立山周辺
- GPS
- 56:00
- 距離
- 14.2km
- 登り
- 1,592m
- 下り
- 1,641m
天候 | 晴れまたは快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2024年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・雷鳥沢(登り下りとも)はポピュラールートと言えど、雪質によっては滑落の可能性はある傾斜だ。 ・剱沢源頭を囲むようにクレバスが走っていた。全層雪崩が起こる場所か承知していないが、カール底で休憩したりしない方が良いだろう。 |
写真
感想
剱岳を正面に剱沢に滑り込んでいく構図の写真は雑誌のグラビアなどで良く見かけ、山スキーを始めた頃からの憧れだった。もう後のない年齢になり、不安はありながらもとにかく挑戦することにした。
5月14日(火) 扇沢駅7:30−室堂駅8:55/9:42〜浄土山2760m地点11:14/11:40〜室堂駅11:55〜雷鳥荘12:45 天気:無風快晴
前夜に駐車場に着き泊まる。夜の間に低気圧は抜け、青空が広がっている。アルペンルートも久し振りで、外国人の多いのには驚くが、残雪の山々は関係なく美しい。スキーと靴の荷物にはくたびれたが、意外に早く室堂駅に到着した。ロッカーに不要の物を置き、ごった返す駅舎を脱出すれば、青と白の世界が広がる。
今日は足慣らしの浄土山だ。南側の目の前に絶好の斜面があるが、上の段に雪がないように見えたので、北東カールを目指す。まずは一ノ越に向かう列の少し上をトラバース気味に緩く登っていく。小さな尾根状を超えるところでトレースを右に離れ、斜面に向かっていくと、坊主頭のような丸いピークが迫ってくる。前方に水平に伸びる露岩帯が立ちふさがり、ルートに迷うが、左から巻くと読みどおりにカールに向かう広い沢に入った。一ノ越に向かう人の列が下になり、雄山は見事な三角形の姿を見せている。白一色の斜面を無心に登るのが気持ち良い。最後の壁が迫り、頂上は遠くなさそうだったが、そろそろ水っぽくなった雪にスリップするようになってきたので、翌日の本命のために体力を温存すべく、2760mで打ち止めとした。下りは表面だけ柔らかいザラメで快適に滑り、すぐに駅に着いてしまった。観光客と行き交いながら雷鳥荘を目指す。石段の登り降りや、大迂回があって意外に苦労だった。翌日行く雷鳥沢のルートを目で辿りながらまずは初日のビールを味わう。
5月15日(水) 雷鳥荘7:17〜別山乗越9:52/10:30〜2530m地点10:40/10:50〜別山乗越11:35/12:02〜滑降開始12:15〜滑降終了12:31〜雷鳥荘13:15 天気:風弱く晴れ
前日は持たなかったピッケル、アイゼンを加えて久々の重さで出発だ。小屋前から右下に降りて行くトレースに沿ってそろそろと横滑り。トレースは先に続いているが雷鳥沢の野営場は眼下なので真っすぐ降りる沢状に入る。これが失敗で、ひどいデコボコ雪面をバタバタと滑るはめになり無駄な消耗をしてしまった。沢を渡り、流水溝を踏み越えながら雷鳥沢の左(西)側の尾根の取り付きを目指す。来てみると赤布を付けた竹竿が連なっており、前日に観察したルートをはずれる心配はない。直登は厳しいが、ジグザグを切れば怖いほどの傾斜ではない。左のハイマツ帯に沿ってじわじわと高度を上げていく。なぜか行列の先頭になってしまい落ち着かない。登るに従い、背後に白山や、憧れの鍬崎山が姿を現す。風も感じるようになるが、涼しくてありがたい。一度右に振り過ぎて傾斜がきつくなり、ヒヤヒヤするはめになった。雪の表面は柔らかく時々シールがスリップするので、クトーを持つべきだったと後悔する。それでも体力的にはさほど疲れないうちに剱御前小屋が近づいてきて、トレースは左に向かい、尾根上の夏道に出た。沢の源頭部はかなり急に見えたので、土の道に逃げられたのにはホッとした。スキーを背負うのも十何年振りか。荷は重いが気は軽く歩き始めた途端、マジか! 予想外の雪稜が現れた。ほんの30mくらいだが、左側は険しく谷底に落ち込んでいる。アイゼンを付け、右手にピッケル左手にストックで一歩一歩を確実に踏むことを心掛けて進む。抜ければ小屋は手の届く距離だ。アイゼンのままゴールへと気が急く。たどり着いた別山乗越からは剱岳の黒々とした姿がまず目に飛び込んでくるが、思ったよりは順調だったためか、大感動でもなかった。最大の関門を超えた安堵を静かに味わった。
いよいよ夢の剱沢の滑降だ。こちらに入る人は見当たらない。そろりと滑りだすと幅50cmほどのクレバスが左右に長く伸びている。青旗の立つ所で渡り、フラットな斜面に飛び出せば軽いシャーベットで、抵抗なく小回りが楽しめる。あっという間にカールの底に着き、もう一段、テント場の上のハイマツ島まで一気に滑り降りた。標高差200m少し、白一色の大斜面に囲まれた空間に降り立って、もう十分。登り返しを考えここまでとした。テントが4張ほどあるが、周辺や剱岳の稜線に人の気配はない。静かで何か気だるい不思議な雰囲気だ。再びシールを付けて滑ったラインを登り返す。ガイドパーティが剱御前の方に向かっているのが見える。最後のカール壁を左から巻き登り、乗越に戻った。やっと落ち着いて、コーヒーを淹れて剱を眺めながら満足感に浸る。
さて雷鳥沢だ。先ほどの雪稜から滑り込む勇気はないので、目途を付けておいた野営場への夏道を3分ほどスキーを抱えて下り、右に踏み跡を辿って枝沢上端に出た。エントリーして幅5mの雪面をそろそろ降りると本流の大斜面に合わさる。こちらも雪は滑りやすいが、私にとってはターンするのに気合が要る斜度だ。右手の方が緩そうなので斜滑降していくと登りのルートに出会ったので、そのまま尾根斜面を下った。下3分の1は流水溝で快適ではなくなる。終了の寂しさを感じながらガタガタの雪原を流し、浄土沢のほとりに降り立った。
目標をビールに切り替え、往路の反省から野営場管理棟の上に伸びるブッシュ帯の左側を登る。トレースもあり登りやすい。長い斜登行を終えて小屋前に飛び出し、取る物もとりあえず玄関の冷却桶からご褒美の2本。滑ってきた雷鳥沢を眼前に満足感に浸る。
5月16日(木) 雷鳥荘7:20〜2626m地点9:26/9:50〜雷鳥荘11:06 天気:風やや強く晴れ
本日は2匹目のドジョウとして山崎カールを狙うのだが、天気は悪化の予報。前日に主目的は達してしまったので今一つ気合が入らず出発。本日も小屋前から右下へのトレースを辿り、野営場に降りないで最短距離で行こうとそのまま先に進むが、急斜面の上に出てしまいウロウロ。戻って南側のカール状から浄土沢へと滑り降りた。眼前の小尾根に取り付き、鯨の背のような緩い尾根筋を、左手に一段目の大きなモレーンを眺めながら進んでいく。雲の塊りが、速い南風に稜線すれすれを流れて行く。小尾根は雄山の山腹に突き当たるように吸収されるので、そのままモレーンの右を抜ける感じで登っていく。傾斜は急というほどではないのだが、シールが濡れて剥がれ横ずれするのでスリップがちとなり、怖いし無駄に筋力を使う。風があるので前日と変わって雪山の圧迫感がある。ようやくモレーンの上に出ると意外に広い平坦地になっている。どこから登ってきたのか、先行者がかなり上に見える。もう少し頑張ろうと、ブッシュの出た2段目のモレーンを目標にシール登行を続ける。どうにか辿り着き、この先は傾斜も増してくるのでクトー無しでは厳しいと判断し、ここまでとした。見上げる山崎カールの白い雪面はまだ遥かに高く、両側の岩稜はアルペンムードを漂わせている。これを主目標に再度訪れる力はあるだろうかと考えながら、周囲の山々に目を巡らす。
下降にかかる。滑りは快適で、まずは1段目モレーン上の平坦地まで。その先は右寄り3分の1辺りから下を窺ってみると急な沢状になっていたので、その左の尾根状に入った。ここもフラットな気持ち良い斜面だった。浄土沢の谷筋が近づくと例によって溝が出てくる。氷河のミニチュアのような景色の中を淡々と滑り、野営場の手前でコーヒータイムとした。前日のルートで雷鳥荘に登り返し、締めのビールをしみじみと味わった。
この日の夕方からガスがかかり、夜の間に3cmほど雪が積もった。翌日は室堂駅までの歩きだけだったが、吹き溜まりでは膝下まで潜り、今季最初で最後の雪山らしい雰囲気を楽しんだ。
〔感想〕
永年の課題を終えることができ、満足感は大きい。しかし用具では不備があり、さすがに北アルプスには生半可は通用しないと再認識させられた。積雪期の立山は初めてだが、雄大な景観、滑り応えのある大斜面に感動するとともに温泉、ビール三昧の極楽山行だった。私より年配のシングル男性も多く見えており、それぞれの過ごし方をされているようで、老後に希望?が持てる経験でもあった。毎年は財布が許さないが、是非また訪れたいものだ。
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