やっぱりバテた飛龍山
- GPS
- 32:00
- 距離
- 23.7km
- 登り
- 1,683m
- 下り
- 1,769m
天候 | 曇り、雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2024年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
「崩壊地」は雨天では踏んだ所が崩れて極めて危険と思われる。「崩壊地」のほかにも路肩の心もとない箇所は多く、気を抜けない。 |
写真
感想
中学2年生の2学期に学校の山岳部に入った(日記1)ものの、天気に恵まれず、スキー合宿のほかに登山をする機会が中々訪れなかった。3年生となった翌年5月の連休にようやく奥秩父の雁峠〜雲取山の合宿に参加したのだが、キスリングに重い革登山靴を履かされ、当然バテバテとなり、元気な者たちが飛龍山の頂上を往復してくる間、縦走路(巻き道)の分岐で伸びていたのは苦い思い出だ。行きそびれた飛龍山だが、奥秩父の主要ピークの一つでもあり、ぜひリベンジを果たしたいと計画に至った。
初めは、初日に三条の湯に泊り、二日目に飛龍を超えて丹波山への予定としていた。これだけでも今の私には中々骨折りなのだが、二日目が台風の影響で雨天の予報となり、魔が差して?、逆回りにすることを思いついた。標高差1400mは相当厳しいが、昨年北穂も行けたから大丈夫だろう、と考えたのだが・・・。
5月30日(木) 丹波山村役場バス停7:58〜サオラ峠10:28/10:48〜熊倉山11:30/11:40〜前飛龍13:05/13:30〜縦走路分岐14:02〜飛龍山14:30/14:50〜三条の湯16:49 天気:晴れのち曇り
きれいな建物の役場の先が登山道入り口だ。防鹿柵を数か所くぐって畑を抜けると植林帯になり、すぐに広葉樹の森に変わる。陽も差し込んで緑が鮮やかだ。道はかなり急傾斜で一本調子でぐんぐん登っていく。昨年の落ち葉がまだかなり厚く積もっている所もある。やがて明瞭な尾根状となり、岩交じりの道をジグザグを切って高度を上げていくが、疲れが出てきてここは長く感じた。ようやく左への斜上となり、空が近づいてサオラ峠に出た。尾根がゆったりと広がり、南はカラマツ、北は広葉樹の森で爽やかな場所だ。
ここからは緩やかな尾根となり、立派なブナの巨樹や白樺の林などを眺めながらしばし楽しいプロムナードだ。左手には雲の下ギリギリに青い山稜が覗くが、全貌が見えないのでどの山かはっきりしない。やがて尾根はやせてきて、顕著に傾斜が急になってくる。奥秩父らしい針葉樹も交じってくる。この頃から急に脚が重くなり、登るのがきつくなった。サオラ峠までの疲れが効いてきたか、体調が悪いのか、呼吸も苦しい。まだ先は長く不安になるが、歩けない訳ではないので頑張るしかない。いつの間にか頭の上の空も白から灰色に変わっていて、気持ちも重くなる。再び岩交じりとなった道を一歩一歩、息を整えながら登る。最後は気息奄々といった状態でようやく前飛龍手前の露岩に飛び出した。すれ違ったパーティの人が、「良くこんな所登ったな」としゃべっているのが下から聞こえた。私のことか自分たちのことか分からないが、全くだ。二度と来る気はしない。間もなく前飛龍の狭い頂上に着くと、樹のすき間から飛龍山が同じ位の高さに望まれ、何とか行けそうな目処がついてホッとした。
カップ麺をかき込んで塩分を補給したおかげか、体調も普通に戻ったような感じがあり、一旦急な下りを経て笹の下生えの道を登っていくと、道標が目に入り、懐かしの分岐だ。石の社のある風景の記憶は残っていないが、40何年も前に踏んだはずの縦走路を眺めると、何かいとおしさを感じる。あの時一緒にここにいた人の中には、もう故人となった方もいる。過ぎ去った時の長さに胸が切ない。
いよいよ頂上に向かう。シャクナゲがぽつぽつ咲く稜線を針葉樹の根をまたぎながら歩くのだが、中々着かない。心配になった頃に、前方に丸太が突っ立っているのが見えてきた。裏側を覗くと「飛龍山」の文字。なぜ南向きに作ってあるのか分からないが、南側から登ってくる道があるように誤解されそうでどうなのか? 探してみたがそれらしい道はない。薄く霧の漂う頂上は誰もおらず静寂の中だ。ホッとした以上の感慨を感じる余裕はなかった。時間も押しており、疲れた脚で怪我をしないよう気を引き締めなおして出発。そのまま東に向かい、稜線らしくなってきたところで右下にはずれる。赤テープがたくさん付いているので迷うことはないだろう。
縦走路に降り立ち、この区間だけは40数年ぶり2度目の歩きだ。今までの登りと比べると本当に心穏やかな道だ。北天のタルで縦走路と別れる。雲の下に出て再び美しい広葉樹の森になるが、曇天に足元は薄暗く、気が急く。ヤマレコのマップに危険!マークの付いた沢を渡り、これが問題の崩壊地かと思ったが間違い。カンバ谷を渡ってすぐの1580m辺りだ。靴を乗せる程度の幅の踏み跡はあり、ワイヤを渡してくれてあるので精神的には助かった。途中で左膝に痛みが走りドキッとしたが、以後は何とか持ってくれた。一番心配だった箇所を無事通過できて安堵する。長い長いトラバース下降を経て最後のジグザグにかかる。急斜面ではあるが道は歩きやすく作ってくれてある。三条の湯の小屋番は、ヤマレコユーザーのisme氏だ。到着が5時を回ってしまったらあまりに体裁が悪く声は掛けないつもりだったが、小屋の屋根が見え、ギリギリ10分前にたどり着いた。「4時までには着いてくれないと」と叱られ・・いや御指導を頂く。ハイ、申し訳ございません。
小屋泊は一人だったらしく、部屋を独り占めできてありがたかった。揚げたての山菜の天ぷらを美味しく頂き、風呂で疲れを癒す。isme氏とは、奥秩父をスキーで歩くという変わった?趣味が共通しており、コメントをやり取りしたことがあった。この4月から小屋番をされているそうで、将来の計画など色々話を伺った。交代制とのことで、この日お会いできたのは幸運だった。かすかに沢音を聞きながら、快適な夜を過ごした。
5月31日(金) 三条の湯6:40〜お祭り9:30 天気:雨のち曇り
朝から予報どおりの本降り。煙突から懐かしい薪の煙の臭いが立ち上る、風情のある小屋を後にする。見下ろす渓谷が茶色く濁っているのは残念だが、時に豪快な瀬を眺めながら、しっとりした森の中を歩くのは気持ち良い。しかし、樹々の立派なのと裏腹に林床の下生えがほとんどなく、ザレの地肌がむき出しなのが気になった。鹿の食害なのか元々の地質なのか分からないが、そこここの小沢から土砂が押し出しているのも目に付き、危惧を覚える。林道歩きの途中からは雨も小やみになり、雲をかぶった背後の山の緑が濃い。さすがに飽きてきた頃に、国道のアスファルトが下に見えてきた。
〔総括〕
半世紀近く前からの宿題にけりを付けることができたことは嬉しい。前回の雪山の後で、奥秩父の緑が改めて心に沁みるようだった。社交が苦手の私としては珍しく、初めてヤマレコユーザーさんと対面で話をしたことも楽しく、良い体験だった。
一方、注意されるまでもなく、山小屋到着が16時を回ったのは初めてで、ご迷惑をかけることになり申し訳なかったとともに、自分の体力の低下にはかなり落胆することとなった。もうコースタイム基準で計画を立てるのは無謀という現実は直視せざるを得ない。さてこれからどうするか。課題は大きい。
ナベケン
コメントありがとうです。奥秩父は森に覆われてはいるが、谷は深く斜面は急なことを再認識してきました。沢や斜面に沿った道が通行不能にならないか、将来が心配です。同じことを考えて、丹波山みやげに鹿肉ソーセージと鹿肉カレーを買ってきました!
こちらこそ生意気言ってしまい申し訳ありませんでした。 でもあの時、miya さんからきりだしてくれたのは本当に感謝でした。腰抜かすほど驚いたんですよ笑
緊張してしまってうまく話せませんでしたが、また泊まりに来て頂きたいです、ここで直に連絡してもらっても大丈夫ですから笑
また会える日を楽しみにしています、では😁
週末のお忙しいなか、コメントありがとうございます。
いえいえ基本ができていない登山者には、ぜひ厳しく指導してやってください。そういう小屋主は必要ですので。
環境、食事、風呂ともすばらしく快適に過ごせました。薪を燃やす煙の香りが昔の山小屋風でとても良かったです。お世話になりありがとうございました。慣れるまでまだまだ大変でしょうが、山を深く知るほど秩父愛も深まるのではないでしょうか。また伺いますのでよろしくお願いします。
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