竜神峡 篭岩山 奥久慈男体山 鷹取岩 不動滝 篭岩 明山 竜神峡


- GPS
- --:--
- 距離
- 24.3km
- 登り
- 2,153m
- 下り
- 2,162m
コースタイム
04:40 亀が淵
05:00 三葉峠
05:50 一枚岩(途中道間違えで20分ほどロス)
06:50 篭岩山
07:00 釜沢越方面分岐
07:50 謎の三角点
08:10 小草越手前の枝道
08:20 小草越
08:30 櫛が峰
08:50 大円地越
09:10 男体山山頂
10:00 健脚コース展望台(筆者勝手に命名)
10:20 健脚・一般コース分岐
10:40 古分屋敷民家前分岐
11:20 フジイ越前崩落箇所のトラバース
11:40 フジイ越
11:40 460m三角点
11:50 入道岩
12:00 鷹取岩
12:00 湯沢源流バリエーションルート入り口標識
12:20 曽根越
12:40 釜沢越
13:10 佐中パノラマライン林道合流点
13:20 不動滝入り口
13:20 不動滝
14:00 篭岩展望台
14:40 町道上山線から竜神川分岐へいたる枝道入り口
14:50 上山ハイキングコース竜神川分岐点
15:20 三葉峠
15:30 明山山頂
15:50 三葉峠
16:20 亀が淵
17:00 竜神ダム駐車場
過去天気図(気象庁) | 2016年05月の天気図 |
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アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
今回のハイキングのルートは大子町から出ている「男体山・湯沢峡ハイキングコース」の表示が詳しいです。国土地理院の地図には記載のないルートも図示してあります。あちこちでもらえるほかホームページからもダウンロード可能です。 大子町の関連ウェブサイト:http://www.town.daigo.ibaraki.jp/page/page000013.html 亀が淵ー三葉峠 亀が淵で渡渉がありますが、石が組まれていて、ゴアテックスでは濡れの心配はほとんどありませんでした。ストックがあるとよろけずに渡渉できる点が便利です。渡渉後の階段から暫く濡れていて滑りやすいので注意が必要です。また登山道が谷側に傾斜している箇所が何箇所かあり、滑落に気をつけなければなりません。ただし今回の全行程の中では比較的易しいルートです。標識もしっかりついています。 三葉峠ー篭岩山 まず三葉峠から1枚岩までは上り下りがそこそこ厳しく、固定ロープも張られております。しかし明るい好天時にはすがすがしい道が続きます。標識に出会ったら、正しい方向へ進んでいるかを確認してください。踏みあとだけをたどると違う方角、あるいはバリエーションルートに迷い込む恐れがあります。 篭岩山山頂の直前に切り立ったコルを2箇所越えます。いずれも固定ロープがあるので男体山の健脚コースの経験がある方ならそれほど恐れる必要はないと思います。 篭岩山ー大円地越 釜沢越方面の分岐点は杉の木に赤ペンキが塗られています。また竹ざおが立てられており、簡易な標識になっておりました。「男体山・湯沢ハイキングコース案内図」ではここは「標識なし」となっていますが大丈夫です。地図では分岐を右に曲がるように記述されていますが、実際には直進で、釜沢越方面は分岐を左に曲がります。磁石を見れば男体山方面は北、釜沢越方面は西です。この分岐点を過ぎると快適なハイキングコースが続きます。下草が無さ過ぎて、逆にどこを歩いて良いか迷うような場所もありますが、テープの印が多数ありますので、踏みあとが不明瞭なところは丁寧にたどって下さい。また暫くすると常陸太田市・大子町の境界に沿いますので、境界標も参考になります。大円地越までずっと尾根をたどります。途中小草越分岐は崩落のため通行止めとなっておりました。 大円地越ー男体山山頂(一般コース) 迷う場所はありません。左手は断崖なので不用意に近づき墜落しないよう用心するくらいでしょうか。 男体山山頂ー大円地 一般コースを戻る場合は大円地越から大円地までのがれた登山道で足をくじかないように気をつけましょう。健脚コースを下る場合、こちらを登りに使う登山者が多いので落石を起こさないように足の置き場に気をつけましょう。 古分屋敷ー釜沢越 まず古分屋敷から登山道に入るところの標識が無く迷います。舗装道路を山方面へ歩くと右が「この先行き止まり」の表示のある舗装道路。左側が民家の軒先のような分岐点があります。ここは左側、軒先側を歩くと奥に踏みあとが続いています。次に踏みあとが登り(右)と下り(左)に分かれます。ここは右側を選び、山の畑の角のような分岐に出ます。畑の角を右に曲がり畑に沿って歩くと、踏みあとが徐々に明瞭になり、登山道とわかります。フジイ越までは谷側に傾斜したやや危険な山道が続き、さらに途中崩落箇所の危険なトラバースがあります。固定ロープが張ってありますが、ロープを伝うのではなく、左手の岩壁の根元に安全な道があります。テープで誘導してます。ただしこちらを選んでも登山道に戻る前に何歩か砂地の滑りやすいトラバースがありますので慎重に通過してください。この区域の山道は傾斜がきつかったり、足許が砂地で滑りやすかったりと危険が少なからず潜んでいますが、男体山健脚コースなどに比べるとロープ、鎖はあまり設置されていない難所です。 フジイ越ー釜沢越 フジイ越までに比べると、尾根筋の登山道は快適ですが、ところどころ固定ロープ、鎖場があります。バリエーションルートが散見するので、テープ、標識を確認しながら正しいルートを見つけてください。 釜沢越ー佐中(奥久慈パノラマライン林道) ここはコルを右、谷側へ下ります。なお左へ曲がれば往路で通った篭岩山へ通じる登山道へ出るはずです。さて、佐中へ向けての下りですが、砂地で滑りやすく、急傾斜で、しかも巻き道が谷側に大きく傾斜しているという実に危ない登山道です。スピードを上げたいところですがここは慎重に行きたいところです。ストックを持っている場合にはうまく使いながら降りるとバランスが取れると思います。 佐中ー篭岩展望台 佐中から北冨田の不動滝入り口までは車道です。車に気をつけて下ります。不動滝入り口は道路の左手にはっきり標識があります。暫く川沿いを歩いて不動滝に到達し、滝の左を登はんして、滝の落ち口の後ろへ回ります。ここから湯沢川源流の沢がずっと続きます。まずいきなり沢をへつるところがあるのですが、へつらなくても右側の岩の上を高巻けるようにロープが固定されてました。このあと暫く巨岩がごろごろした沢をたどり、最終的にテープマークを丁寧にたどって右側の岩壁を登はんします。登り口は二つあるようで、早めに高巻くルートといくらか奥まで沢を歩いて、沢底から一気に上っていくルートがあるようです。ここから篭岩展望台までは急な鎖場の登はんが続きます。男体山の健脚コースよりも大変かもしれません。雨天のあとなどは足許が滑りやすいために特に注意が必要です。紅葉時期などがそれに当たります。 篭岩展望台ー三葉峠 篭岩展望台から三葉峠へ戻るには、展望台裏のあずまや裏を登り、往路の登山道に合流する方法と、展望台から上山の集落を通り、集落の途中からの登り口を三葉峠へ向かう方法があります。また、途中つつじヶ丘を通って西金駅へ下る道もあります。つつじヶ丘方面を目指す場合、町道の右手にあります標識を右に折れます。篭岩側からは標識の字が読めないのでお気をつけ下さい。筆者は三葉峠に戻ったのですが、戻り口が見つからず何度も行き来しました。ここは古分屋敷のときと同様に民家の脇を歩きます。田んぼのあぜ道みたいなところを進み、どん詰まりの民家のところでこれまた心細い左側の踏みあとをたどります。なお右側は民家を過ぎて薮めいたところに行き当たってしまいました。左側も道があるとは信じがたいのですが、丁寧に薄い踏みあとをたどると、杉林に入ったあたりから徐々に踏みあとが明瞭になります。往路の竜神川へ下る分岐、つまり十字路になっている箇所へ合流しました。ここからは亀が淵方面、つまり合流箇所で右に曲がります。少し踏みあとが見づらい場所がありますが赤テープが木の幹に巻いてありますのでそこをたどります。2,3回のアップダウンを繰り返して三葉峠です。明山に寄ってくるときはそのまま直進です。突き当たりに固定ロープのある直登コースがあります。右へ曲がると山頂への巻き道もありますが、こちらも山頂直下は結構な急斜面です。、 |
その他周辺情報 | 水場は竜神ダム駐車場に水道があります。また駐車場手前の食堂「竜亭(るちん)」前に飲み物の自販機があります。ここを過ぎると竜神峡沿いの沢の水、亀が淵の水があります。沢の水は天候によっては枯れているでしょう。特に後者は煮沸が必要でしょう。亀が淵を過ぎると基本的には男体山まで水場がありませんが、途中出会った方のお話では、釜沢越奥にきれいな沢があるとのことです。男体山を下山すればおそばやさんの大円地山荘、そして古分屋敷に飲み物の自動販売機があります。この自販機を過ぎると、不動滝まで水はありません。不動滝の水も一見きれいですが、上流は結構よどんで流れてきているので、夏場などは煮沸したほうが良いでしょう。というわけで、途中の水場は古分屋敷の自販機を除くとかなり厳しい状況です。水は多めに持ちましょう。 |
写真
装備
備考 | 水(2L、最後たりなくなり、竜神峡ハイキングコースの沢の水を飲みました) 行動食(アミノサプリ、あめ、粉末ジュース) 地図、磁石、雨具、手ぬぐい、ヘッドランプ(必需品) 手袋(手を付くので必需品。ゴム引きのタフレッドがお気に入りです) 虫除け(水のそばではもうアブがかなり出てました) 人によっては鼻炎の薬。筆者は鼻水が出っぱなしで苦しみました。スギ花粉は過ぎているはずですが。 |
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感想
とうとう決行することにした。筆者にとっての二つの大事な練習場所である、竜神峡ー篭岩山域と、奥久慈の盟主奥久慈男体山とをつなぐ周回コースを歩くのだ。復路には今回初めて歩く鷹取岩、入道岩といった憧れの岩峰も含まれている。遠足当日の小学生のように、3時にかけた目覚まし時計より1時間も早い2時に起床した。
竜神ダムの駐車場に車を置いて歩き始めたのが午前4時ちょうどだった。東の空はすでに薄明していた。4時半には外は明るくなるから、亀が淵に到着することにはヘッドランプも不要となるであろう。4時スタートを決心したことは正解だった。
前回ここへ来たのは真冬の1月。あの時もできれば男体山までと思ったが、篭岩山まで行って引き返したのだった。そのときに男体山へ行って帰るには12時間を見越しておかなければ自分の足では無理という結論になり、決行するなら日暮れの遅いこの時期になるべく早出をして、暑くなる前に少しでも距離を稼ぐのが良かろうと冬から考えていたのだ。10時には男体山山頂に着きたいと思いながら、歩きなれた亀が淵までの道をたどり、少しだけ滑落の危険のあるトラバースを含む谷間の道を歩いて三葉峠へ出た。
三葉峠から一枚岩までのハイキングコースはアップダウンの多い、主に尾根沿いの道が続くのだが、そこは里山、すぐ近くに人家がある。この水を張った田んぼに蛙が合唱している。そんなことを考えていたら杉の林を透かして青い屋根が視界に入った。しまった。蛙の合唱が耳に入ったのは里に近寄りすぎたからだった。いったいどこで枝道に入り込んだのか。それともこの道は正しいのか?何度も来ているからと経験を過信するのは危険であることを思い知りつつ引き返し、上山町道方面のエスケープルートを降りたことを確認し、正しい道を急いだ。
やがて少し周りの景色が開けた場所を通過した。冬のハイキングではここで明山北東尾根の三つのギャップをはっきり見ることができた。先回は後に雪になるほどの曇り空であった上に、デジカメを忘れてスマホの暗い写真しか取れなかったが、今回はデジカメで朝日を浴びる北東尾根の写真を撮影することができた。天気は良いが風が涼しい。早出のご利益を受けながら5時50分に一枚岩に到達した。帰りにはここを通らないつもりだから、ちょっと登っておこうと、南側の2mほどの垂直の壁をよじ登る。あまり上手ではないが、冬よりは少し動きがやわらかかったかもと自己満足しつつ。岩上で初夏の奥久慈の山々を鑑賞した。ここからは亀が淵山の鉛筆のキャップのような形が特に登はん欲を誘うのだ。初めて亀が淵山を発見し、登りたいと感じた場所だ。武生山も美しい山容を見せてくれる。どの山も新緑がみずみずしい。ここでお茶でもしたいところだが、先を急がなくては。
一枚岩を過ぎると尾根がちだった道からトラバース気味の道に様子が変わるのだ。南向きの斜面のトラバースは冬には陽だまりが枯葉に跳ね返ってぽかぽかと暖かく、筆者は陽だまりのトラバースなどと呼んでいる。まだ6時台で、直接光が差し込むには少し早いが、朝日を受けた木々の若葉が緑の光線を反射してくれる。足許を見ると見たことの無い青い花がふたつみつ咲いていて、急ぐ身ながらしゃがまずにいられなかった。
このトラバースを過ぎ、篭岩展望台への分岐点を過ぎると、尾根道をひとっとびして、前半の核心部分である二つのコルを通過した。垂直に近いところも通過するのである、三葉峠側からだと、下りが特に難しい。慎重に下降して思いのほか時間を食ってしまった。
二つ目のコルで杉の木に不思議なタブを発見した「石鎚国定公園指定60周年」とのことである。石鎚国定公園はどこにあるのだろう。ここはかつて石鎚国定公園だったのかな、などと不思議に思いつつ、二つ目のコルを登り返して、最初のチェックポイント篭岩山である。立ち木越しの奥久慈男体山が格好いい。(註:後日調べたところ、石鎚国定公園は愛媛県にあります。また指定60周年は2016年、すなわち今年です。おそらくどなたかの落し物なのでしょう)
北アルプスを歩ける体を作るため、竜神ダムから篭岩山まで来て竜神ダムへ引き返すのがひとつの基本トレーニングだった。今背負っている30Lのリュックで何回来ただろうか。このリュックはぼろぼろで重い荷物を詰めると底が抜けそうだ。すでに手放しているはずだったがまだ残してあったので、事実上の引退登山の花道をこの記念すべき周回コースで飾ろうと決めたのだった。今回の荷物は水2Lを含めて5kg程度と、2週間前の20kgの冬山装備と比べれば何も背負っていないようなものだ。歩きやすい。
篭岩山から男体山までは、大子町から出ている「男体山・湯沢峡ハイキングコース」にも詳しく表示されているが、地形図には記載されいないバリエーションルートであると考えていた。ハイカーは少ないだろうから道は荒れて薮がちになっていることを覚悟していた。3年位前、初めて篭岩の先まで下見したときも、冬だったが結構薮がちだったので、最初の分岐点(釜沢越方面分岐)までたどり着かずに引き返したのだ。
しかし、今回初めて歩く篭岩山ー男体山ルートは、竜神峡ー篭岩山ルートに比べて勝るとも劣らない快適なルートだった。低知名度であるはずのこのルートがこれほど快適であるとは思わなかった。
「ハイキングコース」に「標識なし」と記載されている釜沢越え分岐へ迷い込まないことが最大の注意点だと思っていた。実際には男体山方面への道は道なりにまっすぐで、「ハイキングコース」の記載のように右に直角には曲がらず、むしろ釜沢越方面へ入る分岐点を見落とさないことの注意が必要だ。そしてその心配も杉の木の根元近くの赤いペンキマークと、竹ざおの簡易標識のおかげで、見落とす心配もほとんどないだろう。
心配された薮こぎはほとんどないが、分岐点を過ぎていきなりうれしいヤマブキの群落の中を歩くことになった。一面の黄色というほど密に茂っているわけではないが、むしろ若葉とこの季節にふさわしいみずみずしいコントラストを作りながら20mほど続いていたのだ。
場所によっては、どこを歩いていいのか困るほど、下草がほとんど生えていない斜面を登ったり、枯れきった笹薮の中にくっきりと道が残ったり、巨岩がまばらに見え、真昼にはきっと明るくなるであろう谷を見下ろしたり。しかもこの谷はほとんどカエデではないか。紅葉の季節にはどんな景色が待っているのだろうと空想しながら尾根筋を歩いた。尾根筋をたどれば良いので、トラバースにつきものの危うさはないし、たまに薮で道が見えなくなっても尾根をたどること、赤テープが残っているので見落とさないことを心がければ迷うことは無いようだ。
このルートに沿って常陸太田市・大子町の境界が走っており、その境界の標石たどることもルートをはずさない助けになった。一つ一つの小ピークに標石があることを確認するのは楽しいが、途中一箇所不思議なものを見つけた。三角点である。この近所には地形図にも三角点の記述はない。廃止されたのだろうか、それともそもそも三角点ではないのか。標石には「三角・・・」と読み取れたと思うのであるが、謎である。
上り下りはそれなりにあるコースだが、道が快適すぎてそれほど苦にも感じず、次々と正面に現れる小ピークを乗り越えていくうち、左へ折れる枝道が見えてきた。しかしまだ小草越えではない。そして奥久慈の盟主男体山が、篭岩山山頂以来初めてその峨々たる山容を現わした。思わずおおと感嘆の声が出た。8時すぎ、風はまだまださわやかだ。今回のハイキングで初めて人とすれ違った。この枝道を目指していくトレイルランナーであった。
本当の小草越の通過はさらにその10分ほどあとだった。小草越からフジイ越え方面の道はトラロープと警告の掲示によって封鎖されていた。この先道の崩落があるらしい。先に見た枝道は、この廃道に代わるものだったのか。思えば釜沢越分岐の竹ざお標識以来標識が現れるのは初めてだ。ここからより人の気配のする山域ということであろう。折り返し地点の男体山山頂までもう人がんばりか。相変わらず心地よい尾根歩きで、時々足が自然に走り出すこともあった。
櫛が峰は思いのほか展望が利かないピークだったが、それでも見上げればすばらしい木漏れ日が疲れを癒してくれる。さて急ごう。このあたりはかつて大円地越から下見に来たルートになってくる。小岩峰を見ると登りたくなるのだが、ここは先を急ぐことにした。長いくだりの先に通り慣れた大円地越のベンチが見えたときには、早くもゴールしたような気分になった。8時50分。この調子なら9時過ぎに山頂に着くだろう、
一般コースのややきつい登り返しを急ぐと、正月にたどったやせ尾根が見え始め、程なくバリエーションルートと一般道への合流点を通過した。あと少しだ。夢中で歩いて9時10分に盟主奥久慈男体山の山頂に立った。祠に手を合わせ、ここまでの無事を感謝するとともに、復路の安全を祈願した。
下山はいつものように健脚コースをクライムダウンの練習として一歩一歩慎重に降りた。急斜面の鎖場が続くため、気は抜けない。こちらは登りの登山者が多いから落石を出さないようにしなければならない。ただ一枚岩のときと同様、今回の体の動きは少しだけやわらかかったような気がする。また登りの登山者もポツリポツリとすれ違うのでお互い通過しやすかった。当初懸念していた10名以上の団体とのすれ違いはなかった。大型連休後初めての週末だったから、山への人出も控えめだったということか。天気は最高だったからもったいないのだが。
安定した足取りで古分屋敷まで降りてきた。ただ一軒の自販機でスポーツドリンクを一本買い、のどを潤した。ここから初めての奥久慈巨岩めぐりが始った。岩稜好きの筆者がなぜか今まで一度も歩いたことがないのは、かつて歩いてみようとしてうまく道を見つけられずにあきらめたのだった。
今回もなかなか見つけることができなかった。まず舗装道路をどん詰まりまで歩いて、踏みあとが無くなり。民家の飼い犬に思い切り吠えられた。その次に舗装道路を左へ曲がり、民家の軒先を抜けたのだがそこでさらに分岐があった。下りがちの道を進むと赤テープがあり「大円地駐車場」のメモがあった。駐車場脇にあった沢のピンクテープはここへつながっているのかと納得しながら、前の分岐を畑へ出た。本当に道があるのかと心配になりながら畑の横の道を歩くと、だんだんと踏みあとが明瞭になって登山道であることを確信した。
古分屋敷からの登山道は道が谷側に傾いていて少しいやらしい。また岩場の急登があったりとしょっぱい。そしてフジイ越え合流の前の最大の難関、崩落箇所に達した。足許は砂地で谷側である右側へ傾斜している、そこに固定ロープが張られているが、ロープを頼りにしてもずり落ちてかなり危険な思いをしそうだ。左側は岩壁である。幸い、よく観察してみると岩壁の根元部分に人一人辛うじて通れるだけの踏み跡があった。ピンクテープも下がっていた。ロープには頼らずにこちらを歩いたが、最後に2,3歩ざれた急斜面に足を置くところがあって緊張した。通過して振り返ると、この崩落地点に沿って森の杉の木がすっかりなぎ倒されており、崩落のすさまじさを物語っていた。
崩落箇所を過ぎ、さらに鎖場の急登を登りきると、奇岩めぐりの尾根道に到達した。まずすぐそばにある460mの三角点を拝んでから釜沢越方面を目指した。先ほどの崩落箇所はおそらくこの三角点のあるピークの下であろう。
460m三角点、入道岩、鷹取岩はふもとから見るといずれも奇岩という名をほしいままにしているのだが、実際に尾根筋に出て特にその威容に圧倒されるのは、鷹取岩から見た入道岩である。絶壁の台座の上にひょろ長い尖塔が二つ重なり合っている。重なりの部分の凹角は尖塔の頭まで続いている。絶壁の台座にはいくつものクラックが走っており、弱点である可能性も高い。なんだか次の目標ができてしまったようで、恐ろしい。
三つの奇岩を過ぎると、岩稜がちな道も徐々にやさしいハイキングコースになり、いくつかのコルを通過して釜沢越へとつながっていた。コルを通過するたびに、谷を登っていく踏み跡があり、バリエーションルートがいくつもあることを予感させた。古分屋敷を出発点にすれば、長距離縦走をしなくてもバリエーションハイキングを楽しめる可能性がある。初めて名前を知った曽根越のコルでは湯沢源流というテープが巻いてあり、標識の裏に踏み跡がかすかに続いていた。
途中小ピークを見て登りたくなり、無駄なことで体力を消耗してしまったなとやや後悔したが、ピークで主図根の標石を発見して多少報われた気になった。これは地形図の466mの標だろうか。
そして釜沢越に到着した。尾根沿いの道はここまででおしまいである。無理やりに薮をこいで稜線を進むとがけっぷちに行き当たるのだろう。地図にルートが載っているところだけをたどろうというわけで、釜沢越を佐中へ下った。
この佐中へのくだりの前半は、杉林の中を急降下していくのだが、地面が砂地で滑りやすく、例によって道が谷側にえらく傾斜していた。ちょっと加速すると滑落しそうだ。本当はペースを上げたいところなのだが、我慢をしてゆっくりと降りていく。そろそろ残りの水も底を尽きてきた。疲れていると、下り坂をスピードをセーブしてしっかり歩くのはぶらぶらと傾斜に任せるよりもはるかに体力を消耗した。しかし、怪我をするわけにはいかない。安全第一だ。
何とか難所を過ぎハイキングコースらしい道に戻ったのはかなり下ってからだ。車の音が聞こえ、まもなく奥久慈パノラマラインへ合流することがうかがわれた。そのあたりで不動滝へ直結しているショートカットの標識があったが「道が荒れている」の指導もあり、今回はルートの線が引いてない道はなるべく歩かないようにしようというわけで、素直に佐中に出た。
佐中の合流点で入れ替わりで釜沢越へ登られるハイカーに、釜沢の奥にきれいな沢があることを伺った。次回以降のお楽しみだろう。とりあえず今日のルートを無事に歩ききるのだ。いや佐中から不動滝の入り口までは車道を走って降りたのだが、、、。
不動滝入り口は、湯沢川は干上がっていた。滝も無いのかと心配したが滝はいい感じで落ちていた。どうやら水流があまり多くないために、水は川底の石の下をしみこむようにして流れているようだ。
ここからはしばらく沢登りごっこである。まず滝の左の鎖場を登はんし、滝の落ち口の裏に出た。ここから巨岩がごろごろする沢を詰めていく。いきなり水溜りの横をへつる難所があった。始めてここを通った時には鎖か何かにつかまってひやひやだった。幸い今回は推量もあまり多くなく、へつりの箇所がくぼんでいる上に乾いていたので、水に滑り落ちる心配なく通過することができた。はじめてきたときには気づかなかった固定ロープ付きの高巻き道もあり、逃げ道はあるようだ。
逃れられなかったのはアブである。まだ5月だというのに文字通り五月蝿い。口にも目にも飛び込んで来そうになるのを振り払いながら歩いていった。
沢沿いにイワツメクサのような形の小さな花を発見した。筆者は里山登山ではスミレ、高山ではイワツメクサに惹かれる。思わず写真を撮影した。葉の形が違うし、高山植物のイワツメクサが湯沢川源流に咲くわけも無いので別物ではあるのだが。
さて、沢をひとつめすると、今度はぬかるみの中をテープを頼りにしながら、鎖場の急登を篭岩まで登り続ける。天気のあまり良くない紅葉の季節などは、沢底から篭岩までずっと滑りやすい鎖場が続く。場所によっては鎖の支点がぐらぐらなこともあり、男体山以上に恐ろしいのだ。春の晴天は秋に比べれば斜面の土は乾いていて快適だったが、それでも滑落しないように慎重に高度を稼いだ。おなじみのお不動さんに再会し、篭岩展望台を通過したときには安心した。
もうここまで来れば通いなれたコースと思ったのだが甘かった。往路のハイキングコースに入る道が見つからないのである。すんなりと戻れば20分くらいのところを50分もかけて行ったり来たりすることとなった。ここにはハイキングコース入り口の標識が無いので要注意だ。古分屋敷のときと同様に最後は民家の脇を抜け、畑の横を過ぎて道とは思えないようなところを歩いていくのだった。杉林に入って赤テープと明瞭な踏みあとを見たときにはほっとした。
ただし、往路に合流したのは、往路で自分が道間違えをした場所ではなく、そこからさらに暫く歩いた竜神側方面への分岐点につながる十字路であった。往路で間違えた道を上山町道へ下るとどの辺へ出ていたのか。宿題が残った。
合流すれば楽勝圏と思っていたが、ここはアップダウンが結構激しく、固定ロープも一部あって全然楽ではなかった。せっかくだから最後に明山の山頂に立つことに決めたが、直登コースを這うようにして、何とかピークを踏んだ。明山山頂3時半。今日は12時間コースといっていたけれども5時に着けばまだましという時刻になってしまった。
でも今日はここが最後の山頂だから周りを一渡り見ておこう。竜神大吊橋とこいのぼりが見える。武生山が見える。かっこいい亀ヶ淵山が見える。そしてはるかかなたに本日の折り返し地点となった奥久慈男体山が見える。さあ、確認したから下ろう。急斜面は滑り落ちないように気をつけ、がれ地では気を抜いて捻挫しないように足に入らない力を入れて、高度を下げていった。ここまで来れば、もう慢心さえ気をつければ、車まで戻ることができる。車に戻ったらまず飲み物を買って、牛乳が良いだろう、、、などと飲み食いのことばかり考えながら、怪我をすることも、故障することもなく、亀が淵まで下山した。
竜神峡を下ってすぐ、岩を滴る沢水を発見。ペットボトルに500mLほど汲んで、飲んでみた。うまい。水はほとんど底を突いていた。亀が淵から駐車場までの40分間は渇きとの戦いかと思っていたけれども、この水のおかげで生き返った。目標は5時に駐車場着というわけで、途中何度か走りながら、何とか5時を少し回ったところで駐車場に到着した。
とうとう、竜神峡と男体山をつなぐことに成功したのだ。
下山後2日でまだ疲労が抜けない。さぞ長距離をこなしたのだろうと思っていたら30kmどころか25km足らず。やはり奥久慈の山々は厳しい。厳しいけれども、新緑の朝のハイキングは、とてつもない贅沢だったと思う。
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