燕-槍-笠 (中房→新穂高) 〜盛夏のアルプス横断行〜
- GPS
- 36:48
- 距離
- 49.1km
- 登り
- 4,348m
- 下り
- 4,689m
コースタイム
- 山行
- 5:26
- 休憩
- 1:59
- 合計
- 7:25
- 山行
- 5:06
- 休憩
- 2:46
- 合計
- 7:52
- 山行
- 6:53
- 休憩
- 1:19
- 合計
- 8:12
- 山行
- 4:03
- 休憩
- 3:04
- 合計
- 7:07
天候 | 1日目:晴れ、夕方雨 2日目:晴れ、夕方霧 3日目:晴れ、夕方雷雨 4日目:晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
穂高駅5:10-[中房線乗合バス]→中房温泉6:05 \1,500 <帰り> 新穂高温泉ロープウェイ13:46-[濃飛バス]→14:28平湯バスターミナル 平湯バスターミナル14:55-[濃飛特急バス]→16:23松本バスターミナル(延着) |
コース状況/ 危険箇所等 |
<中房温泉~燕岳~大天井岳> 切通岩付近に多少の梯子があるが、特に困難な場所はなく歩きやすい。 ただし大下りの頭付近で数日後に死亡事故が起こっているので油断はできない。 <大天井岳~槍ヶ岳> 西岳→水俣乗越までの下りが岩場とザレ場でやや歩きにくい。ヒュッテ大槍から槍ヶ岳山荘までの区間は高度感がある。全体に岩場の難易度は高くない。 <槍ヶ岳〜双六小屋〜笠ヶ岳> 西鎌尾根は滑落注意。笠ヶ岳までの区間は一部ハイマツに覆われて歩きづらいところがある。 <笠ヶ岳〜新穂高温泉> 危険個所なし。岩のごろごろした登山道なので足を滑らせないよう注意。 |
その他周辺情報 | 【水場】 ・合戦尾根第一ベンチ ・双六小屋 ※小屋での水購入は200円/Lが相場 ※笠ヶ岳山荘の水場は枯渇、小屋の水は一人1Lまでしか買えないので要注意(ペットボトルのミネラルウォーターは何本でも買える) 山と高原地図記載の秩父平の水場は確認できず。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
Tシャツ
ソフトシェル
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
ゲイター
日よけ帽子
着替え
靴
予備靴ひも
サンダル
ザック
ザックカバー
サブザック
昼ご飯
行動食
非常食
調理用食材
調味料
飲料
ハイドレーション
ガスカートリッジ
コンロ
コッヘル
食器
調理器具
ライター
地図(地形図)
コンパス
笛
計画書
ヘッドランプ
予備電池
筆記用具
ファーストエイドキット
針金
常備薬
日焼け止め
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
ストック
ナイフ
カメラ
ポール
テント
テントマット
シェラフ
ヘルメット
携帯トイレ
|
---|
感想
夏休み最初の山行は久しぶりのソロテント泊。どこを切り取っても第一級の山岳展望、非常に楽しい山行になりました。
1日目
平日にもかかわらず中房線は計3台のバスで運行。混雑を避けるべく、急いで準備をして出発する。抜かし、抜かされ、をしばらく繰り返すと人の波も分散してきて、落ち着いて歩けるようになった。第一ベンチで水を補給、ここから先には水場がないので4.5Lを背負う。ここからの登りは少し飛ばしすぎた。第二ベンチ手前で大量の汗が吹き出し、すがるようにベンチに座り込んだ。序盤の飛ばしすぎは碌なことがない。初歩的なミスをした。結果的にコースタイムは十分巻いているので、長めの休憩をとる。
それにしても燕岳の人気には驚かされる。登りも下りも多くの人が行きかう。周りは荷物の軽い人が多いので、そのペースに惑わされないように気を付けつつ、登る。合戦小屋は逆張りの精神で素通りしようかと思っていたが、大きなスイカの誘惑には、抗えなかった。小屋主がここでスイカを売ろうと思いついた時点で、我々の敗北は決まっていたのだった。とても美味しい。
合戦小屋から先は目指す稜線がはっきり確認出来て、気持ちは楽になる。天気は非常によく、地元人らしき方も今日は本当に良いとおっしゃっていた。青空のもとをまっすぐに登っていくと、想像より早く燕山荘に着いた。燕山荘からの景色は素晴らしい。高瀬川の谷を隔てて視野いっぱいに続く山脈の眺めが北アルプスに来た実感を強くさせる。天候・体力に不安があれば燕岳はカットせざるを得ないと覚悟していたが、まったくの杞憂だった。サブザックで山頂を往復する。花崗岩は確かに青空によく映えて、人気の理由が分かった気がした。
燕山荘まで戻ってきて天気予報(雨雲レーダー)を確かめると、お昼ごろから常念山脈に雨雲がかかる模様。予測通りなら大天井までの途中で雨に降られるし、雷に見舞われる可能性もあるので、少し怖いが、いざとなったら大下りの先の鞍部付近で退避して吹き曝しの稜線を避けられると考えて、先へ進む、
燕岳までの往復で軽身の味をしめてしまったせいか、足取りが少し重い。大下りの頭で休憩した後、登り返しの途中でも足が止まってしまい休憩を重ねた。幸い天気が持ちこたえそうだったので、焦らず進む。大天荘までの最後の登りはなかなか辛かった。ガスで日差しがなく視界も悪かったことはむしろ幸いだった。「大天荘まであと〇〇〇m」の看板に励まされながら登りきる。午後1時半に大天荘着。テント場はまだまだ空いていた。テントを設営し、快適な住空間を手に入れると、今日の疲れか、昨夜の寝不足か、あっという間に寝落ちてしまった。
目が覚めると雨の音がする。やはり夕立が来た。幸い雷はなっていないが、雨はどんどん強さを増す。テントに打ち付ける雨粒の音がひどくなった。行動中にこの雨に打たれなくてよかったと安心しつつ、もうひと眠りした。
雨のおかげですっかり涼しくなった夕方、大天井岳の山頂を往復する。この山頂も大展望だった。どうも有名な山々に囲まれて不遇な印象があるが、個人的には何となく贔屓にしたい山である。明日の安全を祈り、テントに戻る。
2日目
茜色の東の空を見て満足し、日の出を待たずに出発。喜作新道を快調に飛ばす。この区間は少々コースタイムが甘めに感じた。一気に近づく槍ヶ岳を眺めつつ、思いのほか鮮やかなお花畑を楽しみつつ、ヒュッテ西岳へ到着。ここでヘルメットを着用し、核心部へ入る。
水俣乗越までの下りは少し緊張した。しかし、そのあとは拍子抜けするほど普通の道だった。八ヶ岳のキレットに比べればはるかに簡単。むしろ、岩場の懸念がないために登りのきつさが強調されることになった。日差しも強く、また登り返しで少し飛ばしすぎたために苦しい登りになった。昨日といい今日といい、どうもちょうどいいペースがつかめない。最近あまり山に登っていなかった弊害だろうか。すれ違う外国人登山客の方に応援されながら進んだ。下りの人が思いのほか多い。
ひいひい言いつつも何とかヒュッテ大槍まで登る。休憩は手短にして、ゆっくりでも足を動かすことにした。東鎌の最上部は確かに高度感があって何か間違えれば冥土行きだが、難易度は問題なかった。そんなことより登りがつらい。足が疲れているというより、息が浅い感じだった。軽い高山病かな?とも考えたが分からない。それなりに時間をかけて、槍ヶ岳山荘に到着。受付を済ませてとりあえず幕営サイトを確保するが、荷物を下ろしてからもしばらくテントを建てる元気が出なかった。やはり高山病か、熱中症か、いずれにせよただの疲れではなさそうだった。
1時間ほど休んで、少しましになってきたので穂先を往復。アスレチックの気分で楽しかった。ちょうど人の疎らなタイミングだったらしく、狭い山頂も窮屈を感じることなく楽しめた。憧れの山ではあったが、これでも登山歴12年である、こんなに初登頂が遅くなるとは思わなかった。
山荘まで下り、奮発してカレーを食べたら元気が戻ってきた。半日残してもう何もすることがないというのは素晴らしいことだ。岩の上で寝転がって寝てみたり、下山後締め切りのレポートの構成を練ってみたり、宮沢賢治を読んでみたり、たいへん優雅な午後を過ごした。
この日はガスがかかって夕焼けは見られなかったが、十分満足し就寝。夜中は星と月明りが綺麗だった。
3日目
じつは前日、3日目の行程をどうするかかなり迷っていた。今の体調で笠ヶ岳まで行けるだろうか、それよりは槍周辺をのんびり楽しんだ方がいいのではないか。そして昨夜の時点では、南岳-天狗池経由で槍沢に降りる方針でいて、家族にもその旨を伝えていた。
ところが、優柔不断が本日もお仕事をして、朝になって谷の向こうに聳える笠ヶ岳を見たらまた気持ちが揺らいできてしまった。体調が全然問題なさそうであること、双六小屋のテント場にほぼ確実に空きがあってまずそうならそこで打ち切れること、などを勘案し、午前5時になって急遽予定通り笠ヶ岳を目指すプランに再修正した。
そうと決まったら、天気が安定しているうちに巻いておきたい。急いで準備を整えて出発。朝日が射して眩い槍沢を背に、まだ昏さの残る西鎌尾根に入った。幸い西鎌尾根はとても下りやすい。滑落に注意しつつ、ぐんぐん進む。景色が素晴らしいので気分は快調。昨日の反省を踏まえ、登り返しでは意識的にペースを落とした。やはり3日も歩いていると体が山の感覚を取り戻してくる。あまり疲れを感じることなく樅沢岳を越え、3時間で双六小屋に着いた。双六小屋では合戦尾根以来の自由な水場にありつく。
双六-弓折乗越間は山岳部時代に一度歩いたことがある道。展望も花も文句なしの区間、ただし小刻みな上り下りがあるので少し長く感じる。登山者もこの区間は多かった。といっても長野県側に比べるとずっと落ち着いた雰囲気。弓折で小池新道を離れるとますます渋みが増した。弓折の下りは低木が邪魔をする。大ノマ乗越からは長い登りで暑さもなったが、昨日までに比べると登りの歩き方がましになってきていて、息が上がることなく登り切ることができた。秩父平からはさらにもう一登り。ここはさすがに応えた。比較的好調だったが、それでも笠ヶ岳は遠いなと感じる長い長い稜線歩き。双六小屋から5時間かけて、やっと笠ヶ岳山荘のテント場に到着。周りはガスで何も見えなくなっていた。
この日はこの後、いくつかの災難に見舞われる。まずひとつ、寡雪の影響で水場が涸れていた。小屋の天水にも限界があるため、1L200円での販売はひとり1回のみ、それ以上必要であればミネラルウォーター(500mL400円)を買ってくださいとのことだった。完全なリサーチ不足で、今日の食糧計画は水が好きに使える前提で組んでいたので、困ってしまった。明日の行動分の水は小屋の水で賄うとして、今日の残りがもう500mLしかない。仕方ないので、今夜と明日朝の調理はあきらめ、行動食でしのぐことにした。最後の夜だし、なんとかなるだろう。代わりにというか、小屋で美味しいラーメンを頂いた。
そしてもう一つ、激しい雷雨に襲われた。16時台から日没の17時近くまで、長々と雨が降り続いた。幸い浸水は無かったが、雷がすぐ近くで鳴り、テントの下は川の流れとなり、突風が何度も押し寄せた。もともと雷が苦手なのでかなり怖かった。ただ、悪いことばかりではなく、思いつきで大雨の中にコッヘルたちを放置してみるとと、大量の雨水がたまって、合計で1Lぐらいの天水を手に入れることに成功した。おかげで、この日の夜はコーヒーとスープを用意することができた。限界まで水を節約する覚悟でいたために、これはとてもうれしかった。
4日目
昨日の天水の残りで予備食の棒ラーメンをつくり、朝食とする。結局行動食で耐え忍ぶ事態は回避できたので、恵みの雨とはまさにこのこと。日の出に合わせて、今回の最終目的地、笠ヶ岳に登頂する。山頂からの眺めは、締めくくりにふさわしい絶景だった。
この日のうちに東京に帰れればそれでいいので、出発は少し遅らせ、できるだけテントを乾かしてから帰る。抜戸岳まで快適な稜線、後ろ髪をひかれて何度も笠ヶ岳の雄姿を振り返った。笠新道の下りは、特に書くこともないが、とにかく長い下りだった。しかも、かなり長い区間にわたって日差しが直に照り付ける。下りだからまだ良かったが、これを登りで使うことは、自分なら絶対にしたくない。土曜日とあって続々と登ってくる方々に、敬意を表する。テント場から4時間弱かけて笠新道を下りきった。笠新道の登り口には湧き水が出ていて、(双六小屋を除いて)長いこと自由な水場にありつけなかった身は、それだけで感極まりそうになった。
下りでしっかりと苛められた足を奮い立たせて、最後の林道を歩く。お昼前に、5年ぶりの新穂高温泉に下山した。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する