ウエストンも歩いた/上高地クラシックルートを辿る「島々〜徳本峠〜霞沢岳〜上高地」
- GPS
- 24:00
- 距離
- 31.4km
- 登り
- 2,634m
- 下り
- 1,854m
コースタイム
旧安曇野村役場駐車場 06:46
08:27 二股 08:36
10:44 岩魚留小屋 11:09
13:43 徳本峠小屋
10月30日
徳本峠小屋 05:15
06:20 ジャンクションピーク 06:33
07:09 P2 07:09
07:16 P3 07:16
07:36 P4 07:36
08:05 P5 08:08
08:52 K1ピーク 09:05
11:47 徳本峠明神分岐 11:47
13:14 明神館 13:51
13:26 上高地BT
天候 | 10月29日 晴れ 暑い 10月30日 曇りのち雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2011年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
上高地BT-島々(支所前)\1600 |
コース状況/ 危険箇所等 |
◆島々〜岩魚留小屋 島々から二股までは主に島々谷川の左岸の林道歩き。 二股から本格的な登山道になるが、島々より距離で11kmを標高差で500mをゆっくりと登る。 主に島々谷南沢右岸を歩く。 ◆岩魚留小屋〜徳本峠小屋 岩魚留小屋から標高差約900mをコースタイムで約3時間。 最終水場の力水より九十九折の急登。 峠のテン場に立った途端、反対側には穂高連邦の素晴しい山々を眺める事ができる。 ◆徳本峠小屋〜霞沢岳(K1) アップダウンを繰り返して霞沢岳まで片道4,3km。往復7時間の長丁場。 徳本峠小屋からジャンクションピークまでは標高差300m弱なのだが、それ以上の急登に感じる。 k1ピークは六百山方面にトラバースしルンゼ状のガレ場を直登。滑り易く注意が必要。 |
写真
感想
徳本峠は「とくごう」峠と読む。
余り馴染みのない峠の名前だが、徳本峠は江戸時代の寛文年間から、島々から上高地に徒歩で抜ける道で、木材の搬出や炭焼きなどの生活を支えるルートであった。
釜トンネルが開通する以前の、上高地へのメインルートであった。
イギリス人宣教師ウォルター・ウェストンは、25歳の頃ヨーロッパのスイスアルプスで本格的な登山の経験を積み、1888年(明治21〜27年)、1902年(明治35〜38年)、1912年(大正1〜3年)と3回にわたり来日する。
伝道活動の傍ら、たくさんの日本の山々に登り、一回目の帰国後1896年(明治29年)日本の山々、山村の風俗、習慣などを「日本アルプスの登山と探検」と題しイギリスで出版する。
それまでの日本での山登りは、信仰や修行であり、また狩猟や林業などの生活のための登山で、ウエストンはそれまでとは全く違ったレジャーとしての登山を日本に知らしめるきっかけとなった。
また、日本山岳会の設立を提唱し、1905年(明治38年)日本山岳会創立へ発展させ、近代登山史上極めて重要な存在となり、その功績は「日本近代登山の父」と言われた。
そのウエストンが、徳本峠越えのルートを行き帰り11回歩いたことにより、北アルプス槍穂高山域を舞台に、多くの登頂記録を書き残した。
1891年(明治24年) 初めて徳本峠を越えて槍ヶ岳を目指すが途中敗退。
1892年(明治25年) 徳本峠から槍沢沿いに槍ヶ岳登頂。2回目の挑戦で成功。
1893年(明治26年) 島々谷の猟師、上条嘉門次を引き連れ、徳本峠を越えて、外国人としては初めて前穂高岳に登った。
1912年(明治45年) 徳本峠を通り北鎌尾根から槍ヶ岳。上高地から奥穂高岳登頂。
1913年(大正2年) 徳本峠から上高地を経て槍ヶ岳登頂。この時、上高地を起点として、焼岳、霞沢岳、奥穂高岳に登頂。
1914年(大正3年) 燕岳から大天井岳、二ノ俣を経て、上高地から徳本峠を越えて白骨に至る。
1923年(大正12年)に現在の徳本峠小屋は営業小屋として営業されるようになり、更に登山者は便利になった。
大正後期には上高地には湯治客や登山客を受け入れる体制が整えられて、穂高や槍の稜線にも山小屋が開設された。
1926年(大正15年)旧釜トンネルが開通。
当初は霞沢発電所の建設のための、工事資材運搬用の軌道として、梓川沿いの急峻な岩崖に通された。その最も険しい釜ヶ淵を避けて隧道が手堀で建設されたのが、最も古い釜トンネルである。
1927年(昭和2年)発電所の工事が完成し、その軌道を整理して自動車道として開通。トンネルの長さは320mで、幅と高さは2mそこそこだったといわれる。
釜トンネルの名前の由来はこの釜ヶ淵の「釜」から取ったと言われる。
1933年(昭和8年)拡幅工事をし、中の湯から観光用の小型の乗合バスが大正池まで運行される。
1935年(昭和10年)更に、路線が河童橋まで延長されると、それまで徳本峠を越えていた多くの登山客は、徐々に便利になってきた釜トンネルを利用するようになってきた。
さて、100年もの昔にウエストンも歩いた、上高地へのクラシックルートを、以前からずっと歩いてみたかったのだが、今回それは実現した。
島々からは島々谷川に沿って遡る。
二週間前は上高地で紅葉が綺麗だったが、この近辺は今が見ごろの紅葉を迎え、秋本番を楽しみながら歩るくことができる。
北鎌尾根以来、膝の調子が良くない。二股までの林道をコースタイムの1時間30分でなんとか歩く。
途中、川釣りの案内が何ヶ所かあり、天然の岩魚でも釣れるのかもしれない。
二股から林道を離れ、本格的な登山道になるのだが、傾斜は島々谷南沢の流れに沿って緩やかな登りである。
登山道は落ち葉が幾重にも重なりあい、いい雰囲気を醸し出していた。
この二股から岩魚留小屋までの道のりには、実際に使っていた炭焼き窯の跡や、岩をくり抜き登山道にしている道など、古の趣の風情があると感じるのは、誰でも思うところだろう。
渓谷を何本かの橋を渡りながら、縫うように歩くのも楽しいし、そろそろ終わりそうな紅葉を見ながら歩くのも素敵であった。
一部、崩落や徒渉らしきものはあるものの、非常に整備されてて歩きやすい道なのだ。
この道をウエストンも、歩いたのかと思うと考え深いものがある。
初めて歩いたが、私は一度で気に入ってしまった。
岩魚留小屋は今は営業していない。
部屋の中を伺い知る事は出来ないが、古い建物だということは、表から見ただけでもその雰囲気を感じることはできる。
この日、日差しは強く、初冬とは思えないくらい暑い。
水分補給を小まめに摂るよう気をつける。
岩魚留小屋から力水までの島々谷南沢本流はかなりの所で橋が流されていたり、登山道が崩落している箇所が幾つかあり、大雨の傷跡を見ることができる。
恐らく、小屋の人達の努力によって、少しずつではあるが整備されてるのであろう。
この区間は、川の水量によっては渡渉をすることがあるらいしが、今回は渡渉せずに歩き通すことができた。
島々谷南沢から峠沢を経て徳本峠までの登りは、今までの登山道とは違い、かなりの斜度になる。
特に、力水からは九十九折の急登となる。
力水は、水量が少なく、下手をすると見落としてしまうかもしれない。
この日、気温が高かったこともあるが、とても冷たく、それでいて旨味がある美味しい水を飲んだ。
その甲斐あってなのか、この先の九十九折の急登は調子よく登れた。
やっとの思いで徳本峠小屋に着いたとき、ここのテン場からは、ドーンと開けた穂高の山々の素晴らしい眺めを見ることができた。
特にこの夏に歩いた奥穂から西穂までの稜線は素敵だった。
ロバの耳、ジャンダルム、天狗岳、間ノ岳、西穂、独標まで初めて全て確認できた。
上高地からは見えないが、ここからは見える神秘的な稜線なのだ。
次の日、霞沢岳に向かい歩き出すが、雨がポツリ。
それでも、東の空は明るく、かなり燃えている。
遠く富士山や南アルプス、八ヶ岳、浅間山まで確認することができた。
ジャンクションピークでは雨も止んだので、再度霞沢岳に歩き出す。
途中何度も雨に降られるが、我慢して歩いた。
K1ピークに着いた時には、穂高はややガスが掛かり、展望はそれほでもなかった。
1913年(大正2年)ウエストンは、嘉門次と辻村伊助らを引き連れ、八右衛門沢から霞沢岳に登頂して穂高の大展望に酔いしれたという。
その八右衛門沢を登り詰めた山がこのK1ピークなのである。
1984年(昭和59年)に徳本峠から霞沢岳への現在の登山道が開かれるまで、霞沢岳へは八右衛門沢などからのバリエ-ションルートのみであった。
雨は本格的に降り出した。
あと30分で霞沢岳まで歩けるのだが、この天候では展望も望めず、またK1ピークからの戻りの降りもかなり滑りやすくなっていて危険なので、早々に下山することにした。
霞沢岳の登頂はまた次の機会になってしまったようだ。
中途半端で終わるのは、自分らしいと言えばらしいと言える。
上高地からは新島々行きのバスに乗る。
約一時間で島々の支所前のバス停に着く。
バス停が駐車場の真ん前なので、とても便利だ。
槍穂高を目指す登山者には、余り知られてはいないが、この情緒たっぷりのクラシカルなルートを歩けば、違った穂高の姿を再確認することができることだろう。
コメント
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北鎌の次はそうきました〜(≧ε≦)僕はまだ歩いた事ないですが意外と?歩きやすそうですね…onsenさんのレポを参考にいつか歩きます(`∇´ゞ
紅葉もいいですし黄葉もいいですね〜〜
って
徳本峠に霞沢岳。私も来年歩きたいルートのひとつです^−^
29日はやっぱりどこも好天で良かったみたいですね
秋も終盤の北アルプス
なんだかしっとり落ち着いた雰囲気なのでしょうか。。。(ぐふ♪)
お疲れ様でした^▽^
onsenさん、こんばんは!
いろんな楽しみ方&ルートがあるんですね
さすが皆さん知っているようで!
今回もレコが素晴らしく詳しく!!
博識ですね〜
fall
日曜日にNHKの小さな旅とゆう番組で上高地側から登り徳本峠小屋に泊まって霞沢岳に登るコースを紹介していましたね
DVDレコーダーに山や登山というキーワードでヒットした番組を自動的に録画するようにしてあるので意外な番組が録画されています
NHKのアナウンサーもウエストンが感動のあまり涙を流したと紹介していました
上高地から見上げてもなかなか綺麗な霞沢岳ですが行ってみたい山です
teteteさん、早速のコメント有難うございます。
私にとってこのルートは、歴史ある登山者の聖地のような
存在ですので、今回訪れることができて、本当に良かった
と思っています。
コースはもっと荒れていると思ったのですが、意外に
整備されているので歩きやすかったです。
teteteさんも是非訪れてみて下さい。
さすれば、ウエストン先生の足跡を感じることと思います。
北アルプスの山の中腹にあった紅葉は、一気に駆け下りて
里山まできいました。
そんな晩秋、如何お過ごしでしょうか?ittiさん。
やはりこのコースを歩いてみたかったのですか?
私も今回歩いてみて、本当に良かったと思っています。
特に二股から岩魚留小屋までの渓谷美は特出したもの
があります。
是非、歩いてみて下さい。
29日は全国的に暑かったようですね。
長袖しか用意をしておらず、まさか半袖が必要とは
思ってもいなかったです
そうは言っていても、もう時機に雪が降るでしょう。
残り少ない晩秋の山を楽しみたいですね
こんにちは、fallさん。
今年の春に骨折をして、山に登れなかった時に、上高地
を訪れた折り、ウエストン碑から良く見えたのです。
前から気にはなっていましたが、それが霞沢岳で、そこに
行くには徳本峠を通ることを知り、それがかつての
上高地への登山道だと知り、興味を持ちました。
天気が良ければ良かったのですが、日曜日は生憎の
「曇りのち雨」予報だったのでしょうがないですね
また、次回の宿題になってしまいました。
こんにちは、otouさん。
「NHKの小さな旅」は私も見ました。
奇しくも私が徳本峠に登っている間の放映だったようです。
徳本峠小屋に纏わる人間関係にズームをあて、美しい
山々を紹介していました。
K1ピークから見た穂高連峰の山々は素晴らしかったですね。
私が登った時は天候も悪かったので、そういう意味でも
リベンジを果たしたいですね。
徳本峠へのクラシカル・ルート、いいですね。
いつ行こうかずっと考えてたルートですが、今季は機会を逸してしまったかと。
今週末行こうかとも思ってたのですが、他に決めたのでやっぱり来季ですね。
徳本峠小屋も10月末で営業を終えたようですからこれからは更に静かになりますね。
どっちみちテントなので力水を汲み上げさえすればいいかと思ってました。
onsenさんのレコ、参考にさせていただきます。
それにしても今季は随分と北アに通われましたね?
何時も思うのですが、ノボさんのテントを担いでの山行
はパワフルですね。
それも結構ハードなところ歩いてますもんね。
私は小屋泊りがベースですから、どれだけ軟弱なんだよ
と、言われても何も言えません。
この10月、何回かこのコースにチャレンジしようと思って
いたのですが、天候が悪くて今回になってしまいました。
仰る通り徳本峠小屋は先月までなので、先週行かないと
私の場合、来年になるところでした。
何とか歴史ある道を歩く事が出来て良かったと思います。
来年は是非、歩いてきて下さい。
きっと気に入ると思います
onsenさん
こんにちは
今回も素敵なルートを歩かれてますね〜
近代登山の歴史とonsenさんの山行記録が同時に楽しめる、もはやヤマレコという範疇を越えた作品ですね(言い過ぎ!?)
でも、そのくらい素敵なレコだと思いました
こんばんは、Utunduさん
明日、ゴルフやるんですが、支度してたらこんな時間に
なってしまいました
>もはやヤマレコという範疇を越えた作品ですね
ええ!言い過ぎでしょ!(笑)
ルートは素敵なのですが、感想は濃すぎちゃいましたね
でも、有難うございます
onsenさん、こんばんは
ゴルフはいかがでしたか?
島々から徳本峠をこえて上高地。
私も歩きたいルートです。ついでに岩魚も釣りたいです
どなたかのHPでこのコースが以前台風?か大雨?で崩壊して通行止めになっていたとみた記憶があります。今年は大丈夫なようですね。
燃えていますね onsenさんも燃える男、でしょうか
膝は本当にお大事になさってくださいね
ゴルフは骨折して初めて100を切りました。
それも、ギリギリの46、53の99でしたヨ(爆)
昨日は、一緒に周った仲間と飲み明かしました
自然の猛威は恐ろしいですネ。
大きく登山道が崩落していたり、橋が流されていたり、
大雨の爪痕を未だに見ることもできます。
しかし、小屋の方々のお力で安心して歩くことができ
るのは、有りがたい事だと思います。
何しろ、二股から岩魚留小屋までの景観は素晴らしい
です。
今後、こういう貴重な道は、県とか国レベルで守って
欲しいと思います。
そんな渓谷美で、シラガさんが、岩魚を吊ったり、
オバママスクを被って一所懸命ポーズを取りながら、
記念撮影するお姿は、きっと絵になるでしょうね
膝痛、ご心配頂きありがとうございます。
少しずつ労わりながら、付き合っていこうと思っています
おはようございます。
昨日ちらっと拝見したのですが、改めてゆっくり読み
朝からしっとり(表現がおかしい?)とした気分です
ウェストンの面影を探しならがらの山行、
静かな山の中で楽しまれたようで何よりです
懸念の山行時間もほぼ7時間ジャスト!笑
ということは全然平気だったということですね
素敵なレコをありがとうございました!
私も徳本峠にいくのならこのルートが
いいなと思いつつも
徳本峠自体いけておりません。
結局は、上高地ルートからのアクセスになるのかなぁ。
onsenさんのレコ見て
ちょっと行った気分になりました。
タマちゃん、こんにちは。
「しっとりとした気分」は、私も感じました。
昔は沢山の登山者が行き来した峠道だと思うと、楽しさも
倍増する登山道だと思います。
そうなんですよね。
今の私にとって、歩行時間は大切です。
難易度や標高差にも依るのですが、なぜか7時間以上歩くと、
膝の調子が悪くなるので、今は労わって歩くことを目標
にしています。
一時期、膝が痛かった筈ですが、その後いかかでしょうか?
私も、以前から島々から歩いて徳本峠を超えたいと思っ
ていましたが、最終的に登山の目標は槍や穂高なので、
仕事でなかなか時間が取れない現代人には、どうしても
徳本峠越えで北アルプスを訪れるのはハードルが高く
なりますよね。
ただ、歩けば必ず古の痕跡に出会えるので、それを訪れる
だけでも価値はある登山道だと思います
カテゴリー的に沢の範疇で本当に楽しそうですね。^^
次はウェストンが散歩がてらに歩いていた?という・・・
霞沢岳へ突き上げる「八衛門沢」ですね。
六百への直登も面白そうです。
この辺りも色々な道があり面白そうです。
こんばんは、のらさん。
次ぎに霞沢岳に登る時はウエストンも歩いたという
八衛門沢からのクラシックルートからとも考えたのですが、
この沢・・・相当悪くて危険なようです。
そこで、霞沢岳から真っ直ぐに、大正池の南端に伸びている
尾根から登ろうと思っています。
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