北岳バットレス
天候 | 2016/7/22(金)早朝:雨〜日中:曇り〜夕方以降:雨 2016/7/23(土)晴れのち曇り 2016/7/24(日)晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2016年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
タクシー 自家用車
●芦安〜広河原:乗合タクシー 1,200円/人 |
写真
感想
2016/7/21(木)
●前泊
第2駐車場で前泊。
どしゃぶりの為、諦め気分で朝7:00まで呑む。
天気予報では「終日曇り」となっていたが、8:30の段階で小雨だった為、誰からともなく二度寝を決めこむ。
9:30の段階で雨は上がっていたので、とりあえず広河原まで行ってみることに。
朝方、タクシーの運転手さんにテントの外から声をかけられる。
早くテントを撤収するよう言われているのかと思ったら、雨が上がったから出ないのか?とのこと。(乗合タクシーの人数調整の為らしい。)
ありがとうございます。
2016/7/22(金)
●広河原〜白根御池小屋
乗合タクシーで夜叉神峠を越えるとがらりと天気が変わり、晴れ間が見えるほど。
「広河原キャンプ場でテン泊して呑む」という案を却下し、白根御池小屋に向かうことにする。
寝不足+二日酔いで足が重いが、2時間半程で小屋に到着。
曇天のためか他にテントはなく、大先輩の狙っていた小屋近くの1番良い場所に幕営出来た。
●アプローチの偵察
・白根御池小屋〜大樺沢二俣(25分):平坦な登山道。お花が綺麗。二俣にはトイレ(3基)あり。
・大樺沢二俣〜ヒドンガリー出合(15分):二俣には看板あり。沢沿いのガレを登る。ヒドンガリーは水はなし。
・ヒドンガリー〜b沢・c沢・d沢出合(30分程とのこと)
看板があったにも係らず二俣で間違えて肩の小屋方面に登ってしまい40分程ロス。ガスっていると周囲が見えず、「沢から離れていっている?!」「右から支沢が入る地形じゃないかも?」ということで間違いに気付いた次第。本番じゃなくて良かったです。
ヒドンガリーの少し先で体調不良に陥り、偵察を他3名に任せ、沢沿いを登る3名が見える位置で待つ。
偵察時、Oちゃんの「バットレスに行きたい」気持ちが十二分に伝わり、明日は頑張ろうと思う。
夜はhrkちゃん特製のキムチ鍋(キムチが入っていなくてもキムチ鍋)。野菜&お肉たっぷり。「ぎばさ」という海藻の付け合せがめちゃくちゃ美味しかった♪
予報では、夜半〜朝方に霧から晴れに変わるとのこと。
「雨が上がればすぐに乾く」という先輩の言葉を信じて就寝。
2016/7/23(土)
●アプローチ
まさかの晴天。予定を1時間遅らせ、5時出発。
「休日には行列が常」だというのに、この日の登攀組は途中まで自分たちだけという贅沢な登攀となった。
・b沢出合から入る。b沢とc沢との間の尾根に乗りたかったが藪で難しそうだったため(Oちゃん偵察ありがとう)、そのままb沢をつめる。
・目前にピラミッドフェースが見えるあたりでc沢を渡り、c沢とd沢の間の尾根に上がる。c沢上部は水はないがガレガレで渡るのに苦労する。また、ここは落石危険地帯とのことで、無言で急いで渡る。そして上がった尾根には・・・しっかりした踏み跡があった。ありゃ。
●下部岩壁(第五尾根主稜)
ピラミッドフェースの下(基部)で休憩&登攀装備を整える。
そこから左奥へ数mトラバースした先に支点があり、そこが取付となるが、トラバースは少し悪い。
支点はハーケン1枚とリング1本。リングボルトはぐらぐらだったので気休め程度に打っておく。2人が立てるくらいの広さ。
今回は、shimog−yachimayu、hrk−dskで登る。
先行はshimogペア(shimogリード)で、hrkペアはつるべで後続登攀。
今回オールフォローである自身の目標は、フリーで正確にリードの跡を追い、登攀すること。
1P目
9:00 登攀開始。
真上の垂壁をそのまま登っていこうとする先輩にルートを変えてもらい、支点の右側からリッジに乗ってもらう。そのほうが簡単だった。
2P目
河原のようなガレ場を奥のルンゼに向かって歩く。(「絶対ロープ足りない」と見て分かる)
遠方に見えるルンゼの2/3くらいでロープが足りなくなる。ここの同時登攀は出だしが歩きなので全く問題なし。
いつの間にか先輩はルンゼを登りきっていた。
ルンゼ出口は大小の石が山積しており、ロープで落石を起こす可能性大。ロープを石にひっかけないようにして登る。登った先は開けた河原のよう。
3P目(横断バンド)
河原のようなガレ場を横切り、横断バンドを右手奥に歩いていく。緩いトラバースのためロープの出し方に少し戸惑う。見えなくなった先くらいでピッチを切る。
4P目(横断バンド〜cガリー)
横断バンド後半はブッシュ帯を超えてc沢に出る。ブッシュにロープが取られるため、このピッチはコンテで行く。
c沢には所々、ペンキ跡(「尾根→」など)あり。ガレガレで崩れて落石しかねない状態。神経をすり減らしながら登る。
コンテなのにどんどんおいていかれる(泣)。
5P目(ヒドンスラブ)
c沢をつめると左手に赤い岩のスラブが表れる。取り付きには赤いペンキで「4」の文字あり。
1mくらいのところに小学校の机天板並の岩があり、触れただけで落ちてきた。どうしようもなかったので、その岩は落とすことに。
スラブ自体は難しくなかったのだが、ここで落石を起こし、後続パーティーの2人を直撃するところだった。ほんとにごめんなさいっ!!何もなくて本当に良かった。
●四尾根主稜
ヒドンスラブの先が四尾根取付。少し広いテラスのようになっている。
10:50 四尾根登攀開始。
※注:「日本の岩場(上)」では、5ピッチ→懸垂→3ピッチ となっているが、今回は3ピッチ→懸垂→2ピッチで登攀しました。
1P目(つるりとしたクラック(V−)〜緩斜帯)
出だしのクラックの1手目、2手目が悪く(フィストより微妙に広く、クラック外の右手があと数cm届かない)、離陸に難儀する。
しょっぱなからA0。その先のリッジは簡単。
2P目(フェース〜クラック手前)
とくに難しくないが、先輩はロープをいっぱいいっぱいまで伸ばす。
頭に叩き込んできたトポの距離と、出ていくロープの長さが合わず「ロープいっぱいです」のコールをしながら、少し戸惑う。
3P目(クラック〜マッチ箱の頭)
(後日修正:白い岩のクラックではなかったようです)
目の前の岩の左のクラックにはハーケンが連打されており、ランナーも左にとってある。
上の方のハーケンでランナーをとってあったので、華麗にA0し、クラックを抜けた後右に回りこむ。
後続のhrkちゃんと「これ・・・卦蕕犬磴覆い茲諭ここ・・・3P目だよね???」と話す。
先輩から「懸垂支点着いたよー」の声。
「な、なぜ?まだ3P目だよね???」「きっとピラミッドフェースの頭だよね?」
しかし、到達した支点の先に岩場はなく、間違いなく懸垂支点だった。ありゃ?
懸垂下降
マッチ箱の頭には2箇所懸垂支点あり。手前はリングボルトの為、奥のハーケン4枚の支点を使う。
20mのため、ロープ1本で懸垂下降。
リッジ沿いではなく、左壁面に沿うようにして下降する。赤い岩の小さなバンド。3人程立てる。
4P目
赤い岩のフェースで右にクラックが走る。
「リードする?」と聞いておきながら、絶対ワタシが「する」と言わないと思ってか、後続パーティの懸垂を待たずに登りだす先輩。
この先は検↓掘↓検棔奮某粥砲3ピッチで次は卦蕕里呂此
「次のピッチ、リードします!って言ってやる」と思いながらビレイしていると、なぜかロープがいっぱいになり、「ここ、テンションかけずに登ってこれるか?」の声。
「えーと・・・なぜここで・・・しかも壁面で・・・同時登攀になるんだ?!」と2秒程固まった後、「登れますっ!」と答えた。
(さっきまでの3ピッチ登攀で順応した。。。)
少し嫌らしいフェースをフリーで7〜8mほど登り、小さなテラスで「セルフ取りました」と叫ぶ。
すると「いいから、登ってー」とのこと。
フェースの先はそう難しくないリッジ(ガスがなかったら景色が見えて綺麗もしくは高度感抜群だったかも)で、その先の岩の割れ目で先輩がビレイしていた。
足元に白い枯れ木。
「ここ枯れ木のテラスだから。ほら、先(崩壊箇所)ないだろ」とのこと。
えーーーーーーーっ。2Pのところ1Pできちゃいましたか。
まてまてまてまて。この先は核心の城砦ハングじゃないですか。
先ほどの悪態を飲み込み、急いで頭を切り替える。
5P目
城砦ハングを超えた先輩から「スリング沢山付けといたから、面白いと思うよ。登ってー」とのコール。
出だし数mはリッジをトラバースし、城砦ハングの下に取り付く。
ジャンダルムの馬の背より細いリッジに両手をかけ、谷側にぶら下がるようにしてトラバースするが、今にも折れそうで体重なんかかけられない。
また、40〜50cmの切れ間があり、ガスっていなかったら、すごい光景が見れただろうなぁと思う。
リッジの先の2mほどのバンドの先が城砦ハング。
確かにかぶっているけれど、リードやれって言われたら泣きそうだけれど、半年前の自分だったら無理だろうけど。
くぼんだ奥壁に足を決め、身体をあげ・・・あれれ?
ヌンチャク1本回収し忘れ、身体が上がらない失態。
嫌な体勢だったので、自分側のカラビナを外し、身体を上げ体勢を整える。
むー。どうしよう。
後続のOちゃんに回収してもらおっかなぁと思っていたが、ジム仲間の「残置は恥」という言葉を思い出す。
まだ体を上げた分のロープは引かれていないので、左手にぶら下がり、足を決め、2歩戻りヌンチャクを回収できた。ほっ。
ハングを超えた先の潅木で、先輩がビレイをしていた。
ここで登攀は終了。
安全な場所で装備を解除。
さくっとハングをリードしてくるOちゃんと、時間をあけずにフォローで到着したhrkちゃんにさすがだなと思う。
●終了点〜山頂
城砦ハングから数分で4テンが張れそうなスペースあり。そこが本当の登攀終了点とのこと。支点もある。
本来なら右手に山頂が見えるらしいのだが、本日は深い霧の中。
ただ、稜線まで10分程の急斜面は一面お花畑で、丸々した雷鳥がぽてっと飛んでいたりする。
バットレスを登った者だけの特権だな・・・などと嬉しくなるが、さすがにヘトヘト。
力の有り余っている先輩に着いていくことが出来ない情けなさ。。。
稜線からはなだらかな登山道に合流し、10分程で山頂に到着。
がっちり交わした握手に涙が出そうになったことは内緒です。
●山頂〜白根御池小屋、乾杯
一般登山道を2時間程で小屋に到着。
さすが週末。テントが増えていた。
先輩曰く「登ったバットレスを見ながら乾杯するのが最高!」らしいですが、あいにくの曇天。
でも、たとえバットレスは見えなくても乾杯して呑んだ生ビールは格別に美味しかったのでした。
2016/7/24(日)
●下山(白根御池小屋〜広河原)
本日は下山のみなので、朝ゆっくり過ごす。
快晴の中樹林帯を下り、2時間程で広河原到着。
乗合タクシーは9名揃ったら時間に関係なく出発してくれる為、思いのほか早く芦安に戻ることが出来ました。
今回は終始、周りに助けてもらった山行でした。
本当にありがとうございました!
<感想など、いろいろと>
山行数日前のジムで、先輩に「同時登攀は大丈夫?」と聞かれる。
「なぜに、今回、同時登攀?(トポでは40m以上のピッチはないはず)」と、咄嗟に何を言われているか理解できなかった。
また、同時登攀=コンテは、「緩斜帯を一緒歩く」イメージしかなく、正直なところ壁面での同時登攀が分からなかった。
「こんな直前に言わないでくださいっ!」と半ばキレそうになるが、谷川南稜で50mロープでは足りなかったことを思い出し、正直に分からないことを伝え、壁面での同時登攀の原理とやり方を教わる。
ワタシ「あと10mです」「あと5mです」「ロープいっぱいですっ!」
先輩「登ってきてー」というやり取りが何度あっただろう。
頭に叩き込んできたトポどおりのピッチで切っていないことは明らかで最初は戸惑うも、
「トポばかり見て、ピンを追ってるだけで、自分たちは岩、登ってないんだよ」
と、L学S講師、K講師に言われたことを思い出す。
覚えているトポどおりでないなら、次がどういうルートかルート全体から割り出せばいい。
割り出せないなら、目の前にある岩を見て、登れるルートを見つけ出せばいい。
そう思えた時、登ることが楽しくなり、体が軽くなりました。
現に、最初2ピッチ目・3ピッチ目だと思っていたところは、実際は5ピッチ目でした。
「これ、卦蕕犬磴覆い茲諭廚噺世い覆ら、ボルダーチックに目の前の垂壁を越えました。
晴れ間から見えた稜線に「もうけっこう高いよね?ここ3ピッチ目じゃないよね」と思うことができました。
なんとな〜く(笑)先輩の今までを知っていて、
また、同じことをL学で教わってきたhrkちゃんと一緒だったからこそ、
「トポと違うっ!ムキーッ!」とはならずに、「じゃあ次どこだろ?どうしよっか?」でいけたのかなと思います。
また、Oちゃんが普通に「ってことは次、最終ピッチっすね。こっそりhrkさんにリードさせよっかな(笑)」と言ってこの状況を受け入れているのも、なんだか安心できた一因でした。
まだまだ「アルパインを分かっていない」「覚悟がない」と言われています。
やはり全ての行動が「遅い」との言葉をもらいました。
でも、ゲレンデでは知ることがなかった「何か」を垣間見れた・・・少〜しだけですがそんな気がしたバットレスでした。
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