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Yamareco

記録ID: 7357219
全員に公開
沢登り
北陸

【奥越】荒島岳 鬼谷地獄谷のクズハキ谷

2024年10月13日(日) [日帰り]
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GPS
--:--
距離
11.9km
登り
1,315m
下り
1,315m

コースタイム

日帰り
山行
12:00
休憩
0:00
合計
12:00
5:40
20
駐車地
6:00
80
養魚場(入渓点)
7:20
120
地獄谷・極楽谷の二俣(標高点442m)
9:20
210
クズハキ谷・ツノ滝谷の二俣(標高点623m)
12:50
130
ヒメマチ稜に出る
15:00
160
17:40
駐車地
天候 晴れ
過去天気図(気象庁) 2024年10月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
以前は鬼谷右岸の林道にある荒島養魚場の空き地に駐車するのが定番だったが,現在は佐開集落のすぐ先に車止め+獣害防止電気柵が設置されており,養魚場まで入れない状態になっている(もしかしたら昼間は通れるかも?未確認)ため,車止めの手前の路肩に駐車した。2台分程度のスペースあり。
コース状況/
危険箇所等
・ 乗り越しが面倒かつ非常に恐ろしく,入渓者の畏怖の対象になっている2つ目の堰堤は,左岸側に設置されていた1段目のアルミハシゴが失われており,全て残置ロープ頼りで垂直の壁を登らねばならず,難度が上がっている。老朽化したロープに全体重をかけることがためらわれたため,今回は右岸を高巻いた。急斜面が続くが沢登りに慣れた人なら十分こなせる巻きで,所要時間は30分ほどかかった(今はルートが分かっているので10分程度で巻けると思う)。歩いて谷に戻れるが,下降ポイントがやや分かりにくいので,さっさと懸垂してしまうのも選択肢。
・ 地獄谷・クズハキ谷は直登可能な滝が多く楽しめるが,個人的に注意が必要と感じたのは以下の2箇所。
 .ズハキ谷・ツノ滝谷の二俣手前の3mCS滝(写真No.31)…多くの記録では滝の右手側をチムニー登りしているが,自分としては左手側のほうが容易そうに見えたため取り付いたところ,実際容易に登ることができた(ただし,水量が多いと難しいかもしれない)。取り付きまでに釜を渡る必要があるが,水面下にスタンスがありヘツリでクリアできる。
◆.ズハキ谷に入ってからの大曲滝手前の5m滝(写真No.44)…右岸を高巻いたが,かなり急峻な地形でやや難しい巻きとなり,大曲滝のちょっとだけ上流側に懸垂下降で降り立った(今回の遡行では懸垂はこの一回のみ)。下降点の選定を誤ってロープ長(40m,ダブルで20m)が足りず1.5ピッチの懸垂となり,時間を食ってしまった。なお,この滝は左壁を登っている方もいるので,登れるならそのほうが早い。

・ なお,この谷最後のアトラクションである100m岩壁帯は,最後の小さな二俣を右に入らないといけないところ,それを知らずに直進方向の左俣に入ってしまったため,岩壁にぶつかることもなくヒメマチ稜に出てしまいました…。最後の二俣を左に入ると岩壁帯を避けて容易に稜線に出られる,というのは代替ルートとして知っておいても損はないかもしれません(ただし,ヒメマチ稜でのヤブ漕ぎがちょっとだけ長くなります)。
・ 稜線に出てから山頂までは,旧下山ルートは完全に廃道化しており濃い藪が続くが,旧下山ルートの踏み跡の名残が笹の下にわずかに残っている区間もあるので,それを外さないように藪をかき分けていけば結構いいペースで進める。少なくとも野伏ヶ岳とか薙刀山とか白山の地獄尾根のような,人の手が全く入ったことのない100%混じりっけなしの激藪に比べればだいぶマシな印象だった。
当初は鬼谷沿いの林道の途中にある荒島養魚場まで車で入るつもりだったが,佐開集落を過ぎたあたりでまさかの車止め+電気柵に阻まれる。仕方なく車止めの手前の路肩に駐車して歩くことに。まあ,入渓点の養魚場までそんなに距離はないし,大したことはない。
当初は鬼谷沿いの林道の途中にある荒島養魚場まで車で入るつもりだったが,佐開集落を過ぎたあたりでまさかの車止め+電気柵に阻まれる。仕方なく車止めの手前の路肩に駐車して歩くことに。まあ,入渓点の養魚場までそんなに距離はないし,大したことはない。
この荒島養魚場の目の前から入渓(養魚場自体は休業中のようす)
この荒島養魚場の目の前から入渓(養魚場自体は休業中のようす)
一つ目の堰堤は左岸を簡単に巻く。
一つ目の堰堤は左岸を簡単に巻く。
問題はこの2つ目の堰堤
問題はこの2つ目の堰堤
左岸側に垂れ下がった残置ロープに全体重を掛けて,足場のない垂直の壁を登り切らねばならず,これが入渓者の恐怖の対象になっている。しかも,過去の記録では一段目にアルミハシゴが設置されていることになっているのだが,それが失われており,難度が上がっている。
左岸側に垂れ下がった残置ロープに全体重を掛けて,足場のない垂直の壁を登り切らねばならず,これが入渓者の恐怖の対象になっている。しかも,過去の記録では一段目にアルミハシゴが設置されていることになっているのだが,それが失われており,難度が上がっている。
苔むしていつ切れるか分からないロープに渾身の力を掛けることがどうしてもためらわれたため,この右岸斜面から巻きを試みる。
苔むしていつ切れるか分からないロープに渾身の力を掛けることがどうしてもためらわれたため,この右岸斜面から巻きを試みる。
最初は岩混じりのかなりの急斜面だが,上がってしまえば安定した斜面をトラバースできる。
最初は岩混じりのかなりの急斜面だが,上がってしまえば安定した斜面をトラバースできる。
下降ルートにちょっと迷ったが,最終的に懸垂不要で降りられるポイントを見つけ,歩いて谷に戻る。写真は降りてきた斜面(ブレててすみません)。所要時間は30分ほどだった。このタイムロスを長いと見るか短いと見るか,堰堤登りで味わう恐怖との天秤となるだろう。
下降ルートにちょっと迷ったが,最終的に懸垂不要で降りられるポイントを見つけ,歩いて谷に戻る。写真は降りてきた斜面(ブレててすみません)。所要時間は30分ほどだった。このタイムロスを長いと見るか短いと見るか,堰堤登りで味わう恐怖との天秤となるだろう。
3つ目の堰堤も,かなりの大迫力。え,こっちもヤバいんちゃう? と一瞬緊張する眺め。
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3つ目の堰堤も,かなりの大迫力。え,こっちもヤバいんちゃう? と一瞬緊張する眺め。
しかし実際は右岸側が比較的簡単に登れる。残置ロープもあるが,木の根が豊富なのでロープに頼らなくても大丈夫。
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しかし実際は右岸側が比較的簡単に登れる。残置ロープもあるが,木の根が豊富なのでロープに頼らなくても大丈夫。
そしてその後のスリット堰堤…。スリット堰堤,という響きから感じていたイヤな予感が的中。時間の経過とともに流木がうず高く堆積し,正面から通過できなくなっていた。
そしてその後のスリット堰堤…。スリット堰堤,という響きから感じていたイヤな予感が的中。時間の経過とともに流木がうず高く堆積し,正面から通過できなくなっていた。
仕方ないので左岸から巻く。簡単に巻けて一安心。2つ目の堰堤のように両岸が壁だったら,かなり面倒なことになっていたはずだ。
仕方ないので左岸から巻く。簡単に巻けて一安心。2つ目の堰堤のように両岸が壁だったら,かなり面倒なことになっていたはずだ。
そしてすぐ極楽谷(左)と地獄谷(右)を分ける二俣(標高点442m)。今回は右の地獄谷へ。
そしてすぐ極楽谷(左)と地獄谷(右)を分ける二俣(標高点442m)。今回は右の地獄谷へ。
地獄谷の出合。淵と小滝から始まる。
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地獄谷の出合。淵と小滝から始まる。
その後も小滝が続き,まずは順調に直登して越えていく。
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その後も小滝が続き,まずは順調に直登して越えていく。
この小滝を直登して越えると,谷ははっきりとゴルジュ地形となる。
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この小滝を直登して越えると,谷ははっきりとゴルジュ地形となる。
両岸が極度に切り立った底を,恐る恐る進む。
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両岸が極度に切り立った底を,恐る恐る進む。
しかし,出てくる滝はどれも直登可能で楽しい。
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しかし,出てくる滝はどれも直登可能で楽しい。
これは右岸枝谷のハシラコバの滝。枝谷はどれも急峻で,高い滝となって流れ込んでくる。枝谷を探ってみるのも結構面白いかもしれない。
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これは右岸枝谷のハシラコバの滝。枝谷はどれも急峻で,高い滝となって流れ込んでくる。枝谷を探ってみるのも結構面白いかもしれない。
この滝も左岸からヘツって直登
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この滝も左岸からヘツって直登
夏だったらシャワークライミングで楽しいだろうが,今日は気温が低く水もかなり冷たくて,正直けっこうツライ。最低限,上半身の乾燥は死守しつつ頑張って登る。
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夏だったらシャワークライミングで楽しいだろうが,今日は気温が低く水もかなり冷たくて,正直けっこうツライ。最低限,上半身の乾燥は死守しつつ頑張って登る。
この滝は左壁から登る。
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この滝は左壁から登る。
ここまでは5m前後の小滝ばかりだったが,それなりの12m滝が出てきた。
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ここまでは5m前後の小滝ばかりだったが,それなりの12m滝が出てきた。
この滝は左右どちらからでも容易に巻けそう。今回は左岸から巻いた。
この滝は左右どちらからでも容易に巻けそう。今回は左岸から巻いた。
続く3m滝は左側の壁を直登。
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続く3m滝は左側の壁を直登。
美しいゴルジュ地形が続く。
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美しいゴルジュ地形が続く。
そして4m滝。
左側のここから取り付いてバンドトラバースできそうな気もしたが,先がどうなっているか見えないので,無難に右岸巻きすることに。岩混じりの急斜面を数メートル慎重に登れば灌木帯に入ることができ,比較的安定した巻き。懸垂不要で谷に戻れた。
左側のここから取り付いてバンドトラバースできそうな気もしたが,先がどうなっているか見えないので,無難に右岸巻きすることに。岩混じりの急斜面を数メートル慎重に登れば灌木帯に入ることができ,比較的安定した巻き。懸垂不要で谷に戻れた。
そしてこの3mCS滝。ほとんどの記録では右側をチムニー登りしているが,結構難しそう。なんとなく左側の水流がある箇所のほうが簡単そうに見えるけど…
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そしてこの3mCS滝。ほとんどの記録では右側をチムニー登りしているが,結構難しそう。なんとなく左側の水流がある箇所のほうが簡単そうに見えるけど…
そこで左側から登ってみると,果たして簡単に登ることができた。釜も水面下にスタンスがあってヘツれるので,泳ぐ必要はない。
そこで左側から登ってみると,果たして簡単に登ることができた。釜も水面下にスタンスがあってヘツれるので,泳ぐ必要はない。
この小滝を右から登って…
この小滝を右から登って…
このトイ状10mも右から登る。
このトイ状10mも右から登る。
まさにトイ状
そして大岩が目印のクズハキ谷(左)とツノ滝谷(右)の二俣に到着(標高点623m)。一見,ただのインゼルのように見えるので,見落として直進しないように注意。
そして大岩が目印のクズハキ谷(左)とツノ滝谷(右)の二俣に到着(標高点623m)。一見,ただのインゼルのように見えるので,見落として直進しないように注意。
左のクズハキ谷に入ると,最初は穏やかだが,じきに厳しいゴルジュの底に再突入。
左のクズハキ谷に入ると,最初は穏やかだが,じきに厳しいゴルジュの底に再突入。
いくつかの小滝を直登していく。
いくつかの小滝を直登していく。
と,突然谷が開けて,穏やかな風情に。これで終わりなはずもなく,嵐の前のような不気味な静けさの中を進んでいく。
と,突然谷が開けて,穏やかな風情に。これで終わりなはずもなく,嵐の前のような不気味な静けさの中を進んでいく。
すると前方に高い滝が。あれは左岸枝谷に掛かる大曲滝25mだろう。ということは,あの真下あたりに核心部の滝場があるはず。緊張を感じながら近づいていく。
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すると前方に高い滝が。あれは左岸枝谷に掛かる大曲滝25mだろう。ということは,あの真下あたりに核心部の滝場があるはず。緊張を感じながら近づいていく。
平流が終わり,再び両岸が狭まった中に,5mほどの滝が現れる。右はチョックストーンが詰まり左はツルツルで,普通だったら直登が難しそうな滝だが,天祐のごとく突き刺さった倒木を手掛かり・足掛かりにして難なく通過。
平流が終わり,再び両岸が狭まった中に,5mほどの滝が現れる。右はチョックストーンが詰まり左はツルツルで,普通だったら直登が難しそうな滝だが,天祐のごとく突き刺さった倒木を手掛かり・足掛かりにして難なく通過。
そしてこの5mほどの滝。多くの記録で通過に苦労されている滝だ。
そしてこの5mほどの滝。多くの記録で通過に苦労されている滝だ。
この左壁を登ってクリアしている記録もあり,確かに頑張れば登れそうにも見えたが,自重して右岸を巻き上がることに。
この左壁を登ってクリアしている記録もあり,確かに頑張れば登れそうにも見えたが,自重して右岸を巻き上がることに。
しかしこの巻きがかなり急峻な地形で結構悪く,谷に戻る際もクライムダウンできるルートを見いだせず,今回唯一の懸垂下降となった。しかも下降途中でロープ長が足りないことが判明し,不安定な斜面でセルフビレイにぶら下がりながら支点を再構築する羽目になり,無駄に時間を食ってしまった(単純に下降点の選定ミス)。
しかしこの巻きがかなり急峻な地形で結構悪く,谷に戻る際もクライムダウンできるルートを見いだせず,今回唯一の懸垂下降となった。しかも下降途中でロープ長が足りないことが判明し,不安定な斜面でセルフビレイにぶら下がりながら支点を再構築する羽目になり,無駄に時間を食ってしまった(単純に下降点の選定ミス)。
懸垂で降りた地点は,ちょうど枝谷の大曲滝25mの少しだけ上流側だった。
懸垂で降りた地点は,ちょうど枝谷の大曲滝25mの少しだけ上流側だった。
その後の10m滝と,
その後の10m滝と,
5m滝は無難に直登してクリアできた。
5m滝は無難に直登してクリアできた。
右手に高い脇滝を仰ぎながら進むと…
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右手に高い脇滝を仰ぎながら進むと…
80mの連瀑帯が始まる。
80mの連瀑帯が始まる。
傾斜は緩く,ホールドは豊富なので,水流を駆け上がるように登ることができ,爽快な区間。
傾斜は緩く,ホールドは豊富なので,水流を駆け上がるように登ることができ,爽快な区間。
しかし最上段の6mCS滝は,抜け口に倒木が詰まってややこしいことになっており,苦労しつつも右側から乗り越した。
しかし最上段の6mCS滝は,抜け口に倒木が詰まってややこしいことになっており,苦労しつつも右側から乗り越した。
連瀑帯を越え,いよいよ源頭の雰囲気に。この後は100mの岩壁帯と,山頂までの長いヤブ漕ぎが控えているので,ここがゆっくり休憩できる最後のポイントだ。ザックを下ろしてプラティパスにたっぷりと水を汲み,おにぎりを2コほおばる。
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連瀑帯を越え,いよいよ源頭の雰囲気に。この後は100mの岩壁帯と,山頂までの長いヤブ漕ぎが控えているので,ここがゆっくり休憩できる最後のポイントだ。ザックを下ろしてプラティパスにたっぷりと水を汲み,おにぎりを2コほおばる。
そして気合を入れて水の枯れた源頭を登っていく。が,登れど登れど,最後のアトラクションとなるはずの岩壁帯が出てこない。
そして気合を入れて水の枯れた源頭を登っていく。が,登れど登れど,最後のアトラクションとなるはずの岩壁帯が出てこない。
それどころかどんどんヤブが濃くなっていく。何かおかしい,と思いつつもそのまま登っていくと…
それどころかどんどんヤブが濃くなっていく。何かおかしい,と思いつつもそのまま登っていくと…
岩壁帯にぶつからないまま,すんなりヒメマチ稜に登り出てしまった…(写真のピークはP1254のヒメマチピーク)。地形図を見直すうち,どうやら最後の小さな二俣は直進方向の左俣ではなく,右俣に入るべきだったらしい,ということに薄々気が付いた(下山後に調べると,果たしてその通りだった)が,後の祭りである。まあ,無事に稜線に出られたし,良しとしよう。
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岩壁帯にぶつからないまま,すんなりヒメマチ稜に登り出てしまった…(写真のピークはP1254のヒメマチピーク)。地形図を見直すうち,どうやら最後の小さな二俣は直進方向の左俣ではなく,右俣に入るべきだったらしい,ということに薄々気が付いた(下山後に調べると,果たしてその通りだった)が,後の祭りである。まあ,無事に稜線に出られたし,良しとしよう。
冬期は荒島岳を代表する雪稜バリエーションとなるヒメマチ稜も,今は足の置き場もない濃い灌木のヤブ。シャクナゲに乗っかりツツジをこじ開け,じりじりと進んでいく。
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冬期は荒島岳を代表する雪稜バリエーションとなるヒメマチ稜も,今は足の置き場もない濃い灌木のヤブ。シャクナゲに乗っかりツツジをこじ開け,じりじりと進んでいく。
積雪期にナイフリッジとなる箇所はヤブもなく土が露出していて,ほっとして小休止。ここぞとばかり水をたらふく飲んでおく。
積雪期にナイフリッジとなる箇所はヤブもなく土が露出していて,ほっとして小休止。ここぞとばかり水をたらふく飲んでおく。
やっとのことで旧下山ルートの稜線に合流すると,そこには旧登山道の名残の朽ちかけた看板が笹に埋もれていた。
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やっとのことで旧下山ルートの稜線に合流すると,そこには旧登山道の名残の朽ちかけた看板が笹に埋もれていた。
旧下山ルートの登山道はすでに廃道化して久しく,ひたすら笹の海が秋の日に銀色に輝きながら揺れているばかり。
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旧下山ルートの登山道はすでに廃道化して久しく,ひたすら笹の海が秋の日に銀色に輝きながら揺れているばかり。
しかし,笹の下には旧登山道の名残の踏み跡が残っている区間もあり,そこだけ笹がわずかに薄いので,それを外さないように笹をかき分けていけば結構はかどる。例えば野伏ヶ岳や薙刀山みたいな,純粋100%の笹薮を漕ぐよりは大分マシである。
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しかし,笹の下には旧登山道の名残の踏み跡が残っている区間もあり,そこだけ笹がわずかに薄いので,それを外さないように笹をかき分けていけば結構はかどる。例えば野伏ヶ岳や薙刀山みたいな,純粋100%の笹薮を漕ぐよりは大分マシである。
時折,笹を漕ぐ手を休めては,眼下に広がる大野市街の絶景を眺める。
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時折,笹を漕ぐ手を休めては,眼下に広がる大野市街の絶景を眺める。
ゆっくりとではあるが,荒島岳の山頂が近づいてくる。荒島岳の山頂直下って,あんなに岩が出てたんだな…
ゆっくりとではあるが,荒島岳の山頂が近づいてくる。荒島岳の山頂直下って,あんなに岩が出てたんだな…
ヒメマチ稜に出てから約2時間後,ついに山頂広場に飛び出した。もういい時間だし誰もいないだろうと思っていたら,3人も登山者がいてびっくり。さすが百名山。
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ヒメマチ稜に出てから約2時間後,ついに山頂広場に飛び出した。もういい時間だし誰もいないだろうと思っていたら,3人も登山者がいてびっくり。さすが百名山。
山頂に飛び出した地点から,登ってきた旧下山ルートの尾根を振り返る。間違って立ち入る人がいないように,緑色のロープが張られていた。
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山頂に飛び出した地点から,登ってきた旧下山ルートの尾根を振り返る。間違って立ち入る人がいないように,緑色のロープが張られていた。
久しぶりの無雪期の荒島岳。白山もよく見えた。
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久しぶりの無雪期の荒島岳。白山もよく見えた。
藪から解放され,涼しい秋風が吹く山頂でしばらく休んだあと,リンドウの紫色の花が揺れる登山道を下る。下山は佐開ルート。
藪から解放され,涼しい秋風が吹く山頂でしばらく休んだあと,リンドウの紫色の花が揺れる登山道を下る。下山は佐開ルート。
佐開ルートの長い林道をひたすら下って,入渓地点の養魚場まで戻って来た。明るいうちに降りてこられて一安心。
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佐開ルートの長い林道をひたすら下って,入渓地点の養魚場まで戻って来た。明るいうちに降りてこられて一安心。

装備

備考 ・ フェルトソール沢足袋使用。ぬめりの強い赤いコケの生えた岩が多く見られたので,フェルトのほうが具合が良いかもしれない。
・ ロープ(40m),捨て縄数本,ハーケン数枚など携行。ロープは1回だけ懸垂下降で使用したが,ロープ長が足りず途中でピッチを切る羽目になった(ただ,これは下降点の選定を誤っただけのような気がする)。急峻なゴルジュ地形が続くので,できるだけ長いロープのほうが安心。ハーケンなどは他の登攀具は使用機会なし。

感想

 鬼谷地獄谷クズハキ谷。「鬼谷」と「地獄谷」なんて,何とも禍々しい文字を重ねたものだ。「クズハキ谷」というのも,意味は不明だが,何だかオドロオドロしい響きがある。谷名が漂わせる不吉なオーラそのままに,鬼谷地獄谷の左俣であるクズハキ谷は,荒島岳では最凶・最難関の谷として知られている。
 この谷をさらに近づきがたいものとしている要素として挙げられるのは,入渓して間もなく出てくる巨大な堰堤と,稜線に出てからの厳しいヤブ漕ぎだろう。いつ切れるか分からない残置ロープに全体重を預けて垂直の壁を登らなければいけない堰堤は遡行者の恐怖の的となっている。また稜線は絡み合った太いシャクナゲと背丈を越えるネマガリタケの藪に包まれており,厳しい遡行を終えたあと,さらに数時間のヤブ漕ぎを経なければ,山頂での憩いを得ることはかなわない。

 そんな難渓にどうしてふらりと訪れたかというと,この日が何ともうららかな秋晴れの一日だったからである。全然理由になっていないが,北陸の険谷にいどむ決心をするためには,陰鬱なゴルジュの暗さを少しでも打ち払ってくれる明るい日差しと,深いヤブ漕ぎに勇気を与えてくれる涼風が最後の決め手になるときもある,ということだけは言える。
 クズハキ谷は,厳しい谷であることはもちろんだが,何といってもそれ以上に美しい谷だった。一つ一つの滝が白く磨かれた壁と碧く澄んだ淵を持ち,頭上を見上げれば常にブナやトチの巨木が黒々とした枝を繁く差し交している。まさに奥越の雄・荒島岳の筆頭を飾るにふさわしい渓谷だと思う。
 堰堤にしても稜線のヤブ漕ぎにしても,すんなり入渓も下山もさせてくれないような谷は,やっぱり独特な印象を残す。入渓前に準備している時の緊張からはじまり,入渓後も次第に袋小路に追い詰められていくような重圧感が常に頭の上にあって,それが恐ろしくも楽しい。クズハキ谷のように流程が決して長くない谷であっても,これだけ濃密な時間を過ごせる理由は,そうしたところにあるのだろう。
 最後のヤブを突き抜けて,山頂の広場に飛び出したあとの,何ともいえない空白感。三角点のとなりの石に腰かけて,オニギリをかじりながら,特に何も考えない。もう滝のことも,ヤブのことも考える必要がないのだ。遠くの澄んだ空の下に白山がくっきりと浮かび,足元にはリンドウの花が揺れて,ブナの葉は紅葉の一歩手前の,何となくひと夏の疲れがにじんだような色をしていた。今年の夏は本当に長かった。でもこの山頂には確かに秋が訪れていて,遡行を終えた今はもう,はっきりとそれを感じ取ることができた。

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