絶景不帰嶮/栂池-白馬三山-八方尾根
- GPS
- 18:52
- 距離
- 28.6km
- 登り
- 2,567m
- 下り
- 2,524m
コースタイム
- 山行
- 2:30
- 休憩
- 0:19
- 合計
- 2:49
- 山行
- 6:42
- 休憩
- 1:37
- 合計
- 8:19
- 山行
- 6:00
- 休憩
- 1:40
- 合計
- 7:40
天候 | ・26日:晴れ夕方雷雨 ・27日:曇り昼過ぎ雷雨 ・28日:晴れのち曇り |
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過去天気図(気象庁) | 2023年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
復路:八方アルペンラインリフト・八方BTから白馬駅 |
コース状況/ 危険箇所等 |
・全般に整備は良好でした。27日で大雪渓コース閉鎖だそうです。 ・白馬大池まではほぼハイキングコースですが、天狗原前後に岩の堆積を登る区間があります。その先白馬三山を経て天狗山荘までもアップダウンはありますが、ほとんど手を使うことのない稜線漫歩コースです。 ・天狗の大下りは初めの鎖場で驚きますが、徐々にただの急坂に。ザレのスリップにはご用心。不帰嶮の第1峰への急登で少しヒヤヒヤし、第2峰北峰への岩登りで鎖のありがたさを感じます。第3峰は慣れもありますが気楽に通過できました。唐松岳との間に深い鞍部がないのがありがたい。 ・八方尾根はひたすら下り坂。いったん森になるのに八方池の少し上でまた植生がなくなるのが不思議でした。 |
写真
装備
個人装備 |
1/25000地形図
コンパス
水筒
食料
レインウェア
傘
着替え
防寒着
ヘッドランプ
ストック
保険証
ティッシュ
タオル
計画書
時計
携帯電話
カメラ
筆記具
緊急保温シート
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共同装備 |
ガイド地図
ツェルト
応急医薬品
GPS
予備電池
非常食
|
感想
ALPS165と毎年恒例のアルプス詣では白馬三山ということにした。当方は7月に大雪渓から栂池へ歩いたばかりだが、今度は不帰嶮という岩稜も楽しめる。白馬岳前後のなだらかな稜線も再訪したくなる存在だ。
【26日】
というわけで、夏の終わりとは思えない暑さの白馬駅に降り立った。長野からALPS165が乗ってくる特急バスに同乗するつもりが、遅れていた1本前のバスに乗ってしまい、少々焦った。首尾よく栂池高原バス停で合流し、ロープウェイ駅前で腹ごしらえ。1830mの自然園まで一気に辿り着き、後は楽勝とばかりにビジターセンターに登山届を出そうとしたら、遭対協の青年につかまってしまった。
まあ、使命感あふれる熱心な隊員でした、ということにしておこう。あまりお友達にはなりたくないが。上から目線のあの物言いでは反発されるだけで、誰も従う気にはならないだろう。
気を取り直して登山道へ。雨が多いせいか道が濡れている。それにしても蒸し暑い。2000m近い標高でも風がないため、特に日向はきつい。天狗原手前の岩場で汗だくになってしまった。
木道のベンチで汗拭きがてら一休み。残念ながら7月に見たワタスゲなどの高山植物の花はほぼ終わっている。天狗原からひと登りすると、前回は雪田だった所がむき出しの岩塊の斜面になっていた。男女4人パーティーを追い抜き、さらに少し登ると傾斜がなくなり、真っ平らな乗鞍岳山頂に着いた。
岩を跳び歩くように下り始めると、白馬大池と大池山荘が見えてきた。夕方に雷雨の予報が出ているが、幸い全くその気配はない。ほぼ予定通りのタイムで山荘へチェックイン。なかなかにぎわっている。5時からミニカツのカレーとスープの夕食を採っていると雷が鳴り始め、やがて大粒の雨と共にすぐ近くへ落雷した。テントの人はさぞかし肝を冷やしたことだろう。
【27日】
明日まで小屋常駐という遭対協の女性によると、今日も午後から雷雨の予報に変わりはないとのことで、朝食後、なるべく早く出ることにする。外はどんよりガスがかかり、2400m近い標高なのに冷え込みはない。
ただ、歩くにつれてガスは薄れ、行く手の稜線が雲間から顔を出し始めた。小蓮華山から白馬岳まで、なだらかな道が続いている。順調に進んで1時間半で小蓮華山。前回同様、賑わっている。北の方には富山平野らしい平地とその先の日本海が見て取れた。東の長野側から雲が湧き上がってくるが、空を覆うことはない。
白馬岳山頂に着くと、周囲の視界はほぼ雲に隠れてしまった。大休止は白馬山荘のレストランでと決めていたのだが、着いた頃にはほぼガスの中。喫茶タイムと思ったら10時までは売店のみ営業とのことで、インスタントコーヒーで我慢した。まあ、真っ白なガスを眺めて長居したって芸がない。
遅めに出たらここでランチにとも考えていたのだが、時間的に杓子岳辺りで持参のフリーズドライで済ませることにした。雲が優勢になって天気も心配なので先を急いだ。ガスの中で旭岳への道に誘い込まれかけてヤマレコの警告で引き返し、その後は迷うことなく杓子岳へ。ザレた急坂に息をあえがせて無事登頂すると、持参のモンベルオリジナルこと永谷園製のリゾッタで軽い昼食とした。
一瞬ガスが晴れ、足元から切れ落ちる東側斜面の迫力にALPS165が驚きの声を上げた。非対称山稜の典型だ。早々に昼食を切り上げ、落っこちないように山頂の尾根を辿ってから巻き道と合流し、三山最後の鑓ヶ岳に挑む。
正午を過ぎ、待っていたかのように遠雷が轟き始めた。予報より早いじゃないかとボヤいても甲斐はなく、ポツポツと降り始めた雨はたちまち本降りに。慌てて雨具を整え、幸い風は弱いので傘を片手に登り続ける。厳しい岩場もなく無事に白馬鑓山頂に到達したが、雷が近づいて来たので息を整えただけで先を急いだ。避難場所もないので山荘まで逃げ込むしかない。
鑓温泉への道を分けた頃から雷は間遠になり、やがて天狗山荘が遠望できたころには雨も弱まり出した。一度見えた割には山荘まで時間がかかったが、その間に雨も上がって薄日が差し始めた。そのまま日傘代わりにして山荘に入り、玄関で折りたたんだのだが、この傘はなぜかこれを最後に杳として行方知れずになってしまった。
夕食は旅館並みに「鍋物」付きで、手をかけたおかずが嬉しかった。相客はソロの男性2人、女性1人。男性1人を除いて不帰嶮を越えるコースで、小屋の女性スタッフから「明日も午後は雷雨予報なのでなるべく早立ちを」と促された。そのつもりで朝食は弁当にしてもらっている。お客同士で話すうちに、5時には明るくなるのでその頃に出発しましょうという話になった。
夕食後、男性スタッフが「夕日が見られますよ」と誘ってくれたので、ALPS165とカメラ片手に裏の丘に登った。水平線は多くの雲に遮られて太陽は見えなかったが、シルエットの剱岳と残照に映える雲の姿が印象的だった。
【28日】
4時半起床。雲間から朝の光がのぞく。晴れてはいるようだ。同宿の男女2人が若干先発し、2人いたテント泊の男性も動き出した。山荘を後に緩やかな稜線を歩き始めて、東の雲海に目を凝らしたALPS165が「富士山じゃないか?」とつぶやく。なるほど八ヶ岳の右に台形のシルエットが見える。天狗の頭へ近づくにつれて、西の立山劔はもとより槍穂高連峰までの北アルプス全景がはっきり見えてきた。
その天狗の頭から振り返れば白馬鑓と杓子岳が堂々とそびえ、行く手は剱岳から鹿島槍、五竜岳まで遮るものの無いパノラマが広がる。思わず写真をたくさん撮るうちにテント組2人にも抜かれて、我々がラストになってしまった。まあ、時間的に昼までに八方尾根に着くのは問題ないだろう。
大下りはどこからだ?と思いながら絶景の丸尾根をゆるゆると下りていくと、親切にも「ここから大下り」と書いた標識があった。鎖場があり、慎重に辿る先行者も見える。降り始めると、ALPS165が「うわ、思ったより凄いぞ。大キレットみたいだ」と警戒の声を上げた。「そこまでは・・・」と当方。強いて言えば浮石がやや多く、落石を起こさない注意が必要だ。
すると、50mほど下に見えた男性が「彼女、先へ動けなくなってしまって」と声を掛けてきた。同宿した男性の声だ。何事かその女性にも言葉を掛けて男性は先へ行き、入れ替わりに我々が下りていくと、コースから右に外れた岩場を登ってくる若い女性が見えた。不安定な足場に難儀していてコース取りがつかめない様子だ。
上からは女性のすぐ左上にハイマツが帯状に伸びているのが見える。そちらへ誘導し、無事にハイマツをつかんだところで「大丈夫ですか?」と確認して出発した。それにしても、この時間にここを登って来るとはどこから来たのだろう?と首を傾げつつ歩いていたら、次の鎖場の手前でなんと件の女性が追い付いてきた。
「あれ、下ってるの?」。ヘルメット姿で分からなかったが、よく見たら天狗山荘で同宿していた女性だった。コースを外して登り返していたとのこと。健脚そうなので先を譲って、でも岩場は不慣れとのことなので、後ろから鎖の使い方のコツを教えてあげた。両手でしがみつくように鎖に頼ると腕力がもたないし、左右に不安定にもなるので、つかめる岩がある時は片手で鎖、別の手で岩をつかんで脚力主体で登降する方が、安全だし疲れにくい。
大下りの後半は若干勾配が緩んで歩いて下れるようになった。標高2411mの不帰キレットで弁当の朝食とする。午前7時、まだ剱立山連峰がすっきり見えているのがありがたい。
不帰嶮第1峰は確かに険しい登りだったが、ある程度織り込み済なので冷や汗をかくことはなく、ただただ息を喘がせて無事登頂。前方に望む第2峰については、まず最低鞍部までたっぷり80mは下らされることと、一段と峻険な山容にいささか気が重くなった。その最低鞍部で先ほどの女性ら先行者が休んでいるのが見える。
我々が辿り着くと彼らの姿はなく、逆行して鑓温泉に向かうという韓国人2人が休憩中だった。片言でルートの情報交換をし、第2峰の登路は途中で東へ回り込むことを教えてもらってほぼ同時に出発。鎖があるので登れないことはないが、足のステップ探しに戸惑う所もあり、かなり腕力も使う。高度感もなかなかのものだ。
鋭角の尾根を東へ回り込むとつかの間の平坦路が現れたりするが、まともに浴びる直射日光が暑い。慎重に1時間ほどかけ、なんとか北峰山頂によじ登った。これで最難所はクリアしたので、見たところ南峰から第3峰を経て唐松岳へは30分くらいで着きそうに思えたが、やはり第3峰までは険しい悪路に変わりなく、唐松岳までは正味1時間を要した。
山荘から約5時間、ほぼコースタイム並みの速度ながら本山行のハイライトを好天のもとで踏破でき、満足感を覚えた。さすがに疲れて一休みしていると、急速に周囲の視界が雲で閉ざされ始めた。午前10時、経験的に夏の山がガスに覆われ始めるタイミングだ。
近くに見える唐松山荘まで下ってトイレ休憩としたが、日帰り利用者は300円!とある。物みな上がる昨今だが、これほど高いトイレは初めてだ。小銭がなかったらどうするんだとブツブツ言いながらトイレを借り、弁当の残りのお握りとプロテインバーで昼食代わりの栄養補給を済ませた。
わずか休むうちにもガスが巻き、小屋の裏へ軽く登り返した時にはもう唐松岳も見えなくなった。この先は一本調子の下りとなる。初めこそロープを渡した急坂もあったが、基本はハイキング路だ。そこを続々とハイカーが登って来る。時間的に日帰りか、あるいは五竜山荘まで足を延ばすのだろうか。
溶けて小さくなった扇雪渓の横を通り、濃いガスで暗くなってきたダケカンバの林を下る。先に通した遭対協のベテラン・若手の2人組が、少し先で老夫婦の話を聞いていた。夫の足が痛くなったようで、あとどのくらいで頂上かと尋ねたらしい。「山の上で歩けなくなったら大変です。今のうちに引き返した方がいいのでは?」。ベテラン遭対協の薦めに、夫婦は応じることにしたようだ。夫婦に付き添ったのか、その後、この遭対協の二人に追いつかれることはなかった。
林が忽然となくなり、標高2500m以上に戻ったような道に変われば八方池は近い。ついにポツリと雨粒が落ちだしたころに八方池に到着。こんな天気にもかかわらず、大勢のハイカーや観光客が訪れている。本降りになる前にと急いで観光客を抜いて行くと、いつしか雨はやんで薄日が差し出した。一安心だが、そうなると暑い。
汗を拭きながらグラートクワッドリフト乗り場に着くと、切符はこのリフトを降りた所で売っているとのこと。黒菱平でリフトを乗り換える際、雲の中に小さく開いた穴から、端正な白馬鑓の頂が見送るように覗いていた。
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