記録ID: 106586
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積雪期ピークハント/縦走
槍・穂高・乗鞍
橡洞(境峠より往復)[本州横断シリーズ]
2011年02月20日(日) [日帰り]


- GPS
- 09:20
- 距離
- 11.0km
- 登り
- 744m
- 下り
- 732m
コースタイム
境峠6:40-7:40標高1610m地点7:50-8:50標高1785m平地9:00-10:15三村界10:35-11:50標高点・1896地点12:05-12:50橡洞13:10-14:10標高点・1851地点14:20-15:00三村界15:10-17:30境峠
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2011年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
・松本ICで下り上高地方面へ進み、奈川渡から寄合渡を経由して、境峠に朝4:30に到着。2月に来たときより峠周辺に雪はなかった。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
本州横断の山旅は昨年の5月連休に快適な雪面を求めて野麦峠〜鎌ヶ峰と繋げてきたが、月夜沢峠周辺は高度が下がって雪が消え、笹ヤブの通行困難な尾根筋となったため峠からの縦走を断念した。 今年2月にはアクセスの容易な境峠より試登しその情報を下に今回、境峠より橡洞を往復した。天気は快晴であり、木の間ごしに素晴らしい穂高連峰の展望が望めた。 山行にあたってはこの尾根とどう取り組むかにつきH2O氏と議論してきた。できれば、月夜沢峠〜橡洞〜境峠を一気に縦走したかったが1〜2月は雪が深くまた一泊では荷物が重くなるので、月夜沢峠〜橡洞/境峠〜橡洞と2分割して踏破することとした。H2O氏が足の指が霜焼けになったとかでなかなか実行できないでいたが、2月20日に実現した。 4:30境峠着。峠道は除雪がされている。クルマを停めて1時間ほど仮眠。マイナス5度。晴れているが風もなくそれほどの寒さを感じない。 6:40境峠発。峠の長野県側の小沢状から登り始める。試登時よりも一段と雪が積もっている。雪はよく締まっていてスノーシューが快適。沢状から小尾根に乗る。これこそが分水嶺だ! 分水嶺というだけでこんなヤブ尾根でも孤高の価値がある。小尾根を登りきると90度に横行する顕著な尾根に登りつき左折する。先日の試登時のトレースが残っていてそれだけでも安心度が高まる。なるべくトレースをたどり体力の消耗を防ぐように歩く。さらに標高差で50mほど樹林帯を西に進むと1550m圏の南北に走る尾根に乗るので左折する。やがて1560m小ピーク。先日はここまで来るのさえ大変だった。1560m小ピークから南に尾根が続き目の前には小さな高まりも見えるが、ほんの10mほどで主尾根は90度右折し高まりへと続いているため右折する。この右折点(ジャンクション)にはカスミ網の跡と思われる棒が立っている。目の前に続く小尾根にもカスミ網の棒が立っている。ちなみにこの小尾根はその高まりを起こしたあと、南面の枯尾沢の支沢に消える。右折したあとももう一本、カスミ網の棒がたっており、棒には何個も円形の金属リングがついており、金属リングの先には紐を介して木製の札がついている。どうやって使うんだろう? 7:40着1610m地点の小ピークで休憩。気温マイナス3度。いやぁいいなぁ!!! 未知の稜線!・・・太陽!・・・・快晴! しかし地図を見ると愕然!わずかしか来ていない。これじゃ、とても橡洞まで今日中に行ってこれそうにない。今回もダメか・・・。でも行けるところまで行くしかない。 7:50発。小ピークをわずかに下り、登りにかかる。やはりスノーシューは有効だ。ツボ足ではここまでもなかなか来れないだろう。1660m地点で一部ヤブが濃いが、十分に回避できる。尾根のヤブの薄そうなところを選んで登るが、東西に走る尾根は、南面が表面が堅いのに対し、北面はすぐに潜ってしまう。なるべく南面を選択して登る。1710m地点は、先回試登した最終地点。ここでコーヒーを飲んで帰ったのだった。いよいよ未知の稜線である。1740m地点で、北側に穂高の真っ白な稜線が見えて二人で喚声を上げる。素晴らしい!! 1790mで、北に三角点△1779mピークを乗せる尾根に乗る。 8:50着 その直前の1785m平地で休憩。やはり今日の登頂は苦しいだろうか。このあと、能率が捗らなければ相当厳しそうだ。 9:00発。南望して尖った山が見えるがあれは甲斐駒だろうと二人で話す。風の音がする。なんとかスノーシューが機能してくれているがそれでもテントを担いでいたら結構大変だろうなーと思う。1790m圏内ピークは東側を巻き、1800mの樹林のピークとの鞍部を雪の被った倒木を乗り越え、ササが少しだけ顔を出した所を過ぎると雪が締まってきて、雪面がコチコチになってきた。スノーシューならほんの少ししか沈まないし、その分、サクサク行ける。このとき今日はもしかしたら行けるかも知れないと思った。中央アルプス、南アルプス、八ヶ岳、北アルプス・・・こんなヤブ尾根でもここは日本アルプスが望める素晴らしいへそだ。 10:15着・1825の南面も巻いて緩やかに登り三村境(1870m圏内)に到着した。大木の散在する展望のないピークである。 10:35発。ここからは、平坦で大きな登りがない分、コンパスでしっかり方向を定めていかねばならない。三村境ピークのすぐ南西にあるコブを確認しつつ北端をかすめ、1850m等高線が示す西にわずかに突き出た小尾根も確かめながら・1851への西北西への主尾根へと進む。それにしても素晴らしい尾根だ。いたるところに雪のオブジェがある。・1851の北面をトラバースするようにして進む。このあたりは一旦尾根は北に向かうが、再び屈曲して北西に向かうようになる。なるべくエネルギーの消耗を避けるため小ピークは巻いて進む。ところどころにケモノの足跡がある。北西に向かうようになると広い尾根なので、北面の急崖沿いに進み尾根を確実に掴んでいく。コブを越え、北面の急崖から食い込んだ沢筋を高度を下げないようにしながら迂回し、さらに2つの小コブ(2つ目のコブは1850m圏内)を乗り越える。 11:50・1896着。平坦でかつ雪が締まっていたのでかなり進むことができた。 12:05・1896発。そこから50mを登り1950m圏内の小ピークに登る。苦しい登りをしのぎ、橡洞のひとつ手前の1990m圏内のピーク到着。左前方にさらに小高い丘があり、それが橡洞。しばし歩いて高まりが迫ってきた。先行していたH2O氏が待っていてくれる。そして「どうぞ、橡洞です、お先にどうぞ」 一歩、また一歩、そして一歩。そしてこれ以上高いところのないその雪面を踏んだ。やがてH2O氏も。 12:50 いま、橡洞の頂上にいる。H2O氏が抹茶オーレを飲ましてくれる。サイコー! そうだ!と愚妻に携帯で電話をしてみる。電話が通じたので登頂を連絡する。「あぁ、それは良かったね」の一言。がくっ! 山の喜び・・・それは登頂したものが手に入れるものであり、贈り物にはできないのだ。それにしても便利な世の中になったものだ。それだけ山の隔絶性は失われた。いつの世も便利は便利だけを持ってくるわけではないのだろう。便利は何かの代償を要求する。里から遠く離れ文明の利器が手の届かない所だからこそある趣き、喧騒の街では味わえない生きている感覚。人が持つ野性性の再確認、こんなものが携帯電話の普及でなくなってしまった気がする。 静寂の中に遠くヒコーキの音。少年のころに戻ったような懐かしい気分になった。H2O氏にみかんをもらう。中身をペロリと頂き、皮をポイと投げたら頂の白い雪のキャンバスにきれいな橙色の点を落とした。「だめですよ、自然を汚しては・・・」の声に慌てて橙を拾う。また白いキャンバスに戻った。しかし我々の足あとは、確かにこの白いキャンバスに記された。 13:10 橡洞頂上発。タイムリミットだ。 14:10 ・1851ピーク着。暖かい。 14:20 ・1851ピーク発。 15:00 三村境着。そろそろ寒くなってきた。途中で転んではまった。2本の足を抜いて斜面の下に持ってきて溜息をついてから立ち上がった。スノーシューは登りはいいが、下りは足首が曲がらずなかなか大変な履き物だなーと思った。長い下りだった。ほとほと嫌になった。まだかよーと思っているうちにやっと境峠の林道が見えた。 17:30 境峠着。お疲れさんでした! 寒々とした境峠をあとにして、権兵衛トンネルを越え、伊那市で日帰り温泉に浸つかった。芯から冷えた体が温まって来るのがよくわかった。そしてH2O氏とノンアルコールビールで乾杯。さやかな打ち上げであった。 |
写真
撮影機器:
感想
・この地域は3月下旬から4月上旬がベストシーズンと思われる。
・万古斧鉞入らぬ自然境。ほとんど人が通ることはない。文中にあるように鳥の捕獲のためのカスミ網の残骸と頂上の木の枝にかかった先のないストックだけが人の臭いのするものである。
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