荒沢岳〜兎岳〜平ヶ岳〜赤倉山〜景鶴山
- GPS
- 104:00
- 距離
- 52.3km
- 登り
- 3,752m
- 下り
- 2,943m
コースタイム
4/29(日) 荒沢岳西峰〜灰之又山〜巻倉山〜兎岳〜大水上山〜藤原山〜にせ藤原山
4/30(月) にせ藤原山〜滝が倉山〜剱が倉山〜平ヶ岳〜白沢山〜大白沢山北西JP
5/01(火) 大白沢山北西JP(赤倉岳往復)〜大白沢山〜景鶴山〜与作岳〜東電小屋〜山ノ鼻〜鳩待峠[下山]
5/02(水) 予備日
天候 | 4/28(土) 快晴 4/29(日) 快晴 4/30(月) 薄曇り 5/01(火) 曇り時々晴れのち小雨、強風 |
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過去天気図(気象庁) | 2012年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー
鳩待峠〜戸倉まで路線バス(900円) 戸倉〜沼田駅まで路線バス(2100円) |
コース状況/ 危険箇所等 |
以下のヤブがハード ・荒沢岳の蛇子沢左岸尾根上部 ・大水上山〜藤原山手前 ・にせ藤原山手前〜剱が倉下り 赤倉岳は悪天時はルートを失いやすいので注意。 景鶴山山頂直下の雪のつき方が悪い。滑落に十分注意。 |
写真
感想
4/28(土) 快晴
[入山]銀山平8:45〜尾根取付(ログハウス村)〜1649mJP〜1750m〜15:45荒沢岳西峰△
行動時間:7時間
新幹線の東京始発に乗り朝8時前にJR小出駅に到着した。予想通り客待ちのタクシーがいたので銀山平まで乗せてもらった(7950円)。運転手は珍しく若い女性の方だった。「今の時期、駒ヶ岳が人気ですよ」というので「私は荒沢岳から入ります」というと、荒沢は雪のある時期はとても危ないという。確かに荒沢岳は前クラ直下の登りが危険で夏でも事故が多い。雪の時期は登攀道具が要ることは承知していた。しかし今回自分が登るのは1本西の蛇子沢を挟んだ左岸尾根だ。大変急な尾根なので雪があまり付かずヤブこぎは多いが、危険は少ないはずである。元々道のないマイナー尾根なのでタクシーの運ちゃんといえども知らないようだった。
蛇子沢にかかる赤い鉄橋のところで車から降り、尾根の取付を探る。橋のすぐ横からでも取り付けたのだが、自分はログハウス村の雪の台地を5分ほど歩き、遠くに見えている針葉樹の尾根に取り付いた。1時間ほどで2つの尾根は合流した(どちらも大差ないと思う)。
標高1200mほどで蛇子沢側からの小尾根と合流するが、ここまでは斜度も緩く雪がきちんと付いており快適である。おまけに今日は目新しいトレースもあった。問題は合流点から1649JPまでの間で、尾根が急すぎて雪が全く付いていないため延々のヤブこぎが続く。おまけに遠目には本当に登れるのかと疑いたくなるほどの斜度だ。ところが驚いたことに、ヤブの行程のうち7割ほどは明瞭な踏み跡があった。獣道なのか人間が使っているのかは判然としないが有難い。しかし残りの3割くらいは激烈なヤブ… シャクナゲと杉の小木が主体で、大きなザックでは引っかかりまくるので疲れるし非常にストレスがたまる。また、2箇所ほど雪渓を登らざるを得ない箇所があるが、斜度が急なのでスリップ厳禁である。
1649mJPで西(右)からの尾根と合流する。更に1750mでもう1本西からの尾根と合流する。2本目の合流点手前は尾根通しに歩くとヤブが凄いのと雪庇が怖い。自分は2本の尾根の間の沢地形に逃げてジグザグに登ったが、ここの斜度も半端でないので注意が要った。その先は斜度の緩い雪原歩きで安全快適である。駒ヶ岳など南西方向の絶景も広がるが、あまりに疲労困憊してゆっくり眺める余裕もなく、意識朦朧としながら荒沢西峰にたどり着いた。それにしても初日からあまりにハードかつ神経質な行程…。この先どうなってしまうのかと少し不安になった。
山頂の少し下にテント設営したあと、荒沢本峰を往復してきた。荒沢岳は姿形良く、山頂からの景色も360度。登ってもスリルがあり面白いと三拍子揃った名山だ。数年前以来の再訪となるが、天気は今回の方が圧倒的によい。圧巻は駒ヶ岳と中ノ岳、明日以降歩く兎岳への稜線、大水上山から平ヶ岳のラインが手に取るように眺められた。核心部のにせ藤原山前後〜劔が倉山の残雪があまり無いのが気になった。ひょっとしてハードなヤブ漕ぎ…?
夜は風も弱く気温も高かったので、テントの入口を全て開け放して満天の星を眺めながら寝た。こんなに贅沢でいいのかなと思った。
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4/29(日) 快晴
荒沢岳西峰5:30〜灰吹山〜灰の又山〜巻倉山〜兎岳〜大水上山〜藤原山〜16:05にせ藤原山△
行動時間:10時間35分
今日も快晴。兎岳手前まではなだらかな稜線がつづきとても気持ちがよい。全行程で最も快適に歩けたのはこの区間だった。少々ブッシュが出ている箇所もあるが、夏道があるので苦にならない。途中の灰の又山は意外と大きく通過に時間がかかった。更に兎岳も想像以上に大きな山で、最後の登りは長くきつかった(距離の錯覚で兎岳はずいぶん近くに見えるが、騙されないよう)。
兎岳からお隣の大水上山まではすぐである。大水上の登りはかなり急だが一瞬で終わるのでそれほどでもない。ここは利根川の源流に当たり群馬県の最北端でもある。大水上山から尾瀬の大白沢山北西JPまで、日本海(只見川水系)と太平洋(利根川水系)の分水嶺をえんえん歩くことになる。道はないがこの時期入るパーティもちらほらいるようでトレースも確認できた。
大水上山から下ってゆくとすぐにヤブの尖塔があるが、この通過がかなりやっかい。下り側に残雪が無く、おまけに部分的に崖になっているので滑落すると大事になる。トラバースしつつ行くことになるが、植生は下向きに生えているミヤマハンノキのため、押し戻される力が働きしんどい。その後も藤原岳の手前ピークまで稜線上の雪庇は全て落ちており、いやというほどヤブが続いた。先週暑かったせいかもしれない。初日の蛇子沢左岸尾根のヤブに次ぐ大変な区間だった。
藤原山手前ピーク〜にせ藤原山はほぼ雪庇の上を歩け、快適である。午前中歩いてきた灰吹山や荒沢岳の稜線が再度迫ってくるので面白い。しかし今日はいかんせん気温が高くて暑すぎる。雪を首筋に当てたり、食ったりして体温を下げながら進む。にせ藤原山の手前で再びヤブになるが、ここは大きく群馬側を巻き、かなり下ってから登り返してにせ藤原のピークに出た。トレースはヤブを漕いでいたようだが、この区間は私の目論見の方が良かったようだ。
にせ藤原岳の山頂はヤブに覆われているため、少し下ってみるが、南斜面の雪の付き方が危なっかしく、ヒヤヒヤしながら下った(翌日振り返ってみると崩落していた)。幕営地も良いところが無く、これ以上進むと核心部のヤブに突入してしまう。日没まで余り時間もなく、やむを得ず雪庇の上をスコップで平らに切りかきテントを張った。雪庇といえども幅も長さも巨大で安定しており、すぐ崩落するものではないことも経験上見て取れた。でも空中で寝ているかと思うと何か落ち着かなかった。
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4/30(月) 薄曇り
にせ藤原山5:20〜滝が倉山〜劔が倉山〜平ヶ岳〜白沢山〜15:30大白沢山北西JP△
行動時間:10時間10分
今日は太陽がかすかに見えるくらいの高曇りで、悪くはない天気だ。昨日ほど暑くないのが有難い。今日の前半はハードなヤブこぎになると覚悟しており、出だしから猛然とヤブに突っ込む。しかし入ってみると若干の踏み跡も確認でき、それほど大変ではなかった。滝が倉山手前、稜線が90度に折れ曲がるピークに近づいたところで昨日と同じく群馬側を大きく巻き、ヤブをバイパス出来たのはまたもラッキーだった。稜線を行くか、斜面を巻くか…この当たりの見極め力は昨年の会津朝日岳〜丸山岳でかなり鍛えられたと思う。ピークでザックを下ろして休んでいると、後ろの雪庇が新潟側に大轟音をたてて粉々に崩落した。あまりの迫力にただ唖然とするしかなかった。急な崖の上の雪庇にうかつに乗ることがいかに危険かをまざまざと見せつけられ、恐ろしくなった。
滝が倉山前後は雪庇とヤブが交互に現れるが、ヤブには相変わらずうっすらとした踏み跡も散見され、それほど苦労なく進む。途中4人パーティを抜かした。若い人3人(うち女性2人)とガイドらしき年配の方。自分と同じ日に十字峡から入ったそうだ。劔が倉山の登り途中までは忠実に稜線を行ったが、山頂直下の雪庇は遠目にはズタズタで怖そうだったので、ここでまたも伝家の宝刀、巻き技を使った。劔が倉山は標高2000m弱あり登り甲斐があった。
劔が倉山まで来るとようやく平ヶ岳が正面にどどーんと立ちはだかる。ここから下りも雪庇とヤブが交互なのだがこれでヤブ区間は最後。ようやく開放される!と気ははやるが、途中私の乗っていた雪塊が崩れ、クラックに落ちかけた。間一髪で向こう側の雪壁にしがみつき這い上がった。クラックは背丈くらいの深さだったので落ちても何とかなっただろうが、めっぽう驚いた。
平ヶ岳の登りはだだっ広い雪原をひたすら登るだけで、頭を使いまくった今までとは真逆でただの体力勝負だ。正午ちょうどに山頂到着。向こうからスキーで登ってきた2人組と同時だった。山ノ鼻から来たそうだ。お二人さんと山座同定で盛り上がったが、「そういえば平ヶ岳はどこなんでしょうねぇ」と謎のセリフをおっしゃったので「えっ?ここが平ヶ岳ですよ」と言ったら一瞬驚いて「本当ですか?やった〜」と叫んでいた。聞けばここを白沢山と勘違いして登ってきたそうだ(勘違い大賞を贈呈いたします)。それにしても山ノ鼻から平ヶ岳を1日で往復するとは相当な体力。お二人とも年配なのに脱帽。
今回の縦走は平ヶ岳を境に奥利根側と尾瀬側で景色ががらっと変わる。ヤブもあるはっきりした稜線歩きから、緩慢な雪原歩きになる。尾瀬からのピストンで来る人も増え、のんびりなムードになってくる(しかしこれはあくまでも天候がよいときに限るだろう。悪天の時は尾瀬側は地形がはっきりせず道を失いやすいと思われるので)。目的地の白沢山北西JPははるか遠く、たどり着いたときは疲れ果てて一歩も歩けない状態だった。この日は昨日より行動時間は短かったが、前半のヤブ漕ぎもあって気力も体力を使い果たしてしまった。
食事をした後、風が強まりガスに覆われてジメジメと寒くなった。明日の天気が心配だったがここまで来れば明日中に下山は十分出来る。ただ楽しみにしていた赤倉岳に登れないのは悔しい、なんとしても赤倉には登りたいなと考えていた。
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5/1(火) 曇り時々晴れのち小雨 強風
大白沢山北西JP4:30〜ススヶ峰〜赤倉岳〜ススヶ峰〜7:50大白沢山北西JP8:30〜景鶴山〜与作岳〜ヨッピ橋〜山ノ鼻〜16:10鳩待峠[下山]
行動時間:11時間40分
3時半にもぞもぞと起き出し天気を確認すると、風はメチャクチャ強いが晴れている。よし、いざ赤倉!と出発しようとすると、なんと今度はガスで真っ白になっている。最終日の天気はこのように常に不安定だった。お隣のススヶ峰まではスキー・ツボ足のトレースだらけで何も問題なし。しかし、そのあと赤倉までは地形がわかりにくく迷いながら降りていった。この原因はススヶ峰側が密林になっており見通しがきかないのと、鞍部で尾根が一度消失するためルート取りがイメージしにくいためと思われる。赤倉は意外と曲者の山で、悪天のときは入るべきではないと思った。
なんとか尾根に取り付き、真っ白な急斜面を登っていると天気は晴れてきた。輪郭のはっきりしない尾瀬の山々の中で赤倉岳は極めてアルペン的な山容をしており、とても気に入ってしまった。雪の付き方がとても上品で、基本真っ白である。どっしりしていてボリュームもあるのでどこからでも目立つ。マイナー名山どころか、300名山に選ばれても全く遜色ないし、もっと注目されてもいい山だと思う。1959mの山頂からの景色も絶景で、今回の縦走で最高の眺めだった。特に北方向正面に平ヶ岳の堂々たる風貌とその横の剱が倉山の尖塔が印象に残った。
赤倉ピストンは3時間と見ていたが、思ったより時間がかかり20分オーバーしてテントまで戻った。強風の中苦労してテントをたたんでいると、単独行の方が声をかけてきた。聞けば十字峡から入山し、今日で3日目。このあと至仏山経由で鳩待峠に抜けるという。昨日は丹後山避難小屋から平ヶ岳まで一気に歩いたそうで、かなり健脚の方だ。今回のヤブには参りましたねとお互い苦笑いだった。
景鶴山までは大白沢山、カッパ山の2つのピークがあるが、両方とも巻いてしまうズボラなコース取りをしようと進んでゆくと、なんとトレースも全くその通りついており、意外と早く景鶴山まで取り付けた。山頂の岩峰の北を巻き、東側から頂上にアプローチする。悪化していた天候もまた回復し、景鶴山頂では完全に晴れた。この日は全般に天気は良くなかったのだが、何故かすべてのピークで晴れた。相当に運が強いなと思った。景鶴の山頂付近は雪庇の状態が悪いうえ、登山者も多いので雪が荒れていて危険だった。高度感もあるので事故には十分注意。後からきた年配のパーティーにも無理しないようアドバイスした。
与作岳経由で尾瀬ヶ原に下った。尾瀬ヶ原はまだ一面の雪野原で、春というより冬の色が強い感じだった。でも水の流れは力強く、そこまで来ている春も感じられた。山の取り付きに雪解け水が沸いていたが、信じられないことにこれが今回の縦走唯一の水場だった(尾根コースなので当然といえば当然)。雪以外から水が得られたのはこれが初めてで、ラーメンを作って腹ごしらえした。
あとは尾瀬ヶ原を山ノ鼻まで歩き、鳩待峠に登るだけ。これが長くて2時間半くらいかかってしまった。おまけに途中の水没した木道で滑ってこけてしまい、右半身がずぶ濡れになった。今回の縦走の危機は山ではなくこんなところに潜んでいたのだった。木道から落ちてしまったら更にひどいことになっていたので、ある意味ラッキーだったかもしれない。
山ノ鼻手前で天気は崩れて小雨になった。最終バス発の20分前に鳩待峠に到着。余裕で間に合うと甘く見ていたが、尾瀬ヶ原の雪原に意外とてこずり、最後の方はかなりの早足であるいた。バス停には偶然今朝テントでお会いした単独行者がおり、お互いの無事を喜び合った。この方とは戸倉で温泉にも一緒に立ち寄り、その後JRも新前橋まで同行し、色々話をした。積雪期の山を豊富に歩かれており、自分の知らない時期、山域のお話をたっぷり聞くことができた。最注目はこの時期の南ア聖岳東尾根。かなり魅力的なようであり、自分も一度狙ってみたいと思った。
こうして奥利根の縦走を無事終えることが出来た。昨年のGW南会津は天候に恵まれず苦労したが今年は最高の天候だった。ヤブも多く危険も多かったが、それらも含めこの山域の魅力を最大限に堪能できた。なかなか登れない赤倉岳に登頂できたのも良い経験だった。
コメント
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この記録を拝見することができてよかったです
魅力的な山旅ですね
わたしも歩いてみたいです
こんな風に山と向き合っていたいです
向き合い続けてればいつかは身につくものなのかなあ
素晴らしい記録と写真、どうもありがとうございました★
hirappe様
ご感想ありがとうございます。今回の縦走はほんと色々な好条件に恵まれました(ヤブの状況は除く…)。とても充実した山旅でした。
hirappe様もマイナー名山筆頭の矢筈岳に登られたのですね。私もいつかはと思っておりますので、記録参考にさせていただきます。どうもありがとうございました。
初めまして。
ヤマレコにも多くのモサがおられますが、triglavさまもそのおひとりに相違なく、このレコをあっけにとられて見ております。
山から登っている方を見てますが、ポプラーポピュラーではない山を歩かれている実力に敬服。
兎から平ヶ岳の稜線歩きとは、あなただけでしょう。
すごいですねぇ〜。以前から山はやってたんでしょうかね
あああ、すごいすごい
hagure1945様
コメントありがとうございます。
丹後山から登られている方は数パーティお会いしましたよ。このルートは残雪期には実はポピュラーなのです。荒沢から入る人は確かに少ないかもしれませんが、ゼロではありません。今回も蛇子沢左岸尾根にトレースはありましたし、その方はなんと巻機まで行かれる計画だったとの情報を別の登山者から聞きました(丹後山避難小屋で一緒だったそうです)。
私は記録の見つからないルートは一度も歩いてません。なのでもっと猛者の先人たちがきっといるはずです…
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