時は目の前が赤石岳の展望だったのだが、今日はガズで展望は無い。さっさと西に進んだ。雪が激しくなり風も強かったので風を避ける窪地を見つけて幕とした。
昨日は焼肉をしたのだが、marhさんがゴアに臭いが着いてしまった、と悲しんでいたので、肉は焼かずに鍋に使う事になった。鍋の具材は毎日殆ど変わらず葱、椎茸、榎、生姜、豚肉、牛肉、卵、大豆、高野豆腐、マロニー、ラーメン等なのだが、スープが鳥だし、赤味噌、味噌、カレー、鶏がら、鰹と、適当に持ってきた材料をmarhさんが巧みにアレンジしたおかげで味は絶妙。いつも新鮮で旨かった。朝から晩までのラッセル疲れも一気に吹っ飛んだ。
その晩は30cmぐらい積もった。
【3日目】
夜が明けると雪は止んでいた。docomoは電波を捕らえ、ヤマテンを受信し、天気図を取得できた。
予報は風速22mの暴風だった。marhさんは停滞を希望していた。私は今日、聖を越えたかった。今日越えないと5日日程で後半がかなり厳しい。午後から落ち着くとの事なので尾根まで進んでみてそこで判断しようと申し出て、荷を纏めて2650m辺りまで進んでみた。
やはり風が強烈だった。今回のルートでの最大の懸案は風だ。尾根が痩せているのでちょっと煽られてバランスを崩せばさようならだ。
停滞を決定した。時間は9時前だったがさっさとテントを設営した。朝からテントの中でコーヒーを入れて、他愛の無い話をしてのんびり過ごした。昼を過ぎて風も落ち着いてきたので散歩に行こう、という事になって、空身で膝上のふかふかの深雪を楽しんだ。
【4日目】
今日が勝負の日だ。痩せ尾根になる頃には夜が明けていてほしいので530出発とした。
進捗に応じて3つの選択肢を用意していた。
順調に行った場合、南岳の手前の樹林帯まで進める。
状態がよければ上河内を越える。
良くなければ南岳北東尾根を辿り2011から聖沢夏道に乗って下山。
聖到着が遅い場合は往路を戻る。
等とした。
東の空が赤くなり、やがて赤い太陽が白い尾根を染めた。marhさんと神秘の光景に見惚れた。ところどころ傾斜はきつくなり、時に前爪で支えながら進めていった。
幸い雪の状態も良く風も穏やかだったので順調に高度を伸ばし、予定より早く8時前に奥聖に到達した。4日目の登頂が本当に嬉しくて、思わず2人で硬い握手を交わした。快晴だった。目の前に赤石岳、右に荒川岳、東に笊ヶ岳と富士山、南に上河内から光岳に至る稜線、西に中央アルプスとその右は北アルプス、それから、辿った痩せ尾根が見えた。
暫くのんびりした後、地形図を確認して南に下りた。夏道は曖昧で、凍っていたので稜線を辿った。しかし、正しいと思ったルートは本来のルートより東に寄っていたため、途中で左に寄った。もし、視界が悪ければ或いは危険だった。振り返ると、下山の準備が不足していたと思う。落ち着いて読図すれば分かった事だ。kamog先生に教わった事を実践しておけば防げたと思った。
小聖を過ぎて雪になってきたので、アイゼンからワカンに履き替えた。夏道沿いの稜線を辿る予定だったのだが、正面の聖小屋方向の尾根が歩きやすそうに見えた。前回の4月の時は小聖から素直に南の尾根に乗って一気に下っている。やっぱりそっちの方が良さそうだ、と気が変わって南南東に向った。
広々した斜面を左にトラバースしている時だった。後続のmarhさんがワカンが滑って流された。すぐに近くの潅木を捕らえて停止した。危なかった。申し訳なかった。私が曖昧な判断をしたために危険なめにあわせてしまった。聖小屋への尾根を辿るなら、最初からきちんと乗っておくべきだった。
聖小屋は雪に埋まっていた。冬季小屋の扉を開けるためには雪掻きが必要だった。もし小屋の中で腰を下ろしたら、泊まりたくなってしまいそうだったので出発する事にした。日程はあと1日しか残っていないので、少しでも進めておきたかった。
南岳に向ってラッセルした。稜線はいくつかアップダウンを経て展望のよい場所で幕営することとした。テントの入り口を西に向け、ごろごろしながら夕陽を楽しんだ。
【5日目】
今日は下山したい。去年、下山が遅れ、池山吊尾根から携帯電話で上司に直接事情を説明して出社が遅れる旨を伝えたのだが、なぜか大騒ぎになってしまって、挙句の果てに冬山禁止とか訳の分らない事になってしまったのだ(笑)。
ヘッドランプスタートするも暫くすると夜が明けてきた。今日も快晴だ。アイゼンを効かせて締まった雪を登って、南岳に立った。昨日歩いた聖岳、これから向う上河内岳が近い。
穏やかな稜線を辿り、やがてカールの淵を登ると上河内の肩に着いた。ザックを置いて空身で凍った夏道を上がると上河内岳に着いた。360度の展望を楽しんでから、お湯を沸かしてドリップコーヒーで乾杯した。最高!
上河内を下りると急坂は無い。ワカンに履き替え、足取りも軽く残る稜線を楽しんだ。茶臼小屋の分岐でザックを置いて最後のピークに向った。
最後の山、茶臼岳。遂に来る事ができた。感無量だった。ありがとうmarhさん。
時刻は既に11時を廻っている。ルートは畑薙山の尾根も候補だったが、茶臼山周辺にはトレースがあったので夏道とした。ところが茶臼小屋はトレースは消えていた。3日前の低気圧の影響だろうか。確か左にトラバースしているはず、と左に上がるが夏道は分らなかった。仕方が無いので北寄りに登り返し、傾斜が落ち着いた所で、北側の横窪小屋からの尾根に乗り換えた。地形図と山旅ロガーのGPSで確認しながら慎重に尾根を辿った。クラストの上に新雪が乗っているのでとても滑りやすかった。途中、2000m辺りの急坂を何とかクライムダウンして、やがて傾斜が緩くなると、トレースが現れた。
横窪沢小屋は快適そうだった。時刻は14時を廻っていたので、普通なら泊まる時刻だった。最後のラーメンを食べ、着込んでいた衣類を薄くして、ワカンを再びアイゼンに変えて最後の核心部に向った。
ヘッデン下山を覚悟したものの幸いにも明るいうちに畑薙大吊橋に辿り着く事ができた。アイゼンを外して、凍った林道をとぼとぼ歩き、やがてヘッドランプの明かりの先にゲートが見えた。
今回、Kihaさんと初めての二人パーティーで臨んだ縦走でしたが、意気が合っていたのが良かった。ルート取りや行程、テンバ決めなどの各所で良い判断ができたようです。素敵な山の仲間ができて時間を共有できたこと、雪や霧や風や晴れのいろんな山を5日間かけて歩けたことが嬉しい。
わかったこと:
冬は下山力が重要。下山の体力と技術、読図、そしてGPSがほんとに有用。雪の付いたタダの尾根を下降ルートと確信するのには勇気が要った。Kihaさんを見習いたいです。
メガネが要る。たくさんの星の光や世界の美しさをちゃんとみるために、、、
充実した4泊5日をありがとうございました。
コメント
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厳寒期にテントを背負って4泊5日の山行、本当にお疲れ様でした。
聖岳、上河内岳、茶臼岳、、、標高の高い山の冬景色は格別ですね!!
kiha58さん、年始の挨拶が遅くなりましたが、今年もよろしくお願いします〜。
3度目の正直で聖岳東尾根の厳冬期の縦走、やり遂げましたね!
”大感激”が伝わってきました〜
marhさんのような大物パートナーさんがおられたのが良かったですね!
それにしても、ネギだけでも6本とは。なんという”気合い”
豪華雑炊をはじめ充実した食事でしたね〜。
marh さん、はじめまして
雪山とmarhさん、何枚もの絵になるお写真、素敵です。
それにしても、冬山テント泊で5日間って。スーパーウーマン〜!!
普通にザックが重い(食材が山のように入っているであろう)kiha58さんと、
ほぼ同じ重さのザックって、、、す、すごいですよ〜
もうひたすら尊敬です
slowlife さん、いつもありがとうございます。
本年もよろしくお願いします。
今回、本当に幸せな5日間でした。
天候に恵まれ、様々な表情を見せてくれる自然に囲まれ、何よりも素晴らしいパートナーに恵まれました。
私の判断が悪くて危険に晒してしまった時も、「貴重な経験ができた」と言って許してくれる、そんな方でした。
1人で静かに歩くのも味わいがありますが、心通じる(と思ってるのは私だけかも笑)人と感動を共有できるのは楽しいです。
また、slowlifeさんとどこか歩くのが夢です〜
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