雪の八丁平へ☆北兄谷右岸尾根〜峰床山〜914m峰
- GPS
- 05:36
- 距離
- 12.5km
- 登り
- 1,009m
- 下り
- 998m
コースタイム
天候 | 雪 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
北見谷右岸尾根は一般登山道なし、テープ類もなし 中村乗越〜p914〜江賀谷林道終点には一般登山道はないが頻繁にテープあり 尾根の末端部からの着地は難しいので、もしも行かれるようであれば感想をご参考に |
写真
感想
今年は次男は何度か雪山に連れて行く機会を作ることが出来たのが、長男を伴って雪山に登る機会がないままだった。もう雪山のシーズンは終わってしまいそうではあるが、今季の雪山に一度は行ってみたいという長男の願いを叶えるべく、この日、久しぶりに長男との山行を約束していた。しかし予報では近畿は全般的に雨模様だ。湖北や湖西の山を考えるも、北に行けば行くほど雨が多いようだ。京都では雨の降り始めは11時頃の予報ではあったが、早くも朝から雨が降り始める。
山行先は八丁平を考える。昨年は厳冬期から晩秋にかけて計6回も足を運んだのだが、今年はまだ訪れていない。先週の日曜日にも京都バスに乗り、峰定寺経由で八丁平を目指すも、工事による通行止めで鞍馬の手前、貴船口でバスを降ろされてしまったので、山行先を止む無く天ヶ岳に変更したのだった。
朝から雨雲レーダーと睨めっこをしていたが、雨雲が切れる頃合いを見計らって出発する。江賀谷林道の入口に車を停め、雨の中を歩き始めると間もなく雨足も弱くなる。北兄谷の入口を過ぎたところで植林の尾根に取り付くと、いつしか雨も上がっていた。
八丁平の北側、オグロ坂峠から東に延びる尾根の先はいくつもの小さなピークが集合して複雑な地形を形成している。標高点は南側の小さな935m峰につけられているが、ここよりも高いピークがいくつかある。それらのピークを縫うように結ぶ尾根となだらかな谷の源頭部は山毛欅、小楢の自然林が美しい林相を形成しており、山の静かさと相俟って魅力的な山域である。今回取り付いた尾根は北見谷の左岸をなし、この山域の西側で最も高いと思われる950mピークのすぐ南側に向かってほぼ直線的に登ってゆくことになる。時間的な余裕と天候が良ければこの山域の東から入りたいところではあったが、この尾根を選んだのは長男に少しでもこの辺りの雰囲気を伝えたいという私の意図もあったのだった。
最初の斜面を登ると植林地はすぐにも自然林にかわり、後は地形図の通り緩やかな登りとなる。鹿のものと思われる踏み跡を辿り、馬酔木の藪を右に左に避けながら進む。尾根を登るにつれ、背後には樹間から森山岳を望むようになる。森山岳に至るための鉄塔尾根は既に雪がほぼ消失している。
標高800mを過ぎて、尾根がなだらかになるとあたりは薄く積雪している。おそらく昨夜に降雪したばかりと思われる新雪であり、その下には根雪はほとんど見られない。少し前までは雪は全くなかったのであろう。新たに降り積もった雪の上には動物の足跡も全くといってもいいほどに見られない。新雪のサクサクとした感触は、尾根上部で雪が増えるにつれ、モフモフとした感触に変わる。雪山に行きたいという長男の期待に図らずも添うことが出来たようである。
尾根上部で傾斜も緩やかになると山毛欅が目立つようになり、美しい林相が広がる。途端に下草も少なく、歩きやすい尾根を辿り、オグロ坂から延びる尾根と合流すると尾根上にテープが現れる。ランチにしようと950mピークに向かうのだが、ピークにたどり着いた瞬間に強い北風と共に降雪が始まった。しかし、尾根に戻るとすぐにも雪はやみ、鎌倉山からの尾根と合流するあたりになると雲の中から鎌倉山が姿を現す。右手の武奈ヶ岳もすっかり冠雪しているようだ。丁度、一年ほど前の厳冬期、michikusaさんと出遭った地点である。
オグロ坂を目指して尾根を西に向かうと、右手に桑谷山や久多側流域の山々が目に入る。わずかな標高差のせいなのであろうが、これらの山には全くといってもいいほど雪が見当たらない。
オグロ坂峠に着くと長男がここは来たことがあると云う。今にも雨が降り出しそうな蒸し暑い夏の日、長男を伴って八丁平から峰床山を訪れたのは一昨年の夏であった。八丁平に入るや否や長男の靴にはヒルが纏わりついたのは記憶に生々しく残っているのだが、上空からの雷の音を聞きながら峰床山の山頂から逃げるように下ったのだが、私が方向を間違えてこのオグロ坂に下ってしまったことを思い出すまで少しの時間を要した。
オグロ坂から八丁平の方にわずかに下ったところにある水場ではやはり滾々と水が流れている。再び雪が降り始めたところであったが、この水場のあたりは風も緩いので、ここで湯を沸かしてランチとする。
食事をしている間に雪はすぐ止んで、八丁平の上には青空が広がり始めた。晴れ間が見えている間にとまずは峰床山の山頂を目指することにする。峰床山の山頂もあとわずかだ・・・しかし、山頂の手前になって急に北側から雲が沸き起こったかと思うと、無情にも瞬く間にあたり一帯は雲に包まれ、雪となった。
山頂にたどり着いた時はやはりガスで視界は遮られたままである。山頂にはおそらく数時間以内のものと思われる数名の足跡があった。足跡は南の尾根から往復しているようだ。
長居は無用なので、折り返して八丁平の北西部へと至る尾根を辿る。この北西部の草原は無雪期は防鹿ネットが張られているのだが、積雪期になるとこネットを外すので自由に闊歩出来るのが魅力だ。尾根から八丁平へと降りると、鹿がピョンピョンと跳ねながら湿原の中へと消えてゆく。
たまたま風雪が弱まったのか、山に囲まれた空間であるからなのか判らないが、風も雪もおさまり、静寂が支配する雪の庭園となる。直近に降り積もったであろう雪の純白さが過ぎ去った季節に再び迷い込んだかのような非現実感と幻想性を一層際立たせている。時折思い出したかのようにそよ風が迷子のような雪の名残を運んでゆく。
鹿が消えていった後を負って湿原の端を歩いてみる。湿原の泥濘の上や樹の根元では既に雪が融けてしまっており、春を待つ湿原の息吹のようである。とはいえ、まだまだ積雪している箇所は十分に多く、湿原の中を自由に歩くことが出来るという雪の季節ならではの贅沢を堪能させて頂く。湿原の中を蛇行する小さな川を渡って、南西のベンチと看板のあるあたりに着く。初めて長男を伴って来た時を含め、ほとんどの山行でランチをとるお決まりの場所だ。前回、michikusaさんと再会し、wildyukkyさんと共にランチをご一緒させて頂いたのもここであった。ここから南西の916m峰の斜面を登ってみる。湿原を俯瞰する適地の一つだ。雪に埋もれた夏道を辿り橋を渡る。
再び雪の勢いが強くなってきたので、八丁平の南東914m峰から江賀谷林道の終点を目がけて北東へと延びる尾根を下ることにする。中村乗越からのルートは谷道となるので積雪期は避けたいところだ。尾根に上がると914m峰にかけてはコナラや楓が目立つ尾根を緩やかな辿ることになる。
914m峰でPH氏のプレートを確認するとここからは一気に急降となる。まもなく尾根の藪が密集する地点があるので、植林地の端を歩いてから尾根をトラバースする必要があることを、昨年7月にこの尾根を登ったときの記憶から思い出す。すぐに尾根には赤テープが頻繁に出現するので、下る尾根筋が正しいことを確信出来る。いつしか赤テープを目にしなくなったと思い、GPSを確認すると再び尾根芯から南にずれていたことを知る。再び斜面をトラバースして、尾根芯に戻る。
尾根の下部になると両側から沢の音が聞こえるようになる。江賀谷の右俣の方に堰堤が見えるので谷の方に降りてみるが、すぐには渡渉によい場所が見当たらないので、尾根の末端まで下ることにする。左手の斜面に見覚えのある鉄のワイヤーが巻きつけられたところから沢に降りて、対岸に渡渉する。最後は右俣と左俣の合流する手前でそれぞれの沢を渡って、林道終点にたどり着くのだった。
林道を歩き始める、雪はいつしか冷たい雨に変わっていた。標高差数百メートルの間に雪が雨に変わるのだろう。車を停めた林道の入口に戻った頃にはその冷たい雨も上がるところだった。車に乗り込み京都への帰路につくと、花折トンネルと抜けると景色が一変する。空はすっかり晴れて、薄くローズピンクの混じったラヴェンダー色の空が京都市街の方角に広がっているのだった。しかし、路面は濡れているので、先程までは雨が降っていたのだろう。「比叡山にしておいたら良かったかな」と冗談交じりに云うと「いや、雪があったから八丁平が良かった」と長男が応える。
家に帰り着くと膝蓋骨の骨折から治りかけの左膝は痛みを覚えるのだったが、914m峰からの下りのせいか、長男も両膝が痛くなったらしい。昨日からの悪天候も、雪山への山行を経験出来なかった長男に望外の贈り物をくれたようだった。
コメント
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yamaneko0922さん こんにちは。八丁平はまだ雪だったのですね。2月終わりに歩いた時、春のように暖かかったので、1か月経ち、もう雪がほとんどとけた風景を勝手にイメージしていました。
峠のお地蔵様は姿を現したようで。でも八丁平の春はもう少し先のようですね。
江賀谷林道途中から、このあたりなら登れるのではないかと、北側斜面を時折見上げながら歩いていましたが、今まで取り付く勇気がありませんでした。2月は、雪の残る谷をそのまま登る無知な歩きで苦労しました。また、行ってみたい道が増えました。
michikusa78さん コメント有難うございます。
2月のレコで中村乗越を通る道が難しいことを教えてくれたお蔭で914m峰からの下りを選択しましたが、このルートは急下降が連続するので下りにはあまり適さないようにも思います。今回の北見谷右岸尾根は歩きやすく、積雪期に八丁平に北から入るには最もよいルートではないかと思います。是非、試してみて下さい。
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