高妻山☆月明かりのテン泊山行(一日目)
- GPS
- 12:09
- 距離
- 15.5km
- 登り
- 1,496m
- 下り
- 1,489m
コースタイム
- 山行
- 3:35
- 休憩
- 0:03
- 合計
- 3:38
天候 | 初日、二日目共に晴天 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
大洞沢のコースは滑滝から上部ではコースが不明瞭であった。踏み抜きも多数。下山の場合には要注意。 |
その他周辺情報 | 戸隠キャンプ場で手打ちそばの店あり(感想参照) 戸隠神社の近くで日帰り温泉「神告げ温泉」 |
写真
感想
頸城山塊における百名山の一つであるが、山の高さと雪の深さ故にこの時期でも豊富な残雪が期待できる山である。そして、この時期、山麓の戸隠では多くの花々と共に水芭蕉が咲くという。水芭蕉は私は北海道の雨竜沼湿原以来。家内は初めてとあって、非常に楽しみだ。
京都で朝のうちに用事があったため、京都発を10時過ぎの新幹線に乗って長野に着いたのは14時前であった。長野駅で酒、食料を手に入れてレンタカーに乗り込んだのは既に15時近く。コンビニで翌日の行動食を手に入れようと思っていたが、長野市街を出てしまうと何とコンビニはおろか食料品店の類は一切ない。戸隠神社の近くでようやく雑貨屋さんのような食料品店を見つけて、しめじに新玉ねぎ、サンドイッチを調達することが出来た。これで明日の行動食と今晩の食事がなんとかなるだろう。
戸隠のキャンプ場近くになると、道のすぐ脇にも多くの水芭蕉がみられる。昨年の雨竜沼湿原でお目にかかって以来の水芭蕉。車を停めて花を鑑賞したい欲望に駆られるが、そこは気持ちをぐっと押さえて先を急ぐ。ようやう戸隠キャンプ場の登山者用駐車場に辿りつき、仕度を整えて出発したのは既に16時半近くになっていた。
連休の初日、オープンしたばかりの戸隠キャンプ場は大賑わいだ。戸隠、黒姫、飯綱と名山に囲まれ、テントサイトも広大だ。キャンプ場としての人気度の高さが頷ける。大型のファミリー・テントに混じって、モンベルの一人用のステラリッジが目に入る。明日、高妻山でお会いすることになるのであろう。テントの主と挨拶を交わす。キャンプ場の奥では桜の大樹が花を付けている。近づいてみるとまだ5分咲きというところか、多くの花がまだ蕾の状態だ。
キャンプ場を過ぎて牧場に差し掛かるころになると無数のキクザキイチゲが咲いているのだが、悉く花が下を向いている。カタクリの花も花弁を閉じているようだ。気温の日較差が大きい季節だ。既に空気がヒンヤリとしている。夕方になって気温が下がったため、花を閉じてしまったのだろう。明日になって花々が開くのを期待することにしよう。牧場からは高妻山は見えないが、弥勒尾根の先に五地蔵山の肩に陽が傾いていく。夕方で逆光のためだろうか、山容がとても大きく見える。ヤマエンゴサクの群落やニリンソウが夕日を浴びて幻想的な色合いを見せる。
牧場をトラバースする林道に入ると間もなく大洞沢を渡ることになるのだが、雪解けで水量が増しているのだろう。なんと道が完全に水没しているではないか。見渡すか限り、渡れそうなところが見当たらない。林道は水面の下は完全に舗装されているようだ。靴を脱いで裸足で川を渡ることに。足を水につけると身を切るような冷たさであるのは云うまでもない。沢幅が狭いからなんとか耐えることが出来たものの、広かったら非常に辛かったであろう。
牧場のトラバースが終わるといよいよ弥勒尾根に取り付く。ブナや白樺の大木に目につく。足元には多数のイワカガミの葉が目立つ。ところどころに蕾が散見するが、開花はもう少し先のことだろう。東から飯縄山の上に満月がゆっくりと昇ってゆく。まもなくこの月にはお世話になることになる。やがて日が暮れて辺りは暗くなる。眼下の戸隠のテントサイトの明かりが星団のように光を放っている。
尾根を上がるにつれて樹林が低くなり、見晴らしのよい尾根となる。背後の満月が煌々と登山道を照らしてくれるので、ヘッデンのライトはほとんど不要である。鎖場にさしかかると、足元の雪が崩れ、露出した笹はツルツルして到底、登れない。これは困ったと途方にくれかけたが、左手の雪の斜面にステップを刻みこみ足場を作りながら何とか登攀する。
20時頃になってようやく五地蔵山に辿り着く。戸隠山からのルートとの合流点には小さな祠がある。山の東面の雪の上はテントを張るには狭い。祠の反対側の樹林の間に二人用のテントを張れる小さなスペースを見つけることが出来たので、テントを設営。まずはビールで乾杯だ。この日の夜のメニューは長野駅で購入したおやき、きゅうりとスモークチキンのくるみ味噌和え、最後は鹿肉としめじ、新玉ねぎのジンギスカンである。食事が終わると私も家内も意識を失うようにして眠りについた。
翌朝は目が醒めると、月の明かりでテントの外が明るい。テントを出発したのは3時40分頃。既に空は青く、静かに夜明けを待っている。五地蔵山からは中妻山にかけて緩やかなアップダウンがあるものの道は歩きやすい。左手には戸隠、その向こうには北アルプス連峰、そして何よりも迫力があるのはすぐ右手の妙高、火打、焼岳の連山だ。絶景の展望尾根を進んでいく。
高妻山へ登りに差し掛かる頃、黒姫山の山の上がほんのりと紅く染まり、やがて真っ赤な太陽がゆっくりと昇り始めた。何度みても感動的な光景だ。この瞬間を経験するためにテン泊の重装備を担いで登るわけだが、その代償が報われるわずかな瞬間といえよう。大気中の水分が多く、霞んでいるためだろうか、この日はモルゲンロートというほどに山々が紅く染まる光景はみられない。やがて光が白く輝きを増すといよいよ一日が始まり、我々も山頂への最後の急登にとりかかることになる。
覚悟はしていたが、急斜面の雪の状態が心配だ。一度滑落すると、二度目がない可能性が高いだろう。緊張の時間がどれほど経過したことだろう。いつしか斜面が緩やかになると、なだらかな岩場を過ぎ、遂に山頂にたつ。山頂の向こうには乙妻山、そしてその彼方に雨飾山が魅力的な姿を見せる。雨飾山は少年時代の想い出の山で、是が非でももう一度登りたい百名山の一つだ。可能ならば乙妻山を往復してみようかと足を踏み出したものの、何故この山へのルートが破線になっているかすぐに理解した。高妻山山頂の北西の大きなキレットがきわめて難易度が高いからだ。岩場の急降下であり、しかもナイフリッジだ。無積雪期であったとしてもザイルが必要かもしれない。
諦めて往路を引き返す。高妻山の急斜面は数百メートルの短い距離だが、登りよりも緊張するところだ。無事、下り終えると五地蔵山まで楽しい尾根道だ。露出した夏道登山道に入ると早朝は薄暗がりのせいで気が付かなかったがイワカガミの葉の間にイワナシの花がチラホラと。赤紫色のショウジョウバカマも咲いている。そして嬉しかったのは姫一華(ヒメイチゲ)。イチリンソウやニリンソウに似ているが明らかに葉の形が違う。初めて遭遇したが、雪解け後の高山ならではのスプリング・エフェメラルだ。
五地蔵山のテントの手前で若いご夫婦と擦れ違う。奥様は颯爽と歩いて来られるが、かなりの美人だ。大洞沢から登ってこられたらしい。五地蔵山のテントに帰り着くと今度は若い男性二人が休息されておられた。我々と同じ弥勒尾根を辿ってこられたらしいが、昨夜、苦労した鎖場はやはり難儀されたとのことであった。テントを畳んでいると今度は若いソロの女性がやはり大洞沢の方から登ってこられ、「昨夜はお泊まりだったんですか?」と爽やかな声。この山は美人が多いのかもしれない。
それでは我々も帰路は大洞沢にと、戸隠方面への縦走路に入る。一不動避難小屋までは左手に飯縄山方面の好展望を望みながらの尾根歩きだ。避難小屋から沢におりようとすると、雪の上にトレースがあるにはあるのだが、つい先刻に人が歩いてきたものとは思えない。そのうち所々に赤テープは見えたのでトレースを辿っておりるが、急斜面が連続する。雪渓が溶けて清水が流れ出しているところで水を汲む。氷清水と呼ばれる箇所らしい。
赤テープを目指して下降していくと斜面の先が切れ落ちている。不動滝であった。鎖を伝って滝の右岸を下降すると、今度は斜面につけられた鎖場を辿ってトラバースする。家内はこのような鎖場にはまだ慣れていないので、緊張したことだろう。家内はこの時に岩に足を打ち付けたらしく、大きな青痣が出来てしまっていた。トラバースした先から再びトレースが全く見当たらない。この鎖場を渡ったのは間違いだったのかもしれない。
トレースのない斜面を下り、露出した地面のある樹の根元で、しばらく前から外していたアイゼンを再び装着してリュックを背負うと、なんとその勢いでリュックに括り付けていたシュラフが外れ、本来の登山道ではない隣の谷を転がり落ちていたったらしい。らしいというのは転落する瞬間は家内しか目撃していないので。今晩もテン泊での山行予定をしていたのだが、これで万事休すか。そこの谷のところにシュラフが引っかかっている・・・と家内が云うのだが、私には木の茂みにしかみえない。もしやという万が一の期待を込めて降りてみるが、やはり茂みでしかない。谷の雪渓の上には大きな雪解けによる大きな空隙が空いており、どうやらそこにシュラフは落ちてしまったのだろう。勿論、そこに私が降りていくことは考えられない。次の山行を諦めることになるかもと暗澹たる気分になる。とりあえずここから登山路にリカバリーしなければならない。足元の雪の下では轟々と沢が流れてる音が聞こえるではないか。ここで足を踏み抜いたらと思うと、緊張はさらに増す。なんとか沢を離脱すると、本来のコースを目指し、再び雪の急斜面をトラバースする・・・緊張を強いられる難しい急斜面が続く。
ようやく本来の登山路があると思われる沢に戻ると、下に鎖場のついた滝がみえる。滑滝のようだ。ここまでかなりの時間を要したように思う。鎖をつたって滝の左岸を降りると、向こうから学生さんらしき3人組と出遭う。「この先はどうですか?」と聴かれる。時間は既に10時を過ぎている。「私達はトレースの薄いところを歩いてきてしまったのでかなり難儀しました」「そうですよね。ここまでもトレースがほとんど無かったように思います」・・・とのこと。「さすがに頂上までの日帰りの往復は困難ではないでしょうか」「滝を越えてから皆で相談します。」・・・どうなったことだろうかと心配だ。
ここからは道はようやく緩くなり、多くの倒木で道は荒れてはいるものの、コースも明瞭でトレースを迷うことはない。今度はトレラン・ルックの若い二人。「この先はどうですか」と聞かれる。「少なくともそのシューズでは残念ながら無理でしょう、それからアイゼンも必要だと思います」「このルートは初心者向けのコースってガイドブックに書いてあったんですが・・・」「弥勒尾根のことかもしれませんね〜」(何かの間違いでは・・・本当だとしたらとんでもないことだ)
沢を右に左にと渡渉しながら下ってゆくと辺りは数多くのキクザキイチゲの花々だ。白い花、濃紫色のものに混じって薄紅色のものまで・・・夥しい花の数で、こんなに多くの花は見たことがない。花々を楽しみながら、写真を撮りまくっていると、すぐに先程の若い二人に抜かされる。やがて辺りは白樺の林となりキャンプ場に辿り着く。山の上とは異なり、キャンプ場は初夏のような暑さだ。
キャンプ場の中を歩いていくと路を挟んで二つの戸隠そばの見せた対峙していた。一つはレトロな昭和風、もう一つはお洒落なログハウス調でオープンエアのテラスまである。ログハウス調の蕎麦屋「岳」は賑わっているが、空席の目立つ昭和風の蕎麦屋を迷わず選ぶ。付け出しで出された白菜の浅漬けとこごみのお浸しが嬉しい。ちなみに蕎麦を注文した客は山菜天ぷらが無料・・・蕗の薹、タラの芽、こごみ、コシアブラと一通り揃っている。
蕎麦屋で山菜天ぷらと戸隠そばを堪能した後、キャンプ場を駐車場にあるき始めると、今度は水芭蕉の大群落。水芭蕉の白い?に立金花(リュウキンカ)の黄色い花々がアクセントをつける。咲き乱れるキクザキイチゲの先ではあたり一面が赤紫色に染まっている。何かと思えばカタクリの大群であった。シュラフを失った暗澹たる気分は花々のお陰で快復したようだ。次の山行のためにシュラフを買い求めに行かなければならないのだが、つい花に夢中になり写真を撮ってしまう。水芭蕉の写真にキリをつけて土手を上がると、先程、五地蔵山の手前でお会いした若いご夫婦の美人の奥さんだ。我々がコースで難儀して、蕎麦や花にうつつを抜かしていたとはいえ、かなり早いペースではないだろうか。
キャンプ場でシュラフはどこで手に入るでしょうかとお伺いすると、上越市か長野市に行くことになるだろうとのこと。しかし、遠い。今晩のテン泊山行は諦めざろう得ないのか・・・戸隠神社の近くの「神告げ温泉」がいいですよ、と先のご夫婦が教えて下さるので、思案する前にまずは一汗、流しに。
そんなにも美人登山者に遭遇する山域というのもびっくりです。高妻山という名前も象徴的に思えますが、yamanecoさんのその研ぎ澄まされた感覚が美人を見付け出すのかもしれません。
yamanecoさんの描く女性はおしなべて魅力的です。
私は郷愁に似た想いで、会ってみたい!と感じるのです。
独身男性にはお薦めの山かもしれません。😁
いや〜私が美人を見付け出すわけがありません。
行動食がすんなり手に入らなかったり、裸足で川を渡ったり、鎖場は雪が崩れているし
そして…大きな大きな落し物まで!
ハラハラドキドキで読みました。
美人美人って(笑)。ヤマネコさんの隣には、とっておきの美人さんがいるじゃないですか。
ところで岩に打ち付けた奥さまの足は大丈夫ですか?
ご心配をおかけしました😅
お陰様で未だに青痣はひどいものの、運動には支障はないようで、何とかなっております。初版では私の家内は例外だと記載していたのですが、えらく怒られまして〜😰
五地蔵山でお会いしたものです。たしかに美人さんの多い山でしたね(笑)
鎖場のトレースも高妻山頂直下の急登情報もほんと助かり、感謝しきりです。この場を借りてお礼させてください。有難うございました
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