津軽半島北端縦走・矢型石山から龍飛岬(一泊)
- GPS
- 29:00
- 距離
- 22.4km
- 登り
- 1,302m
- 下り
- 1,307m
コースタイム
三厩駅(7:50)→三厩林道起点(8:15)→コンタ300林道から尾根へ(9:45)→鋸岳(11:55)→矢形石山(12:40)→C1(・474の北の最低コル/14:30)イグルー建設38分
二日目
C1(6:30)→算用師峠(7:30)→△556(10:10)→竜泊ライン(11:00)→除雪終点/風車の交差点(12:10)→歌碑(12:50)→岬の海峡亭(13:15)
天候 | 吹雪ときどき高曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
三厩川林道は鋸岳東尾根にあがる良いルート。 矢形石山北面は急で尾根形がわかりにくい上ひどいヤブ。 行程の2割くらいは鬱陶しいヤブあり。 セッピは発達しているが落としてもどうということはない。 |
写真
感想
津軽半島先端シリーズ第三弾で遂に岬へ。北海道八雲から夜行で来たカンノ君と青森駅ホームで合流し、津軽線行き止まりの三厩まで。朝一の三厩行きの客は僕らとテツオだけ。車中で地図を検討し、増川川林道は長いし、尾根末端からだとヤブの可能性もあるしで、三厩川林道から鋸岳東尾根のコンタ300付近へあがるルートをとる事にする。米山の五万図には無かったので言われて気づいた。
林道は地下鉄となった海峡線を跨ぎ、尾根のおよそ下半分をクリアして稜線に上がった。その後は穏やかな太いヒバ林など過ぎて、前回取り逃がした半島の重鎮、増川岳の勇姿も現れた。前々回の袴腰や丸屋形山も視認。・474の南西肩から、ようやく目指す鋸岳と矢形石山が樹間から望まれた。なかなかの恰幅。鋸岳の山頂部は木が生えていない。いつも風が強いのだろう。朝から吹雪と高曇りを繰り返して来たが、山頂では吹雪の時間帯。気温は氷点下7度くらいだが風が強い。冷たい指で大した写真も撮れずに、山頂の祠の屋根を確認して矢形石への下降路にはいる。矢形石山へは夏道が無くヤブが猛烈でなかなか踏めない山頂らしいが、積雪期はあっという間だ。山頂部手前の白い雪原で視界がばっと晴れた。鋸岳、増川岳、それに海が両方に見えた。絶海の集落、小泊港も見える。いつか山越えでもして、たどり着きたい漁村だ。
矢形石山頂は林の中だ、北面に下る。北面の切れ落ちた崖沿いにやや西に行き、下る尾根を探すが、無い。ガスも濃く、樹林もあって遠くが見えない。この辺りかと見当をつけて、いくらか降りるとようやく尾根らしきものが見えるという感じ。不明瞭な尾根線の右は絶壁、左は下るのに躊躇するような長い急斜面だがここをスキーで横滑りする。邪魔なブッシュがまた鬱陶しい。違う尾根を下っていないか何度も地図見て確認する。ある程度下るまで不明瞭なのだ。地図では標高差130mでコルのはずだが、もっと長く感じた。
南北稜線は、だいたい樹林の中。風が強く東にセッピが多い。西側は雪が飛ばされヤブが強い。セッピは1m前後で安定していて落ちる事も無く、下もガケではないから結構上を行くのに重宝した。・474の北の最低コルで泊まる事にする。風が強いのでセッピのかげで休んでいたら、もうここでいいやという雰囲気になった。製作38分で立派なやつが完成。4時前から酒飲んでゴキゲンになる。丸美屋の麻婆豆腐メインで、肉食する。
イグルーの雪の壁を通しても山鳴りが聞こえていた。風が強い。朝寝坊したが、手早く準備してアベックラーメン食べて6時半出発。
稜線を北へ、岬へと延々辿る。時々、風でグニャグニャになった灌木密林帯が現れ、スピードダウンするが、そういうヤブの全体の中の割合は2割くらいか。ポコの最上部では見通しが利いて、時折行く手の遠さを望見するが、歩いていみると結構進むものだ。山スキーは船の様に頼もしい。藪がかぶさって狭くて急なセッピの上を滑るより、その下側の新雪ふわふわ斜面を一直線に下ると早い。
この樹林の生えた、くねくねした主稜線を地図見ながら進むのが未開地山行の醍醐味だ。あっているか、間違えているか、少し進んでみてやっとわかる時、思い込んだ方向に尾根が無くて、地図見て景色見て、まだその手前だった事を知り納得する時、かすかに感じる不安と小さな緊張の心が楽しい。GPSなど持って行っては台無しだ。
途中、黄色い標識看板がブナの幹にめり込んでいた。「津軽半島縦貫道路建設同盟会/第五連隊」。昔、竜飛岬から大釈迦まで70キロの主稜線に道路を、という運動があって、青森第五連隊(戦後も青森は第五連隊)の山岳兵が1963年これを付けて歩いたそうだ。高度経済成長期の頃。(あおもり110山・東奥日報社より)
時折見える両側の海が近づいてきた。岬の予感を感じる頃、算用師峠以北最高の・556を踏む。もう一山越せば竜泊ラインだ。青黒い海が見えると石川さゆりの歌声が聞こえてきちゃうぞ。さっきまでドリフのズンドコ節を鼻歌にラッセルしてたんだけどな!
・550の北西で、ほぼ時間読みどおりに積雪閉鎖中の国道に滑り降りる。ここから鼻歌しながら暴風吹雪の国道を岬へ。シールをはずすと結構滑る。でも風で雪が飛んで舗装面出ているところも多々あり。青氷の上でタコ踊りするもあり。日本海の上を雪雲がぐるぐる移動している。
巨大風車地帯を抜け、岬先端部の冬期殺風景地帯をシートラで抜ける。まるで昭和基地?ここは青函トンネルの工事をしていた数十年間、建設要員が何百人も寝泊まりした仮設キャンプと資材基地の跡地なのだ。今は道の駅とか駐車場とか。冬期閉鎖していないホテル一軒以外は生き物の気配無し。ホテルの温泉風呂をぐっとこらえて直進。岬に着くまで我慢我慢。津軽海峡冬景色の巨大な歌碑発見。赤くて大きなボタンをげんこつで叩くと大音響であのイントロが。「ごらんあれが竜飛岬北のはずれと〜」が始まった。すぐ下の海は猛吹雪でかすみ見えない。スキーかついだままカンノ君熱唱「風の音が胸を揺する泣けとばかりに」。
国道なのに階段という珍名所の「階段国道」はラッセルして降りる。新宿ゴールデン街並の狭い軒先で背中のスキーを窓に当てない様に横ばいで抜けると、竜飛漁港だった。命綱の村営バスも停車している。発車まで丁度一時間。猛吹雪で対岸の帯島さへ見えない中、そのまま竜飛集落で唯一冬期営業の「津軽海峡亭」に直行。開いてて良かった〜。引き戸を開けるとデカいネコが無言で一瞥お出迎え。中ではシケで漁に出られない漁師たちが大五郎を飲んで盛り上がっていた。「いよう、どこでスキーやってたのよ?」と、あったかいストーブで顔の氷が溶ける頃、お刺身定食が出て来たよ。大間のマグロはもちろん竜飛でもとれる。ぜんざいモチのデザートまで頂いてごっつぁん。強風で漁港にぶっ飛ばされそうになりながらバスに乗り込み、百円で三厩まで。崖際の一本道、細長い漁師部落、横殴り吹雪、踊り狂う波濤。北日本、冬の海岸最高。
三厩(みんまや)の由来は、義経がここまで逃げて来て、海を渡りたいと願ったとき、カミサマが空飛ぶ三頭の馬をよこしてくだすった伝説があるらしい。アイヌ語地名と、平安時代の故事由来とが混在。
蟹田でちょうど海峡線の白鳥が乗り換えできるので、カンノ君と別れる。こんなアホな計画に共感してくれてありがとうよ。ではまた来月。
コメント
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猛吹雪の中、お疲れ様でした。
記録を読んでいるだけで、ドキドキしっぱなしであります。
「増川岳」カッコイイですねえ。ホレました。
しかし、おウチでも山でも「キビシイ」東北の冬を楽しんでいるyoneyamaさん。
スゴイ です。
増川岳、この角度からの姿の写真はこれまでたぶん無かったと思いますよ。
独立峰に近いので、前回未遂に終わった四ツ滝山からのルート以外だと、なかなか良いラインが引けず、どうしたものかと思っています。この山だけ登りに行くのでは芸が無いですし。
と、また地形図を見ながら酒飲んでました。
竜飛岬は、仕事でぐるっと時間をかけて調べ物をした
ことがありました。海岸近くは日本海側はとくに断崖が
続いて、きびしい地形と感じてきました。
その上に連なる山も、地形がきびしいのですね。
山は標高よりも、季節ごとの気候・気象の条件と地形
の要素が、大きく効いてくるエリアもあるんですね。
ヒバは、植林地だけでなく、天然ものも?
雪の時期ならではの踏破ルート。
稜線は、やぶと雪庇で滑るよりもシール滑りの区間が
多かったのかなと思います。
樹木も伏せ、ねじ曲がる強風・多雪の尾根を、ついに岬
までたどった敢闘精神に拍手です。
タニガワさん
今回の鋸岳周辺には営林署のヒバの実験林もあり、もしかすると植林ものかもしれませんが、直径80センチ近いのもありますから、とても年代物と思います。ヒバの成長は杉に比べるととても遅いということなので、あまり植林もされないのです。ただ、今回のような人の行かない、林道も無い、算用師峠以北のようなところのものは天然林かもしれないと思っています。
さすがに未踏ではありませんが、人が通るのは何年ぶりかのことでしょう。
こういう山行では130センチの短いスキーが大変重宝しました。セッピのすぐ下をザーッと滑り降りるのが快適でした。
私も一時、津軽半島の単独スキー横断を考えた事があり、毎日地図とにらめっこしていた時期があります。結局、休みが取れずに諦めました。
最近のyoneyamaさんのこの周辺の記録を拝見し、同じ事を考える人が居るんだなあと思っていました。
本来は、積雪期アルパインクライミングが好きなのですが、近場に要求を満たしてくれる場所と休みが無いので、やむなく、岩手青森の雪山を歩いて登るだけになっています。yoneyamaさんは休みが取れる状況のようで羨ましく拝見しています 。
パミールさま
転勤してその町から行ける山に、いちばんすっきりした独自の計画を練るのが好きです。この時期、八甲田に行ってもろくに行動できない事を考えると、1000m未満の山域で冬でもたのしく山スキーで遊べる青森はとてもいいですね。
休みがとれるのはありがたい事です。僕も基本日帰りか一泊ですが、日帰りでも面白いルートはいくつも浮かびました。
青森でアルパイン好きというのは無理がありますね。
おっしゃる通り、青森の山は、いわゆる低山ハイキングの領域がほとんどです。冬の八甲田もただの平原をラッセルするような感じになり、あまり魅力的ではありません。
学生の頃、少ない小遣いを使って、アルパインを求めて、北アルプスや谷川に出かけましたが、条件が悪く登れなかった事も多くありました。谷川の滝沢リッジ、鹿島槍北壁は登れずじまい、利尻南稜登攀は、2度の悪天候(風が強く、歩行が出来なかった)で失敗、最終学年の春にようやく登れました。また、ほとんどのルートが初見参での登攀であったので、地域研究的なものもありませんでした。
青森在住ではアルパインは無理ですね。
そうだ、信州あたりに別荘を買おう 。けど、休みはどうしよう 。
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