記録ID: 61511
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ハイキング
阿蘇・九重
トホレコ☆リターンズ 6・別府への道。
2008年04月19日(土) ~
2008年04月22日(火)
- GPS
- 80:00
- 距離
- 87.0km
- 登り
- 1,826m
- 下り
- 1,779m
コースタイム
4/19 池山水源まで
4/20 筌の口温泉まで
4/21 湯布院、満身創痍
4/22 別府まであと一歩
4/20 筌の口温泉まで
4/21 湯布院、満身創痍
4/22 別府まであと一歩
過去天気図(気象庁) | 2008年04月の天気図 |
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アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
4/19 昨夜は、そぞろに酔漢共の浮かれ騒ぐ夜だったが案外に健やかに眠れた。一山越えて疲れていたのだろう。6時頃すっきり目覚めたので、珍しく8時を前に出発。阿蘇神社の参道筋はちょっとした湧水ストリートになっている。商店街の其処ここから気前良く湧水が溢れ出している。ご丁寧にいちいち試飲しながら歩く。どれもこれも美味しい。まあどれも同じなのか。そもそも水の味なんて、正直よく分からん。しかし町のあちこちから水が湧き出していて、町の人たちがそれを大事にしてるってのは何ともいい風景である。以前、NHKの放送で熊本の湧水を取材した特集を見たことがある。古くからの水路を今でも大切に使っているという地域のものだ。宮地の話ではなかったと思うが、僕の中では、熊本というと湧水のイメージがあるのだ。あれはひょっとして阿蘇山麓のどこかの町のことだったのかもしれない、などと思う。 せっせと写真を撮りながら歩いていたのだが、なんとしたことか、新品のフィルムを一本ドブに落としてしまった。まだフィルムの予備はいっぱいあるが、それらはみんなザックの底の方になってしまっている。なんとかこいつを救出して今日はやり過ごしたいものだ。コンクリートのドブ板は分厚くて重たそうなのに加えて、風化して路面と一体化している感がある。一人で外すのは不可能そうだ。テントのポールを箸のやうに持って、なんとかつまみ出せないかと苦心する。あまつさえひょろ長くて扱いにくいポールなんぞでツルツルのフィルムケースを挟むもどかしさは想像に難くないだらう。トミーのアームトロンでシャンパンタワーを作るやうなもどかしさである。小一時間を無駄に費やして結局諦める。所詮、ポールでは無理だ。アームトロンがあれば、あるいは救出できたかもしれんがな。 まっすぐな道を北の方へと歩いていく。昨日のダメージがまったく抜けていない。右足はもちろん痛いが全身にだるさが溜まっている。よちよちと歩いていると、古城というところで道は急な登り坂に行き当たる。ここには温泉センターがあって、隣接するゲートボールセンターは野営適地だ。昨日のうちにここまで来ておけば良かったか?まあ、この足の状態では無理か。阿蘇登山など試みてないで、峠越えでここまで来とくのが正解だった、という気もしなくもない。狭くて急な坂道を登っていくが一向にペースが上がらない。もう、仕方ないと思うよ。今日はのんびり行くしかないな。 坂を登りきると広々とした台地が広がっている。展望台があってライダーや家族連れで一杯である。今日は世間で言うところの週末って奴なのだ。「世界最大級のカルデラ地形」などと言われてもどうもピンとこないが、山頂から眺めて、こうして歩いて登ってみるとようやくその大きさが体感として納得出来る。仲々の眺めだ。 台地上を別府方面へと続く道は「やまなみハイウェイ」と呼ばれているらしい。ツーリングやドライブを楽しむ人たちがせわしなく行き交っている。この台地には牧草地が広がっており、実にさっぱりした風景である。なるほど、車など飛ばしたら爽快なのだろう。しかし歩いていると鬱陶しいことこの上ないな。ドライバーも路傍の歩行者など邪魔で仕方ないだろう。ということで牧場の中の細道を歩いてみる。何処へ通じる道なのかよく分からないが、なんでも気分のいい道である。標高が高いせいか少々肌寒いが、実に静かでいいところである。空からぴーひゃらひゃらと降ってくるのは、あれは雲雀じゃないでせうか?写真など撮りながらゆっくり歩いていく。何故かショパンのバラッドだかスケルツォだかが脳裏に浮かんで困る。 そのうち何処を歩いているのか不安になってきたので、一度県道に戻る。そこで気付いたのだが、何としたことか、撮影データを蓄えてあるレベルブックを何処かに落として来てしまったやうだ。別にフィルム自体は無事なんだから、ノートぐらいなくなっても良さそうなものだが、そう簡単には諦められない。ザックを道端に置いて、引き返して探してみる。さっき写真を撮っていた時にはあったんだから、何処かに必ず落ちているはずだ。結局一時間ほど費やして無事レベルブック回収に成功。ボロボロのノートだが、これだって貴重なデータなのだ。 再び裏道に逃げ込んで、なんともしょぼくれた田舎道を歩いていく。道一本入っただけでこうも長閑になるものか?この辺はまだ桜が咲き残っていて実に綺麗である。僕の歩く道はこうでありたいと思う。多少遠回りで歩きにくくても構わないのだ。これは人生全般について言えることだが、僕は人口に膾炙した歩きやすい道というものを好まない。何時行き止まりになってしまうかも分からない心細い道をたどっていくと、温泉に行き当たる。「花の館」というかわいらしい名前のついた温泉で温室などが併設されている。白濁した酸性泉で、仲々に気持ちいい。小一時間楽しんでから出発、もう日暮れが近い。すぐ近くに「池山水源」というのがあるので行ってみる。静謐で見事な湧水である。今日はもう日が落ちてしまったので明日もう一度ゆっくり見物することにしよう。今夜は駐車場の片隅で野営。ふと見上げると、夜空に貼り付けたやうなまん丸いお月さん。 4/20 昨夜はえらく冷え込んだ。カッターシャツを着込んで、シュラフの口をきっちり閉めたが、それでも寒くてゼンマイの穂先のやうに丸まって寝た。冷え込んだせいか朝露でテントがびしょびしょである。空は雲一つない青空。丁度良い。テントが乾くのを待ちながら、池山水源を見物と洒落ようじゃないか。という訳でカメラを片手に水源池をうろついてみる。静かな水面に朝日が照り返している。実に良い光景だ。水辺には水神様が祀られてある。その他にもちょっと傾いて一体の神様が水面にちょこんと鎮座しておられる。これはかつての大水のときに行方が分からなくなったものが、あとになって発見されたものだ、というやうな不思議な縁起が書かれていた。なんでも有難い神様なのだ。 足のゴワゴワさ加減は日増しにエスカレートする一方である。朝の起き抜けにはこんなんで大丈夫なのかと不安になってくるが、荷物を背負ってみると案外歩けるから不思議だ。ひょっとしたら人間を前に進ませるには多少の負荷をかけておいた方良いのかもしれない。 一時間ほど歩くと再びやまなみハイウェイに出る。今日は日曜とあって昨日にも増して賑わっている。バイクの隊列がぼろろん、ぼろろろろろんと誇らしげな音を立てて通りすぎていく。彼らは何だってあんな風に隊列を組んで走りたがるのだろう。まるで意味が分からんな。まあ、向こうから見ると荷物を背負って歩いている方がよっぽど不思議に見えるんだろう。同じ道でも人それぞれ進み方は色々なのだ。 九重連山の峠を越えるといよいよ大分に突入である。稜線近くをぐるりと回って筋湯温泉へ抜ける道を選ぶ。多少遠回りかもしれないが、こちらを行った方が道が空いてていい。沢沿いのうらびれた道を筋湯を目指して下っていると、道端に傾いた鳥居を見つける。覗いてみると大きな岩にしめ縄がされている。たぶんご神体なんだろう。足元の小さな流れは湧水ではないだろうか。こういうものに出会うってのは徒歩旅行の醍醐味の一つだろう。 八丁原の地熱発電所を右手に見送って、しばらく下っていくと筋湯温泉に到着。一番上流側にある温泉宿に飛び込む。ここの湯は源泉温度が90度とかなり高く、相当割水がしてある。宿の裏手は急な斜面になっていて湯殿まではエレベータで下っていくようになっている。内湯の他にも斜面にそっていくつかの露天風呂があるようだ。行ってみるがなんだかシステムがよくわからない。説明しにくいのだが、とにかく色々書いてあって、それが何のことやら要領を得なかったりするのだ。まあ、あまり気にしないことにして適当な湯船に浸かってみる。露天風呂は源泉が違うらしい。Ph3ちょっとの酸性泉で温度は低いがよく温まる。 この宿から少し下って行くと本格的な温泉街が姿を現す。やや、これはちと早まったかな?看板などを見ていると、どうやらここ筋湯の名物は打たせ湯らしい。「日本一の打たせ湯」などと景気の良いことが書かれている。さひわひにして僕は打たせ湯はあまり得意じゃない。あれをやると何故かかゆくなってしまうのだ。 筋湯からはさらに裏道を選んでいく。哀感を湛えた侘しげな道を辿っていくと、道端にはいくつかの小さい湯治場のやうな温泉がある。その佇まいたるやブルースの極みである。その鄙びた姿に誘われて、湯河原温泉の共同浴場についつい足を踏み入れてしまう。さっき入浴したばかりだが、まあいいだろう。番台には人影はなく、小さなお地蔵さまの前に料金箱が設えられている。一回200円也。無愛想な湯殿が一つ、それが実に熱くて野沢温泉の外湯を彷彿とさせる。やはり温泉はこうでなきゃいけねえよな。 湯河原を過ぎるとほどなくして湯坪の温泉街に到着。ここは鉄筋のホテルなんてものはなくて、木造の風流な建築が軒を連ねている。いかにも玄人好みのする湯治場である。さすがにここは素通り。日はもう傾き始めている。長閑な長閑な田園風景の中を歩いていくと、日暮れ間近になって筌の口温泉に到着。これで「うけのくち」と読む。ここには最近になって大きなつり橋が出来たとかで大変な評判だそうである。別に吊り橋には興味はないが、野営適地を探して橋のたもとまで行ってみる。吊り橋の入り口付近は巨大な駐車スペースになっていて、まわりを土産物屋が囲んでいる。ずいぶん盛大に商売しているようだ。吊り橋は有料だが今日はすでに営業が終わったと見えてゲートが厳重に閉ざされている。そういえば駐車場にも一台の車とてない。適当な空き地に野営することにする。この空き地にも何か建造するような気配。まだまだ商売を広げるつもりなのだろう。 忍び寄る宵闇の下テントを建てようと手にしたポールにぐいと力を入れた刹那、カーンと一声、凛々しく鹿の鳴くやうな音がして、夜の静寂に響き渡った。「やあ、あれは丸源が今宵も船大工に精を出す音だぞ・・・。」などとあられもない痴想に誘われそうになったが、何のことはない、手にしたポールが折れたので。予想外の出来事に一瞬面食らってしまったのだ。さひわひリペアパーツを持っていたのですぐに直った。 テントを建ててから筌の口温泉を詣でる。「炭酸泉」の看板を掲げた一軒宿に日帰り入浴を申し出る。ここの湯は温度こそ低いが微かに発泡しており、ゆっくり浸かれば大変温まるとのこと。なるほどこんこんと溢れ出る湯は口に含むとしゅわしゅわしている。しかし如何せん湯温が低すぎるな。炭酸ガスが充満しないように湯殿の窓は開け放たれているので洗い場に出るのも億劫だ。薄暗い湯船に長々と伸びてひとしきりぼんやりする。僕は基本的に熱い湯が好きだが、たまにはこんな湯も面白いものだ。うっかりすると眠ってしまいそうな心地よさがある。 この宿の女主人はかつては山小屋を経営していたそうである。今夜の泊まり客は一人だけ、山小屋時代からの常連さんだという。とても気さくで親切な人たちだ。ちょっとお酒でもご一緒したい感じだが、長湯をしているうちにいつの間にやら時計は9時をまわっている。残念だがお暇をして、ヨチヨチとテントへと引き返す。これから炊事をしなければならないのは、なんともトホホな気分。静かな静かな朧月夜である。 4/21 足の具合は悪くなる一方である。今朝は立ち上がるにも困難を感じた。ちょっとまずい状態かもしれない。9時頃になると吊り橋の駐車場にくゎんこうバスが次々とやって来て賑やかになる。この吊り橋は「九重夢大橋」という名前で、なんでも日本一吊り橋なんだそうである。しっかりくゎんこうルートに組み込まれているのだ。ヨチヨチとした足取りでやまなみハイウェイへと向かう。敢えて吊り橋は渡らなかった。 平日のやまなみハイウェイは落ち着きを取り戻している。ふと、正気に戻った人のやうに物静かな表情を浮かべている。この道は熊本と大分を結ぶためにあるような道で、沿道には生活感というものがまるでない。振り向くと九重の山々が見える。あれを越えて来たんだなぁ、などと思う。とは言ってもこの辺の標高はまだ900mもある。まだまだ山の懐なのだ。途中、地下水を汲み上げて無料で提供しているレストハウスがあったが、寄り道するような場所はそれくらいしかない。道端のキロポストの数字を黙々と削っていく。足が痛いので歩いていてもちっとも楽しくない。 夕方になってようやく国道210号線に出る。湯布院の道の駅までここからあと4km、頑張って歩くことにする。途中立派な運動公園があったので野営としてしまっても良かったが、もしかしたら道の駅に温泉があるかもしれないという期待もあって最後まで歩き通す。しかし行ってみると温泉などありもせず、あまつさえ営業を終えた売店もむっつりと無愛想に静まり返っている。ザックにはろくな食料が残ってない。なんてこった、酒も殆ど空じゃないか?駐車場の隅っこの芝生で野営。車の出入りが夜通し続き、トラックのアイドリングの音など耳について寝付かれない。道の駅ってとこは安心感はあるが、決して寝心地の良い場所ではないな。 4/22 寝付いたのが遅かったこともあって、今朝はのんびり起床。既に時計は9時に近い。今日中に別府温泉に入るのは諦めた方がいいな。テントを出てトイレに行こうと思って笑ってしまった。た、立てない。テントにすがりついてなんとかバランスを保とうと試みるも、テントのポールなんてものはぷにゃぷにゃなもので、人の体を支えられるようなものではない。思わず芝生に手をついて四つん這いになってしまった。ははははは、これじゃまるで「天使というよりむしろ鳥」じゃないか。こんな有様では札幌はおろか、別府にだって辿り着けないのではあるまいか?朝露に濡れた芝生の上をコネチカット風のひょこひょこ歩きでトイレへと向かいながら、少々心細いやうな心持ちになる。しかしそこは不思議なものでザックを背負うとちゃんと歩けてしまうのだ。人間はそんなにヤワじゃないぜ。 道の駅から一時間も歩くと湯布院の駅前に出る。駅前通りの有様は小樽運河を彷彿とさせるやうなざーとらしさである。くゎんこう地として至れり尽くせりってことだが、コネチカット風のひょこひょこ歩きしか出来ない今の僕がうろついて然るべき場所ではない。あまつさえ背中には無様に巨大なザックを背負っているのだ。場違いなことこの上ない。 土産物屋の立ち並ぶ目抜き通りに背を向けて郊外の方へ歩いていく。表通りを少しそれるとわりと落ち着いた感じの街並みが続いている。「湯の坪温泉」という共同浴場があったので入浴を試みる。一回200円也。「はやくよくなぁれ」などという呪文を唱えつつ足首をなぜなぜしながら一時間ほど入浴。 適当な裏道を抜けて急な坂道を登りきると国道8号線に出る。あっさり湯布院の温泉街をあとにしてしまった。まあ、徒歩旅行の途中で立ち寄るような感じのところではないな。ここから別府へ向けてもう一つ峠を越えねばならない。狭い道で大変歩きにくい。足さえよければ一気に別府市街に突入するところだが、今日のところはさっさと寝床を見つけた方が良さそうだ。鶴見岳のロープウェイ乗り場など営業さえ終わってしまえば静かなのでは?と思っていたのだが、夕暮れの家路を急ぐ車がせわしなかったせいか、急に気が変わって志高湖の方へ回ってみることにする。足が痛いとか言いながら結構余裕あるな、俺。志高湖畔はキャンプ場になっているが、僕はキャンプ場には泊まらないことにしている。あくまで野宿なのだ。神楽女湖まで足を延ばしたところで日没。湖畔は野営するのがためらわれるほど綺麗に整備されている。非常にデカい駐車場も用意されている。花の季節には賑わうのかもしれない。隅っこの方で野営。なんだかんだで今日もしっかり歩いてしまった。 |
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