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Yamareco

記録ID: 85482
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
甲信越

蝶・常念岳

2008年07月08日(火) ~ 2008年07月09日(水)
 - 拍手
nobou その他3人
GPS
32:00
距離
16.8km
登り
1,947m
下り
2,099m
過去天気図(気象庁) 2008年07月の天気図
アクセス
予約できる山小屋
蝶ヶ岳ヒュッテ

感想

sakkoさんのアルプス初体験〜山のあしおと中学校・おとなの冒険教室

 おとなの冒険教室『山のあしおと中学校』を立ち上げた。その最初の企画は蝶・常念岳に登りたいと言う中・高年3女性の要望に応えての山小屋利用の縦走となった。元々は夏の冒険学校の訓練山行で常念岳日帰りの予定を、子どもの参加が得られなかったので変更したもの。肝心の『夏の子どもアルプス冒険学校・白馬縦走教室』も、子どもの参加がなければおとなの冒険学校となる。その場合は天狗の大下り〜不帰の険〜唐松岳縦走とする。

 7月5日・3:30起床。5:20堀金の里集合。2台の車で一の沢へ移動し、1台を置いて三股ほ移動。道の駅から常念岳下山口の一の沢までが14km,一の沢から蝶ヶ岳登山口の三股までは20kmもあるので。縦走するためのこの車の配置には意外と時間がかかる。駐車場は広いがほぼ満杯で2〜3のパーティーが出発準備中。
 三股着6:45着。同7:00発。15分歩いて登山カード提出。7:30,前常念への道を分けて吊り橋を渡る。さらに10分歩いて最後の水場となる力水を通過して急登にかかる。どの山でもそうだが、沢からの立ち上がり直後は特にきつい。
 7:52,2段梯の上で休憩。目の前に前常念を見上げる。左に本峰が見えている。この後1700m付近で西進していたルートが直角に左折して南に進むようになるので登るにつれて前常念からは離れて行く感じになる。
 8:02発。ジグザクを繰り返し徐々に高度を上げる。朝からカレーの大盛りを食べてきたのに突然空腹感に襲われ、歩きながら乾燥バナナ,マンゴ―,魚肉ソーセージを食べる。乳酸が満タンで体が重い。8:55、2回目休憩。
 9:05発。15分でまめうち平を通過。平坦な道からやや下って樹林帯に入ると、そこでオサバグサの群落に出くわす。オサバグサはシダのような面白い形の葉の脇から花托が出て白い可憐な花を咲かせる。樹林帯の明るい林床や道の脇に白い花が点々とその花が連なるのを見ながら行く。
 乳酸が消えたのか体がウソのように軽くなる。体の中を風が吹くと言う状態。花を見ながらゆっくり歩き2000m地点を通過。三股から2・5km,蝶ヶ岳まで4.0kmとある。9:50休憩。

⊂鑁安
 10:00発。まめうち平から上部ははじめ直上してしばらく後に右にトラバース気味に斜上し、雪渓の残る沢を越えている。『蝶ヶ岳へ2.5km,三股へ4.0km』の標識を通過した直後の10:20にその雪渓を通過。
 この辺りでは直上せず、常念に向かって右上に進んでいるにも関わらず全体としては常念岳から離れているので、前常念がせり上がって来ると同時に遠ざかると言う不思議な感覚を味わう。
 3人の女性達は『高ボッチから常念岳を遠望すると前常念との間にハッキリした筋が見え、それを一の沢だと思っていた』と言う。一の沢は前常念より北にあるのでそれは有り得ない話しで、『前常念が主脈に対して直角に突き出ているので、その折れ目に当たる沢が見えているのではないか』と言う。それがこの常念沢である。
 10:50、4回目の休憩。11:00発。蝶槍の尾根を真上に仰ぎ見るようになり、常念岳本峰がよく見えるようになる。
 11:00発。そのまま斜上して『2350m地点』の標識を見る。山頂までは残り1.7km。木の梯子を登り、小さな沢上の凹地を越えた所からほぼ直角に左折し直上気味に登る。右手の樹林越しに空が見えているが、その方向にトラバースするのかとの予想に反して道は真っ直ぐ上に向かっており、そちらには空のかけらも見えなくて先の長さが思いやられる。
 
⇔農へ
 さらに直上を続け、周囲の樹高が幾分低くなって明るさを増してくる辺りで、凍裂と思われる幹に上から下までまっすぐ裂け目の入った木を見る。足元にはオオサクラソウ。
 11:50,大きめの雪田で先行する3女性が休んでいたが、湿気っぽいと言うのでその雪田を通り過ぎたところで最後の休憩5分。その間に女性達は先に行く。11:58,ヒュッテまで900mを残す2500m地点を通過。稜線間近となり、ダケカンバの背丈も低くなって全体像を現した常念岳はすっかり遠くなっていた。
 この辺りは蝶の雪形の中と思われ小さな雪のかけらをいくつも踏んで行く。雪が融けたばかりの所では、ヤグルマソウやユキザサ等の新芽が顔を覗かせている。
 12:20,大滝山への分岐点を通過してひと登りで稜線に出ると視界がバッと開け、蝶のヒュッテの向こうに常念岳と大天井岳の連なりが飛び込んで来る。
 12:35頂上手前の槍・穂の見える場所に腰を下ろしてまずは昼食。食後はすぐにテントを張って申し込みに行き、水4リットル600円を買う。
 女性陣3人もヒュッテに宿泊申し込み済ませ、山頂に移動して記念撮影後乾杯して登頂を祝す。
 あとは360度の大展望をほしいままにしながら散策したり昼寝したり・・,たっぷりある時間を思い思いに過ごす。

A筌岳の女達
 その1 槍沢の女・・・の顔
 『槍ヶ岳のカールに女がいる・・』と言う話しを聞いて、その写真を見せられた直後にその位置から見る機会を得た。
 写真が小さくて分かりにくいが、槍ヶ岳の左下のカール,東鎌尾根と大喰岳・中岳に伸びる稜線との間に見える3つの黒い点・・,たしかに女の顔に見える
 翌朝撮った写真では、左目が尾根の影に入ってしまったが、伏せた切れ長の右目と言い、唇の形と言い、どこかの化粧品の宣伝にでも登場しそうななかなか現代風の顔だ。
 その2 舞姫
 この山域にはもう1人『女』がいる。蝶ヶ岳からは分からないが常念岳からははっきりそれと分かる『舞姫』だ。
 常念岳南稜から見た中岳の支尾根の黒い部分,若い(?)女性が黒髪をなびかせ、片手を前に差し出し、後ろ手に房を持って踊っている『舞姫』だ。左向きの顔にはツンと尖がった鼻まであって影絵を見るようだ。
 雪形は季節や見る方角によって様々な形になるので自分で色んな形を探して勝手に名前をつけるのも一興かも知れない。
 さしづめ槍沢の女の顎の付近にある左向きの矢印の形は槍ヶ岳の鏃(矢じり)とでもしてみようか・・!

そわりに
 山のあしおと中学校・おとなの冒険教室の初めての活動は、sakkoさんのアルプス登山初体験のお手伝い。
 sakkoさんは私達が一昨年結成した『境界線』の会員だが、家庭の事情もあって月例の山行にもなかなか参加できないのが悩みだった。それでも志は大きく、朝な夕なに常念岳を遠望しながら、『いつかあの山に登りたい』と願い続けてきた。
 そんなsakkoさんの願いを何とか叶えようと仲間の女性達が立ち上がった。
 自分は子ども冒険学校『山のあしおと小学校』を主宰しているが、子ども達だけでなく老若男女,誰であっても要望があればサポートすることを旨としているので、3女性のお手伝いにと計画を立て、実行リードすることになった。
 元々は7月25日〜29日に行う子ども達対象の白馬岳縦走・アルプス冒険学校のための訓練登山として、常念岳の日帰りピストンを予定した日だったのが、子どもの参加が得られなかったので『それなら1泊して縦走しようか・・』となった次第。

 さて当日は梅雨の隙間を狙い済ましたような絶好の天候だった。登る前から『あんな高い所にいる私を想像できない』と言い、登り始めてからも『私がこんな所にいるなんて 信じられない,信じられない・・』を繰り返しながらしかし一向にへばる気配もなく、そして人一倍お口達者に賑やかに、初めて登る2千数百メートルの世界で目にするすべてのものに賛辞を送りながら元気に登り続け、出発から4時間35分で見事蝶ヶ岳(2677m)への登頂を果たしたのだった。写真の顔も満足そうだ(画面中央の赤い帽子)。アルプス初体験の喜びをこんな風に率直に表現する人に会ったことがない,と言うほどの喜び様でこちらまで嬉しくなる。
 サポートしてくれたyukkoさん(左)も『最後のアルプスになるかしら・・』と幾分不安を抱えての山行の様子だったが、『これなら次(白山)も行けそうネ・・』とにっこり。もう1人のヴェテラン・jikkoさんが要所要所で彼女達を励ましリードしてくれたた。
 自分はただ道案内とペースづくりをしただけだが、3人のチームワークと頑張りには敬意と感謝である。

 翌日はお花畑と展望を楽しみながら常念岳に登り、常念乗越から一の沢を下って下山したが、その記録は次の機会に・・。

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