道元峡・層雲峡より船形山〜泉ヶ岳 図らずもの野宿付


- GPS
- 32:00
- 距離
- 35.0km
- 登り
- 1,946m
- 下り
- 1,750m
コースタイム
- 山行
- 9:30
- 休憩
- 0:50
- 合計
- 10:20
天候 | 1日目 晴れ 2日目 ガスのち晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2018年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
【下山】泉ヶ岳ふれあい館から地下鉄泉中央駅行き12:45のバスに乗り、スパ泉ヶ岳の前で下車(250円。フリー区間なので、どこでも降ろしてもらえます)。スパ泉ヶ岳からは15:10発の無料送迎バスがあり仙台駅まで行けます。ただし水、木が定休日だそうなので要注意。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
鎖のプロテクトも多くあって難易度が低いとはいえ、一応は沢登りのコース。それなりの装備と覚悟で臨みたい。御所山荘から本流の左岸を進むと5分ほどで川に降りる階段があり、道元峡の遡行開始です。 【道元峡】 林道を使えば終点の落合まですぐに行けますが、この美しい区間を遡行しないなんてもったいな過ぎてありえません。 柱状節理が美しい材木岩手前のゴルジュは、実は浅くてへつりでも通過できるそうです(この沢の下流は温泉成分で水が濁っているので深さが分かりにくいのでちょっと怖い)。へつらなくても、鎖でプロテクトされた立派な巻き道もあります。私は巻き道を使いましたが、高度感があって怖いものの、足場はしっかりしており安全に通過できました。 落合の手前の竜ヶ滝がこのコースの一番の難所。ボルダリングの能力が試されます。私は左岸の滝のすぐ横を登りましたが、岩登り初級者の私には少し難しかったです。落ちても釜にドボンなので、安心して挑戦できますが、なかなかうまくいかなくてここで撤退?も頭をよぎりました。クリアして思わずガッツポーズ出ました。 【層雲峡(落合〜大沢小屋)】 鉄分が多くなるのか、このあたりから上流は岩が真っ赤っかになります。前半は河原歩きが多くて飽きますが、後半は小滝やコケやナメなどの美しい見せ場が多くて楽しく登れます。難易度は道元峡よりも低いですが、1か所だけ左岸のかなりの高いところを巻かなければならない滝があったので注意。プロテクトは何もありません。落ちたらケガはすると思うので、ロープが欲しい場所でした。 大沢小屋は宿泊は十分可能ですが、埃っぽいので掃除が必要です。 【層雲峡(大沢小屋〜御宝前(大滝))】 短い区間ですが、プロテクトが少なく、安全には十分注意が必要です。倒木も多いのでスピードは落ちます。スノーブリッジが2つあり、1つ目は上を通過、2つ目は崩れそうもないことを十分確認して下を通過しましたが、できる限り上を通過したいものです。雪解けの早い今年でこんな状態なので、例年7月上旬くらいまでは残雪の処理に注意が必要かと思います。御宝前の大滝の眺めは素晴らしいですが、付近は落石が多そうなのであまり長居はしたくないところです。 【御宝前(大滝)〜御宝前追分分岐】 大滝からの尾根取り付きは要注意です。ここで私はルートを失い非常な苦労をしました。大滝の目の前の崩れたガレにはペンキマークがあり、少し上ってから、ヤブに入ります。ヤブに入ってからはしばらく左へトラヴァースしますが、踏み跡が分かりにくくなるうえ、途中で踏み跡が2か所ほどガレに寸断されています。私は1か所目のガレ付近からこの当たりだろうと標高をあげてゆきましたが、これは地図をよく読めば不正解だとわかるはずでした。獣道のような踏み跡もかすかにあるのでそれを頼りに登ると、やがて大きな岩峰に阻まれ、基部を巻いたりして少し粘りましたが、やがてそれ以上進めなくなりゲームオーバーでした。 1時間くらいは登ってしまいましたが、もっと早くおかしいと判断できたはずで反省。意を決し戻ること大滝のすぐ目の前まで。落ち着いて地図を読み直し、取り付こうとしていた尾根がもう少し奥(北側)だと気づきました。踏み跡が流されたガレを2回ほど横切り、対岸の踏み跡を発見できないもどかしさ… 万策尽きてもうこれしかないと、登山道があるはずの尾根をめがけて一直線に激ヤブを漕いて登ること10分、ついに踏み跡を発見。してやったりでガッツポーズでした。ロスした時間は2時間弱。このおかげでこの日は野宿になりました。 尾根に無事取り付いてからも、追分の分岐まで急斜面が続き、踏み跡ははっきりしない箇所が多く、部分的にひどいヤブ漕ぎもあってつらい区間でした。 【御宝前追分分岐〜船形山〜泉ヶ岳】 れっきとした登山道で、何も問題はありません。 |
その他周辺情報 | スパ泉ヶ岳(800円)。温泉としては可もなく不可もなく。食堂もあり。 交通関係で上述したが、仙台駅まで無料バスあり。 |
写真
感想
6/24(日) 晴れ
花笠高原荘〜御宝前追分分岐手前△(行動時間:10時間20分)
夜行バスで山形までやってきた。尾花沢の待合所から8時発の鶴子線バスに乗る。途中乗車したのは私以外におばあさんが4人ほど。皆終点で降りた。どうやらおばあさん達は花笠高原荘に温泉に入りに来たようだ。
私はバスを降りてそのまま車道を歩いてゆく。目の前が新鶴子ダムの堰堤だ。もくもくと林道を登る。日曜なので山登りの人が車で通らないか期待したが、結局誰も通らなかった。2時間ちょっとかかって御所山荘に到着。途中、新鶴子ダムのダム湖は青くてきれいだった。
御所山荘には車もなく人気もない。こんなにいい天気なのに今日は誰も登っていないようだ。少しヤブっぽい左岸の道を行くと、山菜取りのおじいさん二人が降りてきた。日本語で話しているのだろうが、申し訳ないがあまりわからない。向こうもこちらの行っていることが全部はわからないようだった。山形弁恐るべし。道元峡と層雲峡は深いところで腰以上の水深だから十分注意して、と言われていると理解した。
階段を下りて沢に入るとクリーミーな青白い水の川が広がっていた。こんな変わった色合いの水は初めてだ。温泉成分が多いのだろう、川底の岩が湯の華で真っ白になっていた。東北地方はここ数日雨が降っておらず、今日も絶好の天気だ。水量は少なく、穏やかな遡行が楽しめそうだ。
30分ちょっとで最大の見せ場の材木岩。ここの景色は本当に素晴らしく一見に値する。淵の水も穏やかで泳げば通過できそうだが、クリーミーな水のため底が見えなくて怖い。いきなり水に飛び込むのも抵抗があるので、右上に見えている鎖を利用して巻いた。ここは高度感が凄いが、プロテクトとしては安全だった。ハーネスを持ってくればさらに安心だったろう。淵を通過した後の柱状節理は見事だ。こんなに凄いのは私は初めてで、ただただ目を見張るばかりだった。
材木岩を越えてからの道元峡の景色は本当に素晴らしく、こんなに素敵な遡行がずっと続くのかとワクワクだった。そしてたどり着いた竜ヶ滝。滝自体は大したことはないが、釜は深い。滝のすぐ右を登るが何度やってもうまくいかない。周りを見回すが巻き道もない。水線も水量が多くて登れない。これは困った、、ここで撤退?と思ったが、考えてみると滝は小さいし落ちても釜だからケガもないだろう。アクロバティックに行って失敗しても大丈夫、とちょっと強気に行く。手足をいっぱいに伸ばし、自分でもやったことのないようなムーブでなんとか難所を越えた。思わずガッツポーズだった。
落合への分岐には看板がある。ここからが層雲峡になるが、しばらくは河原歩きでつまらなかった。しかし今度は川に鉄分が多くなるのか、岩が真っ赤っかになっていて目を見張った。滝も連続するようになり、また面白くなってくる。大岩があってその横を通過したり、変わったゴルジュが目白押しで、飽きさせない。1箇所だけ、プロテクトの全くない滝の巻道があり、高さもあったので緊張したが、ロープが必要だとすればここだけだった。そして疲れてきたころ、大沢小屋についた。小屋は少し床が斜めになっているが、しっかりしており十分宿泊できる。埃っぽいので掃除は必要だろう。時刻は2時半である。ここから船形山山頂までコースタイムは3時間。陽の長い今は日没は7時くらい。余裕をもって十分行けるだろうと安心した。水を汲んでさらに進むことにする。
小屋を過ぎると滝が多くなり、小さな難所が続く。鎖などのプロテクトも少なくなるので全く気は抜けない。そして驚いたのは大きなスノーブリッジが2つもあったことだ。今年は融雪が早いのにまだこんなに残っていることにびっくりだった。1つ目は上を無事通過。2つ目は上に登る手掛かりがなく、右側の斜面との隙間を這いながら通過した。ここは崩れたら命はないので、事前に崩落しそうな箇所がないかしげしげ見まわしてからいざ決行した。両方とも安全に通過出来てホッとした。
2つ目のスノーブリッジから10分もかからずに大滝に到着した。落差は50mほどだそう。水圧による爆風と水しぶきがすごく、その迫力に圧巻だった。滝の向かいは派手に崩落している崖で、どうやら硫黄化合物を多く含んでいるようだ。崖から水も湧いているのだが、飲んでみると酸っぱくて飲み水にはならなかった。この成分のせいで岩が赤くなってしまうのかもしれない。
ここは落石の巣なので、早々に退散して尾根に取り付く。しかし、ここから思わぬ苦難が待ち受けていた。目の前のガレには転々とペンキマークがあり、その後左のヤブのトラヴァースになる。このトラヴァース道はヤブに覆われており道がはっきりしないうえ、途中2か所ほどガレに流されており、その先道がどうついているのかわからなくなってしまう。このトラヴァースは結構長く続くのだが、地図をよく読んでいなかった自分はそろそろだろうと、急斜面を登り始めてしまった。けもの道のような踏み跡もあり、これは行けると思いながらだった。しかし実際はこの支尾根は途中で終わり、その先はガレになって落ち込んでいる。それを知らずにずっと登って行ったのだ。途中岩峰に阻まれたが、基部をうまく巻けそうなこともわかりさらに上ってゆき、やがて目の前には壮絶に崩れたガレが現れゲームオーバーとなった。予想だにしていない光景を目の前にして、唖然としてたたずむしかできなかった。この時の敗北感は筆舌に尽くしがたい。
落ち着こうと狭い平地で休憩し、地図を読んだ。どこでどう間違ったのだろう?このときはさっぱりわからなかった。正しい尾根に乗っていると思い込んでおり、登山道がここで崩れてしまったのだとこの時は思っていた。いずれにしてもはっきりと道がある地点まで戻るしかない、場合によっては今日は大沢小屋に泊まるしかないかもしれない、と戻り始めた。1時間くらいも登ってしまったし、ヤブもあるものすごく急な斜面だったので降りるのも非常な苦労だった。
大滝近くのペンキマークのあるところまで戻り、もう一度地図を読み直してみる。トラヴァースの距離が思ったより長いことが分かり、取り付く尾根ももう一本向こうだろうと(実は正解なのだがこのときは自信はあまり無かった)ショボい仮説を立て、その通りトラヴァースを始めた。踏み跡がガレに流されている箇所を何か所か越え、その先で踏み跡を探したが、なかなか見つからない。ほんとにこの仮説が合っているのか自信が無くなってきた。もう時間は5時半だ。。
しかし今の自分はこれしか解を持っていない。ここで間違っていても大沢小屋に戻る時間は十分ある。とにかくもう一本先の尾根までトラヴァースしようと、強引にヤブを突っ切ることを決意する。登り気味の一直線のトラヴァースを10分も続けただろうか。乗越をまたぐとなんとそこに明瞭な踏み跡を発見したのだった。これにはガッツポーズをして吠えた。結果オーライだったのが、この件の反省点はいくつかあり、それは最後に述べたい。
あとは、ヤブっぽい尾根をひたすら登るだけだ。時間的に船形山までは行けないかもしれない。今日は小屋泊り装備なのでテントを持っていない。この時点でテント無しの野宿になるかもしれないとやや覚悟を決めるが、多少暗くなってもヘッデンで小屋まで行けるだろうとも思っていた。
しかし思いはむなしかった。踏み跡は比較的明瞭なものの、ヤブが思ったよりひどい。体力の消費が半端なく、時間的よりも体力的にこれは無理だと思い始めた。夕陽が憎たらしいほどきれいに暮れてゆく。悲しいかな、もう小屋泊まりは無理なのは明白だった。しかし野宿をするにしてもこんなヤブの中でどうやって寝ろというのだ。これは半端なくつらいビヴァークになりそうだと思い始めたころ、突如広く刈り払われたきれいな登山道に出た。もう7時間近のこと。これぞ天の助けとばかり、登山道の脇に店を広げ、寝転がって休むことにした。
緊急ビヴァークではあったが、よく考えるとテントがないだけで、その他はそれほど大きな違いはない。きちんと飯も炊いて、たらふく食べ、酒まで飲んで寝た。シュラフカバーがあれば閉鎖空間にもぐりこめるのでそれほど不快ではない。この日はほぼ満月で明るい夜。月を見上げながらの就寝はなかなかのいい体験じゃない。ちょっと虫が多いのが玉に瑕だが、終わってみればまったく悲壮感のないむしろ快適な野宿だった。
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6/25(月) ガスのち晴れ
御宝前追分分岐手前〜泉ヶ岳ふれあい館(行動時間:8時間)
なんと夜中に雨が降って目が覚めた。パラパラ程度だったので大丈夫だったが、土砂降りになったらどうしようと不安に思っているうちにまた寝てしまった。それほどひどくはならずに幸いだった。
小屋で朝食を取りたいので、さっさと起きて出発する。歩き始めると数分でクラビ沢コースへの分岐になっている御宝前追分だった。昨日ふらふらになりながらも、実は随分頑張ってこんな所まで登っていたのだった。出発して45分ほどで船形山に到着した。登りは急で意外ときつかった。山頂は強風で凄いガス。昨日の天気とは大違いだった。とりあえず小屋に駆け込み、店を広げて朝食にした。小屋は非常に快適。誰もいない。ここで泊まれたらどんなによかったことか。
昨日とは大違いの快適な登山道を、泉ヶ岳を目指して歩き出す。距離は長いが道が良いのでサクサク進む。蛇ヶ岳、三峰山をこえるとようやく天気が回復し、きれいに晴れてきた。北泉ヶ岳との鞍部は緩い尾根がずっと長く続く区間で、ブナ林がとてもきれいだった。北泉ヶ岳を駆け抜けるように通過し、泉ヶ岳へ。ここでこの山行で初めて登山者に出会った。さすが人気の山である。泉ヶ岳山頂では月曜にもかかわらず3パーティに出会った。
ゴール目前の水神で大休止を取り昼飯にした。ここの水はたいへんおいしい。水も泉ヶ岳手前で切れてしまったので、ラーメンを作ったりチャイを入れたりして大満喫した。その後、無事に泉ヶ岳ふれあい館に到着。バスでスパ泉ヶ岳まで行き、汗を流した。食事後、無料バスでらくらく仙台まで出た。東北の山旅も新幹線だと小田原まであっという間だ。
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今回の大滝上での道迷いの反省点メモ:
・地図読みが甘く、確認もこまめに行えなかった。おかしいと思ったらすぐにザックを降ろして地図をみる。地形がどうなっているかと、登山道の位置を、景色と照らし合わせてきちんと頭に入れること。
・GPSを使わなかった。そもそも道を失っているという自覚がなかった。すこしでもGPSをONしていれば、自分のミスに気付いたはず。実は南アの大無間でルートを大外ししたときも全く同じミスをしている。しかも両方ともGPSを持っていたのに使っていない。我ながらバカだと思う。
・登山道が怪しいルートでは二万五千図を持つべき。今回は五万図しか持っておらず、ここの微妙な地形は正直読みきれなかった。
・テントやツェルトを持たなかった。これも軽量化のため覚悟の上とは言え、ツェルトも持たなかったのはちょっと軽率だった。今回も少し雨が降ったが、土砂降りだとエライことになっていた。
・(交通機関を使用するので仕方がないことだが)出発がおそく、時間の余裕、気持ちの余裕がなかった。時間さえあればトラブル発生時も大きく構えていられる。
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
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triglavさん、こんにちは。
triglavさんのレコは詳細でとても臨場感があって、読み応えがありますね。
日高の壮絶な藪漕ぎレコなど、いくつかお気に入りに入れています。
御宝前大滝から尾根に上がる部分は、私も5年前に通ったことがあるので、いっそう引き込まれて読みました。5年前はトラバース部分の崩壊はさほどでもなく、御宝前追分に上がる急な尾根も刈り払いされた直後で、登り易かったのですが・・でもやっぱりトラバースが始まる所で、急斜面を少し登っていってしまったという記憶があります。
難儀されたようですが、GPSを持っていない自分にはとても勉強になりました
kamadamさん
ありがとうございます。御宝前からの登りは正解が分かってしまえば何のことはないですが、迷ったときは全く訳が分かりませんでした。GPSも鍵ではありましたが、やはり概念理解のための地図読みが大事だと思わされました。下るときは神経質になりますが、登るときもこういうことがあるので要注意だと思いました。
5年前はヤブがなかったとは驚きです。あの区間の草刈りはとてつもなく大変だと想像します。今度はいつになることやらですね。
として、かなり楽しく読ませてもらいました。面白かったです。
竜ヶ滝で詰まる場面、道迷いのくだりなど気持ちがよく分かります。。。笑
この判断で合ってるのだろうかと悩みつつ進んで、合っていた時はかなり安堵しますよね。
なお自分は沢の時は、電子国土webでズームした地形図を印刷して持っていきます。
sawahikoさん
ご無沙汰してます。もう1年近くたちますが、あそこは楽しい沢でしたよ〜
路迷いは本当に大変でした。それでもなんとか自意識のコントロール下にはありましたので、遭難はしないだろうという自信はありました。けど最終的に体力が続きませんでした。年齢ももう厳しいかな〜と思います。
国土地理院の電子地図は二万五千がベースですので良いですよね。自分もたまに拡大プリントで持っていくことはあります。。
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