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Yamareco

記録ID: 179
全員に公開
沢登り
尾瀬・奥利根

奥利根/利根川本谷

2004年08月11日(水) ~ 2004年08月13日(金)
 - 拍手
kamog その他4人
GPS
56:00
距離
23.4km
登り
1,114m
下り
1,509m

コースタイム

8/10 三国川十字峡(下山口)に車デポ=湯桧曽駅(ステビバ)
8/11 湯桧曽駅5:15=5:45矢木沢ダムゲート5:58=6:15矢木沢ダム駐車場6:40=
   (奥利根マリン・ボート)=割沢出合7:10−見返り峠−8:05小穂口沢出合
   −9:40井戸沢出合9:50−10:20越後沢出合10:40−11:00ヒトマタギ−13:00
   滝ケ倉沢出合(C1)
8/12 4:30起床6:05−オイックイ−7:40裏越後沢出合8:25−8:45定吉沢出合−
   12:10丹後沢出合−13:00大利根滝13:50−ハト平−15:00佐市平(C2)
8/13 4:30起床6:07−8:0510m滝−8:30人参滝(15m)−9:00深山滝(20m)
   −10:00赤沢滝(3段20m)−11:05水上滝(15m)−三角雪田−
   12:40稜線−利根川水源碑13:20−丹後山−十字峡
天候 8/11 晴れ
8/12 晴れ
8/13 晴れ
過去天気図(気象庁) 2004年08月の天気図
アクセス
コース状況/
危険箇所等
◆コース概要
  ○矢木沢ダムはかなり手前にゲートあり。通過時間は6:00〜18:30。
  ○奥利根各沢へのアプローチは奥利根マリンサービスに
   ボートを事前予約。今回は5人+荷物を1回の渡船で30,000円。
   渇水のため予定より手前の割沢出合がバックウォーターとなる。
  ○割沢出合は泥田状態なのでなるべく岸に沿って歩くとはまらなくて済む。
   見返り峠の入口に赤テープがあるが、その先の踏み跡は不明瞭。
   適当な所を藪漕ぎで小さな尾根を越し沢へ下りる。
  ○一ノ沢までは平凡な河原で徒渉も膝程度だった。雨量観測所は右岸に
   はっきり見える。
  ○シッケイガマワシになると両岸が切れたってくるが今回は特に問題なく通過。
   又右衛門ケ淵も腰までで通過。何とここに小さなカモが泳いでいた。
   巻淵は右側の岩場を卦蘢度の登りで通過。
  ○越後沢出合の奥に小さなビバークサイトあり。テント3張くらいか。
  ○剣ケ倉土合は狭いゴルジュ帯で水量多い時は通過困難であろうが今回は
   水線通しに通過可能。
   ヒトマタギは水線通しに行けばすぐわかる。あの利根川をまたげる所だ。
   時々出てくる小滝は少しの泳ぎとヘツリで突破。
  ○滝ケ倉沢出合のビバークサイトは、滝ケ倉沢出合の小滝左側の岩を登り、
   踏み跡を追った20m奥、草をはらった高台にある。テント数張り可。
  ○オイックイ中にスノーブリッジは5個。
   1個目--下北沢の手前辺り。最近崩壊したばかりのようでブロックが
       重なった状態。ブロック上を踏み抜かないように通過。
   2個目--下北沢出合の先。30mくらいの長さで下をくぐる。
   3個目--中越後沢出合の手前。30mくらい。下をくぐる。
   4個目--3個目の少し先。30mくらい。下をくぐる。流れ右側のバンド
       上を歩き、最後は崩れたブロックを下る。
   5個目--裏越後沢と中越後沢の中間辺り。5mくらい。下をくぐる。
  ○裏越後沢出合にビバークサイトありの情報があったがどこにもないような感じ。
  ○定吉沢出合の方が小さいビバークサイトが確保できそう。
  ○定吉沢から東俣沢間の2つの小滝は少し泳いで登る。
  ○7m魚止ノ滝は左側のカンテと草付きを登るが、草付きがやや悪い。
   登った後、踏み跡を追ってトラバースしゴルジュ内3つの滝をまとめて巻く。
   沢に降りる所が悪い。
  ○丹後沢手前の5m滝は左右どちらも登れるがバランスを要する。
   左側の最後は水の流れるスラブの端に滑らないよう足を置いていく。
  ○事前情報で丹後沢出合は先が見通せない雪渓があるとのことであったが、
   すでに崩壊しており問題なく通過。
  ○すぐにある3mCS滝も微妙なバランス。
  ○丹後沢コボラ出合は左岸を小さく巻くが草付きで脆い。
  ○大利根滝20mは右側の壁を登るが、スタンスがほとんど左に傾いており
   少し慎重に登る(卦蕁棔法E个蠕擇辰晋紂∫を5m漕ぎ、沢に向かって
   藪を支点に降りるが、最後はスタンスがなくドボンした。
  ○ハト平はタープ2枚くらい設営可か。単独の先行者がいた。
  ○ハト平後の2段5m滝は左岸の岩場から高巻くが、トラバースして沢に
   戻る下り口が脆い。
  ○佐市平はハト平以上によいビバークサイト。タープ3張くらい設営可。
  ○人参滝手前の10m滝は苔で滑る。右側から登る。
  ○人参滝15mは右側の顕著な痩せたカンテから上部ブッシュを高巻く。
   ブッシュに入って約10m登り、トラバースしてから沢に下りるが
   踏み跡はほとんどないので特に下り口が苦労する。
  ○深山滝20mは右壁を登る。卦蕁椶世念のためFIXロープを張る。
  ○赤沢滝3段20mの1段目は左側の乾いた岩壁を登り、2段目は水流中を
   滑らないように登る。3段目は右側壁が楽そうに見えるが非常に脆い。
   私はこの右壁を登っている最中ホールドが崩壊し3m落ちた。
   シャワーになるが真ん中を落ち口下まで登り、左壁からCSの上に出た方
   がよい。
  ○赤い岩の水上滝15mは右の乾いた岩を登る。(卦蕁棔
   その上に続く5m滝は右側のバンドとブッシュづたいに登る。
  ○本流源頭へは水の多い方を常に詰めていけば、利根川水源である三角雪田
   と呼ばれる三角形の雪田が現れる。もうあと数十cmしか残っていなかった。
   その上を10mも登れば登山道に出る。水源碑は左側50m歩けばある。
  ○丹後山西尾根を下った十字峡までの三国川林道には、時期柄小さなメジロ
   アブが発生していた。虫除けスプレーを塗り捲っていたので多少効き目は
   あったのかもしれないが、それでも一人に対して数十匹が群れをなして
   まとわりつきとてもうざかった。十字峡までが彼らの縄張りのよう。
  ○十字峡の観光センターはすでに17時過ぎていたので閉まっていた。
   自動販売機は稼動。そこから右岸通りをしゃくなげ湖釣りセンターへ行く。
   18時だったので当然閉まっていた。ここも自動販売機稼動。湖の岸辺に
   近づくと携帯がかろうじて通じた。

遡行グレード:5級
矢木沢ダムから渡船で入渓
2004年08月11日 06:27撮影 by  E3100, NIKON
8/11 6:27
矢木沢ダムから渡船で入渓
奥利根の主、奥利根マリンサービスのモリさん(高柳さん)
2004年08月11日 07:08撮影 by  E3100, NIKON
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8/11 7:08
奥利根の主、奥利根マリンサービスのモリさん(高柳さん)
バックウォーターは随分手前の割沢出合から(どろどろ田圃状態^^;;)
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バックウォーターは随分手前の割沢出合から(どろどろ田圃状態^^;;)
見返峠の小尾根を少々の藪漕ぎで赤倉沢へ降りる
見返峠の小尾根を少々の藪漕ぎで赤倉沢へ降りる
快適なシッケイガマワシ
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快適なシッケイガマワシ
シッケイガマワシ
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シッケイガマワシ
ヒトマタギでお決まりのポーズ
この年は剣ケ倉土合を水線通しに行けた
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ヒトマタギでお決まりのポーズ
この年は剣ケ倉土合を水線通しに行けた
剣ケ倉土合
剣ケ倉土合
滝ケ倉沢出合右岸20m奥にある幕営適地
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滝ケ倉沢出合右岸20m奥にある幕営適地
岩魚骨酒〜
オイックイに入る
オイックイに入る
オイックイ1つ目の雪渓(崩壊していた)
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オイックイ1つ目の雪渓(崩壊していた)
オイックイ2つ目のスノーブリッジ
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オイックイ2つ目のスノーブリッジ
3つ目のスノーブリッジ内から撮影(tory氏撮影)
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3つ目のスノーブリッジ内から撮影(tory氏撮影)
4つ目のスノーブリッジ処理
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4つ目のスノーブリッジ処理
5つ目のスノーブリッジ
非常に不安定
5つ目のスノーブリッジ
非常に不安定
魚止ノ滝
右岸を攀じる
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魚止ノ滝
右岸を攀じる
大滝は左岸岩壁を登る(卦蘢度)
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大滝は左岸岩壁を登る(卦蘢度)
ハト平はこのカヤトの中に快適な幕営地がある
ハト平はこのカヤトの中に快適な幕営地がある
我々はハト平からさらに30分上流の佐市平と呼ばれる平地にC2を張る
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我々はハト平からさらに30分上流の佐市平と呼ばれる平地にC2を張る
釜を泳ぎ滝を攀じる
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釜を泳ぎ滝を攀じる
細かいスタンスのヘツリ
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細かいスタンスのヘツリ
赤岩滝
3段目が核心
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赤岩滝
3段目が核心
源頭
三角雪田はほとんど消失していた
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源頭
三角雪田はほとんど消失していた
利根川水源碑方面
利根川水源碑方面
撮影機器:

感想

いつからだろう。利根の谷に深い憧れを抱き始めたのは。
沢を遡行する者にとって、いつかは憧れと畏敬の念を抱く対象となるこの険峻な谷を知ったのは
ご多分に漏れず小泉さん(ゼフィルス山の会)著「奥利根の山と谷」であったり
沢屋さんではあまりに有名な高桑さん(浦和浪漫山岳会)の著作であったりした。
しかし自分の貧弱な遡行経験では自ら計画を立てることなど叶う自信もなく
2004年3月神奈川県連総会後の飲み会で、遭対部のSさん(相模労山)から
酒の席とはいえ、話を持ちかけられたときは二つ返事であった。
「夢が現実になるチャンスが来た!」
大きな目標ができたその時から、遡行する8月に沢登り能力をフルに発揮できるよう
ピークをそこに合わせられるような自分自身の遡行トレーニング計画を立て始めた。

■8月10日(火)------アプローチ とうとう明日が来てしまった------

今年に入って、一旦入渓すると撤退が厳しい沢、泳ぎとヘツリを多用する沢など
事前にたくさんの経験ができたので恐れるものはないさ。
気がかりなのは遡行期間中の天候(降雨、雷雨による増水)と今年の残雪量だ。
週間予報と天気図では、不安定な大気状態は今日までで、明日からは安定するとのこと。
そして残雪量については、群馬県藤原、新潟県塩沢、福島県檜枝岐3地点の
11月から7月まで過去7年間の毎日の積雪量、気温、日照時間、降水量を比較して
平年よりも谷に出てくるスノーブリッジは少ないと予想を立てた。
このチャンスを逃したら次はいつになることか。
「行くっきゃない!」

昼過ぎに車に荷物を積み込み出発。
柄にもないが「もしも」の時のために、部屋の荷物を整理したり、会関係のデータを
主要なメンバーに送ったり、高まる不安に耐えきれず弱気メールを送ったりもした。
正直僕は意気地なしだ。
でも初めての沢に行くなら、このくらいの緊張を持っていた方がよいと思う。

午後7時。関越道六日町ICを降りてすぐのジャスコで小田原ナーゲルのTさんと待ち合わせ
2台で下山ポイントである三国(さぐり)川・十字峡に向かいKAMO号1台をデポ。
そのまま前泊する群馬県の湯桧曽駅に着いたのが21:30。
CLSさん、FさんとOさん(両名ともアルパインクラブ横浜)の3名は
O車で未明1:30頃駅に着き仮眠をとった。

■8月11日(水)------いきなり核心?でもあとは驚くほどスムーズ------

奥利根の沢に入るにはボートで渡船しなくてはいけない。
以前は奥利根湖左岸に踏み跡がついていたが、今はまったく藪に消滅してしまい、
湖のバックウォーターである小穂口沢出合まで2日はかかると言われている。
このエリアの主である高柳さんに2ヶ月前から予約しておき
我々は矢木沢ダムゲートが開く6時に待ち合わせ
6人も乗ればいっぱいになる釣り用のモーターボートで湖を渡る。
波しぶきと湖面に映える朝日が眩しい。
半袖の身には肌を刺すような朝の風切り。
胸がどきどきするのがわかる。
「とうとう来てしまったんだ・・・」
バックウォーターが近づくにつれ、湖面に凄い量の水蒸気が覆っている。
「ほれっ、利根の沢がいかに冷たいかわかるだろ!」
高柳さんの軽快な話は屈託がなくとてもおもしろい。
「貯水量少ねぇからなぁ・・・ほーい!間もなく終点でごぜいますよぉ!」

我々が予定していた小穂口沢出合よりも、遙かに手前の割沢出合でバックウォーターになってし
まった。
泥状の湖岸に降り、高柳さんに教えてもらった見返り峠入口を目指して歩く・・・が!
普段は水底であるこの泥岸は、膝まで潜るような田圃状態だった。
Oくんが自分の足を抜くのに5分も格闘。いきなり核心かぃ!
何てことはない。なるべく岸に沿って歩けばそんなに埋まらないで済むのであった。

見返り峠への入口奥に一枚の赤布があったが、踏み跡はすぐに消え、またまたいきなりの藪漕ぎ

小さな尾根を乗り越える。降り口を少し探したが、何とか赤倉沢に降り立ち本流に戻れた。
利根の本流は小さな粒ぞろいの小石を敷き詰めた幅の広い平凡ではあるが美しい流れであった。

雨量ロボット計を右岸に見て、次第に両岸は切れたってくる。シッケイガマワシに入ったのだ。
「シッケイ」とは「カモシカ」のことで、カモシカでさえも避けて通るという意味であろう。
初日第1番目の核心と覚悟していたが、このところの小雨のせいか、
又右衛門渕さえも腰くらいの水ですんなり通過できる。
と!この渕に聞き慣れた鳴き声が。
「カ・・・カモがいる!」
何でこんな山奥にコガモがいるんだ!
何でここまで(俺を)追いかけて来たんだ!
渕を通過するとヤツは消えていた。

泳ぎと微妙なヘツリで突破するはずの巻渕が確認できず
ビデオでも見た見覚えのある顕著な沢が左から合わさる。
「あれっ?ここ越後沢だよ。えぇっもう着いちゃった?巻渕は?」
「さっき5mくらい登った岩がそうじゃない?」
大休憩後、第2の核心である剣ケ倉土合と呼ばれる長いゴルジュ帯は
今日の水量ならば巻き道を使わずに行けそう、と判断して水線通しに進むことにする。
途中渕や釜が現れ、ザックを浮き袋替わりに少し泳ぐ箇所も出てくるが
拍子抜けするほど楽に突破。
もちろん彼の有名な「ヒトマタギ」(大河利根川を跨げる狭くなった所)では
みんな子供に帰ったように記念写真を撮る。
でも結構股を開かなくてはならなくて大変だった。

左岸から4mくらいの滝が出合う滝ケ倉沢には13:00着。
有名な沢屋さんの遡行記録よりもやや早い足取りだ。
「こんなに順調に来ちゃってこれからが怖いよね」
そんなツケが回ったのか、僕は夕方から激しい頭痛に見舞われ
滝ケ倉沢出合上部のビバーク中、夜中に3回も吐いてしまった。
何が原因かは不明だが・・・。

■8月12日(木)------恐怖のスノーブリッジ------

何とか頭痛も治まって6:05出発。
今日は遡行中一番の核心「オイックイ」の通過が待っている。
語源は不明らしいが、両側がものすごく切れ立った狭いゴルジュが延々2kmも続く。
増水したら逃げ場がないため、ここを通過するには天気とそして・・・
あの恐怖の橋状になった雪渓処理があるところ。
当然、朝方まだ気温が低い時間帯に通過するのがベスト。
ドキドキとワクワクが混在しながら遡行していくと
谷が曲がった先に冷気が立ちこめている。
「きたよ〜きたきた」
1個目の雪渓登場!こいつは最近崩壊したばかりらしく、1〜5mくらいのブロックになって
谷を埋め尽くしていた。踏み抜かないように上を通過。
ここから雪渓のオンパレードがあと4カ所出てきた。
2個目。今度は見事なブリッジ状。しかも中は冷気に覆われ真っ暗に見える。近づいてみる。
よ〜く見ると谷は左に曲がっており、その先にうっすら明かりが見える。
一人ずつ2分間隔でスノーブリッジの下を通ることにする。
入ってみれば意外と先が見える。
上からは水滴がボタボタと流れていた。
「神様、どうか崩れないで!」
大きな足音を立てないよう、それでも早足で光の方に気は焦る。
この穴から出たときの「ホ〜ッ」という感覚は経験した者でないとわからないな。
3個目。入口はすでに剥離崩壊している。今度は右に曲がっているようだ。これも下を通過。
4個目。ほぼ真っ直ぐなようだが、水線通しでは行けず、右端の少し広いバンド状を駆け抜け
る。
ここは足下駄がきれいになっていて、至る所に外との穴が開いていた。
バンドを終わると、下の沢に戻るまで崩れたブロックを5mほどクライムダウンする。
すぐに5個目。今度は寿命あと僅かの長さ5mくらい。しかしいつ崩れてもおかしくないくらい
不安定。
一目散に駆け抜ける。しかもそ〜っと。

裏越後沢出合到着。難所オイックイを無事に通過できたことで一同安堵し大休憩。
SさんとOくんが待ってましたとばかり竿を出し始めた。
いきなりSさんがHIT!今回初めての尺岩魚を釜から引き抜く。
ナイフで内臓をえぐり塩漬けにする。
「殺生ができない僕にはやっぱり釣りは無理だぁ」

この先もゴルジュは続き、小さいながらも微妙なヘツリ、高巻き、泳ぎを交えた滝や釜が何カ所
も出た。
1日目は水量のせいか「せいぜい2級の沢だねぇ」なんてことも言っていたが
だんだんと上級の沢の真価が発揮され始める。
特に高巻きは不明瞭で沢に戻る降り口が悪い!
魚止ノ滝で椎Sさんが2尾目の尺岩魚を上げた。
この魚止ノ滝からいよいよロープの出番となるが、さすがに各会の沢猛者!
ロープワークの手順、ルーファイなどとてもスムーズで時間がかからない。

さぁていよいよ利根川本谷のシンボルとでもいうべき20m大利根滝の登場だ!
この栄えある滝のリードはCLSさんにお願いした。
僕はこの滝は一番偉い人が登るべきだと思う。
でも逆層でスタンスがみ〜んな左に傾斜していて意外と悪いんだな、これが。
先ほどの魚止ノ滝で単独の釣り屋さんが抜いていった。
この人は翌日もそうであったが「ちょっとでも滑ったら死ぬでぇ〜」なんて所をロープなしで
ひたすら進んで行く。釣り師と思われる。相当な経験を積んでいるのだろうが、見ているこっち
が肝を冷やす。
彼が泊まるハト平から先に進み、またまた微妙な高巻きを処理して、我々はガイド集に掲載され
ていた
「佐市平」と呼ばれるナイスなビバークサイトでタープを張った。
焚き火で岩魚を焼き、酒を酌み交わす。空は大天の川と流れ星多数。至福のひととき。
Fくんは焚き火の傍ら河原で眠っていた。
明け方、Tさんの温度計では9度。シュラフカバーだけで寝ていた面々は寒くて眠れなかった
らしい。
(僕は小型のシュラフを忍ばせていたのが大正解!みなさんゴメン)

■8月13日(金)------今日は滝!滝!滝!の連続 そしてファイナルへ------

「あと距離にして僅かだけど、最後まで緊張して行こうぜ!」
自分に言い聞かせるごとくエールを切って出発!
夢に見た本谷の稜線に今日、立てるのだ!
小さな連瀑帯をどんどん通過し、大きな滝はあと5つだ!
滝の詳細は記録に綴ったので割愛するが、短い間隔で次から次へと現れる滝はロープ出しっぱな
し!
クライミンググレードは部分的に元蕕出てくる程度だがどれもこれも緊張する直登や高巻きば
かり。
滝で高度を稼いでいくのが登るとよくわかる。
ようやく5つの滝を終えて視界が開けていく。
上の方には丹後山から大水上山の稜線も見えだした。
「あと少しだ!あと少しで稜線に立てる」
フィニッシュした時のイメージを思い描くと、なぜだか涙が溢れてきた。
そして利根川の最初の一滴となる「三角雪田」が現れた。
「雪、雪は?・・・もうなくなっている?」
「あ〜あったぁ」先頭のOくんの声に僕もダッシュ!
おそらく今日なくなるであろう雪渓はあと数十cmだけ湿った枯草の上に残っていたのだ。
泥混じりの雪をなりふり構わず僕は口に運んだ。
さぁ稜線だ!急な草付き斜面を一目散に登る。
最後の草を分けたとき、目の前に登山道が。
「やったぁ!うぉ〜やったよぉ」
誰彼構わずハイタッチ。
自分で涙声になっているのがわかった。
こんな感動は本当にいつ以来だろう。
憧れが、夢が、現実になった。
「Dreams come true!」「We made it!」
そんな言葉が頭の中で素直に出てきた。
「こんな天運を与えてくれてありがとう」
利根川水源碑で少しは心配をしてくれていたかもしれない会のメンバーにすぐメールした。

下山中僕は考えていた。
長年の夢を達成した次に自分は何をするのであろうか?
もう難しい沢はいいや、と思うのだろうか?
それとも奥利根の他の難渓に更に活動の場を広げていくのだろうか?
答えはしばらく出ないと思う。
素直にその時感じるモチベーションに従えばよいのだから。
でも天狗にはならないでいこう。
来週も再来週も行く沢は世間の難度は低いかもしれないけれど
いつでも緊張感を忘れないでおこうと思う。

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